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第七章 秘伝と任されたもの
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ゴロンゴロンとそれは転がり出てきたように見えた。
「……ん?」
「うわっ、あぶねっ。これ、文鎮じゃね?」
俊哉が身を屈めて、高耶の足下に転がり出て来たものを見る。
青色の鋳物で、厚さは一、二センチほどだろうか。複雑な模様が円状に描かれている。直径は十センチほどだ。
「なんかこれ、あれだ。三種の~何とかの鏡みたいな」
「ああっ、八咫鏡みたいだねっ。アレは、青くはないけど」
雛柏教授もそれを見て頷く。
「扉に立てかけてあったのかしら?」
一緒になって小百合も覗き込むようにして見た。
しかし、微動だにせずにそれを見つめていた高耶は、次に聞こえて来たゴロゴロという音に目を細めた。
「教授、俊哉、下がって」
「ん? おう」
「え? うん」
不思議に思いながらも、高耶の固い声に二人はすぐに下がる。教授はきちんと小百合も後ろに庇うように下げた。何かあるというのは、高耶の声で分かったのだ。
「っ、と、当主……この音……」
勇一が緊張気味にその音に聞き耳を立てる。そして、案内して来た使用人は、はっとして告げた。
「そういえば、夜になると、ここからゴロゴロと音がすると……見回りの者達が言っていました」
「え~、それ、怖くねえの? 報告しようぜ」
「でも、音がするだけですし?」
使用人は、平然とした顔色で首を傾げるだけ。それは俊哉にすれば、異常に見えた。
「ふふっ。仕方ないんだよ和泉くん。こういう家だもん。不思議な音がするのが寧ろ当たり前みたいな所あるよ」
「心霊現象があるのが当たり前……当たり前になれんの?」
「慣れちゃうんだろうねえ」
「すげえ世界……」
高耶はそんな会話を背中で聞きながら、少しだけ開いた書庫の扉の隙間をじっと見つめる。段々と音が近付いてくる気がする
しかし、それは気だけだったようだ。途中で止まった。
「……はあ……なるほど……おい。お前も動けるんだろ?」
《っ!! ぴゃいっ》
「え!? 文鎮? 鏡? が喋っ、動いた! 亀?」
ぴょこんと、側面から亀のような足と頭、尻尾が生えた。
「平べった~。けど、亀顔は可愛い。ちょいバランス悪そうだけどっ。足短いんじゃね?」
俊哉が屈み込んでその様を見る。それは足が短いため、動いても数ミリ単位でしか移動出来なさそうだった。
「うわあ~、付喪神? すごいねっ。可愛いっ」
「まあっ。本当に可愛らしいっ」
《っ、んっむむっ》
「ぷはっ。首も短すぎて見上げれてないっ。なんて残念な生き物なんだっ」
必死で見上げようとして首を伸ばしているが、その首が伸びても二センチほどだ。斜め四十五度も無理そうだった。その残念さが大変可愛い。
案内してきた使用人も、感激している。
「っ、かわっ」
一方、勇一はその不思議な生き物に目を丸くしたまま動かず、高耶は呆れたように額に片手を当てていた。
「はあ……もしかして、こいつと同型のが中にもう何匹か……」
先ほどからゴロゴロ音も聞こえなくなっている。どうなっているのかと高耶は扉を完全に開け放ち、気配のする方へ一歩足を進める。そこに、本の間に挟まって足をばたつかせている亀がいた。
「……」
「ぶはっ、あははっ。ハマってるっ。なにそれ! 転がってきて、曲がりきれずにってこと? マジで残念っ」
「……はあ……」
高耶は、俊哉に笑われてジタバタさえ諦めたそれを本の隙間から抜き取る。手に乗せると、足を引っ込め、顔だけ高耶に向けた。
「泣くな……」
「え? 泣いちゃった? ごめんよ~」
《ふぎゅ……》
円らな瞳に涙が滲んでいた。それを慰めるように背中(?)を撫で、俊哉に預ける。
そして、もう一匹を同じように発見し、救出すると一度書庫を出た。
廊下に三匹(?)を並べる。
「やべえっ。可愛すぎだろ! ペットにしたいっ!」
「本当だよ! 机の上に居たら、絶対に癒される!」
「文鎮ですわね! 文鎮ですのねっ! 付喪神にするならコレですわっ!」
「くっ、可愛過ぎるっ」
使用人までもメロメロだ。
そこで、高耶はまだ書庫の中にそれらしき者の気配を感じていた。
「はあ……まずコイツらを全部出すのが先か……いや、待てよ……説明書……」
唐突に、説明書を思い出した。それを開くと、目次があった。
「……『快適なペットとの共生』……知ってたのか」
ここを改築した清掃部隊は知っていたようだ。この付喪神達がいることを。
「まさか、この説明書……書庫のことじゃなく……」
「あ、それ内部地図? えらい広そうだけど、この奥は本棚ねえじゃん。コイツらの遊び場? 三分の一くらいあるじゃね?」
「……それだけ居るってことだろ……」
「じゃあ、この書庫、付喪神の棲家ってことじゃねえの?」
「「「……」」」
