趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

文字の大きさ
232 / 243
ミッション13

550 公演に先立ちまして

今回の公演は三部に分かれている。約一時間ずつ休憩を三十分挟んで行われる。一日一回の公演で、週に三回だけの予定だ。

開演時間は昼の一時。夕方5時ごろ終わる。セイルブロードで昼ご飯を食べ、終わってからゆっくりお風呂につかって、夕食を買って帰ることができる。午前中買い物を楽しんでも、荷物の預り所があるので、朝から丸一日居てもらおうという魂胆だ。

「卑怯だなあ。こんなの絶対朝から来ちゃうよ。お風呂入ってから帰る」
「楽しい休日だろ?」
「酷いわね。一日拘束してくるの? ふふふっ」

無事にリューラ達も会場に入り、席に着いた。今か今かと開演を待っていた。

「フィルっ! あの光るやつ! できたのか!」

ファサラが興奮気味に舞台の周りに出てきているグッズ販売台車を指差す。

「サイリウムもどきな。普通はアレ、使い捨てだけど、ヤバいくらい蓄光する鉱石があってさ。まあ、それでも半年くらいしか保たないけど」
「半年も保つのか? 十分だろう」
「使い捨てって考えると、確かに十分かも? 一応、回収ボックスを用意してある。再利用も出来そうなんだよ」
「すごいじゃないかっ」
「いる?」
「「「「「いる!」」」」」

神全員欲しいらしい。

「この会場の灯りでも十分光るようになるから。好きな色どうぞ」

色は赤、緑、黄、青、橙を用意している。手首用のバンドにもなるし、伸ばして振れる棒にもなる。

「ポップコーン……欲しい……」
「キャラメル」

トランとユランが羨ましそうに、席を回っている売り子を見る。仕方なくフィルズは手を挙げて呼んだ。

「ポップコーンのキャラメル……三つと塩味二つ」

他の神達も欲しそうにしたので、それだけ頼んだ。

「飲み物はどうする?」
「「「「「コーラで」」」」」
「……コーラ十個。俺はジュース」

満喫する気満々らしい。

中央の舞台を挟んだ反対側には、王家と公爵家に関係する者達の席が用意されており、セルジュ達も同じように盛り上がっているようだ。

「おおっ。カーテンが降りてきた……」

いつもは落ち着いて口数少ない武神カザンもソワソワとしている。

円形の舞台には何も置かれておらず、反対側も見えていたが、それが上から覆われていく。そして、灯りが一段階落とされた。開演の十五分前。影アナの声が響いてくる。

『本日は、セイスフィア商会所属、劇団【幻想の庭】の公演にお越しくださいまして、誠にありがとうございます』

劇団の正式な名前は、流民達全員一致で決まったものだ。

『公演に先立ちまして、お客様にお願いがございます。開演中、舞台に駆け寄ったり、物を投げ込むなどの行為はおやめ下さい。演目の妨げとなる行為がありましたら、速やかに退場していただきます』

詳しく言わなくても、誰もが察した。ウサギさんが来るのだと。

『第一部が終了しましたら、一階、二階それぞれのロビーにて演目終了後、演者へ直接、花束をお渡しいただける方の抽選をさせていただきます。ご希望の方は、ロビーに設置されたパネル式の魔導具にてご応募出来ます。チケットの半券をお持ちの上でお越しください』

ざわっと湧き立つ観客達。

これは、タッチパネル式の魔導具を用意した。未だに文字を書けない、読めない者は多いため、席番号を入力してOKボタンを押すだけで良いものを作った。

『第二部終了時に、会場放送とロビーのモニターにて、席番号を表示して発表いたします。他にも、それぞれの演者へのお気持ちを、メッセージカードに書いてそれぞれの演者のBOXにお入れいただければ、公演後にお届けいたします。人気投票としても使用いたしますので、何も書かずに投函いただいても構いません。ご協力をお願いいたします。こちらのBOXは、会場の外にも用意してございますので、公演終了後もゆっくりと対応ください』

観客は、これかと袋から取り出した小さなメッセージカードを確認する。

BOXは二段になっており、見た目は二段並べたポストのようだ。入り口はメッセージカード用なので小さい。BOXには、演者としての今回の役の写真と名が書かれているので、本来の姿を知らなくても迷わないだろう。

会場から出た場所にも用意しており、感想などじっくり考えて書いて投函することができる。

『各階ロビーには他にも、プロマイドや全ての演目を紹介し、演者のコメントも載せた特別写真集など、記念となる物も販売いたしております。数に限りがございますので、売り切れの場合はご了承ください』
「プロマイド!?」
「写真集かあ。欲しいな」
「休憩が三十分と聞いて、長いと思ったが……時間がなくなりそうだな」
「うん。だからって、休憩一時間とか無理だから、三十分が限界」

これはフィルズも迷った所だ。しかし、さすがに一時間の休憩はないなと決めた。

『特別写真集や一部のグッズについては、会場内でもご購入いただけます』

この対策が限界だろう。

『公演中、光るグッズを振っていただいたり、手拍子などしていただくこともございます。奮ってご参加ください』

普段の流民達の語りでも、酒場や広場で、手拍子をしたり声をかけたりすることがある。やはり反応がある方がやっている方も楽しいものだ。これは絶対とリーリル達にも言われたので、演出の中に組み込んでいる。きっとサクラとしてハルバも頑張ってくれるだろう。

『では、まもなく開演です』

いよいよ始まる。






**********
読んでくださりありがとうございます◎


感想 2,865

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい

歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、 裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会 ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った 全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。 辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。

『彼を解放して!』とおっしゃいましたが、何から解放されたいのですか?

シエル
恋愛
「彼を解放してください!」 友人たちと教室に戻ろうとしていると、突如、知らない令嬢に呼び止められました。 「どなたかしら?」 なぜ、先ほどから私が問いかける度に驚いているのでしょう? まるで「え!?私のこと知らないの!?」と言わんばかりですけれど、知りませんよ? どうやら、『彼』とは私の婚約者のことのようです。 「解放して」とおっしゃっいましたが、私の目には何かに囚われているようには見えないのですが? ※ 中世ヨーロッパモデルの架空の世界 ※ ご都合主義です。 ※ 誤字、脱字、文章がおかしい箇所は気付いた際に修正しております。

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。