趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

文字の大きさ
表紙へ
99 / 217
7巻

7-3

しおりを挟む
「残念ながら、これは手がかかり過ぎて売り物にできない」
「「ええっ‼」」
「こっちも商売でやってるんでね。採算が取れないのはな~」
「良いではないか! 充分他で元が取れているだろうっ」
「そうよっ。王都でも一番というか、この国で名実共に一番になった商会が、ケチケチしないでよ!」
「……気に入ったのか……」
「「すごく!」」
「……検討はする……」
「「頼んだ!」」

 本当に気に入ったらしい二人は、ゆっくりと残りを味わっていた。よって、リゼンフィアのことはすっかり頭から消えていたのだが、食べ終わったことで思い出したようだ。

「ん? それで? フィルはきちんとリゼンにクーちゃんや第一夫人へ謝罪をさせたいのか?」
「いや。別に、俺から強制する気はねえよ。けど、けじめは必要だろ? そうしたらまた新たにやり直せるもんだし。言葉にするのって大事だとは思うんだよ」
「そうだなあ……」
「今回の商業ギルドや商家の奴らもそうだ。謝罪をして、それを相手が受け入れるかどうかは分からないが、それでもきちんとつぐなうべきこと、反省することを理解して頭を下げるべきだろう」

 これに、ラスタリュートが頷いた。

「ちょっとした友人との喧嘩でも、きちんと謝って終わらせた時と、何とな~く終わっちゃった時とは、その後の気まずさとか、気持ちの切り替えに使う時間とか違うものね」
「被害者と加害者がはっきりしてる時はさあ、加害者の方はあっさり忘れたりするんだ。被害者にとっては忘れたい記憶だけど、忘れられない。けど、加害者がきちんと償い、反省をすれば、忘れられる時も来る」

 けじめをつけなくては、納得しなくては、心の傷は癒えない。

「じいちゃんが言ってたんだ。心の傷というのは、誠意によってしか癒せないものなんだって」
「誠意?」
「そう。加害者が謝罪や贖罪しょくざいで誠意を見せることや、癒そうとする周りの人の誠意。自分自身で付けた後悔という傷なら、次は後悔しないと誠意を持って事に当たることで癒えていくものだって」
「……分かる気がするわ」
「俺も。そういうものかもって思った」

 そんな会話を聞いて、ファスター王は何かを考えている様子だった。

「そのタイミングも難しいけどな。ファシーは、第一王妃に謝って欲しいって……反省して欲しいって思ってるんだろ?」
「っ、それは……そうだな。だがその前に、何をしたのか、何を思っているのかをきちんと正直に全て話して欲しいと思っている……」

 かつて亡くなった第二王妃。その死に関してひとつの疑惑が持ち上がっていた。
 確かな証拠はまだ出ていないが、第三王妃の告白からも、第一王妃が第二王妃を害した可能性が高い。とはいえ、終わったこととなった事件の証拠が、今更探して出てくるとも思えなかった。

「物的証拠などないだろう。だから……できれば自白して欲しいが……」
「いや、今まで黙ってたんだ。素直には無理だろう。悪かったと思っているなら、告白できるタイミングを作ってやればいいんだろうけど」

 果たして、彼女がそれを認めることができるだろうか。自分本位な人というのは、他人に迷惑をかけていても気付かないし、たとえ傷付けていても無関心でいられるものだ。第一王妃はどちらかといえば、そちら側の性質を持っているのではないだろうか。

「こうなったら、当時の協力者を探すか?」
「協力者か……」
「そうね……独断でやったとは考え難いものね」

 王妃になったとはいえ、貴族の令嬢が一人で計画し、実行したとは思えない。協力者が居るのではないかと、フィルズ達は予想していた。
 ファスター王は、本気で第二王妃の死の真相を明らかにしようと決意したのだろう。フィルズに真剣な目を向けた。

「……フィル。人を貸してもらえないだろうか」
「調査する奴?」
「ああ……」
「……そうだな……」

 ファスター王は、決して、国が抱える調査機関や暗部が頼りないからではないと口にする。

「悟られることはないだろうが、アレの関係者の息のかかっていない者を選ぶとなると、人数が心許こころもとないというのに気付いてな……」

 第三王妃は多くの貴族達から見捨てられていた。だから、実質的に唯一の王妃と呼べる第一王妃の味方は多い。

「分かった。何人かそっちで動けるのと……隠密ウサギを一部隊、専用に送る」
「すまんな……」
「いや、ちょい気になってることに関係しそうなんでな。ついでだ」
「それは……」

