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ミッション12 舞台と遠征
466 戦いをご所望で?
もっと早く話し合うべきだったというのが、ファスター王の言葉だ。
話し合いをするということで、執務室の方にユゼリア達親子を連れてきた。さすがに、談話室では話せない内容だ。
そこでじっくりと話し合いをして、ユゼリアも廃嫡ということに納得した。
「その……寧ろ、血のつながりもないのに、心苦しかったのです」
「っ、いや、だが……このことに関して悪いのは全てメルナだ。それに気付かなかったことについては、私にも責任がある」
それで、せめてもと、留めていたというわけだ。
「いいえ。私が何も考えずに言うことを聞いていたのもいけなかったと今なら分かるのです。だから、第一王子という立場も無くていい」
「ユゼリア……っ」
大人達が誰もが息を呑んだ。ユゼリアは覚悟を決めようとしていた。纏う雰囲気は決然としたものになる。
ユゼリアは真っ直ぐに目の前で向かい合うファスター王を見つめる。未だかつてないほど真っ直ぐにその視線は向いていた。
「王族としてあるならば、間違いは正すべきでしょう。私のことは、王家の汚点にもなり得るものです。あってはならない」
「っ、汚点などとっ。そのようなことは誰にも言わせん!」
「いいえ。王と王妃とさえも血の繋がりのない者を、王族としていてはいけません。それが許されたなら……っ」
ユゼリアは少し俯いた。表情を歪めるユゼリアに、大人達は慌てる。子どもに、これほどのことを言わせていいのかと焦る。
しかし、次に意を決したように顔を上げて泣きそうな表情でユゼリアが告げたのは、この場の誰も予想していなかったものだった。
「それが許されてしまったらっ、父上はフィルさんを養子に望みませんか!? 王太子にしたくなるのではありませんか!?」
「はっ!」
ファスター王が覚醒したようにはっとし、リゼンフィアとサリア、ゼレイユは絶句した。当のフィルズも何を聞いたのかと理解が追いつかない。
その勢いのままユゼリアは続けた。
「そんなことになったらっ、恨まれるのは私ですよ!! クーちゃんママ達に嫌われたくありません!!」
「っ、その手があったか!!」
「やめてください!! ほら、宰相がっ、見たこともないくらい凶悪な顔をしてます!!」
嫌だ嫌だと涙目で頭を抱えて悶え、リゼンフィアの射殺すような視線を避けようと目を泳がせるユゼリア。
そんなユゼリアを間に、サリアとゼレイユもはっとしてユゼリアを庇うように両側から抱きしめる。そして、一緒に震えた。
「ううっ……クーちゃんに恨まれるのは嫌だわっ……師匠にも顔向けできなくなるっ」
「会長を取られたなんてことになったら、職員全員が暴動を起こすんじゃっ……怖いよっ! 普通に国が落ちそうだよっ」
恐ろしいと親子で震える。その一方で、ファスター王は天啓を得たというように晴れやかな顔をしている。
「なぜ気付かなかった……? フィルが王になるなら、カリュエルやリュブランも喜んで補佐をするだろうっ。セルジュ君も当然だが、家を見捨てたここの優秀な元子息達まで戻ってくるんじゃないか? 学園ではほぼ生徒達がフィルの言うことを素直に聞くと言うし……っ、最高か!?」
これ以上ない結果が出て、それに伴い、国は確実に強く再生し、発展する。この選択は、王としては高く評価されるものになるだろう。どう考えても最高の結果が出るのだから。
「暗部も丸っとフィルの所で掌握しているようなものだし……神殿長や大聖女の覚えどころか、神々さえも一目置く存在っ……リゼン! フィルを養子にっ」
「っ、許すわけないでしょうっ!! 全兵力をもって城に閉じ込めてここへ来られなくしますよ!!」
「くっ」
強烈な精神的な一撃がリゼンフィアからファスター王に入った。だがファスター王はフィルズが絡むものに対しては諦めが悪い。
「し、しかしだなぁ。はっ。そうだ。フィルと今まで以上に傍に居られるぞ? 王太子教育とかで意見を聞いて、頼りにされたりとか」
「……頼りに……」
リゼンフィアが途端に揺らぐ。
「実の母親だし、息抜きにクーちゃんを呼んでお茶なんてしたり」
「……クラルスとフィルズと王宮で一緒にお茶……」
グラグラしている。そんな様子を、途中からフィルズは面白そうに見ていた。そろそろ止めるべきだろう。
その意を汲んだ隠密ウサギがテーブルの上に降ってきたように現れ、数人の黒子達がファスター王達の居る応接セットを取り囲んでいた。これに気付いたファスター王達は驚いて息を呑む。
「「「「「っ!?」」」」」
《我々から奪えると思わないことです。それとも、戦いをご所望で?》
この言葉でファスター王は頭を下げた。
「ごめんなさい。やめておきます」
「はははっ。面白過ぎだろっ」
思わずフィルズは声を上げて笑っていた。
