368 / 463
第七章 秘伝と任されたもの
368 事態の把握に努めてください
しおりを挟む
少し緊張した空気が来賓の者達の間で流れる。本来ならば、彼らが先に移動を始めるのだが、動けそうになかった。
それを感じて那津が教師達に声をかける。
「先に生徒達を教室に誘導してください。ここは大丈夫ですわ」
「「「「「はい」」」」」
順番に生徒達が移動していくが、ピアノを伴奏していた子ども達は神を知っているし、高耶と修を見つけて手を振ったり、頭を下げてから移動して行った。
それを見て、来賓の者達が目を丸くする。
「こ、子ども達も知っているのですか……?」
「顔を合わせたのは数名です。ピアノの伴奏の指導時にお会いしましたので」
「……」
どう受け止めればいいのか分からない様子だ。それを見兼ねた高耶が土地神に声をかける。
「ご一緒にどうでしょう。運動場の方で食事をするのですが」
《うむ。お邪魔しよう。珍しい者達も居るようだ。他の土地神と会うというのも、中々に新鮮な経験だ。それに、血縁でもあるようだな》
「はい。瑶迦は私の祖母のようなものです」
これを聞いて那津が思わず声を上げる。時島も驚いて目を丸くしていた。
「まあっ。瑶迦さんいらしてくださったのっ?」
「ええ……留守番は我慢ならなかったようです」
どうやら、エルラントがこちらに来たことを知ったキルティスとイスティアが行きたがったらしい。そこで瑶迦が羨ましがり、それならばと三人でやって来てしまったようだ。土地神がここに来る前には、許可をもらっていたのだろう。
外で楽しく皆で最初から鑑賞していた。その高耶への報告は、充雪が姿を見せずにやって来て、耳打ちしていたのだ。
「ふふふっ。あ~、ご挨拶したいけれど……」
「それでしたら、皆さんご一緒にどうでしょうか? お弁当はこちらに運ばせますよ」
充雪が先ほどから、連れて来たら良いと言って煩かった。
「っ、良いの? 皆さまもよろしいかしらっ」
「「「「「はい……」」」」」
あまり理解できていなさそうだが、那津や時島はこのまま行ってしまえと決めたようだ。
「すぐに用意できると思いますが、落ち着いたら来てください。恐らく……見ればすぐにわかると思います」
「分かったわっ」
その返事を聞いて高耶が立ち上がると、その肩に神が止まる。修も立ち上がった。
「行きましょうか」
《少しの間、姿を消そう》
「はい。日よけのテントは出来ているようですから、そこまでは」
《うむ》
「では、お待ちしています。お弁当などは珀豪達が運び出しますから、必要なお手荷物だけで大丈夫ですよ」
「ありがとうっ」
那津が決めたと同時に珀豪に伝えたので、問題ない。高耶と修は、姿を消した土地神と共に、一足先に外へと向かった。
「さあ、靴も履かなくてはいけませんし、一度控え室の方へ行きましょうっ」
「え、ええ……」
「分かりました……」
現実がまだ受け止めきれず、少し呆っとしたまま一同は立ち上がった。今はもう、ゆっくりと外に行こうとしている保護者達と房田音響のスタッフ、数人の担当クラスがない教師達しか残っていない。
彼らは、保護者達全員を外に出した後、関係者以外は入れないように施錠して、控え室として使っている教室で食事を取ることになる。
九時からスムーズに進んだため、十二時前だ。二時間とはいかないが、一時間半は確実に休憩が取れる。
子ども達はこの休憩中に教室でお弁当を食べ、着替えたり、ここまでの感想文を書いたりして時間を過ごすことになるらしい。
そんな説明をしながら、那津と時島は、来賓の者達を控え室へと誘導した。
そして、靴を履き外に出たのだが、それはすぐに目に入った。
「アレかしら……」
「アレでしょうね……」
そこには大きなテントが建っていた。遊牧民のテント、ゲルのような見た目のものを三つほど繋げた立派なものだった。
「でも……瑶迦さん達が居るなら、普通ね」
「確かに……」
「「「「「……」」」」」
一部の保護者の者達もここでレジャーシートを敷いて、小さな子どもとお弁当を食べていたりする。お酒だけは禁止しているが、きちんとゴミなどの処理をすること、その日の内に完全撤去することを条件に、今日だけは全面開放しているのだ。もちろん、家に帰って食事を取って来る者もいる。
周りの人たちの視線が集まるテント。それはすぐに建てられるものではないはずだ。
「……朝、あんなのはなかったよな……」
「体育館に移動する時も見ていませんよね……」
せっかく落ち着いてきた一同は、再び動きを止めようとしていた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
それを感じて那津が教師達に声をかける。
「先に生徒達を教室に誘導してください。ここは大丈夫ですわ」
「「「「「はい」」」」」
順番に生徒達が移動していくが、ピアノを伴奏していた子ども達は神を知っているし、高耶と修を見つけて手を振ったり、頭を下げてから移動して行った。
それを見て、来賓の者達が目を丸くする。
「こ、子ども達も知っているのですか……?」
「顔を合わせたのは数名です。ピアノの伴奏の指導時にお会いしましたので」
「……」
どう受け止めればいいのか分からない様子だ。それを見兼ねた高耶が土地神に声をかける。
「ご一緒にどうでしょう。運動場の方で食事をするのですが」
《うむ。お邪魔しよう。珍しい者達も居るようだ。他の土地神と会うというのも、中々に新鮮な経験だ。それに、血縁でもあるようだな》
「はい。瑶迦は私の祖母のようなものです」
これを聞いて那津が思わず声を上げる。時島も驚いて目を丸くしていた。
「まあっ。瑶迦さんいらしてくださったのっ?」
「ええ……留守番は我慢ならなかったようです」
どうやら、エルラントがこちらに来たことを知ったキルティスとイスティアが行きたがったらしい。そこで瑶迦が羨ましがり、それならばと三人でやって来てしまったようだ。土地神がここに来る前には、許可をもらっていたのだろう。
外で楽しく皆で最初から鑑賞していた。その高耶への報告は、充雪が姿を見せずにやって来て、耳打ちしていたのだ。
「ふふふっ。あ~、ご挨拶したいけれど……」
「それでしたら、皆さんご一緒にどうでしょうか? お弁当はこちらに運ばせますよ」
充雪が先ほどから、連れて来たら良いと言って煩かった。
「っ、良いの? 皆さまもよろしいかしらっ」
「「「「「はい……」」」」」
あまり理解できていなさそうだが、那津や時島はこのまま行ってしまえと決めたようだ。
「すぐに用意できると思いますが、落ち着いたら来てください。恐らく……見ればすぐにわかると思います」
