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18th ステージ
195 今頃祭りだって騒いで……
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三日前から兆候は顕著に現れていた。
「おい……なんか、ザワザワしねえ? 音も……」
空気もざわついている感じもするが、実際に遠くに見える森の方からも音が聞こえている。それは木々のざわめきではなく、明らかにメキメキと木が折れたりする音も混ざっていた。
「ああ……おかしいな……あっちの街道からもなんか……っ」
「何か来るか……?」
「っ、野ネズミか!?」
「虫もだっ」
そろそろ危ないだろうと、上級の冒険者か兵達しか町の外には出ていない。そこで異変を確認したのだ。
誰もが何か近付いてくるという予感を感じて、急いで近くの町に走った。おかしいと思い、森の方を確認しに行っていた者も帰ってくる。
「見てきた! 小動物が一気に森から逃げて来ている! 奥から大きいのが来るぞ!」
「領主様に伝令!! 領城に避難だ! 急げ!」
非戦闘員である一部の者達は、数日前から既に領城に避難している。その領城の地下には、各国の中心にある地下迷宮へ繋がる転移門が設置されており、最終的に対応できないとなれば、全ての国民が中央にある地下迷宮に避難することになっている。
よって、近くの村や集落の者達は、領城のある町に避難が完了していた。
残っているのは、プリエラの里のように、昔から迷宮に住んでいる者達と迎撃に入る冒険者や兵士、貴族達だけだ。
「なあ。あの迷宮に住んでる人達は本当に大丈夫なんか?」
「化け物みたいに強いのは知ってんだろっ。寧ろ、そこのは、強敵に出会いたくて仕方ない、戦闘狂ばっかりだったし! あんなの、今頃祭りだって騒いで……」
防衛ラインで魔獣達がやって来るのを待つ冒険者や兵士達は、次の報告を聞いて納得する。
「っ、迷宮出の者達がっ、森に入って行きます!!」
「「「あ~……」」」
見張り台にいる者達には見えた。まるで、何か神を祀るための踊りのような動きを見せながら、楽しそうに森に入っていく者達が見えたのだ。
「脳筋って、あの人らのためにあるんじゃないか?」
「けど、他の迷宮の人たちは違うらしいんだよ」
この近くの迷宮に住んでいる者達は、戦うことが大好きな人種だ。けれど、そんな者達をもってしても、その迷宮の迷宮ボスは何十人と集まって戦わなくては勝てない強さだった。そして、彼らはその迷宮ボスの強さに惚れ込んだ。いっそ神聖視するほどに。
その迷宮ボスと互角にでも戦えるようになるため、彼らは武者修行に出る。できるだけ深い森の奥に。そこには強い魔獣が居ると、彼らは本能的にわかっていたらしい。
この辺りの町の冒険者達は、そんな彼らと遭遇することもあった。これにより、今回の協力体制は取りやすかった。だが、大氾濫の話を聞いた彼らはそれはもう歓喜した。
ここしばらくは特に、そろそろだとそのお祭り騒ぎのような様子を見せていたため、彼らは脳筋というのが広く知られてしまっている。
おかげで、迷宮に住む者達は脳筋だと思われてしまったというわけだ。
「この前会ったのは、なんか……姿が見えない感じだった……めっちゃ動き早いの。そんで、黒いんだ……」
リンディエールに言わせると忍びだ。
「私! 私が見たのはねえっ。すっごい可愛い人! すごく可憐でねっ! 舞い姫様って感じなの!」
とても可憐な踊り子さんの様な人たち。
「おっ、俺が見たのは、子どもだった!」
リンディエールのように、子どもの頃に一気にレベルを上げた弊害で、身体の成長がほぼ止まってるしまっている者達だ。
「私が見たのはねえ。メイドさん!」
プリメラや悠に憧れた者達が、メイド姿をするようになったらしい。
「まあ……俺らもそろそろやるか」
「だな」
「よしっ! 前哨戦! やるぞ!!」
