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13th ステージ
139 先ずは連絡やな
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少しばかり『ヒーちゃん』と呼ばれる存在に、無意識にでも彼らは何かを感じているのだろう。
王宮にあるべき原書も持っているなど、とんでもない人だというのが感じられるはずだ。
だから、心を落ち着けるためにもと、彼らは冷静になるための準備をする。少しばかり話をずらしながら。
先ず、多くの貴重な原書を持っている人と聞いてどのようなイメージを持つだろうか。
「うむ。リンならば、どんな頑固ジジイでも丸め込んで友人にしてしまいそうだなあ」
と言うのがアーネスト女王。
「確かに、ジジイでもババアでも、リンは気に入られとるしなあ。原書を持つような偏屈そうな者でも上手く付き合うだろうさ」
腕を組み、頷きながら目尻を下げて、まるで孫自慢のように言うのがバーグナー王だ。
二人の言葉を聞いて、その通りだと重く頷いたのがブラムレース王。
「現に、うちの頑固な大臣達や気難しい商会長に密かに孫認定され、魔法師長と研究仲間として認識されているからな……」
「人生経験豊富な人生の大先輩と友達やなんてっ。そんな厚かましいこと考えとらんで? うちなりに敬っとるんや。まあ、人は選んどるけどなあ」
頑固ということは、凝り固まった考えを持っているということ。年配の者は、もちろん周りに最後まで助けられて中身のない、ただ年を取っただけの者もいるかもしれないが、五十年以上も何も考えずに生きてくる人の方が稀だ。
だから、その年月にとりあえずは敬意を示すことにしている。
「その辺の若者と違おて、そうそう話題にも困らへんし。まあ、年代に合わせてお喋りするんは慣れとるけどなっ」
「リンは誰とでもお話できますからねえ……」
「宰相はん……その目、やめえ……」
こんな時でも嫉妬心がチラついていた。クイントはいつでも本気だ。
「誰とでも仲良おするんと、親しくするんとは違うやん? 一応、うちも人を区別しとるで?」
「普段、そんな感じは受けんがなあ」
ブラムレース王が意外そうな顔をしていた。
「いや、あからさまに態度には出えへんで? それやったら、そもそもの話もでけへんやん。相手が嫌そうでも、こっちは知らん顔で笑顔。人付き合いの基本やん」
「「「「それができればなあ……」」」」
「……ダメな大人やなあ……」
リンディエールは大人気ない困った大人達に呆れた顔をした。
アーネスト女王が綺麗な顔を顰める。
「だがなあ。明らかに気に入らんという顔をされては、こちらも相応の態度にならざるを得んだろう」
うんうんとバーグナー王とブラムレース王、クイントが同意だと頷く。
「まあ、分からんでもないで? 会いたい言うから会っても、不満気な顔されたら嫌やもんなあ。こっちが譲歩するんも、なんや損な感じもするし」
「そうなのだ。嫌々了承させられて来ましたという態度の相手など、相手にする必要などないだろう」
リンディエールは、これにはしっかりと二度と頷いた。
「分かるっ。分かるで……けど、尚更早く終わらせるためにも、それには気付いとらへんよと笑顔で相手するのが一番や。子どもやないんやから、腹ん中見せんなやって笑んだったらええ。こっちは大人な態度を見せ付けるんや!」
「だが、王が笑顔というのもなあ」
これが王妃ならば、それだけで充分だろうが、王と言う立場は難しい。
シーシェのアーネスト女王も、今の様子からは想像出来ないが、あまり笑顔で人と話すことはないらしい。リンディエールは本当に特別なのだ。もちろん、身内や本性を知っている親しい者達には笑顔でふざけたこともする。
だが、王としての顔は、どんな時でも厳格にとしているようだ。女だということで、隣国の王達に軽んじられたことがあるのだろう。
バーグナーもブラムレース王も、王としての顔はそれだ。笑顔で歓迎するというのは、本当に歓迎している時に取ってあるらしい。
「まあ、そこは人を選ばんとなあ。けど、逆に笑顔で威圧するんも楽しいで?」
