趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

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ミッション13

528 だから応用利かねえんだよ

今回の王宮での懇親会に、フィルズは正式に参加する必要があった。

「これが卒業の認定章なんだね? すごい細かい……」

フィルズが行くならと、二年生になったセルジュも一緒に参加することになった。一仕事終えてからと言ってあったので、開始時間ギリギリに王宮に着く予定だ。

今は馬車で王宮に急いでいる。乗っているのは、セルジュだけだ。

「今年のは特に手が込んでるみたいだな。まあ、俺らのせいらしいけど」
「卒業認定試験での合格が初なんでしょ? リュブランもマグナもすごいよ!」
「ああ」

今回、学園に在学することなく、試験を受けて卒業認定の資格を得たのは、フィルズとリュブラン、そして、無理やりリュブランと二人で受けさせたマグナだ。

「やっぱ、マグナも受けさせて正解だったな」
「マグナって、最近は特に気配消すのが上手いから、リュブランの陰に隠れて分からない時が多いけど、結構優秀だよね?」
「まあな。ヴィランズが養子にするくらいだし」
「それだよ! 知らなかったんだけどっ!」
「あいつ、話さんしな。それにちょい鈍感だ。普通にヴィランズに跡継がせようと狙われてるけど、それにも気付いてなさそうだし」

マグナは、生い立ち故か、褒められること、評価されることに未だ慣れていない。自分が強いはずがないとか、勉強ができるはずがないと思い込んでいるのだ。結果が出てもたまたまだろうと、実力として認めない。そろそろ、ファリマスやリーリルが言い聞かせることになるだろう。

「リュブランの後ろに上手く隠れすぎだよ……三級試験の話も出てるみたいだし」
「だな」

リュブランの実力が目立つため、マグナも三級間近だと知る者は少ない。だが、実際に二人でパーティを組んで冒険者として依頼を受けるのを見れば、支え合う抜群の連携を目にすることができるだろう。マグナも間違いなく実力を持っているということだ。

「そういえば、フィルは二級だって?」
「どっから聞いた?」
「ファリマス様。一級もすぐだろうねって、嬉しそうに笑ってた」
「そっか。まあ、リュブラン達にも追いつかれそうだし、さっさと上がるよ」
「うん。三級は降格もあるけど、二級に上がるのに期間とかは特にないんだってね」
「ああ。三級が境目なんだよ。そこまでか、上に行けるかのな」

貴族の口車に乗って、容易く転がされるような者は、その先に行けない。三級までは、何よりも実力がものを言う。しかし、三級に上がってからは中身が重要だ。

英雄とまではいかなくても、頑張れば手が届くかもしれないと思えるヒーローでなくてはならない。だから、査定も厳しくなる。

大半は、三級になればなった者勝ちと思って油断する。そこで調子に乗って落とされる。降格した者は、まず再び上がることはできない。

「確か、課外学習の時にやらかした冒険者の人たち、四級に落とされたんだよね? 恨まれたりしない? 捕まえたの、フィル達でしょ?」
「あれか。あいつらなら、ばあちゃんにシメられてカルトナの自警団にこの前放り込まれたぜ?」
「カルトナって、リュブランの? 自警団?」
「ああ。安定した収入の方が安心だからとか言ってた。なんか、金で釣られたのが余程堪えたみたいだな。『最低限のお金でお願いします!!』って土下座された」
「……どんな指導を受けたのか気になるね……」
「だな……」

ファリマスがどのようにシメたのかは分からない。分からせ方がとても気になるが、フィルズもセルジュも気になっても、ファリマスを前にして実際に聞くのは怖くてできなさそうだ。

そんな話をしている間に、王宮に着いた。

会場に入ると、すぐに顔見知りの学園の生徒達に囲まれた。

「フィルさんっ。お久しぶりです!」
「あのっ。フィルさん……その紀章……」
「同じですよね? どうして」

疑問に思うのは当然だろう。年齢までは確認しないが、学園に通っていたということはないのだから、不思議に思って当たり前だ。

「ああ。リュブランもマグナもいるし丁度いい。俺たちは、卒業認定試験を受けて合格したんだ」
「「「えっ!?」」」
「あの、試験を全部受けて九十点以上取らないといけないって試験ですか?」

生徒会長でもあった男爵子息。今は二つ上に陞爵して伯爵子息になっている彼が、驚愕しながら問いかける。

「そうだ。来年からは、貴族籍のある者以外も、試験を受けられるようになる。平民も見下してると、ヤバいぜ?」
「っ、そんなっ」
「あの試験で九十点なんてっ、無理よ!」
「あり得ない!」

無理無理と言う生徒達。そこに、シビル学園長が顔を出した。

「おやおや。実際に彼らはあなた方が五十点がやっとのものでも九十点以上を取りましたよ? それも独学で勉強してです。あなた方は、教師もついているのに、どうなっているんでしょうねえ」
「「「「「っ……」」」」」

途端に子ども達は黙ってしまった。

「学園長……祝いの席だぞ」
「いやあ。だってねえ? リュブランくんやマグナくんの勉強も、あなたが見たんでしょう? フィル君の言うことは聞く生徒達も多いですし、最近は、教師達がぜひとも教師として来てもらってくれと煩いんですよ? 毎日のように嘆願が……」
「え? 嫌だし」
「ですが、フィル君。全部の試験で満点でしたし」
「「「「「ええっ!?」」」」」

これには、周りで聞き耳を立てていた大人達も驚く。聞いていたことがしっかり分かる表情を見せていた。

「そりゃあ、答えがない問題でなければ正解できるだろ。出題範囲なんてきっちり決まってるし。もう少し意地の悪い問題もあって良かったよな。引っ掛け問題くらい出してくれよ」
「間違えさせようなんて考えて問題作りませんよ!?」
「だから応用利かねえんだよ」
「……なるほど」
「「「「「ええっ!?」」」」」

学園長が納得したことで、今後引っ掛け問題や応用問題が出るようになる。

そんな中、懇親会が始まった。








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