 ファスター王が何かを言いかけた途中で、ドアがノックされた。やって来たのは、この王都支店の屋敷を管理するクマのガンナだ。

《失礼いたします。ファサラ様とアクラス様がお伝えしたいことがあるとのことです》
「あ~……嫌な予感……」

 フィルズは顔をしかめながら、すぐに行くと返し、立ち上がる。そして、ファスター王に断りを入れた。

「悪いな。途中で」
「いや……大丈夫か?」
「ん? そうだな……まあ、何とかなるだろ」
「そうか……何か私が力になれることがあれば、いつでも言ってくれ」
「私もっ、力になるからねっ」

 ラスタリュートもそう言って真剣な目をフィルズに向けた。これにフィルズは笑みを返す。

「おう。その時はよろしくな」
「任せるが良い」
「任せなさい」

 二人は頷き、立ち上がる。そして、揃って部屋を出た。ファスター王とラスタリュートは、引き続き会議室で仕事がある。
 それを見送り、フィルズは来客の待つ地下へと向かった。


 その部屋では、技巧の女神ファサラと魔法の神アクラスが、部屋の隅に置かれているソファで資料を確認しながら難しい顔をしていた。
 この屋敷には、建物全体を覆うように特殊な結界が張られている。それは、神気しんきを抑え、外には絶対に神の気配を漏らさないためのものだ。愛し子であるフィルズが生活するこの屋敷や公爵領都の屋敷では、神々が度々顕現する。
 神気は、徒人ただびとには少しばかり体に障るものらしく、気軽に顕現というのは本来難しいのだが、ここでは気にしなくても良い。それを神々は喜んでいた。

「その顔は、やっぱり間違いなさそうなのか?」
「……ええ……」
「……」

 普段からあまり表情の変わらないアクラスが、無言ながら珍しく怒った様子で、一枚の古ぼけて黄ばんだ紙と、真新しく見える紙を一枚、一緒にフィルズに差し出した。
 それを受け取ったフィルズは、古い方の内容を確認し、下三分の一ほどのスペースを使って描いてある精密なネックレスの絵と、真新しい方の紙にカラーで描かれた絵を見比べる。

「【魅了の魔導具】ねえ……」

 少し胡散臭そうに見てしまうのは、それを作ろうと思うこと自体がフィルズには信じられなかったからだ。

「精神に作用する魔法陣なんて、今の貴族の持つ魔力量でも発動させるのは無理なんだろ? そもそも、賢者けんじゃの居た頃に作られたのが今でも作動するのか?」
「土台として使ったのがオリハルコンだからね……」

 ファサラが苦々しげな顔で告げる。そして、その続きをアクラスが継いだ。

「……そこに、不壊の魔法陣が刻んである。魅了の魔法陣が刻まれたのは宝石の方だ。魔力が長い月日を経て空気中から蓄積され、どちらの魔法陣も使えるままになっているはず。劣化も不壊の力で防がれている」
「へえ。そりゃあすげえっ。なるほどな~。二つ別々に刻んだのか。不壊で劣化を防ぐ方をオリハルコンでってのは確かに正解だよなっ」

 そうかそうかと、しきりに資料を見て頷くフィルズ。

「ってか、オリハルコンに直接魔法陣を刻むのかっ。電池代わり、魔力補助代わりにイヤフィスや魔導車に俺も使ってるが、そうかっ。なるほどな~」

 フィルズは楽しそうに、キラキラとした目でその資料を尚も見つめる。そんな様子に、二柱の神は困った子を見るような目を向ける。

「……フィル……琴線に触れたのは分かるけれど、これで苦しんでいる子が居るのも忘れないように」
「はっ……ああ、そうだった。いやあ、賢者にも困ったもんだよなあ」
「かつて、これで一国が瓦解したこともあった。女とは……恐ろしい……」

