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8th ステージ
075 とんだ偽善者や
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王妃達を城に帰してから数日が経った。
「……なあ、ヒーちゃん……幾つ衣装作ったん……?」
新たに称号『きらめき☆あいどる』が追加されたと知ったヒストリアは、それからリンディエールが会いにくる度に、アイドル衣装をプレゼントしてくるようになった。
もちろん、リンディエールの見た目に合う、ヒラヒラでキラキラな仕様だ。リンディエールは中身は残念系だが、見た目は美少女だ。問題なく似合っていた。しかし、毎回というのはどういうことなのか。
一日の内に最高で三回、ヒストリアに会いに来る。それでも、毎回贈られるのだ。既に、二十着は超えた。
《ん? まだまだあるぞ。今、裁縫ブームなんだ。ああ、そうだ。これは普段使いにどうだ?》
「んん!?」
濃い緑のマントだ。縁取りの蔦の刺繍がものすごく凝っている。
「スゴ! 【物理防御】に【魔法防御】……両立できるやと……っ、あ、【絶対防御】になった……」
リンディエールが鑑定をかけると、二つの防御術式が見えた。しかし、それをじっと見つめていると、一つの術式として認識でき【絶対防御の術式】と出たのだ。
《できた》
「天才か!? 知っとったけどな!!」
この二つは両立できないと研究発表が為されていたのだ。ただ、かなり昔のことで、今の時代では、これを証明するどころか、術式の付与さえ出来る者はいないとされていた。
《なんだろうなあ。少し前から色々楽しくてな。凝り固まっていたものが唐突に解けたように思うんだ》
「ヒーちゃん……」
王妃達との顔合わせ宴会から、ヒストリアの雰囲気が変わった。とても明るくなった。それと、肩の力が抜けたように思う。
《それに、リンが頑張ってくれるようだからな。俺も……何かやりたくなった》
「そっか……それは良いことやな!」
《ああ。良いことだ》
クスクスと笑い合い、リンディエールは受け取ったマントを羽織った。
「どうや? 似合うか?」
《よく似合っているぞ。これで最強だなっ》
「任せえ! 世界を取ったるでな!」
そんな話しをしていた時だった。
《っ!!》
「っ、な、なんや……この気持ち悪い感じ……っ」
引っ張られるような、そんな不思議な感じが一瞬あった。気のせいと思ってもおかしくないほどの一瞬だ。
「これ……まさか、これがそう……なんか……?」
思い当たったことを、確認するようにヒストリアを見た。すると、彼は頷く。
《間違いない……聖皇国が異世界召喚の儀式をしたようだ》
次元が歪められる。穴が開く。それは、とても気持ちの悪い感覚だった。
「……嫌な気分やな……」
《リン……?》
目を閉じ、何かを堪えるような様子のリンディエールに、ヒストリアは小さく声をかけた。
リンディエールは俯きながら自嘲する。
「ウチは、こうなるゆうことを知っとった……次を起こさんように……今回の子おを……犠牲にする……アレやな……立派な共犯者や」
《……》
「聖皇国だけを責められん……見て見ぬ振りをした……とんだ偽善者や……」
異世界から、その子が誘拐されてくることを知っていて、それを見て見ぬ振りで通した。なんの警告もせず、邪魔もせず、やることを許した。
次の犠牲者を出さないためと言いながら、その子を犠牲にしたのだ。何も関係ない一人の異世界人を、未来のために切り捨てた。
《リン……なら、俺もそうだろう? 一人で抱え込む必要はない。そんな風に思う必要はないんだ……》
どれだけ言葉を尽くしても、きっと今のリンディエールには響かない。それでも、ヒストリアは言葉にするしかなかった。
伸ばした手は、結界によって決して届かない。眼下にはいつもよりも小さく見えるリンディエールが俯いている。これほどまでに、この結界が忌々しいと思ったことはなかった。
抱きしめて、一人で背負うなと伝えたい。そんな簡単なことが、今のヒストリアには出来なかった。それが酷くもどかしい。
そんなヒストリアの想いに気付くことなく、リンディエールはゆっくりと、胸につかえていた息を吐いた。
「はあ……せめて、召喚されたことを知っていると、気取られんようにせなあかんな……宰相はんと、王さまに会うてくるわ……」
《っ……ああ……気をつけて》
「ん……ほなな」
《……》
転移で姿を消したリンディエールが居た場所を、ヒストリアはしばらく見つめ続けた。
そして、心に決める。
《ただの八つ当たりでも……許さない……っ、聖皇国……リンを傷付けた罪は重いぞっ……》
ヒストリアは、聖皇国に目を飛ばした。必ず、確実な破滅を。そう、誓ったのだ。
その日、ヒストリアのステータスに変化があった。
【暴虐竜】の称号が消え、【神竜王(仮)】と表示されたのだ。
神が聖皇国を排除すべきものと認めた結果だった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回も一週空けさせていただきます。
よろしくお願いします!