高耶と使用人、そして、勇一はまさかという思いで書庫の方を見てしまった。その先に、付喪神の楽園がありそうだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「……ん?」
「うわっ、あぶねっ。これ、文鎮じゃね?」
俊哉が身を屈めて、高耶の足下に転がり出て来たものを見る。
青色の鋳物で、厚さは一、二センチほどだろうか。複雑な模様が円状に描かれている。直径は十センチほどだ。
「なんかこれ、あれだ。三種の~何とかの鏡みたいな」
「ああっ、八咫鏡みたいだねっ。アレは、青くはないけど」
雛柏教授もそれを見て頷く。
「扉に立てかけてあったのかしら?」
一緒になって小百合も覗き込むようにして見た。
しかし、微動だにせずにそれを見つめていた高耶は、次に聞こえて来たゴロゴロという音に目を細めた。
「教授、俊哉、下がって」
「ん? おう」
「え? うん」
不思議に思いながらも、高耶の固い声に二人はすぐに下がる。教授はきちんと小百合も後ろに庇うように下げた。何かあるというのは、高耶の声で分かったのだ。
「っ、と、当主……この音……」
勇一が緊張気味にその音に聞き耳を立てる。そして、案内して来た使用人は、はっとして告げた。
「そういえば、夜になると、ここからゴロゴロと音がすると……見回りの者達が言っていました」
「え~、それ、怖くねえの? 報告しようぜ」
「でも、音がするだけですし?」
使用人は、平然とした顔色で首を傾げるだけ。それは俊哉にすれば、異常に見えた。
「ふふっ。仕方ないんだよ和泉くん。こういう家だもん。不思議な音がするのが寧ろ当たり前みたいな所あるよ」
「心霊現象があるのが当たり前……当たり前になれんの?」
「慣れちゃうんだろうねえ」
「すげえ世界……」
高耶はそんな会話を背中で聞きながら、少しだけ開いた書庫の扉の隙間をじっと見つめる。段々と音が近付いてくる気がする
しかし、それは気だけだったようだ。途中で止まった。
「……はあ……なるほど……おい。お前も動けるんだろ?」
《っ!! ぴゃいっ》
「え!? 文鎮? 鏡? が喋っ、動いた! 亀?」
ぴょこんと、側面から亀のような足と頭、尻尾が生えた。
「平べった~。けど、亀顔は可愛い。ちょいバランス悪そうだけどっ。足短いんじゃね?」
俊哉が屈み込んでその様を見る。それは足が短いため、動いても数ミリ単位でしか移動出来なさそうだった。
「うわあ~、付喪神? すごいねっ。可愛いっ」
「まあっ。本当に可愛らしいっ」
《っ、んっむむっ》
「ぷはっ。首も短すぎて見上げれてないっ。なんて残念な生き物なんだっ」
必死で見上げようとして首を伸ばしているが、その首が伸びても二センチほどだ。斜め四十五度も無理そうだった。その残念さが大変可愛い。
案内してきた使用人も、感激している。
「っ、かわっ」
一方、勇一はその不思議な生き物に目を丸くしたまま動かず、高耶は呆れたように額に片手を当てていた。
「はあ……もしかして、こいつと同型のが中にもう何匹か……」
先ほどからゴロゴロ音も聞こえなくなっている。どうなっているのかと高耶は扉を完全に開け放ち、気配のする方へ一歩足を進める。そこに、本の間に挟まって足をばたつかせている亀がいた。
「……」
「ぶはっ、あははっ。ハマってるっ。なにそれ! 転がってきて、曲がりきれずにってこと? マジで残念っ」
「……はあ……」
高耶は、俊哉に笑われてジタバタさえ諦めたそれを本の隙間から抜き取る。手に乗せると、足を引っ込め、顔だけ高耶に向けた。
「泣くな……」
「え? 泣いちゃった? ごめんよ~」
《ふぎゅ……》
円らな瞳に涙が滲んでいた。それを慰めるように背中(?)を撫で、俊哉に預ける。
そして、もう一匹を同じように発見し、救出すると一度書庫を出た。
廊下に三匹(?)を並べる。
「やべえっ。可愛すぎだろ! ペットにしたいっ!」
「本当だよ! 机の上に居たら、絶対に癒される!」
「文鎮ですわね! 文鎮ですのねっ! 付喪神にするならコレですわっ!」
「くっ、可愛過ぎるっ」
使用人までもメロメロだ。
そこで、高耶はまだ書庫の中にそれらしき者の気配を感じていた。
「はあ……まずコイツらを全部出すのが先か……いや、待てよ……説明書……」
唐突に、説明書を思い出した。それを開くと、目次があった。
「……『快適なペットとの共生』……知ってたのか」
ここを改築した清掃部隊は知っていたようだ。この付喪神達がいることを。
「まさか、この説明書……書庫のことじゃなく……」
「あ、それ内部地図? えらい広そうだけど、この奥は本棚ねえじゃん。コイツらの遊び場? 三分の一くらいあるじゃね?」
「……それだけ居るってことだろ……」
「じゃあ、この書庫、付喪神の棲家ってことじゃねえの?」
「「「……」」」
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