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ミッション12 舞台と遠征
496 ち〜らないっ
前世の記憶にあるものよりはまだ優しいのだろうか。精々、ゴリゴリ痛いだけだ。刺さりはしないだろう。一応、頭と顔の当たる場所は布で保護されている。ように見える。よく見れば、足つぼマットに近いかもしれない。
「足つぼマット……作っても良いな……」
拷問具と認識するより、足つぼマットが貼ってあると思った方が精神衛生には良い。ついつい思考が流れる。
しかし、思い出してしまったことがあった。
「待て……確か、試験で回った時に見つけた賢者の資料に拘束器具らしきものが……」
冒険者の三級試験の時、フィルズは国中を回った。これにより、国内にある賢者の遺跡のほとんどを見て回ることができた。
手に入れた全ての資料の確認は後にし、軽くこれがそうだなと見るだけで神へと送っていた。
「一旦、全部預けたはずだが……」
《はい。その拘束器具らしきものの資料と一緒に、こちらのような記載がありました》
「……いや。だからな? 誰から誰に渡った?」
神の下に、全て預けたのだ。容易く人の手には渡らない。だから安心だと思った。
賢者の多くは、憂さ晴らしのように危険な物も時には作り出そうとしていた。実際には完成出来なかったものも多々あり、不完全な完成度で余計に危ないものも幾つか確認している。
そんな研究資料は、神に神界で保管してもらえば、悪用されないと安心して預けていた。はずなのだ。
《リューラ様、キュラス様、ファサラ様から、セイスフィア商会の技巧部に渡されました》
まさかの女神の三柱が許可していた。
「……なんでまた……」
《敵が多くなったら必要になってくるものだからと仰ったそうです》
「おお……」
《今まで見逃されてきた者達も、我々で見つけることが多いため、捕らえられた者も増えます。人件費削減は大事ですよね?》
「だなあ……」
《そのためです》
「なるほど……運ぶ時、捕える時に既に尋問がやりやすいように……」
《その通りです!》
尋問中に責めるのではなく、尋問前に既に心を折っておくということらしい。
因みにエルセリアはこの時、棺ごと魔導車へ積み込まれている。あの棺はゴツゴツしたものは付いていない。枕や敷布は極上らしい。一体何を求めたのか謎だ。否、きっと死者への最期の手向けだろう。エルセリアは生きているが、サービスなのだと思う。
そして、シビル学園長がワクワク顔で痛そうな棺に入ろうとしていた。靴を脱げと隠密ウサギに指導されている。
それよりも気になるのは、何台か、この目に痛い赤の棺を出し入れする隠密ウサギが魔導車に乗り込んだのを見たことだろうか。
学園長が足つぼマットに悶えているのも、フラメラとファリマスが自分たちもと、好奇心いっぱいの表情で足を入れようとしているのも気にしない。持ち物検査している隠密ウサギ達の方が重要だ。
「おい……あれ……何してる?」
《持ち物の最終確認ですが?》
《かくにんだいじ!》
可愛らしい声で可愛らしくここぞとばかりに主張した小さな隠密ウサギ。リサーナは可愛らしいと微笑ましげに見ているが、これにフィルズは目を細める。
「っ、おい。おチビ。お前の設定はより素早く、捕えるべきものを捕える高い技量を持った特別個体。そのはずだよな?」
《……ちらな~い》
「だから、そんな設定してねえんだって! 寧ろスピじいとヨウルじいのえげつない技も仕込まれた最強部隊の一体のはずなんだが? 最適化がいけなかったのか?」
《ち~らないっ》
「あっ、おい!」
《いっきゅも~んっ》
ぴょんぴょんと何歩か飛び跳ねて魔導車の方に向かった後、ふっと姿を消した。
「「「「「えっ!?」」」」」
「だよなあ……」
「え? え? 消えましたわよ!?」
「消えたよね!?」
「ふって! ふって消えた!」
子ども達が大興奮しているのは分かる。
そんな様子を見て、ファリマスは感心していた。学園長とフラメラが足つぼマットに悶えている。ファリマスは寧ろ気持ちがいいと平気そうだ。
「おやおや。これはまたすごい子を作ったものだねえ。あの子も連れて行くなら安心だ」
「いやいやいやっ。さっき坊ちゃん何て言ったんです!? 最強部隊!? このウサギ様よりも!?」
クルシュは真っ青になって動揺している。
「さすがだぜ。可愛らしさで動揺も誘い、能力で驚愕させる……やっぱ最強だなっ」
スピークは満足そうだった。これは収拾がつかない。
「……行くか……」
無理にでも出発することにしたフィルズだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
出版デビュー20冊目の第8巻
引き続きよろしくお願いします!
