女神なんてお断りですっ。

紫南

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363 個室へご案内?

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2016. 3. 8
********************************************

何を言っているんだと男達全員どころか、サクヤ以外の仲間達にまで視線を向けられ、ティアは顔を顰める。

男達が驚くのは仕方がない。だが、後ろから少々非難がましい視線が送られてくるのは気になった。

ティアは振り向き、腰に両手をあてて言う。

「そんな目しないでよ。現状を把握してから、ここを紹介しようと思ったんだもん。予想通り結構異常ありだったし」

視線の意味は分かっている。サクヤ以外の保護者達にも内緒でここに挑戦していた事を咎めるものと、何故その時に誘ってくれなかったのかという不満だ。

「その異常ありを知りたかったぜ」
「ティアは団体行動ができないからな。仕方がないとはいえ、こんな楽しそうな所へ私達に言わずに来るなど納得できん」

ゲイルとエルヴァストは不満一杯だった。これにベリアローズとアデル、キルシュも同意するように頷く。

「傍にいなかったとはいえ、心配しないと思ったのか?」
「大丈夫だろうとは分かちゃいるが、内緒で出かけんのは良くねぇと思うぞ」

ルクスとザランが注意する。

そう言われて素直に謝らないのがティアだ。だから、気まずくなって不貞腐れながら、言わなくてもいい事まで口をついて出てしまった。

「一人じゃないもん。シェリーもいたもん」
「なに?」
「あっ……」

シェリーという言葉に、ルクスが過敏に反応した。しまったと思った時には遅い。

「……楽しんだようだな……」
「あ……はは……いや、その、シェリーに待ち伏せされたんだよ。だから……うん、ゴメンね……」

珍しくも、ルクスの気迫に押されるティア。これを見て、ザランが感心する。

「ルクスが……頼もしい……」

どうやらこれは全員同意らしい。

「さすがは、ティアの未来の夫ね」

そんなサクヤの言葉に、ルクスが顔を赤らめた。

「『候補』の文字が消えたな」
「いいんじゃないか? ルクスならいいと父上も最近言っていたしな」
「そうなのかっ。師匠。おめでとうございます」

エルヴァストとベリアローズの会話に、ルクスは真っ赤になりながら目を見開く。

こういった状況に慣れていないルクスだ。

そこで、それまで黙っていた男達がぽつりと呟いた。

「ロリコンかよ。やっぱ、ただの冗談だろ」
「あんな子どもがこのダンジョンを攻略したなんて信じられっか。婚約者までいるようなお嬢様みたいだしな」
「保護者がたくさんついてきてたんじゃないのか?あの婚約者様は弱そうだけどな」

