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ミッション13
550 公演に先立ちまして
今回の公演は三部に分かれている。約一時間ずつ休憩を三十分挟んで行われる。一日一回の公演で、週に三回だけの予定だ。
開演時間は昼の一時。夕方5時ごろ終わる。セイルブロードで昼ご飯を食べ、終わってからゆっくりお風呂につかって、夕食を買って帰ることができる。午前中買い物を楽しんでも、荷物の預り所があるので、朝から丸一日居てもらおうという魂胆だ。
「卑怯だなあ。こんなの絶対朝から来ちゃうよ。お風呂入ってから帰る」
「楽しい休日だろ?」
「酷いわね。一日拘束してくるの? ふふふっ」
無事にリューラ達も会場に入り、席に着いた。今か今かと開演を待っていた。
「フィルっ! あの光るやつ! できたのか!」
ファサラが興奮気味に舞台の周りに出てきているグッズ販売台車を指差す。
「サイリウムもどきな。普通はアレ、使い捨てだけど、ヤバいくらい蓄光する鉱石があってさ。まあ、それでも半年くらいしか保たないけど」
「半年も保つのか? 十分だろう」
「使い捨てって考えると、確かに十分かも? 一応、回収ボックスを用意してある。再利用も出来そうなんだよ」
「すごいじゃないかっ」
「いる?」
「「「「「いる!」」」」」
神全員欲しいらしい。
「この会場の灯りでも十分光るようになるから。好きな色どうぞ」
色は赤、緑、黄、青、橙を用意している。手首用のバンドにもなるし、伸ばして振れる棒にもなる。
「ポップコーン……欲しい……」
「キャラメル」
トランとユランが羨ましそうに、席を回っている売り子を見る。仕方なくフィルズは手を挙げて呼んだ。
「ポップコーンのキャラメル……三つと塩味二つ」
他の神達も欲しそうにしたので、それだけ頼んだ。
「飲み物はどうする?」
「「「「「コーラで」」」」」
「……コーラ十個。俺はジュース」
満喫する気満々らしい。
中央の舞台を挟んだ反対側には、王家と公爵家に関係する者達の席が用意されており、セルジュ達も同じように盛り上がっているようだ。
「おおっ。カーテンが降りてきた……」
いつもは落ち着いて口数少ない武神カザンもソワソワとしている。
円形の舞台には何も置かれておらず、反対側も見えていたが、それが上から覆われていく。そして、灯りが一段階落とされた。開演の十五分前。影アナの声が響いてくる。
『本日は、セイスフィア商会所属、劇団【幻想の庭】の公演にお越しくださいまして、誠にありがとうございます』
劇団の正式な名前は、流民達全員一致で決まったものだ。
『公演に先立ちまして、お客様にお願いがございます。開演中、舞台に駆け寄ったり、物を投げ込むなどの行為はおやめ下さい。演目の妨げとなる行為がありましたら、速やかに退場していただきます』
詳しく言わなくても、誰もが察した。ウサギさんが来るのだと。
『第一部が終了しましたら、一階、二階それぞれのロビーにて演目終了後、演者へ直接、花束をお渡しいただける方の抽選をさせていただきます。ご希望の方は、ロビーに設置されたパネル式の魔導具にてご応募出来ます。チケットの半券をお持ちの上でお越しください』
ざわっと湧き立つ観客達。
これは、タッチパネル式の魔導具を用意した。未だに文字を書けない、読めない者は多いため、席番号を入力してOKボタンを押すだけで良いものを作った。
『第二部終了時に、会場放送とロビーのモニターにて、席番号を表示して発表いたします。他にも、それぞれの演者へのお気持ちを、メッセージカードに書いてそれぞれの演者のBOXにお入れいただければ、公演後にお届けいたします。人気投票としても使用いたしますので、何も書かずに投函いただいても構いません。ご協力をお願いいたします。こちらのBOXは、会場の外にも用意してございますので、公演終了後もゆっくりと対応ください』
観客は、これかと袋から取り出した小さなメッセージカードを確認する。
BOXは二段になっており、見た目は二段並べたポストのようだ。入り口はメッセージカード用なので小さい。BOXには、演者としての今回の役の写真と名が書かれているので、本来の姿を知らなくても迷わないだろう。
会場から出た場所にも用意しており、感想などじっくり考えて書いて投函することができる。
『各階ロビーには他にも、プロマイドや全ての演目を紹介し、演者のコメントも載せた特別写真集など、記念となる物も販売いたしております。数に限りがございますので、売り切れの場合はご了承ください』
「プロマイド!?」
「写真集かあ。欲しいな」
「休憩が三十分と聞いて、長いと思ったが……時間がなくなりそうだな」
「うん。だからって、休憩一時間とか無理だから、三十分が限界」
これはフィルズも迷った所だ。しかし、さすがに一時間の休憩はないなと決めた。
『特別写真集や一部のグッズについては、会場内でもご購入いただけます』
この対策が限界だろう。
『公演中、光るグッズを振っていただいたり、手拍子などしていただくこともございます。奮ってご参加ください』
普段の流民達の語りでも、酒場や広場で、手拍子をしたり声をかけたりすることがある。やはり反応がある方がやっている方も楽しいものだ。これは絶対とリーリル達にも言われたので、演出の中に組み込んでいる。きっとサクラとしてハルバも頑張ってくれるだろう。
『では、まもなく開演です』
