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ミッション13
549 ……見届けます
パンフレットは大事だ。しかし、どうしても邪魔になる。そこで作ったのがA4サイズより一回り大きい紙を縦半分に折って袋にし、上の方に指を引っ掛けられる穴を開けたもの。
イメージとしては千歳飴の長細い袋だ。当然、その袋には、宣伝広告つき。
中にはB5サイズの縦半分になった冊子。パンフレットとセイスフィア商会の宣伝広告が入っている。
ゆったりとした広さの座席の背の裏には、手荷物をかけられるフックがあり、そこにも掛けられるので立ったり座ったりしても落ちない。とても大事だ。
「せっかくもらったパンフレットが邪魔とか、嫌な気分になるんだよな~。ついつい握りしめて折り目がついたり、汗で湿ったりすると記念に取っとくってのもなんか……ってならないように考えた!」
「普通、そこまで気を回さないよ? 本当に凝り性だよね」
「え? リザフトはそういう所が良くて俺を選んだんじゃねえの?」
「そうでした」
フィルズは今回、リザフトやリューラ達と、特別席で観劇することになっていた。客の入りを見ながら拘りポイントをリザフトに説明していたのだ。リザフトだけ先に来て落ち着かなかったからということもある。因みに、姿を見られても違和感がないよう、リザフトの装いは貴族のようなフォーマルなものだ。これはリニのデザインで、いつもより落ち着いた人に見える。
「この袋いいよねっ。すごく記念になる。後ろ側、チケットを拡大したやつだよね? 日にちも時間も入ってる。座席番号は書き込めそうだし」
公演のチケットは、一般的な横長のもので作った。特別にデザインしたオシャレなチケットになっている。そして、半券を切ってこちらでカウントもできるようにしてある。それをそのまま拡大印刷したものが袋の片面にある。今後もチケットが特別なものという印象を持たせられるだろう。
「持って帰りたいって思われないと、その辺に捨てられるじゃん」
「ゴミ問題まで考えちゃった!?」
「普通に考えるけど? ゴミをその辺に放っていく人の気が知れんけどさ~」
「あ~、ね。ポイ捨てって、やらない人は絶対やらないもんね。何人目だったかの賢者が、犯罪と一緒って言ってたよ。やる奴はやる。やらない人はやらない」
「確かに。踏みとどまれるかどうかってことだよな」
「それ」
捨てないという選択肢をきちんと選び続けられるのと、犯罪を犯さないと踏みとどまっていられるかの感覚は少し似ている。
そんな話をしていれば、客席は半分ほど埋まっていた。
「リューラ達が来るのは直前か?」
「うん? ううん。チケット切って入ってくるのをやってみたいって、今並んでると思うよ?」
リザフトは一番に練習相手だよと言いながらやってもらっていた。ベテラン勢の方が緊張していて面白かったようだ。
「何て? ちょっ、VIP対応案件! チェックはどうなってる!?」
貴族よりも、王よりもチェック急げと指示を出せば、隠密ウサギから連絡が入った。
《只今、第一ゲート通過を確認》
「……最後尾からちゃんと並んでるのか……」
「まあ、当然だよねえ」
「そうなんだが……」
スッと人知れず紛れ込むこともできただろうが、それをしなかったようだ。
「この作ってもらったブレスレットで、神気もかなり抑えられているし、試すにもいいでしょ」
「それはまあ……」
もっと気軽に出歩きたくなったらしい神達に頼まれて、魔法神アクラスと技巧の女神ファサラ、それと知恵の女神キュラスとフィルズで共同開発したのが、眷属神並みに神気を抑えられるブレスレットだ。元々、アクラスとファサラで構想は練っていたらしい。それが何とか実現した形だ。
今回人混みに紛れ込むのも、そのテストを兼ねているのだろう。有り難いが、どうしても不安だ。
次に黒子からの連絡が入る。
《会長……リザフト様以外、全員いらっしゃっていますが……》
「……確かに、来られるなら来てくれと言ったな……」
「そう言ってたよね~」
リザフトが舞台の様子を見つめながら、他人事のように頷く。
確かにフィルズは、神達全員にチケットを渡していた。リザフトだけ、リューラだけなんて有り得ない。
「リニの服着てるか?」
《着てますね……周りの貴族に紛れているように……見えます。髪色や瞳の色に注意がいかないようになっているんでしょうか……》
「目立つよな……金とか銀……」
《はい……》
「あ、それ? ちゃんと顔合わせた事のある子達しかはっきり認識できないようにできるからねえ。神気が抑えられていない状態だと意味なかったけど、やっとね」
「あ~、ならちょい安心……か?」
《……見届けます》
