秘伝賜ります

紫南

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第七章 秘伝と任されたもの

398 任せられるようです

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薫の尋問の翌日。高耶は神職の者達からの返事を受け取っていた。

「……え……」
「すごい量だねえっ」

楽しそうに、大学の講義が終わってすぐにやって来た雛柏教授がそれを見て笑っていた。

瑶迦の世界にあるホテル。資料整理に使っているホールの一画。高耶専用のブースに届けられたのは、神職の者達からの返事だ。電話でのものと手紙でのものがある。

「……これ、全部……」

これに答えたのは、先日から資料整理も手伝ってくれている秘伝の使用人だ。

「はい! それも、欠席はこちらで……」

数枚のハガキが置いてある方を指した後、少し離れた場所にある百枚はありそうな束を指さす。

「出席がこちらになります!」
「もう分けてあるのか……?」
「はい! あ、人数のご報告をいたします! 百五十名の招待に対しまして、欠席が六。出席が百四十です。回答待ちが四となっています!」
「すごい出席率だっ!」
「そうですね……」

高耶の予想としては、半分だったのだ。それも、三分の一は無視されると思っていた。逆に申し訳なくなる。

「きっと、この前会った宮司さんが話を回したんだろうねえっ」
「……そのようですね……有り難いことです」

これは気合いを入れ直す必要がありそうだと、高耶は気持ちを改める。

「名簿を作って、会場の打ち合わせを……」
「それは私どもにお任せいただけませんか?」
「……いいのか?」

これを聞いて、秘伝家の使用人達が集まってきた。

「はい! 会合なども何度か経験しておりますので!」
「御当主様のお役に立てるんですね!! お任せください!」
「お食事メニューも神職の方々に合わせたものをご用意いたしますのでご安心ください!」
「もちろん、御当主様方もご満足いただけるように!」
「ようやく! ようやく我々にもこのようなお仕事が!! 是非是非! お任せください!!」
「っ、あ、ああ……いや、だが日にちもそれほどないんだが……」
「「「「「っ……」」」」」

ダメなのかと願うような目を向けられ、高耶は折れた。

「……頼んでも?」
「「「「「はい!!」」」」」

使用人達に詰め寄られる経験などなかったた高耶は、思わず止めていた息をゆっくりと吐き出す。

嬉しそうに笑った使用人達は、先頭の使用人に目を向ける。

「では、さっそく! 手分けして行きましょう!」
「「「「「おー!!」」」」」

一気に散って行った。それを見送っていた高耶は珀豪を喚んだ。

「【珀豪】……悪いが……」
《うむ。秘伝の使用人が居ない……この手紙は出欠の……なるほど。秘伝の使用人達が準備を取り仕切りたいと願ったのだな》
「すごい! よく分かるね! 正解だよ! 高耶君が押し切られてた」
《納得した。では、我はアドバイザーとして彼らに付こう》
「……頼んだ」
《任されよ》

珀豪は、使用人達も向かった秘伝の家に続く扉の方に歩いて行った。察しが良くて助かる。

「珀豪くんなら、お料理とか間違えようもなさそうだしね」
「ええ。助かります……」

本当に、いつでも頼りになる主夫だ。

「でも、家の方は良いの? 彼、主夫でしょう? 妹さん、寂しがらない?」
「弟子のメイドがまだ居るので、問題ないです」
「あ、エリーゼちゃんね。そっか。頼りにできる人、人? が居て良かったね」
「はい……」

意外と頼っているんだなと、高耶は感慨深く思った。

「さてと。もう一仕事しますかっ」
「すみません。連日」
「いやいや。楽しんでるしねっ。付喪神達ちゃん達にも癒されるしねっ。ここでのお夕飯も最高だしねっ。文句ないよ! 寧ろ、ここで就職したい!」
「いえ、教授はもう就職してますよね……」
「副業ではなく本職にしたいよねっ」
「ですから、大学教授が本職ですからね?」
「……いつ辞表出そうかな……」
「教授……」

本気の声音だった。そのままブツブツ言いながら、秘伝家の書庫に繋がる扉へと消えて行った。

「……仕事しよう……」

今は目の前の事を片付けるのが先だ。神職との顔合わせの場を用意するのもやらなくてはと思っていたので、かなり追い込み気味に資料をまとめていたが、思わぬ余裕が出来た。

「……頼ることも……覚えていかないとな……」

何度か言われてきた事だが、ほぼ聞き流していた。それをもう少し考えてみるのも良いかもしれない。








**********
読んでくださりありがとうございます◎

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