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ミッション13
530 勇気ある令嬢だ
卒業生一人一人というのは、とても時間がかかる。
「叔父の愚行を止められなかったことを謝罪すると共に、新たな家門を継ぐ者として誠心誠意尽くして参ります」
「期待している」
「はい!」
ファスター王だけでなく、多くの貴族達も注目しているのは、本来ならば当主になるはずのなかった者達が新たな当主となることもあるからだ。
「おや。あの子は……騎士になる子ではなかったかな」
「本当だっ。騎士達が期待していた子では?」
「家を継ぐことになったようですねえ」
「なんてことだ……」
「是非養子に迎えたかったのだが……」
将来有望と見ていた者達も、予定とは違った道に向かっていく場合もある。
女性達も、嫁入りするはずだった家がなくなってしまったり、逆に婿入りしてもらわなくてはならなくなったりと戸惑わせてしまった。
「夫となる者と共に、これまで苦しめてしまった領民達へ、誠意を持って向き合って参ります」
「風当たりは強いだろうが、頑張ってほしい」
「努力いたします」
それでも、彼女達は強い。一年にも満たない時間ではあったが、セイスフィア商会で学んだことは生かされており、何よりも精神面でも強くなった。
もちろん、それだけではない。護身術を教えたことで、そうした体を動かすことに目覚めた令嬢達が一部存在した。
「わたくしは、騎士を目指したく思っております!この国のため、そして、女性の新たな道を作るため、精進して参ります!」
「う、うむ……ご両親ともよく話し合ってほしい。だが、期待している」
「はい!」
こんなことを言うと思っていなかった両親達がひっくり返っているが、騎士や冒険者になると宣言した令嬢達の表情は輝いていた。
「わたくしは、可能ならば文官の試験を受けたく思っております。女性達が生きやすい世の中にすれば、今よりももっと、子ども達はすくすくと育ちましょう。男性では拾えない女性の声を、王宮に届けたく思います」
「確かに……民の半分は女だ。その半分の意見を聞かぬのはおかしな話だな。女性文官の採用、よくよく考えよう。次の議題にのせることにする。待っているといい」
「っ! ありがとうございます!」
少し前ならば、頭の固い者達が、生意気なと悪態をついただろう。だが、風通しもよくなり、多くの自分さえ良ければ良いと考える者達が減ったことで、今年から女性騎士についても採用された。それならばと女性文官もとの意見も通りつつあるのだ。
「なんとっ。勇気ある令嬢だ」
「ええ。ええ。あの様に陛下の前で堂々と……令嬢達がなんとも眩しいことだ」
「セイスフィア商会で色々と学んだようですなあ」
「あの騎士を目指す令嬢は、この前、悪漢をノしておりましたぞ。見事な身のこなしで、うちの次男坊が見惚れておりました」
「おやおや。堅物と有名な令息が、初恋ですかな?」
「ええ。そのようです」
「はっはっはっ。いやあ、いいですなあ。あの辺も、先ほどの令嬢に見惚れておるわ」
「なんとも初々しいですなあ」
今まで女性に見向きもしなかった者達が、はっきりと自身の思いを口にし、自分で道を開こうとする令嬢達の輝きにやられたようだ。
婚約者はいるのかとか色々と聞こえる。
そして、そんな令嬢達に感化される女性もいる。
「……お父様。私……どうせ結婚できないなら、彼女達みたいに国に仕えるわ」
「っ、な、なんだって!? い、いや、た、確かにお前は行き遅れっ、じゃないっ、ちょっと男運がなかっただけだ。きっとお前が幸せになる相手が……」
「相手がいなければ、私は幸せになれないとお父様は言いたいの?」
「え……」
「だってそういうことでしょう? けど、結婚しても幸せになれるかどうかなんて分からないじゃない。なら、私はやりたいことをやるわ! そのやりたいことで国の役に立ったら、きっと幸せだわ!」
キラキラと目を輝かせるその女性は、確かに年齢的には二十代も後半に入るという頃。ここには、結婚相手を探すために来たはずだ。未婚の男性達をチェックし、その人達と交流するつもりだっただろう。
「そ、それは……」
「私、あの子達とお話ししてくるわ」
「え? ちょっ……」
「あなた。いいではありませんか。あんな生き生きとしたあの子を見るなんて……何年振りかしら……」
「っ……そうだな……孫は……諦めるか……」
「あら。まだ分かりませんわよ? ですが、無理に作るものでもありませんもの。案外、思わぬタイミングで結婚を決めてくるかもしれませんわよ?」
「そ、そうだな……」
男親は心配そうだが、夫人達はかなり肯定的だ。女性だからわかるものもある。
「……私もやってみようかしら……」
「え!?」
「だって。あなたも王宮で働いているでしょう? 一緒に仕事場に向かうとか、楽しそうだわ」
「っ、一緒に出勤……っ」
「娘も手を離れていますし、平民はそれが普通ですわよ? 子育てが済んでから、働きに出るというのは。それが好きなことなら、尚よしですわねっ」
「う、うん……一緒にか……っ、うん。いいね!」
「ふふふっ。もう一度学び直すのも楽しそうですわ」
「そうだねっ。分からない所があったら教えるよ!」
「まあっ」
なんだか夫婦仲が良くなる所もあるようだ。
そして、そんな中、ようやく最後の卒業生の挨拶が終わり、リュブラン、マグナ、フィルズが呼ばれた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
今年もよろしくお願いします!
お正月のお暇潰しに他作品や読み返し
是非どうぞ◎
ピッコマなどで前書籍化作品も読めるようです。
そちらも是非!