「分かったわっ」
その返事を聞いて高耶が立ち上がると、その肩に神が止まる。修も立ち上がった。
「行きましょうか」
《少しの間、姿を消そう》
「はい。日よけのテントは出来ているようですから、そこまでは」
《うむ》
「では、お待ちしています。お弁当などは珀豪達が運び出しますから、必要なお手荷物だけで大丈夫ですよ」
「ありがとうっ」
那津が決めたと同時に珀豪に伝えたので、問題ない。高耶と修は、姿を消した土地神と共に、一足先に外へと向かった。
「さあ、靴も履かなくてはいけませんし、一度控え室の方へ行きましょうっ」
「え、ええ……」
「分かりました……」
現実がまだ受け止めきれず、少し呆っとしたまま一同は立ち上がった。今はもう、ゆっくりと外に行こうとしている保護者達と房田音響のスタッフ、数人の担当クラスがない教師達しか残っていない。
彼らは、保護者達全員を外に出した後、関係者以外は入れないように施錠して、控え室として使っている教室で食事を取ることになる。
九時からスムーズに進んだため、十二時前だ。二時間とはいかないが、一時間半は確実に休憩が取れる。
子ども達はこの休憩中に教室でお弁当を食べ、着替えたり、ここまでの感想文を書いたりして時間を過ごすことになるらしい。
そんな説明をしながら、那津と時島は、来賓の者達を控え室へと誘導した。
そして、靴を履き外に出たのだが、それはすぐに目に入った。
「アレかしら……」
「アレでしょうね……」
そこには大きなテントが建っていた。遊牧民のテント、ゲルのような見た目のものを三つほど繋げた立派なものだった。
「でも……瑶迦さん達が居るなら、普通ね」
「確かに……」
「「「「「……」」」」」
一部の保護者の者達もここでレジャーシートを敷いて、小さな子どもとお弁当を食べていたりする。お酒だけは禁止しているが、きちんとゴミなどの処理をすること、その日の内に完全撤去することを条件に、今日だけは全面開放しているのだ。もちろん、家に帰って食事を取って来る者もいる。
周りの人たちの視線が集まるテント。それはすぐに建てられるものではないはずだ。
「……朝、あんなのはなかったよな……」
「体育館に移動する時も見ていませんよね……」
せっかく落ち着いてきた一同は、再び動きを止めようとしていた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
287
あなたにおすすめの小説
レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収
ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。
彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。
だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。
自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。
「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」
契約解除。返還されたレベルは9999。
一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。
対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。
静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。
「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」
これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。
(本作品はAIを活用して構成・執筆しています)
【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません
との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗
「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ!
あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。
断罪劇? いや、珍喜劇だね。
魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。
留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。
私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で?
治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな?
聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。
我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし?
面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。
訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結まで予約投稿済み
R15は念の為・・
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
※タイトルはそのうち変更するかもしれません※
※お気に入り登録お願いします!※
【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する
影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。
※残酷な描写は予告なく出てきます。
※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。
※106話完結。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる