エセ関西人(笑)ってなんやねん!? 〜転生した辺境伯令嬢は親友のドラゴンと面白おかしく暮らします〜

紫南

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18th ステージ

194 丸く縛ったんで

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リンディエールは、一人では心配だと言ってついてきたヒストリアと共に、問題のありそうな国の現状を確認して回っていた。

「これは……よお、あのおっさんら、平気な顔しとったなあ……」

移動するのも大変そうな巨体を持つ王は、三名ほどいた。下品なほど宝石を身に付けて、介助のためというのが大半の補佐を大勢連れていた王達。

その国は他の国よりも明らかに荒廃していた。

「ヒーちゃん。まず、税のチェックや。あと物価」
「ああ。そちらの確認はこっちでやる。リンは畑とか、土地を見て来てくれ」
「ん? ええの? 了解や。なら、ヒーちゃん気ぃ付けてな」
「わかってる」

一応は、今回の大厄災の対策委員の証のようなものはヒストリアもリンディエールも持っているので、入国なども問題はない。大厄災の対応の為ならばと言う条件だ。

しかし、市場調査などは関係ないと思っている可能性は高い。そうなると、邪魔も入るかもしれない。それによる注意は必要だろう。

街中ではその危険性が上がるため、ヒストリアはリンディエールを街から遠ざけることにした。

「暴れるにしてもここではな……」

衛兵に負けるとは思っていないが、反撃するには街中は狭い。人通りが少ないとはいえ、ここでリンディエールを暴れさせるわけにはいかない。

「町の外なら……大穴が空いてもどうにかなるだろう」

そう呟いて、ヒストリアは市場調査に集中することにした。

一方のリンディエールは、ヒストリアの気遣いを察しながらも、農耕地に足を踏み入れていた。

「これは……あかんな。小麦なんぞできっこないやんか。エリィちゃんを連れてくるんやったか……」

農業に詳しい当代の剣聖、エリクイールを連れて来ていれば、詳しく分かったかもしれない。

とはいえ、エリクイールとはそれなりの付き合いがあるリンディエールにも、多少の知識はあった。

「確か……二年前までは、この辺は冷夏で小麦が取れん言うとったはずやけど……」

その冷夏は終わっている。今年もその前の年も天候に問題はなかった。それでも、目の前にある畑の作物や小麦は、この辺りの今の時期で見られるはずの光景とは思えなかった。

「そもそもが、土が痩せとるんやな……カリカリやんか……畑やのおて、踏み固めた道も同じやで……水不足か?」

そのへんも確認だと歩き回る。

「井戸……水位は低そうやな……というか……人が出て来いへんのなんでや?」

人の気配はあるが、家屋から出てくる者がいない。それが不気味だった。

「……町中にも人は少なかったが出歩いとるもんはいた……なら、病とかではないな……どれっ、覗いて……」

適当な家屋の中を覗き込んだリンディエールは、目を丸くして家の入り口に駆け込んだ。

「大丈夫か!?」
「……っ……れ……」

誰だと問われたが、そんなことはどうでもいい。家の中で倒れていたのは母親らしき人と十にも満たない子ども。

状態を素早く確認して声をかける。

「いつから食べとらんの!?」
「っ……から……な……」
「分からんてっ……とりあえず水やな!」

子どもも抱き上げて布団を引っ張り出し、清潔にしてから寝かせる。

水を少しずつ飲ませる内からヒストリアを呼ぶ。すぐに駆けつけたヒストリアは、他の家も確認に行ったようだ。

「あんたのダンナは?」
「……城に……」
「まさか、迷宮? 兵役みたいなことはせんように言うとったのにっ」
「リン! ここら一帯、ほぼ全部だ! 応援を呼ぶ」
「フリュエ修道院に頼むわ!」
「フリュエかっ。分かった!」

フリュエは、悠とプリエラが手がけた修道院のこと。職業訓練所としても運用されている。規律が厳しいのは変わらず、そこでマナーや手に職も付けられるとあって、国中から問題児や迷惑な人達が集められ、日々更生していく場所になっている。

同時に、孤児院として、救護院としての面も持ち、大厄災の折には、怪我人や病人への対応や、親が子どもや動けない者達を保護、養育する役目を担うことになっていた。そのための訓練も行われている。

よって、こうした場合には最適の人材だ。

ヒストリアはすぐに転移門を修道院に開き、人を呼んで来た。中には宰相のクイントの元妻や息子も居る。

「大丈夫ですかっ。喋れますかっ」
「ゆっくり動きましょう。大丈夫です。こちらに体を預けて……そう。遠慮しなくていいですから」

頼りになる人達だ。手際よく運び出していく。そして別人だ。クイントなどは三度見してから、やはり人違いだったと言うほどだ。

「これはあかんで……とりあえず……王族吊るすか」
「そちらの応援も呼ぶぞ。こんな王都の近くの町からしてとなると……遠方は絶望的か?」
「ヒーちゃん、使い魔でチェック頼むわ。状態によっては、隣の国とかに避難か、ここの城んとこの地下迷宮に最初っから突っ込むか」
「ああ……他のこの国の迷宮は放置か」
「一度更地にした方がええやろ。魔素も満遍なく行き渡るで、土も今よりかなり良おなるはずや」
「作物も、迷宮内で育てた方がここより育ちそうだ」
「せやろ? 芋と豆の苗を国で買わせて……騎士や兵士も畑耕させれば、何とかなるやろ」

外に出て国を守れなんて言わない。地上は全て魔獣達に踏み荒らさせて、更地にしてもらう。

飢えた魔獣達は共倒れし、残ったのは元の棲み家へと戻って行くはず。更地になった後、残党だけ狩れば良い。ただし、そうなるまでの時間は長い。

「二年は覚悟して籠ってもらわんとあかんけどな~」
「ほぼ全滅するより良いだろう」
「せやな~。ああっ……他の所も望み薄やな……」
「全部の国をと言うのは、無理だろ」
「はあ……国の頭の程度が知れるなあ」

情報を知り、予測に責任を持って即断できる王は少ない。自分で動き、予測を確信に変えていくことができた王の国は、現在はもう作物が植えられ、避難民達の居住区が整備されている所まで来ている。

徐々に民達の移動も始まっていた。そこから考えれば、この国は手遅れに近い。

「あの巨体を迷宮で転がして魔獣トリモチとかどうやろか」
「ボウリングの玉扱いで良いだろう」
「よし。丸く縛ったんで。終わる頃には小そうなるかもなあ」
「禿げるのが先だな」
「はっはっはっ。毛がない方がやりやすいで。それと、宝石いっぱい付けたままがええかなあ。ゴツゴツして攻撃力ありそうやわ」
「リン……っ、天才か!」
「せやろ? ほな、そういうことで」

この後、本当に王を使い、大玉転がしの要領で魔獣を攻撃、圧死させる方法が取られた。とはいえ、ずっとは無理で、その後は泣きながら前線で戦わせた。

これを他の問題のあった国でも適用し、傲慢な王や貴族が大人しくなったという。

そして、バタバタのひと月を過ごした後。大厄災がやってきた。






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読んでくださりありがとうございます◎



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