これまでの人生で一番肝が冷えたとファスター王は反省し、この後、ユゼリアのことも納得できる結論が出た。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
話し合いをするということで、執務室の方にユゼリア達親子を連れてきた。さすがに、談話室では話せない内容だ。
そこでじっくりと話し合いをして、ユゼリアも廃嫡ということに納得した。
「その……寧ろ、血のつながりもないのに、心苦しかったのです」
「っ、いや、だが……このことに関して悪いのは全てメルナだ。それに気付かなかったことについては、私にも責任がある」
それで、せめてもと、留めていたというわけだ。
「いいえ。私が何も考えずに言うことを聞いていたのもいけなかったと今なら分かるのです。だから、第一王子という立場も無くていい」
「ユゼリア……っ」
大人達が誰もが息を呑んだ。ユゼリアは覚悟を決めようとしていた。纏う雰囲気は決然としたものになる。
ユゼリアは真っ直ぐに目の前で向かい合うファスター王を見つめる。未だかつてないほど真っ直ぐにその視線は向いていた。
「王族としてあるならば、間違いは正すべきでしょう。私のことは、王家の汚点にもなり得るものです。あってはならない」
「っ、汚点などとっ。そのようなことは誰にも言わせん!」
「いいえ。王と王妃とさえも血の繋がりのない者を、王族としていてはいけません。それが許されたなら……っ」
ユゼリアは少し俯いた。表情を歪めるユゼリアに、大人達は慌てる。子どもに、これほどのことを言わせていいのかと焦る。
しかし、次に意を決したように顔を上げて泣きそうな表情でユゼリアが告げたのは、この場の誰も予想していなかったものだった。
「それが許されてしまったらっ、父上はフィルさんを養子に望みませんか!? 王太子にしたくなるのではありませんか!?」
「はっ!」
ファスター王が覚醒したようにはっとし、リゼンフィアとサリア、ゼレイユは絶句した。当のフィルズも何を聞いたのかと理解が追いつかない。
その勢いのままユゼリアは続けた。
「そんなことになったらっ、恨まれるのは私ですよ!! クーちゃんママ達に嫌われたくありません!!」
「っ、その手があったか!!」
「やめてください!! ほら、宰相がっ、見たこともないくらい凶悪な顔をしてます!!」
嫌だ嫌だと涙目で頭を抱えて悶え、リゼンフィアの射殺すような視線を避けようと目を泳がせるユゼリア。
そんなユゼリアを間に、サリアとゼレイユもはっとしてユゼリアを庇うように両側から抱きしめる。そして、一緒に震えた。
「ううっ……クーちゃんに恨まれるのは嫌だわっ……師匠にも顔向けできなくなるっ」
「会長を取られたなんてことになったら、職員全員が暴動を起こすんじゃっ……怖いよっ! 普通に国が落ちそうだよっ」
恐ろしいと親子で震える。その一方で、ファスター王は天啓を得たというように晴れやかな顔をしている。
「なぜ気付かなかった……? フィルが王になるなら、カリュエルやリュブランも喜んで補佐をするだろうっ。セルジュ君も当然だが、家を見捨てたここの優秀な元子息達まで戻ってくるんじゃないか? 学園ではほぼ生徒達がフィルの言うことを素直に聞くと言うし……っ、最高か!?」
これ以上ない結果が出て、それに伴い、国は確実に強く再生し、発展する。この選択は、王としては高く評価されるものになるだろう。どう考えても最高の結果が出るのだから。
「暗部も丸っとフィルの所で掌握しているようなものだし……神殿長や大聖女の覚えどころか、神々さえも一目置く存在っ……リゼン! フィルを養子にっ」
「っ、許すわけないでしょうっ!! 全兵力をもって城に閉じ込めてここへ来られなくしますよ!!」
「くっ」
強烈な精神的な一撃がリゼンフィアからファスター王に入った。だがファスター王はフィルズが絡むものに対しては諦めが悪い。
「し、しかしだなぁ。はっ。そうだ。フィルと今まで以上に傍に居られるぞ? 王太子教育とかで意見を聞いて、頼りにされたりとか」
「……頼りに……」
リゼンフィアが途端に揺らぐ。
「実の母親だし、息抜きにクーちゃんを呼んでお茶なんてしたり」
「……クラルスとフィルズと王宮で一緒にお茶……」
グラグラしている。そんな様子を、途中からフィルズは面白そうに見ていた。そろそろ止めるべきだろう。
その意を汲んだ隠密ウサギがテーブルの上に降ってきたように現れ、数人の黒子達がファスター王達の居る応接セットを取り囲んでいた。これに気付いたファスター王達は驚いて息を呑む。
「「「「「っ!?」」」」」
《我々から奪えると思わないことです。それとも、戦いをご所望で?》
この言葉でファスター王は頭を下げた。
「ごめんなさい。やめておきます」
「はははっ。面白過ぎだろっ」
思わずフィルズは声を上げて笑っていた。
これまでの人生で一番肝が冷えたとファスター王は反省し、この後、ユゼリアのことも納得できる結論が出た。
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