趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

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ミッション13

535 可愛らしいわあ

メルナは、ファスター王とフラメラが居る場所からは五メートルほど離れた場所、会場の中央辺りで床に座らせられる。

肩を両脇に立つ騎士に押さえつけられるようにして、無理やり座らされた。その顔は悔しそうに醜く歪んでいる。

リゼンフィアが咳払いをして気持ちを切り替えてから告げる。

「既に家門は取り潰しているため、現在の身分は平民となっています。元、第一王妃メルナ。調べにより、第二王妃を毒殺した犯人であることは明白となった。認めるか?」
「っ、認めるかですって? 認めなくたって変わらないんでしょう? ふんっ。そうよ! あいつは、昔から気に入らなかったのよっ! 元平民のくせにっ! なにが白薔薇の姫よ! 平民ごときが、薔薇に例えられるなんて何様よっ!」
「「「「「……っ」」」」」

叫ぶように第二王妃を貶すような言葉を吐くメルナ。これだけでも自分勝手な言い分で嫌っていたのがよく分かる。

第二王妃は、赤子の頃に何者かに攫われ、平民として育ったという過去があった。優しい宿屋の老夫婦に拾われた第二王妃は、セレーナと名乗っていた。そこで十才まで育ち、実家の伯爵家が発見して生家に戻り、名を本来のミルフィリアに変え、平民として暮らしていたセレーナは消えた。

だが、幼少期を平民として暮らしたのは確かだった。それでも、第二王妃はそれを全く感じさせないほど、マナーや教養も完璧だった。だから、過去を知っていても口に出す者はいない。そういう話だったのだが、メルナはかなり愚かなようだ。

リゼンフィアは聞くに耐えないと顔を顰めながら問う。

「それが理由か?」
「ははっ。それだけな訳ないでしょう? 全部よ全部! 全部気に入らない! 双子を産んだことも、誰かれかまわず愛想よく笑いかけるところも! 元平民ごときがっ、私よりも優遇されるのを許せるわけないでしょうっ!! 侯爵令嬢である私よりも上に行くなんて絶対にあってはならないわっ! 大人しく地を這いずり回っていればいいのよ!!」

言ってやったぞという満足げな顔をするメルナ。髪を振り乱しながら訴えるその様は、見苦しい。周りを囲む貴族達は顔を背けるほどだ。

映像で観ていた民達も、これはないわと呆れ顔。貴族にバカにされるのはそう珍しいことではないため、腹を立てる者はそういない。だが、思うことは同じだ。

「あれが、慈悲深い王妃って言われてた人?」
「ただのヤベエ勘違い女じゃん」
「何もできない、何もしない貴族にはありがちなやつ」
「あんなのが王妃とかないわ」
「「「「「うん」」」」」

『アレがうちの国の王妃だったの? やべえじゃん』という結論に至るのは当然の流れだった。

そんな中でフラメラが椅子から立ち上がり、前に立ちはだかっているファスター王を避けてメルナの方に歩き出す。

「あんたは今、その平民だけど? あんたの言い分を通すなら、今現在平民で、その上判決を待ってる罪人が……私よりも大きな声出してんじゃないわよ。あと、楽して座り込んでるなんていい度胸ね。膝をつきなさい! 逆立ちさせるわよっ!」
「いや、逆立ちはねえわ……」
「逆立ちできるとは思えません……」

思わずフィルズとリュブランはツッコんだ。これにフラメラは腕を組み、少し胸を張って自慢げに言う。

「私は出来るようになったわっ」

それはすごいと、民達の方は褒め言葉が飛び交う。得意げな顔がとても微笑ましい。

「アレが、毒婦と言われた第三王妃だってよ」
「ないわ~。ただ、ああやって、ちょっと偉そうに言ってみただけじゃない? きっと、内容は可愛らしいのよ」
「メルさんが第三王妃なあ……ツンケンしてるから誤解されただけと見た」
「可愛いらしいわあ」
「うんうん」

フラメラがツンデレなのはもう多くの者が知っていた。ちょっと背伸びしようとする所が可愛いと年上の女性達には人気がある。貴族からすれば偉そうで気に入らないとなるが、平民からすれば見栄っ張りな女の子としか思えないという、ちょっとした見解の違いだ。

お陰で概ねフラメラは王妃として認められていた。何と言っても、王であるファスター王が惚れているのだ。応援しているし、文句などない。

そして、たまに見られるリュブランとの言い合いはセイスフィア商会では人気の見せ物だ。リュブランが息子だと知る者も多い。最初は驚愕するが、世話焼きな息子が羨ましいと好意的に見守る人ばかりだった。

今回も負の感情が溢れ出しそうな断罪の場の映像なのに、もはやただの見せ物にしか思えなくなっていた。住民達は大盛り上がりしているし、貴族達もワクワクしている。

「今やろうとしてはダメですからね? その格好でしないでくださいよ? あと、ツライ姿勢取らせたいなら……コレありますけど」
「なんで持ってるんだ……」
「いいわね」

リュブランが持っていたのは、足ツボマットだった。






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