これには、ゲイル達も聞き捨てならないと反応する。しかし、最も反応したのはティアだった。

「……へぇ……」

ゆっくりと男達を振り返ったティアは、その瞳に鋭い光を宿らせて笑った。

「ふふっ、いい度胸じゃん……誰を馬鹿にしてんだよ……ふざけんじゃねぇぞ?」
「「「っ……⁉︎」」」

ぞくりとする殺気が店内に満ちる。

その殺気を向けられていないアデルとキルシュは息を止め、エルヴァストとベリアローズも身を強張らせる。

ザランやルクス、サクヤやゲイルでさえも咄嗟に声が出なかった。

その時、店の壁に突如として光が集まる。それは、転送の入り口。その前に現れたのはフィンだった。

《こちらへ。戦闘用のフィールドを用意したわ》

どうやらティアからの不穏な気配を感じ、妖精王が手を打ったらしい。

「ありがとう。ほら、来なよ。死ぬほど後悔させてやるから」
「ひっ!」

男達は、揃ってティアの殺気に当てられ、腰を抜かしていた。

しかし、それで許すような怒り方ではなかった。

《この子の手を煩わせるんじゃないわよ》

そう言って、フィンが問題となった三人の男を魔力で吊るし上げ、光の中へ連れて行く。それに続いて、ティアが消えると、光の入り口も掻き消えた。

しばらくして、すっきりした表情のティアだけが店の外から戻って来たのだが、それまで誰一人として身動きできずにいたのだった。

◆◆◆◆◆

ドワーフの店で色々あり、時間を食ったティア達一行だったが、それ以降は順調にダンジョンを楽しんでいた。

「やっぱり、あの姿のティアってカッコいいよねっ」
「あぁ、あの武器で、それもマティと一緒になって戦っているのは、思わず見惚れるな」

アデルとキルシュがそんな感想を口にする。

その後ろで、エルヴァストとベリアローズも目を輝かせながら大人の姿になったティアと本来の姿になったマティの戦いを見て言った。

「もう最強だなっ」
「あれが本来の姿だと言われても、もう違和感がない」

ティアが楽しめるようにと、今回は特別に魔獣を多く配しているようで、着いて来たゲイル達も問題なく楽しめているようだが、どうしてもティアの戦闘に見入ってしまっていた。

「スゲぇよ。いつもの嬢ちゃんにも勝てねぇのに、あれじゃぁ、どんだけ努力しても追いつけねぇかもな」
「あれはもう、人じゃねぇっすよ。挑むだけ無駄っすね」

その実力が読み取れるゲイルだからこそ、その圧倒的な技術に惚れ、敵わないと言わしめる。

ザランは、同じ冒険者として見ようとして失敗したようだ。

「まるで舞を見ているようです」
《キュ~♪》

シルは心から賞賛し、胸を高鳴らせる。それに小さい姿のままのフラムが、羽ばたきながら自慢気に鳴いた。

「ふふっ、生き生きしてるわねぇ」
「いつもより格段にキレがある……」

惚れ惚れとしながらティアを見て笑顔を浮かべるサクヤ。ルクスはその隣で、ちょっと調子に乗りすぎではないかと心配しながら苦笑していた。

全員が、帰ってこなかった男達の末路を尋ねるのも忘れ、今のティアの煌めく姿へ目を向けている。

《あんな凄い人に喧嘩を売ったなんて、どう考えてもバカよね》

そんな呟きが、ティアに見惚れていた一行の耳に届く。途端に全員が口を噤んだ。

彼らの様子など気にすることなく、ティア達の後を追ってきたパールファンムが戦闘中のティアへ声をかける。

《ティアちゃ~んっ、フィン様が呼んでる~》
「え?」

最後の数匹を見る事なく蹴散らしたティアは、本来の姿ではなく、人の姿になって呼びに来たパールファンムへと不思議そうに顔を向けたのだった。



************************************************
舞台裏のお話。

妖精王  《おい、フィンはいるか?》

フィン  《はい。どうかされましたか?》

妖精王  《おう。ちょいフィンの所のフィールドを貸してくれ。確か、闘技場もあったろ》

フィン  《ええ。ありますが……いったいなぜ……?》

妖精王  《あの子がキレたら、戦闘になるからな》

フィン  《はい?》

妖精王  《周りを気にせず暴れられるように、場所をな》

フィン  《あの……王?》

妖精王  《ん?あぁ、ほれ、二階層の店だ。今、あの子が来てる》

フィン  《……あ……ティアちゃん……》

妖精王  《ちょい前から揉めてる客がいるみたいだしな。あの子がキレると大変……おっ》

フィン  《っ、い、行ってまいりますっ》

妖精王  《おう。頼んだぞ》

フィン  《はいっ》

妖精王  《仕方ない。表の奴らに連絡しとくか。え~……『半死半生の重傷者が放り出される予定。救済よろしく』っと、これでいいな》



つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎


とんでもない業務連絡です。


せっかく見逃してくれようとしていたのに、バカな人達です。
ティアちゃんをバカにしたのではなく、どうやらルクスをバカにされた事にイラついたようです。
どのみち、本当に力を見せつけなくては、納得しなかったでしょうから、結果オーライですね。


では次回、一日空けて10日です。
よろしくお願いします◎
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