「……なあ、ヒーちゃん……幾つ衣装作ったん……?」
新たに称号『きらめき☆あいどる』が追加されたと知ったヒストリアは、それからリンディエールが会いにくる度に、アイドル衣装をプレゼントしてくるようになった。
もちろん、リンディエールの見た目に合う、ヒラヒラでキラキラな仕様だ。リンディエールは中身は残念系だが、見た目は美少女だ。問題なく似合っていた。しかし、毎回というのはどういうことなのか。
一日の内に最高で三回、ヒストリアに会いに来る。それでも、毎回贈られるのだ。既に、二十着は超えた。
《ん? まだまだあるぞ。今、裁縫ブームなんだ。ああ、そうだ。これは普段使いにどうだ?》
「んん!?」
濃い緑のマントだ。縁取りの蔦の刺繍がものすごく凝っている。
「スゴ! 【物理防御】に【魔法防御】……両立できるやと……っ、あ、【絶対防御】になった……」
リンディエールが鑑定をかけると、二つの防御術式が見えた。しかし、それをじっと見つめていると、一つの術式として認識でき【絶対防御の術式】と出たのだ。
《できた》
「天才か!? 知っとったけどな!!」
この二つは両立できないと研究発表が為されていたのだ。ただ、かなり昔のことで、今の時代では、これを証明するどころか、術式の付与さえ出来る者はいないとされていた。
《なんだろうなあ。少し前から色々楽しくてな。凝り固まっていたものが唐突に解けたように思うんだ》
「ヒーちゃん……」
王妃達との顔合わせ宴会から、ヒストリアの雰囲気が変わった。とても明るくなった。それと、肩の力が抜けたように思う。
《それに、リンが頑張ってくれるようだからな。俺も……何かやりたくなった》
「そっか……それは良いことやな!」
《ああ。良いことだ》
クスクスと笑い合い、リンディエールは受け取ったマントを羽織った。
「どうや? 似合うか?」
《よく似合っているぞ。これで最強だなっ》
「任せえ! 世界を取ったるでな!」
そんな話しをしていた時だった。
《っ!!》
「っ、な、なんや……この気持ち悪い感じ……っ」
引っ張られるような、そんな不思議な感じが一瞬あった。気のせいと思ってもおかしくないほどの一瞬だ。
「これ……まさか、これがそう……なんか……?」
思い当たったことを、確認するようにヒストリアを見た。すると、彼は頷く。
《間違いない……聖皇国が異世界召喚の儀式をしたようだ》
次元が歪められる。穴が開く。それは、とても気持ちの悪い感覚だった。
「……嫌な気分やな……」
《リン……?》
目を閉じ、何かを堪えるような様子のリンディエールに、ヒストリアは小さく声をかけた。
リンディエールは俯きながら自嘲する。
「ウチは、こうなるゆうことを知っとった……次を起こさんように……今回の子おを……犠牲にする……アレやな……立派な共犯者や」
《……》
「聖皇国だけを責められん……見て見ぬ振りをした……とんだ偽善者や……」
異世界から、その子が誘拐されてくることを知っていて、それを見て見ぬ振りで通した。なんの警告もせず、邪魔もせず、やることを許した。
次の犠牲者を出さないためと言いながら、その子を犠牲にしたのだ。何も関係ない一人の異世界人を、未来のために切り捨てた。
《リン……なら、俺もそうだろう? 一人で抱え込む必要はない。そんな風に思う必要はないんだ……》
どれだけ言葉を尽くしても、きっと今のリンディエールには響かない。それでも、ヒストリアは言葉にするしかなかった。
伸ばした手は、結界によって決して届かない。眼下にはいつもよりも小さく見えるリンディエールが俯いている。これほどまでに、この結界が忌々しいと思ったことはなかった。
抱きしめて、一人で背負うなと伝えたい。そんな簡単なことが、今のヒストリアには出来なかった。それが酷くもどかしい。
そんなヒストリアの想いに気付くことなく、リンディエールはゆっくりと、胸につかえていた息を吐いた。
「はあ……せめて、召喚されたことを知っていると、気取られんようにせなあかんな……宰相はんと、王さまに会うてくるわ……」
《っ……ああ……気をつけて》
「ん……ほなな」
《……》
転移で姿を消したリンディエールが居た場所を、ヒストリアはしばらく見つめ続けた。
そして、心に決める。
《ただの八つ当たりでも……許さない……っ、聖皇国……リンを傷付けた罪は重いぞっ……》
ヒストリアは、聖皇国に目を飛ばした。必ず、確実な破滅を。そう、誓ったのだ。
その日、ヒストリアのステータスに変化があった。
【暴虐竜】の称号が消え、【神竜王(仮)】と表示されたのだ。
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