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ミッション13
531 全然違う……
宰相であるリゼンフィアが喉の調子を確認してからマイクを手に持つ。ニヤケそうになるのを必死で堪えながら口を開いた。
「次に。初の特例での学園卒業認定試験合格者。三名、前にっ」
リュブランとフィルズ、マグナはゆったりとした歩みで、王の前に進み出た。
「今回は初ということで、特別に陛下よりお言葉をいただく」
これからは、平民もこうして特例での試験が受けられるようになるため、今回、それも想定したやり方となっている。
さすがに貴族の子ども達のように、王の前で挨拶をするなどという気の重くなるようなことはさせられない。平民にとっては罰ゲーム並みに困ることでしかないのだから。
もちろん、卒業資格を得たということは、王宮で働くことも視野に入っているため、貴族に対する挨拶の仕方など、マナーや爵位を含めた貴族の教養も試験で実技試験としてある。よって、挨拶できないというわけではない。
フィルズやリュブラン、マグナは、きちんと王の前で横一列に並んで膝をつき、頭を下げていた。こればかりは決まりのようなものだ。無視はできない。寧ろ、ここでこれが出来なければ、王宮に上がった時に周りからの『常識がないんだな』という蔑むような視線を避けられなくなってしまう。
因みに、このフィルズ達が呼ばれる瞬間から、広場に用意された巨大スクリーンやセイスフィア商会のモニターには、今この場の映像が映っている。
「今この時、この場を民達も見ている。リュブラン」
「はい」
「卒業認定取得おめでとう。そして、すまなかった……」
「……え……」
民達もこれにはポカンとする。王都の住民達は、リュブランが第三王子と知らない者が大半だった。
「息子であるお前を、私は一度捨てた……お前は折れず、真っ直ぐに国の事を考えてくれたというのに……我が息子リュブランに、成人後、元キートル領を与える。現在は伯爵位だが、正式に家門を継いだなら、公爵家とする!」
「「「「「おおっ!」」」」」
ざわりと空気が振動した。民達も、驚いているようだ。そもそも、リュブランを第三王子だと知って、驚いている者も多い。
「次にマグナ」
「はい」
「卒業認定取得おめでとう。お前にも苦労をかけた。そして、リュブランを支えてくれたことを感謝する。冒険者三級も近いと聞いている。是非とも騎士となることを選んで欲しい。だが、無理強いはしない。成人後は子爵位を授ける。望むならば、家門の再興も認めよう」
「ありがとうございます」
マグナは常に補佐に甘んじていたため、どの様な人物なのか、誰の子なのかも気にされなかった。そのため、今になって貴族達が騒めいた。
「誰だ?」
「マグナ……マグナ? 聞いたことがあるような気もする……」
「ああ。アレだ。公爵領になった、辺境伯領の隣の元男爵家の子だ。まあ、見た目がかなり変わったようだがな」
大人達は、冷静に現状の把握をする一方、子息達が目を丸くしていた。
「っ、まさか、あのデブ!?」
「おい。何を言って……あ……ま、まさかっ」
少し前のマグナの姿を知っていた者達もいるようだ。そうした者達の大半は、驚愕していた。
「背、背の高さが……全然違う……」
「うそよ……」
震えるほど衝撃を受けているのは、女性が多かった。
「わ、わたし……婚約のお話を、もらったことが……っ」
「わ、わたくしも……」
これが理由のようだ。惜しいことをしたということなのだろう。
「……はあ……今のお前では、釣り合わぬな」
「諦めなさい。あれほどの言葉を陛下からいただく青年など、無理だろう……」
そんな女性達の父親達は、諦めさせる方へ動いた。一度断ったのだ。そして、その時は父親や母親達も、うちの娘とは釣り合わないと思っていた。今や逆の意味で釣り合わない。
「三級間近か……素晴らしい才能があるようだな」
「あの体付き。あの年でとは恐れ入る」
「是非ともうちの騎士団に!」
「お前……すぐに抜かれるぞ」
「え……」
騎士達の目は期待に満ちたものが多かった。今や、マグナをバカにする者はどこにもいない。
「次に、フィルズ」
呼ばれたフィルズは、ゆっくりと顔を上げた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
来週8日に新刊出荷となります!