 このままではアクラスが女嫌いになりそうだ。少し顔色も悪い気がする。何かトラウマでもあるのだろうかと気になってしまう。

「ま、まあそうだな。傾国の美女みたいな言葉があるくらいだし」

 この魔導具は、王侯貴族に恨みを持った賢者が、国を瓦解させるために作り上げたもの。いわゆる乙女ゲームで逆ハーレムをさせ、王侯貴族の上の方の跡取り達をたらし込んで破滅させることを目的とした魔導具だ。その資料が、闇ギルドから回収した資料の中にあったのだ。
 そして同時に、組織に居た者達の裏取りをする中で、実際に実物が使われているという事実が分かった。

「ドラスリールにあった遺跡、早いとこ調べておいて良かったなあ」
「これが回収できたのは僥倖ぎょうこうだったと言えるでしょうね」

 辺境伯領と接する隣国のドラスリール。フィルズ達の支援によって、圧政を敷いていた王室は打倒され、現在は教会が後ろ盾となって国を再建しているところだ。
 そのドラスリールには、賢者の隠れ家であった古代の遺跡があった。フィルズはこの王都支店の出店の前に、その遺跡を調べ、賢者の遺した資料などを回収していた。その中に【魅了の魔導具】についての資料があったのだ。
 アクラスが差し出して来た真新しく見えた紙の方が、その賢者の資料だった。古く見える方が、今回潰した闇ギルドから回収された資料である。
 大人しくドラスリールが自滅するのを数年待っていたら、そもそも【魅了の魔導具】の危険性を知る機会もなく、今回の回収した資料も見逃されていたかもしれない。

「で? どうすればいいんだ? 最終的には、単純に外せば良いんだろうが、この感じだと、自分にも魅了を掛けてる状態だろ。というか……俺から言わせれば、オンとオフが明確にできない時点でこれは……」
「欠陥品だ」

 フィルズがにごした答えを、アクラスがはっきりと言い切った。

「だな……魅了って……まあ、執着させるってことだよな。これは、自身はこの魔導具に執着し、外したくなくなる。注目されることでより常用性が高くなり、他人からはそれ自体ではなく、着けた者に執着しているように錯覚させるということだろう?」
「そうだ。実際はその道具に、執着心を抱かせる……魅了とは言っているが、要は注目させるものだ」
「王族とかなら使えるなあ」
「実際、かつては王家の宝剣や装飾品に施すことで、少しばかり注目させるためのものだった。それに、余計な手を加えたようだ」
「なるほど……」

 アクラスは始終、不機嫌な様子で腕を組んでソファに背を預けている。賢者が作り出した物とはいえ、相当これが気に入らないようだ。しばらく目をつむり、そして、フィルズを真っ直ぐに見た。

「……これを打ち消す魔導具を作る」
「そうなるよな……というか、間違いなく必要になる」

 早急に、手を付ける必要がありそうだった。



 ミッション② 本店で報告を受ける



 フィルズはこの日、セイスフィア商会の本店のあるエントラール公爵領都に戻って来ていた。
 クラルスや、商会で引き取り、今現在は従業員として働いている第三王子のリュブランにも戻るかと尋ねたが、まだしばらく王都にいると断られた。
 クラルスはリーリルやファリマスと、親子で商業ギルドの問題に楽しそうに向き合っている。リュブランと、元男爵令息で彼と共に行動しているマグナは、店の従業員達がもう少し運営に慣れるのを見守ってくれるようだ。
 フィルズは単身で、相棒であるバイコーンの亜種のビズに乗って帰って来たので、朝方に王都を出ても日が暮れる前には到着していた。ビズは固有の能力で翼を生やし、空を駆けることができるためだ。魔導車でも二日ほどかかる距離だと考えれば、かなりの速さと言えるだろう。
 屋敷に入るやいなや、留守を任せているコランが静かに駆け寄って来た。