「頼んだ」
無事に受付まで辿り着くのを祈る。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
恋愛カテゴリーで新作上げています。
お暇潰しにどうぞ。
イメージとしては千歳飴の長細い袋だ。当然、その袋には、宣伝広告つき。
中にはB5サイズの縦半分になった冊子。パンフレットとセイスフィア商会の宣伝広告が入っている。
ゆったりとした広さの座席の背の裏には、手荷物をかけられるフックがあり、そこにも掛けられるので立ったり座ったりしても落ちない。とても大事だ。
「せっかくもらったパンフレットが邪魔とか、嫌な気分になるんだよな~。ついつい握りしめて折り目がついたり、汗で湿ったりすると記念に取っとくってのもなんか……ってならないように考えた!」
「普通、そこまで気を回さないよ? 本当に凝り性だよね」
「え? リザフトはそういう所が良くて俺を選んだんじゃねえの?」
「そうでした」
フィルズは今回、リザフトやリューラ達と、特別席で観劇することになっていた。客の入りを見ながら拘りポイントをリザフトに説明していたのだ。リザフトだけ先に来て落ち着かなかったからということもある。因みに、姿を見られても違和感がないよう、リザフトの装いは貴族のようなフォーマルなものだ。これはリニのデザインで、いつもより落ち着いた人に見える。
「この袋いいよねっ。すごく記念になる。後ろ側、チケットを拡大したやつだよね? 日にちも時間も入ってる。座席番号は書き込めそうだし」
公演のチケットは、一般的な横長のもので作った。特別にデザインしたオシャレなチケットになっている。そして、半券を切ってこちらでカウントもできるようにしてある。それをそのまま拡大印刷したものが袋の片面にある。今後もチケットが特別なものという印象を持たせられるだろう。
「持って帰りたいって思われないと、その辺に捨てられるじゃん」
「ゴミ問題まで考えちゃった!?」
「普通に考えるけど? ゴミをその辺に放っていく人の気が知れんけどさ~」
「あ~、ね。ポイ捨てって、やらない人は絶対やらないもんね。何人目だったかの賢者が、犯罪と一緒って言ってたよ。やる奴はやる。やらない人はやらない」
「確かに。踏みとどまれるかどうかってことだよな」
「それ」
捨てないという選択肢をきちんと選び続けられるのと、犯罪を犯さないと踏みとどまっていられるかの感覚は少し似ている。
そんな話をしていれば、客席は半分ほど埋まっていた。
「リューラ達が来るのは直前か?」
「うん? ううん。チケット切って入ってくるのをやってみたいって、今並んでると思うよ?」
リザフトは一番に練習相手だよと言いながらやってもらっていた。ベテラン勢の方が緊張していて面白かったようだ。
「何て? ちょっ、VIP対応案件! チェックはどうなってる!?」
貴族よりも、王よりもチェック急げと指示を出せば、隠密ウサギから連絡が入った。
《只今、第一ゲート通過を確認》
「……最後尾からちゃんと並んでるのか……」
「まあ、当然だよねえ」
「そうなんだが……」
スッと人知れず紛れ込むこともできただろうが、それをしなかったようだ。
「この作ってもらったブレスレットで、神気もかなり抑えられているし、試すにもいいでしょ」
「それはまあ……」
もっと気軽に出歩きたくなったらしい神達に頼まれて、魔法神アクラスと技巧の女神ファサラ、それと知恵の女神キュラスとフィルズで共同開発したのが、眷属神並みに神気を抑えられるブレスレットだ。元々、アクラスとファサラで構想は練っていたらしい。それが何とか実現した形だ。
今回人混みに紛れ込むのも、そのテストを兼ねているのだろう。有り難いが、どうしても不安だ。
次に黒子からの連絡が入る。
《会長……リザフト様以外、全員いらっしゃっていますが……》
「……確かに、来られるなら来てくれと言ったな……」
「そう言ってたよね~」
リザフトが舞台の様子を見つめながら、他人事のように頷く。
確かにフィルズは、神達全員にチケットを渡していた。リザフトだけ、リューラだけなんて有り得ない。
「リニの服着てるか?」
《着てますね……周りの貴族に紛れているように……見えます。髪色や瞳の色に注意がいかないようになっているんでしょうか……》
「目立つよな……金とか銀……」
《はい……》
「あ、それ? ちゃんと顔合わせた事のある子達しかはっきり認識できないようにできるからねえ。神気が抑えられていない状態だと意味なかったけど、やっとね」
「あ~、ならちょい安心……か?」
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