「「「おぉぉぉ!!」」」
こうして、各地で戦いが始まった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「おい……なんか、ザワザワしねえ? 音も……」
空気もざわついている感じもするが、実際に遠くに見える森の方からも音が聞こえている。それは木々のざわめきではなく、明らかにメキメキと木が折れたりする音も混ざっていた。
「ああ……おかしいな……あっちの街道からもなんか……っ」
「何か来るか……?」
「っ、野ネズミか!?」
「虫もだっ」
そろそろ危ないだろうと、上級の冒険者か兵達しか町の外には出ていない。そこで異変を確認したのだ。
誰もが何か近付いてくるという予感を感じて、急いで近くの町に走った。おかしいと思い、森の方を確認しに行っていた者も帰ってくる。
「見てきた! 小動物が一気に森から逃げて来ている! 奥から大きいのが来るぞ!」
「領主様に伝令!! 領城に避難だ! 急げ!」
非戦闘員である一部の者達は、数日前から既に領城に避難している。その領城の地下には、各国の中心にある地下迷宮へ繋がる転移門が設置されており、最終的に対応できないとなれば、全ての国民が中央にある地下迷宮に避難することになっている。
よって、近くの村や集落の者達は、領城のある町に避難が完了していた。
残っているのは、プリエラの里のように、昔から迷宮に住んでいる者達と迎撃に入る冒険者や兵士、貴族達だけだ。
「なあ。あの迷宮に住んでる人達は本当に大丈夫なんか?」
「化け物みたいに強いのは知ってんだろっ。寧ろ、そこのは、強敵に出会いたくて仕方ない、戦闘狂ばっかりだったし! あんなの、今頃祭りだって騒いで……」
防衛ラインで魔獣達がやって来るのを待つ冒険者や兵士達は、次の報告を聞いて納得する。
「っ、迷宮出の者達がっ、森に入って行きます!!」
「「「あ~……」」」
見張り台にいる者達には見えた。まるで、何か神を祀るための踊りのような動きを見せながら、楽しそうに森に入っていく者達が見えたのだ。
「脳筋って、あの人らのためにあるんじゃないか?」
「けど、他の迷宮の人たちは違うらしいんだよ」
この近くの迷宮に住んでいる者達は、戦うことが大好きな人種だ。けれど、そんな者達をもってしても、その迷宮の迷宮ボスは何十人と集まって戦わなくては勝てない強さだった。そして、彼らはその迷宮ボスの強さに惚れ込んだ。いっそ神聖視するほどに。
その迷宮ボスと互角にでも戦えるようになるため、彼らは武者修行に出る。できるだけ深い森の奥に。そこには強い魔獣が居ると、彼らは本能的にわかっていたらしい。
この辺りの町の冒険者達は、そんな彼らと遭遇することもあった。これにより、今回の協力体制は取りやすかった。だが、大氾濫の話を聞いた彼らはそれはもう歓喜した。
ここしばらくは特に、そろそろだとそのお祭り騒ぎのような様子を見せていたため、彼らは脳筋というのが広く知られてしまっている。
おかげで、迷宮に住む者達は脳筋だと思われてしまったというわけだ。
「この前会ったのは、なんか……姿が見えない感じだった……めっちゃ動き早いの。そんで、黒いんだ……」
リンディエールに言わせると忍びだ。
「私! 私が見たのはねえっ。すっごい可愛い人! すごく可憐でねっ! 舞い姫様って感じなの!」
とても可憐な踊り子さんの様な人たち。
「おっ、俺が見たのは、子どもだった!」
リンディエールのように、子どもの頃に一気にレベルを上げた弊害で、身体の成長がほぼ止まってるしまっている者達だ。
「私が見たのはねえ。メイドさん!」
プリメラや悠に憧れた者達が、メイド姿をするようになったらしい。
「まあ……俺らもそろそろやるか」
「だな」
「よしっ! 前哨戦! やるぞ!!」
「「「おぉぉぉ!!」」」
こうして、各地で戦いが始まった。
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