「叔父の愚行を止められなかったことを謝罪すると共に、新たな家門を継ぐ者として誠心誠意尽くして参ります」
「期待している」
「はい!」
ファスター王だけでなく、多くの貴族達も注目しているのは、本来ならば当主になるはずのなかった者達が新たな当主となることもあるからだ。
「おや。あの子は……騎士になる子ではなかったかな」
「本当だっ。騎士達が期待していた子では?」
「家を継ぐことになったようですねえ」
「なんてことだ……」
「是非養子に迎えたかったのだが……」
将来有望と見ていた者達も、予定とは違った道に向かっていく場合もある。
女性達も、嫁入りするはずだった家がなくなってしまったり、逆に婿入りしてもらわなくてはならなくなったりと戸惑わせてしまった。
「夫となる者と共に、これまで苦しめてしまった領民達へ、誠意を持って向き合って参ります」
「風当たりは強いだろうが、頑張ってほしい」
「努力いたします」
それでも、彼女達は強い。一年にも満たない時間ではあったが、セイスフィア商会で学んだことは生かされており、何よりも精神面でも強くなった。
もちろん、それだけではない。護身術を教えたことで、そうした体を動かすことに目覚めた令嬢達が一部存在した。
「わたくしは、騎士を目指したく思っております!この国のため、そして、女性の新たな道を作るため、精進して参ります!」
「う、うむ……ご両親ともよく話し合ってほしい。だが、期待している」
「はい!」
こんなことを言うと思っていなかった両親達がひっくり返っているが、騎士や冒険者になると宣言した令嬢達の表情は輝いていた。
「わたくしは、可能ならば文官の試験を受けたく思っております。女性達が生きやすい世の中にすれば、今よりももっと、子ども達はすくすくと育ちましょう。男性では拾えない女性の声を、王宮に届けたく思います」
「確かに……民の半分は女だ。その半分の意見を聞かぬのはおかしな話だな。女性文官の採用、よくよく考えよう。次の議題にのせることにする。待っているといい」
「っ! ありがとうございます!」
少し前ならば、頭の固い者達が、生意気なと悪態をついただろう。だが、風通しもよくなり、多くの自分さえ良ければ良いと考える者達が減ったことで、今年から女性騎士についても採用された。それならばと女性文官もとの意見も通りつつあるのだ。
「なんとっ。勇気ある令嬢だ」
「ええ。ええ。あの様に陛下の前で堂々と……令嬢達がなんとも眩しいことだ」
「セイスフィア商会で色々と学んだようですなあ」
「あの騎士を目指す令嬢は、この前、悪漢をノしておりましたぞ。見事な身のこなしで、うちの次男坊が見惚れておりました」
「おやおや。堅物と有名な令息が、初恋ですかな?」
「ええ。そのようです」
「はっはっはっ。いやあ、いいですなあ。あの辺も、先ほどの令嬢に見惚れておるわ」
「なんとも初々しいですなあ」
今まで女性に見向きもしなかった者達が、はっきりと自身の思いを口にし、自分で道を開こうとする令嬢達の輝きにやられたようだ。
婚約者はいるのかとか色々と聞こえる。
そして、そんな令嬢達に感化される女性もいる。
「……お父様。私……どうせ結婚できないなら、彼女達みたいに国に仕えるわ」
「っ、な、なんだって!? い、いや、た、確かにお前は行き遅れっ、じゃないっ、ちょっと男運がなかっただけだ。きっとお前が幸せになる相手が……」
「相手がいなければ、私は幸せになれないとお父様は言いたいの?」
「え……」
「だってそういうことでしょう? けど、結婚しても幸せになれるかどうかなんて分からないじゃない。なら、私はやりたいことをやるわ! そのやりたいことで国の役に立ったら、きっと幸せだわ!」
キラキラと目を輝かせるその女性は、確かに年齢的には二十代も後半に入るという頃。ここには、結婚相手を探すために来たはずだ。未婚の男性達をチェックし、その人達と交流するつもりだっただろう。
「そ、それは……」
「私、あの子達とお話ししてくるわ」
「え? ちょっ……」
「あなた。いいではありませんか。あんな生き生きとしたあの子を見るなんて……何年振りかしら……」
「っ……そうだな……孫は……諦めるか……」
「あら。まだ分かりませんわよ? ですが、無理に作るものでもありませんもの。案外、思わぬタイミングで結婚を決めてくるかもしれませんわよ?」
「そ、そうだな……」
男親は心配そうだが、夫人達はかなり肯定的だ。女性だからわかるものもある。
「……私もやってみようかしら……」
「え!?」
「だって。あなたも王宮で働いているでしょう? 一緒に仕事場に向かうとか、楽しそうだわ」
「っ、一緒に出勤……っ」
「娘も手を離れていますし、平民はそれが普通ですわよ? 子育てが済んでから、働きに出るというのは。それが好きなことなら、尚よしですわねっ」
「う、うん……一緒にか……っ、うん。いいね!」
「ふふふっ。もう一度学び直すのも楽しそうですわ」
「そうだねっ。分からない所があったら教えるよ!」
「まあっ」
なんだか夫婦仲が良くなる所もあるようだ。
そして、そんな中、ようやく最後の卒業生の挨拶が終わり、リュブラン、マグナ、フィルズが呼ばれた。
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読んでくださりありがとうございます◎
今年もよろしくお願いします!
お正月のお暇潰しに他作品や読み返し
是非どうぞ◎
ピッコマなどで前書籍化作品も読めるようです。
そちらも是非!
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