いよいよ始まる。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
開演時間は昼の一時。夕方5時ごろ終わる。セイルブロードで昼ご飯を食べ、終わってからゆっくりお風呂につかって、夕食を買って帰ることができる。午前中買い物を楽しんでも、荷物の預り所があるので、朝から丸一日居てもらおうという魂胆だ。
「卑怯だなあ。こんなの絶対朝から来ちゃうよ。お風呂入ってから帰る」
「楽しい休日だろ?」
「酷いわね。一日拘束してくるの? ふふふっ」
無事にリューラ達も会場に入り、席に着いた。今か今かと開演を待っていた。
「フィルっ! あの光るやつ! できたのか!」
ファサラが興奮気味に舞台の周りに出てきているグッズ販売台車を指差す。
「サイリウムもどきな。普通はアレ、使い捨てだけど、ヤバいくらい蓄光する鉱石があってさ。まあ、それでも半年くらいしか保たないけど」
「半年も保つのか? 十分だろう」
「使い捨てって考えると、確かに十分かも? 一応、回収ボックスを用意してある。再利用も出来そうなんだよ」
「すごいじゃないかっ」
「いる?」
「「「「「いる!」」」」」
神全員欲しいらしい。
「この会場の灯りでも十分光るようになるから。好きな色どうぞ」
色は赤、緑、黄、青、橙を用意している。手首用のバンドにもなるし、伸ばして振れる棒にもなる。
「ポップコーン……欲しい……」
「キャラメル」
トランとユランが羨ましそうに、席を回っている売り子を見る。仕方なくフィルズは手を挙げて呼んだ。
「ポップコーンのキャラメル……三つと塩味二つ」
他の神達も欲しそうにしたので、それだけ頼んだ。
「飲み物はどうする?」
「「「「「コーラで」」」」」
「……コーラ十個。俺はジュース」
満喫する気満々らしい。
中央の舞台を挟んだ反対側には、王家と公爵家に関係する者達の席が用意されており、セルジュ達も同じように盛り上がっているようだ。
「おおっ。カーテンが降りてきた……」
いつもは落ち着いて口数少ない武神カザンもソワソワとしている。
円形の舞台には何も置かれておらず、反対側も見えていたが、それが上から覆われていく。そして、灯りが一段階落とされた。開演の十五分前。影アナの声が響いてくる。
『本日は、セイスフィア商会所属、劇団【幻想の庭】の公演にお越しくださいまして、誠にありがとうございます』
劇団の正式な名前は、流民達全員一致で決まったものだ。
『公演に先立ちまして、お客様にお願いがございます。開演中、舞台に駆け寄ったり、物を投げ込むなどの行為はおやめ下さい。演目の妨げとなる行為がありましたら、速やかに退場していただきます』
詳しく言わなくても、誰もが察した。ウサギさんが来るのだと。
『第一部が終了しましたら、一階、二階それぞれのロビーにて演目終了後、演者へ直接、花束をお渡しいただける方の抽選をさせていただきます。ご希望の方は、ロビーに設置されたパネル式の魔導具にてご応募出来ます。チケットの半券をお持ちの上でお越しください』
ざわっと湧き立つ観客達。
これは、タッチパネル式の魔導具を用意した。未だに文字を書けない、読めない者は多いため、席番号を入力してOKボタンを押すだけで良いものを作った。
『第二部終了時に、会場放送とロビーのモニターにて、席番号を表示して発表いたします。他にも、それぞれの演者へのお気持ちを、メッセージカードに書いてそれぞれの演者のBOXにお入れいただければ、公演後にお届けいたします。人気投票としても使用いたしますので、何も書かずに投函いただいても構いません。ご協力をお願いいたします。こちらのBOXは、会場の外にも用意してございますので、公演終了後もゆっくりと対応ください』
観客は、これかと袋から取り出した小さなメッセージカードを確認する。
BOXは二段になっており、見た目は二段並べたポストのようだ。入り口はメッセージカード用なので小さい。BOXには、演者としての今回の役の写真と名が書かれているので、本来の姿を知らなくても迷わないだろう。
会場から出た場所にも用意しており、感想などじっくり考えて書いて投函することができる。
『各階ロビーには他にも、プロマイドや全ての演目を紹介し、演者のコメントも載せた特別写真集など、記念となる物も販売いたしております。数に限りがございますので、売り切れの場合はご了承ください』
「プロマイド!?」
「写真集かあ。欲しいな」
「休憩が三十分と聞いて、長いと思ったが……時間がなくなりそうだな」
「うん。だからって、休憩一時間とか無理だから、三十分が限界」
これはフィルズも迷った所だ。しかし、さすがに一時間の休憩はないなと決めた。
『特別写真集や一部のグッズについては、会場内でもご購入いただけます』
この対策が限界だろう。
『公演中、光るグッズを振っていただいたり、手拍子などしていただくこともございます。奮ってご参加ください』
普段の流民達の語りでも、酒場や広場で、手拍子をしたり声をかけたりすることがある。やはり反応がある方がやっている方も楽しいものだ。これは絶対とリーリル達にも言われたので、演出の中に組み込んでいる。きっとサクラとしてハルバも頑張ってくれるだろう。
『では、まもなく開演です』
いよいよ始まる。
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