もちろん、この機会に前作なども
チェックよろしくお願いします!
「足つぼマット……作っても良いな……」
拷問具と認識するより、足つぼマットが貼ってあると思った方が精神衛生には良い。ついつい思考が流れる。
しかし、思い出してしまったことがあった。
「待て……確か、試験で回った時に見つけた賢者の資料に拘束器具らしきものが……」
冒険者の三級試験の時、フィルズは国中を回った。これにより、国内にある賢者の遺跡のほとんどを見て回ることができた。
手に入れた全ての資料の確認は後にし、軽くこれがそうだなと見るだけで神へと送っていた。
「一旦、全部預けたはずだが……」
《はい。その拘束器具らしきものの資料と一緒に、こちらのような記載がありました》
「……いや。だからな? 誰から誰に渡った?」
神の下に、全て預けたのだ。容易く人の手には渡らない。だから安心だと思った。
賢者の多くは、憂さ晴らしのように危険な物も時には作り出そうとしていた。実際には完成出来なかったものも多々あり、不完全な完成度で余計に危ないものも幾つか確認している。
そんな研究資料は、神に神界で保管してもらえば、悪用されないと安心して預けていた。はずなのだ。
《リューラ様、キュラス様、ファサラ様から、セイスフィア商会の技巧部に渡されました》
まさかの女神の三柱が許可していた。
「……なんでまた……」
《敵が多くなったら必要になってくるものだからと仰ったそうです》
「おお……」
《今まで見逃されてきた者達も、我々で見つけることが多いため、捕らえられた者も増えます。人件費削減は大事ですよね?》
「だなあ……」
《そのためです》
「なるほど……運ぶ時、捕える時に既に尋問がやりやすいように……」
《その通りです!》
尋問中に責めるのではなく、尋問前に既に心を折っておくということらしい。
因みにエルセリアはこの時、棺ごと魔導車へ積み込まれている。あの棺はゴツゴツしたものは付いていない。枕や敷布は極上らしい。一体何を求めたのか謎だ。否、きっと死者への最期の手向けだろう。エルセリアは生きているが、サービスなのだと思う。
そして、シビル学園長がワクワク顔で痛そうな棺に入ろうとしていた。靴を脱げと隠密ウサギに指導されている。
それよりも気になるのは、何台か、この目に痛い赤の棺を出し入れする隠密ウサギが魔導車に乗り込んだのを見たことだろうか。
学園長が足つぼマットに悶えているのも、フラメラとファリマスが自分たちもと、好奇心いっぱいの表情で足を入れようとしているのも気にしない。持ち物検査している隠密ウサギ達の方が重要だ。
「おい……あれ……何してる?」
《持ち物の最終確認ですが?》
《かくにんだいじ!》
可愛らしい声で可愛らしくここぞとばかりに主張した小さな隠密ウサギ。リサーナは可愛らしいと微笑ましげに見ているが、これにフィルズは目を細める。
「っ、おい。おチビ。お前の設定はより素早く、捕えるべきものを捕える高い技量を持った特別個体。そのはずだよな?」
《……ちらな~い》
「だから、そんな設定してねえんだって! 寧ろスピじいとヨウルじいのえげつない技も仕込まれた最強部隊の一体のはずなんだが? 最適化がいけなかったのか?」
《ち~らないっ》
「あっ、おい!」
《いっきゅも~んっ》
ぴょんぴょんと何歩か飛び跳ねて魔導車の方に向かった後、ふっと姿を消した。
「「「「「えっ!?」」」」」
「だよなあ……」
「え? え? 消えましたわよ!?」
「消えたよね!?」
「ふって! ふって消えた!」
子ども達が大興奮しているのは分かる。
そんな様子を見て、ファリマスは感心していた。学園長とフラメラが足つぼマットに悶えている。ファリマスは寧ろ気持ちがいいと平気そうだ。
「おやおや。これはまたすごい子を作ったものだねえ。あの子も連れて行くなら安心だ」
「いやいやいやっ。さっき坊ちゃん何て言ったんです!? 最強部隊!? このウサギ様よりも!?」
クルシュは真っ青になって動揺している。
「さすがだぜ。可愛らしさで動揺も誘い、能力で驚愕させる……やっぱ最強だなっ」
スピークは満足そうだった。これは収拾がつかない。
「……行くか……」
無理にでも出発することにしたフィルズだった。
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