女神なんてお断りですっ。

紫南

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362 店の現状

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2016. 3. 7
********************************************

男達が奥へと行った事で、それまで外で様子を窺っていたゲイルやベリアローズ達年長組が店に入って来た。

足を踏み入れて早々に呟いたのはエルヴァストとベリアローズだ。

「珍しい。ティアが喧嘩を売らせなかったぞ」
「あぁ…….奇跡だ……」
「うん? あ、期待してたの?お兄様達」

男達が消えた奥へと一度目を向けてからティアを見た二人だったが、ティアの問い掛けに慌てて首を振った。

「「それはない」」
「え~、期待に応えるのが私の信条なのにぃ」

そう言ったティアに、なぜか全員が揃って顔を顰める。

「毎回暴れていたあれは、俺らの願望ってか?」
「いや……確かに期待しなかった事はないと言えば嘘になる」

そうかもしれないと、今までを思い返す一同。そして、それに思い至った者達は揃って反省を示した。

「……そ、そうね……私達も悪かったのね……反省するわ……」
「ティアならと思ってしまった事もあったからな……便乗した事もあったような気がするぜ……」

そんな反応を見て、ティアは首を傾げる。

「あれ? 冗談だったのに……」

なんだか居心地が悪いと思ったのは気のせいではないようだった。

◆◆◆◆◆

珍しいドワーフの店に来られた事で、ゲイル達は嬉しそうだ。

外から見れば小さな店だが、店内は意外に広い。壁一面に武器が飾られている為、圧迫感があるかと思われがちだが、そんな事もなかった。

「こりゃぁ、苦労してでも来たいっつうのも分かるな」

二階層に店が上がった事で、ここに来られる確率も増えているはずだ。だが現状は、ここまで来られるのはAランクのパーティぐらい。来られたとしても、高額なその商品に手が出せなかったりする。

「挑戦者はそんなにいないみたいだけどね。武器も、一度買えれば値段もするから、そうそう変えないだろうし、ここまで足を伸ばして整備を頼む人も……いる?」
「いないな」

最後はダスバへと問いかけたのだが、あっさりした答えが返ってきた。

「宝珠に登録すれば、またこの階には来られるけど、この店からはその扉が遠いしね」
「あぁ、オーダーメイドで注文していく奴はほとんどいない。もう一度来る必要があるからな」
「冒険者って忙しいしね」

冒険者は、良い武器は欲しいが、緊急性がなければ後回しにする癖があるのだ。

ましてや、一度来て時間が掛かるとわかっている場所。一日は余裕を見る筈だ。そうなると考えるのは、一日でクエストを受けて儲けた方が身になるということ。

高額なお金を支払わなくてはならないという事もあり、どうしても足が遠のく。

「注文して、受け取りに来る奴は十人に一人だ」
「それは……大丈夫なんですか?」

この現状に、ゲイルと武器を見回していたルクスが顔を顰めて言った。

「大丈夫じゃねぇ。だから在庫も豊富だ。その中の三分の一は受け取りに来なかったやつらのだ。人族なんて特に、百年もすればいなくなるからな」
「そ、そうでしたか……」

それまで無表情だったダスバも、これには忌々しげに顔に皺を寄せていた。

その話に、ティアは目を丸くして言う。

「それ、早く言ってくれればよかったのに」
「なにをだ?」
「受け取りだよ。ギルドにサポートもお願いしてさ。ここに来てもらうのは必須だろうけど、受け取りの為だけなら、クィーグに迷わずここまで来られるように案内してもらえばいいもの」
「……そんな事、考えもしなかった……」

ダスバはこの提案に呆然とする。

今まで、注文を受けたとしても、受け取りに来る来ないは、気にしていなかった。客の方にも事情があるだろうし、仕方ないと諦めていたのだ。

「ドワーフの職人さんって、そういうところあるよね」

ティアが呆れて言う。これに同意したのはサクヤだ。

「確かに。ダグもそうだったわ。一品ずつ拘りがあるから、完成するまでに時間が掛かるし、何よりも無愛想な所とか、頑固なのが多いから、客と喧嘩するなんて珍しくないのよね。それで結局受け取ってもらえないとか」
「でも言ってたよ? 注文を受けて、その人に相応しい物を完成させるでしょ。そこで終わりじゃなくて、その後に使ってもらわないと本当の完成じゃないんだって」

ティアは、完成した武器を受け取ってもらい、使ってもらう事で、ようやくその武器が本当の完成を見るのだと言った後『これは理想論だがな』と苦笑していたダグストールを思い出した。