「会長、お帰りなさいませ」
「おう。変わりはないか?」

 コランは、リュブランと共にフィルズが預かることになった元貴族の子息だ。家や家族に未練はなく、今ではこのセイスフィア商会の従業員達こそが家族だとして、与えられた仕事に向き合いながらも楽しく日々を過ごしている。
 家に居た頃は親に言われた通り、言われたことを身に付けるだけだったコランや他の元子息達は、この商会に来てから、やってみたいと思ったことを気軽にやってみて、技術や知識を身に付けられることに楽しさや喜びを感じていた。そうしてやり甲斐も見出したことで、新たな趣味や才能を見つけ、二度と家には戻らないと決意を固くしたようだった。
 その中でも、コランはいち早く自身のやりたいことを見つけた。リュブランの側近として仕えていた彼だが、それがあるじの行動を制限することにもなると理解した。そこで、現在ではこの本店の会計管理、契約などに従事しており、クマのホワイトやゴルドと同様、商会長であるフィルズの秘書的な立場に収まっている。

「店の方は特に問題ありません。クレームを付けてくる貴族が居たようですが、いつも通り問題なく対処済みです」

 言い掛かりを付けてくる貴族や、マナーの悪い商人には、衆人環視しゅうじんかんしの前で自分達の行いや主張がいかに恥ずかしく迷惑かを知らしめてやることになっている。これにより、彼らは陳腐ちんぷな捨て台詞を吐きながらも退散していくのだ。フィルズは、こちらが間違っていないなら押し負けてはならないと、職員達を教育していた。

「変わったことといえば、店員への勧誘や会長に会わせろとしつこく騒いでいた商人達が、姿を見せなくなったことですね」
「あ~、アレだ。王都の騒動がここまで届いたんだろう」
「加護の件ですか?」
「ああ。それと、闇ギルドに繋がりがあったのかもな。商業ギルドに本部から通達が出て、秘密裏に関係があった奴らを指名手配しているらしい」
「それは……」

 商人達は、必ず商業ギルドに寄る。手配などされているとは思わず、出向いたところで捕らえられる寸法だ。商業ギルドの中で行われるため、外に漏れることもなく、静かに対処されていた。

「王都じゃ、それが知れ渡って問題になっているからな。慎重にもなるさ」
「なるほど……商人……商業ギルドは信用が命ですからね……」
「そういうこと」

 コランは、もうしっかりと商人の考え方を受け入れていた。
 執務室まで来ると、ついて来たコランが持っていた書類を手渡す。

「こちらは、依頼されていた、過去にホルトーロ鉱山から出た鉱石の一覧と、現在のこの国で取引がある裏市場も含めた鉱石の量と種類の調査結果です」

 ホルトーロ鉱山とは、元男爵領――現在はエントラール公爵領となった領地、ミルトーラにある鉱山のことだ。元男爵家、つまりマグナの元実家があった領に存在している。

「ん……やっぱ、死んでねえよな……」
「はい。この国に鉱山は全部で八つ。その中で、クロス鉱石と呼ばれる特殊な鉱石が出るのが、唯一、ホルトーロ鉱山だけでした。近隣の国で出たという話も聞きません。ですが、取引は継続されています。それも一定量。ただし、表立ってではありませんが」
「どこか抜け道があるか……ゴーレムの目撃情報だけで、それも複数ってのが気になってたんだよな……討伐されたって話がないとおかしい」

 半年ほど前、冒険者ギルドで聞いたゴーレムの目撃情報。鉱山への立ち入りは許可されていなかったが、周辺の調査をギルドがすることになっていた。しかし、未だに討伐されたという情報は入っていない。
 ゴーレムの活動範囲は広くはないが、それでも一度出て来たゴーレムは、その範囲のギリギリまでやって来て居座るものだ。人に反応して出て来るため、目撃されたなら、その場所に討伐されるまで居座っている。
 しかし、目撃情報はいくつも出て、場所も様々だったが、その場所に居座っているはずのゴーレムを冒険者は確認できなかったのだ。

「調べたところ、ホルトーロ鉱山の鉱夫は、十年前に半数以上が解雇されていました。国の廃坑認定書の写しも商業ギルドの方で確認しています」
「……けど、それを親父もファシーも知らなかった……」

 ホルトーロ鉱山が廃坑認定を受けていると、最近までリゼンフィアもファスター王も知らなかった。その報告を受けていなかったようだ。リゼンフィアの方は、もうあそこも鉱石は出ないだろうという噂を領地で聞いていたが、報告書の形で見ていないため、あくまで噂と思っていたようだ。元々、産出量が多い鉱山ではなかったのも、その認識に影響している。
 今回、元男爵領を安定させることにリゼンフィアも必死になっており、鉱山はやがては使えなくなるという考えの下、他の特産品などで立て直しを図ろうとしていた。鉱夫が少ないことには気付いていたからこそ、余計にそちらから目を逸らしていたが、実は既に廃坑となっているとつい最近知ったというのだ。