9日以降に店には順次並んでいきます。
またSS付きで販売される本屋もありますので
チェックよろしくお願いします◎
「次に。初の特例での学園卒業認定試験合格者。三名、前にっ」
リュブランとフィルズ、マグナはゆったりとした歩みで、王の前に進み出た。
「今回は初ということで、特別に陛下よりお言葉をいただく」
これからは、平民もこうして特例での試験が受けられるようになるため、今回、それも想定したやり方となっている。
さすがに貴族の子ども達のように、王の前で挨拶をするなどという気の重くなるようなことはさせられない。平民にとっては罰ゲーム並みに困ることでしかないのだから。
もちろん、卒業資格を得たということは、王宮で働くことも視野に入っているため、貴族に対する挨拶の仕方など、マナーや爵位を含めた貴族の教養も試験で実技試験としてある。よって、挨拶できないというわけではない。
フィルズやリュブラン、マグナは、きちんと王の前で横一列に並んで膝をつき、頭を下げていた。こればかりは決まりのようなものだ。無視はできない。寧ろ、ここでこれが出来なければ、王宮に上がった時に周りからの『常識がないんだな』という蔑むような視線を避けられなくなってしまう。
因みに、このフィルズ達が呼ばれる瞬間から、広場に用意された巨大スクリーンやセイスフィア商会のモニターには、今この場の映像が映っている。
「今この時、この場を民達も見ている。リュブラン」
「はい」
「卒業認定取得おめでとう。そして、すまなかった……」
「……え……」
民達もこれにはポカンとする。王都の住民達は、リュブランが第三王子と知らない者が大半だった。
「息子であるお前を、私は一度捨てた……お前は折れず、真っ直ぐに国の事を考えてくれたというのに……我が息子リュブランに、成人後、元キートル領を与える。現在は伯爵位だが、正式に家門を継いだなら、公爵家とする!」
「「「「「おおっ!」」」」」
ざわりと空気が振動した。民達も、驚いているようだ。そもそも、リュブランを第三王子だと知って、驚いている者も多い。
「次にマグナ」
「はい」
「卒業認定取得おめでとう。お前にも苦労をかけた。そして、リュブランを支えてくれたことを感謝する。冒険者三級も近いと聞いている。是非とも騎士となることを選んで欲しい。だが、無理強いはしない。成人後は子爵位を授ける。望むならば、家門の再興も認めよう」
「ありがとうございます」
マグナは常に補佐に甘んじていたため、どの様な人物なのか、誰の子なのかも気にされなかった。そのため、今になって貴族達が騒めいた。
「誰だ?」
「マグナ……マグナ? 聞いたことがあるような気もする……」
「ああ。アレだ。公爵領になった、辺境伯領の隣の元男爵家の子だ。まあ、見た目がかなり変わったようだがな」
大人達は、冷静に現状の把握をする一方、子息達が目を丸くしていた。
「っ、まさか、あのデブ!?」
「おい。何を言って……あ……ま、まさかっ」
少し前のマグナの姿を知っていた者達もいるようだ。そうした者達の大半は、驚愕していた。
「背、背の高さが……全然違う……」
「うそよ……」
震えるほど衝撃を受けているのは、女性が多かった。
「わ、わたし……婚約のお話を、もらったことが……っ」
「わ、わたくしも……」
これが理由のようだ。惜しいことをしたということなのだろう。
「……はあ……今のお前では、釣り合わぬな」
「諦めなさい。あれほどの言葉を陛下からいただく青年など、無理だろう……」
そんな女性達の父親達は、諦めさせる方へ動いた。一度断ったのだ。そして、その時は父親や母親達も、うちの娘とは釣り合わないと思っていた。今や逆の意味で釣り合わない。
「三級間近か……素晴らしい才能があるようだな」
「あの体付き。あの年でとは恐れ入る」
「是非ともうちの騎士団に!」
「お前……すぐに抜かれるぞ」
「え……」
騎士達の目は期待に満ちたものが多かった。今や、マグナをバカにする者はどこにもいない。
「次に、フィルズ」
呼ばれたフィルズは、ゆっくりと顔を上げた。
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