「……本当の完成……」
「ダスバさん?」

ティアの話を聞いて、思うところがあったのだろう。ダスバは呟くと、一つ頷き、真直ぐにティアを見た。

「頼んでも……?」
「勿論。それに、店である以上、売り上げは気にしなくちゃね」
「それは……そうかもしれないな……」

苦笑するダスバに、ティアは任せろと満面の笑みを向ける。

その時、奥から男達が戻ってきた。

神妙な面持ちでティアと面識のある三人がダスバへ告げる。

「今は金が足りねぇ。だが、いずれ買いたいと思う。取り置いてもらう事は可能か?」
「問題ない。全員分取り置くか?」
「頼む」

どうやら今回は購入せずに帰るようだ。しかし、それぞれの剣は気に入ったのだろう。

自分達、一人一人に合うものだと言われれば、愛着も湧く。

六本の剣がカウンターに置かれる。それを、ダスバが工房の奥へと持っていった。

そこで、ティアは、三人の男達から視線を感じた。

彼らは面識のない三人だ。

ティアが顔を向けて首を傾げると、一様に顔を顰めた。その内の一人が思わずといったように口を開く。

「こんな子どもが強いのか?」
「おいっ」

その呟きに慌てて注意したのは、ティアがいつだったかに腕を砕いた男だ。

「だってよぉ。あんなガキだぜ?信じられっかよ」

この言葉に同じように顔を顰めていた二人の男達が同意する。

「お前が弱いとは言わねぇよ。俺らの中でお前が一番強いのは分かってる」
「そうだぜ。お前の実力は俺らも良く知ってんだ。だから信じらんねぇ」

男達の不躾な視線は、更に遠慮がなくなってくる。そうなるといよいよ危ない。

保護者であるルクスやゲイル達も内心焦りだす。これはまずい流れだと、これまでの経験上分かっているのだ。

しかし、今回の男達はツイているようだ。

「あんたら、その子に喧嘩を売るのはやめておけよ。この中じゃ、唯一今のこのダンジョンを全て攻略した実力者だ」
「「「は?」」」

工房から戻ってきたダスバは、そう衝撃の事実をあっさりと公開したのだった。


************************************************
舞台裏のお話。

冒険者A「俺が腕を砕かれた事があったろ。その相手があのお嬢ちゃんだ」

冒険者D「はぁ?何言ってんだよ。夢でも見たんじゃねぇか?」

冒険者B「間違いじゃねぇんだよ。あの子と一緒にいた女の子と貴族っぽい男の子も、あの時一緒だった」

冒険者C「俺も見た。間違いなくあの子だ」

冒険者E「三人揃って……正気か? まだ十歳くらいに見えたぜ?」

冒険者A「見間違える筈ねぇよ。ぜってぇ、大人になったら美人だ」

冒険者B・C「「おい」」

冒険者A「その上に、あの強さだぜ?すげぇ冒険者になるって」

冒険者D・E・F「「「……」」」

冒険者C「でも、そうかもって思ったな」

冒険者B「ま、まぁ、確かに。ちょい赤っぽい髪してんじゃん。それで、俺はあの話を思い出した」

冒険者A「あっ、アレだろっ。赤髪のっ。すげぇ大物になるって」

冒険者B「あれはなるっ。だってよぉ、ほんの一撃でお前の腕を砕いたんだぜっ?それもまるで虫でも叩き落とすみてぇによっ」

冒険者C「そうそうっ、なんか冷たい目でさぁ。あの時、めっちゃ心臓がキリッてなったもんな」

冒険者A「やられた俺でも一瞬見惚れたからな」

冒険者B「マジか。それちょいヤベェって」

冒険者C「あ~、でも分かる……」

冒険者B「俺もだわ」

冒険者A「おうっ」

冒険者D「……あいつら大丈夫か?」

冒険者F「良くねぇだろ……」

冒険者E「なんか、扉を開けたな」

冒険者D・F「「なんの?」」

冒険者E「……なんかのだ……」


つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎


M男さんいらっしゃい。


未だ乱闘にならず。
期待してしまいますよね。
アデルの拳鍔も試してみたいですし、何とかして乱闘に持ち込みたいところです。
ドワーフの店とは特殊なようです。
職人さんは頑固な人が多いですからね。
納得できないなら買わなくていいと言ってお客を帰してしまいそうです。
ですが、それではいけませんよね。
いい武器を知らしめる為にも、どんどん広めていかなくては。
その為には商売。
サポートしましょう。


では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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