「それはありそうだな……今度やってみよう」
「嫌味な大臣が逆にビビりそうだっ」
そう思うと、面倒な相手と対面するのも少しばかり楽しみになったようだ。
「あ~、そんで何の話やったっけ?」
リンディエールは、話が変わっていることに気付く。脱線しすぎた。
クロウが小さく手を上げて教えてくれた。
「はい。原書を持っておられる『ひーちゃん』と言う知り合いが居られるということと、王宮の書を全部入れ替えるとの話でした!」
「「……」」
ブラムレース王とクイントが目を逸らす。どうも二人としては『ヒーちゃん』の話から本気で離そうとしていたようだ。
だが、隠していても仕方がない。何より、アーネスト女王もバーグナーもリンディエールにとっては良い友人だ。
ならば、ヒーちゃんという友人も紹介したいと思う。
「せやった! ほんなら、ヒーちゃんと会ってみよかっ。あっ、グラン。料理長にここのメンバーの昼食は要らん伝えて来てや。その分、他の侍女さんや騎士の人らに昼ご飯豪華にしたるように言うて!」
「承知しました」
グランギリアは静かに部屋を出ていく。そこですぐに転移するため、距離と時間に問題はない。
「先ずは連絡やな」
そうしてリンディエールはヒストリアへ客を連れて行っても良いかと確認する。すると、どうも他の人もその場に来ているようだった。
「ケンじいちゃんやじいちゃんとばあちゃんも居るらしいでっ。問題あらへんよなあ」
ブラムレース王に確認すると、頷かれる。少しホッとしてもいるようだ。
「そうだな。そのメンバーならば問題ないだろう」
「ほんなら繋げるわ」
そう言って、リンディエールは椅子から飛び降り、部屋の隅の方へ向かう。そして、唐突に転移門が部屋に現れた。
「「「「「っ!!」」」」」
初見の者は当然驚く。
「ここ潜ってや。行くで~」
目を丸くする一同を手招くが、中々動かない。そもそも、これが何か分からなかったようだ。クロウが恐る恐るまた手を上げた。
「あの……それは何ですか……?」
「ん? 見てわからん? 『転移門』や!」
「「「っ、普通わかりません!」」」
「「分かるかっ!」」
怒られた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
王宮にあるべき原書も持っているなど、とんでもない人だというのが感じられるはずだ。
だから、心を落ち着けるためにもと、彼らは冷静になるための準備をする。少しばかり話をずらしながら。
先ず、多くの貴重な原書を持っている人と聞いてどのようなイメージを持つだろうか。
「うむ。リンならば、どんな頑固ジジイでも丸め込んで友人にしてしまいそうだなあ」
と言うのがアーネスト女王。
「確かに、ジジイでもババアでも、リンは気に入られとるしなあ。原書を持つような偏屈そうな者でも上手く付き合うだろうさ」
腕を組み、頷きながら目尻を下げて、まるで孫自慢のように言うのがバーグナー王だ。
二人の言葉を聞いて、その通りだと重く頷いたのがブラムレース王。
「現に、うちの頑固な大臣達や気難しい商会長に密かに孫認定され、魔法師長と研究仲間として認識されているからな……」
「人生経験豊富な人生の大先輩と友達やなんてっ。そんな厚かましいこと考えとらんで? うちなりに敬っとるんや。まあ、人は選んどるけどなあ」
頑固ということは、凝り固まった考えを持っているということ。年配の者は、もちろん周りに最後まで助けられて中身のない、ただ年を取っただけの者もいるかもしれないが、五十年以上も何も考えずに生きてくる人の方が稀だ。
だから、その年月にとりあえずは敬意を示すことにしている。
「その辺の若者と違おて、そうそう話題にも困らへんし。まあ、年代に合わせてお喋りするんは慣れとるけどなっ」
「リンは誰とでもお話できますからねえ……」
「宰相はん……その目、やめえ……」
こんな時でも嫉妬心がチラついていた。クイントはいつでも本気だ。
「誰とでも仲良おするんと、親しくするんとは違うやん? 一応、うちも人を区別しとるで?」
「普段、そんな感じは受けんがなあ」
ブラムレース王が意外そうな顔をしていた。
