秘伝賜ります

紫南

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第七章 秘伝と任されたもの

368 事態の把握に努めてください

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少し緊張した空気が来賓の者達の間で流れる。本来ならば、彼らが先に移動を始めるのだが、動けそうになかった。

それを感じて那津が教師達に声をかける。

「先に生徒達を教室に誘導してください。ここは大丈夫ですわ」
「「「「「はい」」」」」

順番に生徒達が移動していくが、ピアノを伴奏していた子ども達は神を知っているし、高耶と修を見つけて手を振ったり、頭を下げてから移動して行った。

それを見て、来賓の者達が目を丸くする。

「こ、子ども達も知っているのですか……?」
「顔を合わせたのは数名です。ピアノの伴奏の指導時にお会いしましたので」
「……」

どう受け止めればいいのか分からない様子だ。それを見兼ねた高耶が土地神に声をかける。

「ご一緒にどうでしょう。運動場の方で食事をするのですが」
《うむ。お邪魔しよう。珍しい者達も居るようだ。他の土地神と会うというのも、中々に新鮮な経験だ。それに、血縁でもあるようだな》
「はい。瑶迦は私の祖母のようなものです」

これを聞いて那津が思わず声を上げる。時島も驚いて目を丸くしていた。

「まあっ。瑶迦さんいらしてくださったのっ?」
「ええ……留守番は我慢ならなかったようです」

どうやら、エルラントがこちらに来たことを知ったキルティスとイスティアが行きたがったらしい。そこで瑶迦が羨ましがり、それならばと三人でやって来てしまったようだ。土地神がここに来る前には、許可をもらっていたのだろう。

外で楽しく皆で最初から鑑賞していた。その高耶への報告は、充雪が姿を見せずにやって来て、耳打ちしていたのだ。

「ふふふっ。あ~、ご挨拶したいけれど……」
「それでしたら、皆さんご一緒にどうでしょうか? お弁当はこちらに運ばせますよ」

充雪が先ほどから、連れて来たら良いと言って煩かった。

「っ、良いの? 皆さまもよろしいかしらっ」
「「「「「はい……」」」」」

あまり理解できていなさそうだが、那津や時島はこのまま行ってしまえと決めたようだ。

「すぐに用意できると思いますが、落ち着いたら来てください。恐らく……見ればすぐにわかると思います」
「分かったわっ」

その返事を聞いて高耶が立ち上がると、その肩に神が止まる。修も立ち上がった。

「行きましょうか」
《少しの間、姿を消そう》
「はい。日よけのテントは出来ているようですから、そこまでは」
《うむ》
「では、お待ちしています。お弁当などは珀豪達が運び出しますから、必要なお手荷物だけで大丈夫ですよ」
「ありがとうっ」

那津が決めたと同時に珀豪に伝えたので、問題ない。高耶と修は、姿を消した土地神と共に、一足先に外へと向かった。

「さあ、靴も履かなくてはいけませんし、一度控え室の方へ行きましょうっ」
「え、ええ……」
「分かりました……」

現実がまだ受け止めきれず、少し呆っとしたまま一同は立ち上がった。今はもう、ゆっくりと外に行こうとしている保護者達と房田音響のスタッフ、数人の担当クラスがない教師達しか残っていない。

彼らは、保護者達全員を外に出した後、関係者以外は入れないように施錠して、控え室として使っている教室で食事を取ることになる。

九時からスムーズに進んだため、十二時前だ。二時間とはいかないが、一時間半は確実に休憩が取れる。

子ども達はこの休憩中に教室でお弁当を食べ、着替えたり、ここまでの感想文を書いたりして時間を過ごすことになるらしい。

そんな説明をしながら、那津と時島は、来賓の者達を控え室へと誘導した。

そして、靴を履き外に出たのだが、それはすぐに目に入った。

「アレかしら……」
「アレでしょうね……」

そこには大きなテントが建っていた。遊牧民のテント、ゲルのような見た目のものを三つほど繋げた立派なものだった。

「でも……瑶迦さん達が居るなら、普通ね」
「確かに……」
「「「「「……」」」」」

一部の保護者の者達もここでレジャーシートを敷いて、小さな子どもとお弁当を食べていたりする。お酒だけは禁止しているが、きちんとゴミなどの処理をすること、その日の内に完全撤去することを条件に、今日だけは全面開放しているのだ。もちろん、家に帰って食事を取って来る者もいる。

周りの人たちの視線が集まるテント。それはすぐに建てられるものではないはずだ。

「……朝、あんなのはなかったよな……」
「体育館に移動する時も見ていませんよね……」

せっかく落ち着いてきた一同は、再び動きを止めようとしていた。







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読んでくださりありがとうございます◎




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