「ええ……マグナにもそれとなく聞きましたが、暮らしぶりにはかなり余裕があったようです。確かに、細々とですが、鉱山から出たものの取引はされていました。ですから、廃坑認定手前の、埋蔵量調査対象の認定を受けているならば、不思議ではないのかもしれませんが……」

 調査対象の段階であれば、まだ細々と取引ができるくらいの鉱石が出ているのもあり得る。しかし廃坑認定書まで出ているのならば、調査も済み、一年間で規定とされる量を産出できないと、専門家が判断したということになる。
 コランもこの資料を見て、少し違和感を持っているようで、納得できていない顔をしていた。

「鉱山の認定書の発行や調査は、商業ギルドが行うはずだな」
「はい。王都のギルドへ申請して……」
「王都のギルドなあ……」
「……確認してもらいますか?」
「だな。とはいえ王都は、今はそれどころじゃない。こっちで粗方あらかた調べてからの方が効率が良いだろう」
「分かりました」

 一番怪しいのは王都の商業ギルドだ。闇ギルドも使われるだけじゃない。だから、関係を持った商業ギルドで何か仕掛けていた可能性もある。

「クロス鉱石が流れていたのが裏のルートなら、闇ギルドも関わってそうだしな。慎重に行こう」
「はい」

 報告書に目を落とし、フィルズは頭の中を整理していく。

「認定書が出ているのに、冒険者ギルドに見回りの依頼が入っていなかったのも気になる。ミラナばあちゃんが見逃すはずもねえ」

 フィルズは椅子に座り、背もたれに身を預ける。そして少し宙を見ながら考えを口にした。ここで気になっているのは、ホルトーロ鉱山が廃坑ではないかもしれないということ。

「ゴーレムの目撃情報は間違いないらしい。鉱山が生きている証拠だ。それも、かなりの埋蔵量があるってことになる……」
「鉱石が内包する魔力が共鳴し合うことで魔石が生まれ、そこから発生するのでしたか……ゴーレムとは大地からの……神からの贈り物だとの話も聞いたことがありますが」
「ああ。鉱山の場所を教えてくれるものだ」

 ゴーレムが出るのは、悪いことではない。そこに鉱石が眠っていると教えてくれる存在だ。実際、ゴーレムには、十神の下につく眷属神けんぞくしんからの加護が与えられており、そのお陰で自律して動けるようになるらしい。

「だが、廃坑認定まで出ている鉱山が復活するのは、早くても五十年かかると言われている。だから、廃坑認定自体が嘘だった可能性が高い」
「五十年……廃坑認定書には、十年前の日付がありました」
「ゴーレムの目撃情報がギルドに報告されたのは、男爵が捕らえられてからだ」
「それ以前から出ていたのに、男爵が隠していた可能性があると?」

 ゴーレムが出るのは、埋蔵量が充分にあるという証拠。一定量を掘り出していれば出ないと言われている。だから、稼働中の鉱山にゴーレムが出ることはなかった。

「あるだろうな。あの鉱山の辺りに民家はほぼない。鉱夫達も、とうに諦めて違う職に就いていると聞いた」

 目撃者がそもそも今まで居なかっただけだろう。廃坑となった鉱山は、魔物が住み着く可能性があるため、完全に埋めてしまうか、冒険者ギルドに依頼して定期的に調査や管理をする必要がある。

「気になるのは、なんで廃坑だと国に届け出たのかということ。それと……」
「その届出を、陛下方が把握されていなかったことですね……」
「ああ」
「矛盾していますよね?」
「だよなあ。廃坑だと届出を出しながらも、取引を続けた男爵家……後々バレた時に言い訳をするためってのが濃厚だが……」

 廃坑だと届け出たのは故意ではなく手違いで、取引を続けていたのがその証拠だと言い訳する。聞いている元男爵の性格からして、その考え方が一番あり得そうだ。

しおりを挟む
表紙へ
感想 2,770

あなたにおすすめの小説

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。

下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。 ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。 小説家になろう様でも投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。