「いや、あからさまに態度には出えへんで? それやったら、そもそもの話もでけへんやん。相手が嫌そうでも、こっちは知らん顔で笑顔。人付き合いの基本やん」
「「「「それができればなあ……」」」」
「……ダメな大人やなあ……」
リンディエールは大人気ない困った大人達に呆れた顔をした。
アーネスト女王が綺麗な顔を顰める。
「だがなあ。明らかに気に入らんという顔をされては、こちらも相応の態度にならざるを得んだろう」
うんうんとバーグナー王とブラムレース王、クイントが同意だと頷く。
「まあ、分からんでもないで? 会いたい言うから会っても、不満気な顔されたら嫌やもんなあ。こっちが譲歩するんも、なんや損な感じもするし」
「そうなのだ。嫌々了承させられて来ましたという態度の相手など、相手にする必要などないだろう」
リンディエールは、これにはしっかりと二度と頷いた。
「分かるっ。分かるで……けど、尚更早く終わらせるためにも、それには気付いとらへんよと笑顔で相手するのが一番や。子どもやないんやから、腹ん中見せんなやって笑んだったらええ。こっちは大人な態度を見せ付けるんや!」
「だが、王が笑顔というのもなあ」
これが王妃ならば、それだけで充分だろうが、王と言う立場は難しい。
シーシェのアーネスト女王も、今の様子からは想像出来ないが、あまり笑顔で人と話すことはないらしい。リンディエールは本当に特別なのだ。もちろん、身内や本性を知っている親しい者達には笑顔でふざけたこともする。
だが、王としての顔は、どんな時でも厳格にとしているようだ。女だということで、隣国の王達に軽んじられたことがあるのだろう。
バーグナーもブラムレース王も、王としての顔はそれだ。笑顔で歓迎するというのは、本当に歓迎している時に取ってあるらしい。
「まあ、そこは人を選ばんとなあ。けど、逆に笑顔で威圧するんも楽しいで?」
「それはありそうだな……今度やってみよう」
「嫌味な大臣が逆にビビりそうだっ」
そう思うと、面倒な相手と対面するのも少しばかり楽しみになったようだ。
「あ~、そんで何の話やったっけ?」
リンディエールは、話が変わっていることに気付く。脱線しすぎた。
クロウが小さく手を上げて教えてくれた。
「はい。原書を持っておられる『ひーちゃん』と言う知り合いが居られるということと、王宮の書を全部入れ替えるとの話でした!」
「「……」」
ブラムレース王とクイントが目を逸らす。どうも二人としては『ヒーちゃん』の話から本気で離そうとしていたようだ。
だが、隠していても仕方がない。何より、アーネスト女王もバーグナーもリンディエールにとっては良い友人だ。
ならば、ヒーちゃんという友人も紹介したいと思う。
「せやった! ほんなら、ヒーちゃんと会ってみよかっ。あっ、グラン。料理長にここのメンバーの昼食は要らん伝えて来てや。その分、他の侍女さんや騎士の人らに昼ご飯豪華にしたるように言うて!」
「承知しました」
グランギリアは静かに部屋を出ていく。そこですぐに転移するため、距離と時間に問題はない。
「先ずは連絡やな」
そうしてリンディエールはヒストリアへ客を連れて行っても良いかと確認する。すると、どうも他の人もその場に来ているようだった。
「ケンじいちゃんやじいちゃんとばあちゃんも居るらしいでっ。問題あらへんよなあ」
ブラムレース王に確認すると、頷かれる。少しホッとしてもいるようだ。
「そうだな。そのメンバーならば問題ないだろう」
「ほんなら繋げるわ」
そう言って、リンディエールは椅子から飛び降り、部屋の隅の方へ向かう。そして、唐突に転移門が部屋に現れた。
「「「「「っ!!」」」」」
初見の者は当然驚く。
「ここ潜ってや。行くで~」
目を丸くする一同を手招くが、中々動かない。そもそも、これが何か分からなかったようだ。クロウが恐る恐るまた手を上げた。
「あの……それは何ですか……?」
「ん? 見てわからん? 『転移門』や!」
「「「っ、普通わかりません!」」」
「「分かるかっ!」」
怒られた。
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