女神なんてお断りですっ。

紫南

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490 詐欺じゃないです

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2016. 9. 16

**********

捕らえた男達は、王都に連れ帰る事に決まった。

その日の夜、ティアはゲルヴァローズの欠片を出し、家を村の入り口から少しばかり離れた場所へ用意した。

食事も済ませると、部屋で一人、サクヤとシェリー、カルツォーネの順に状況報告をし、一息ついた頃には、かなり月が高い位置に来ていた。

「もうこんな時間……」

そうやって窓から外を見れば、そこにザランが番犬よろしく本来の大きさに戻ったマティにもたれながら、火の番をしているのが見えた。

「……サラちゃん……」

その炎に照らされた横顔を見て、ティアは家を飛び出した。

焚き火から離れた場所にある木の根元では、ザランと一緒に王都から来たという冒険者達が眠っている。それを起こさないように、そっとザランに近付けば、マティと背中合わせで丸くなっていたゼブロがいち早く気付いた。

眠っていて大丈夫だと思いを込めて笑みを向けれると、ゼブロはまた静かに目を閉じた。

マティが目を開けないのはいつもの事だ。ティアの気配では目を覚まさない。

「サラちゃん」
「うっ、ティ、ティアか。気配を消して近付くなよ……」
「ごめんごめん」
「頼むぜ……お前が気配を消すと、本気で分からんから」

大変心臓に悪いとの事だ。ザランの反応に、マティが身じろいだが、それで終わる。呑気なやつだ。

だが、起きないと分かっていればと、ザランの隣に座った。

「サラちゃんさ、ここに来る前、王都のゼスタおじぃちゃんと話したでしょ」

ティアはずっと、ザランに確認したかった。ティアがティアラールだと知っても、変わらずいてくれるかどうかを。

「あ、あぁ。マスターの手紙を届けたんだ。寄ったのか? 」
「うん。確認したかった事があったから」

そう言って、ティアは一息つくように炎を見つめる。どう切り出したらよいものかと迷っていれば、ザランが口を開いた。

「ティアは、何を目指してんだ?」
「へ?」

一体何を聞かれたのかと一瞬ポカンとしてしまった。しかし、ザランはそんなティアの様子など目に留める事もなく続ける。

「伯爵は、反対しないのか?」

これは確認だろう。今更否定する気はない。だからクスリと笑いながら答えた。

「しないよ」
「そうだよな……そんな事なら、ゲイルさんが止めてる」
「うん。ゲイルパパは案外、過保護な所があるからね。でも、本当に必要な時にしか何も言わないから」
「ちゃんと分かってんだな」
「サラちゃんは反対? 伯爵令嬢が冒険者になる事」

話さなかった事を怒っている訳ではないようだ。ザランは、純粋にティアラールを心配していた。

「まぁ、サルバの一住民としては、聖女だって言われる深層の姫様であって欲しいがな。実態を知ると……気持ち悪い」
「ちょっと、それどういう意味!?」

落胆を大袈裟に表現するザランに思わずツッコむ。

身を乗り出し詰め寄ろうとするティアから顔を背け、ザランは肩を落としながら続けた。

「だってよぉ、聖女って何だよ。実態は詐欺師で悪魔じゃんか……伯爵家の深層の令嬢に夢見てる奴らに何て言えばいいんだ……」

本人でもないのに、なぜか本気で申し訳ないと思っているようだ。

「俺は世界に謝りたい……っ」
「そこまで!?」

はぁっと大きく長い溜息をつくザランに、ティアは心外だと顔を顰めた。

「何事でも、いずれは現実に突き当たるもんでしょ? それが遅いか早いかの違いだし、何より女に夢見るのは男の人の特権で、性質だって昔聞いたよ?」

現実に立ち返らなくてはならない時はいつか来るし、真実を知る日もいつか来るのだ。それに、ティアはティアだ。色んな顔を持ったのがティアなのだから。

「騙された方が悪いってか……救済措置は取ってくれ……」
「だから、ちゃんとサルバの人には本性も見せてるでしょ?」
「……『には』って言ったか?」
「うん? 細かい事気にしてると穴に落ちるよ」
「おう……罠の間違いだな」

特大の落とし穴を用意する準備はいつでもしているティアだ。まさに触らぬ神に何とやら。

「救う気がない奴らとはちゃんと分けてるから心配しないで」
「因みに俺はどっちの予定だったんだ」

なぜかそこをはっきりとさせたいらしい。不思議に思いながら、ティアは正直に話す。

「だって、サラちゃんには、別に隠そうと思ってなかったよ? 結構近くでルクスの対応とか見てたら、なんとなく気づくでしょ?」
「……まぁ確かに……」

それだけ親しくしてきたのだ。ずっと違和感は感じていたはずだ。ティアも、そこは隠す気がなかった。

「他にも多分、勘付いてる人もいると思うんだけどね。伯爵家があぁだから、確信持てないんだろうなとは思うよ」

フィスタークは本当に人が良い。そして、大らかなシアンと、使用人達も家族同然に扱う家柄。

ルクスを兄の様に慕い、拾ってくれたゲイルをパパと呼ぶ。

そんな勝手な『冒険者ティア』が出来上がってしまった。本人達は特にこんな設定でと意識をしておらず、周りが自然と作り上げていった事で、生まれる矛盾も都合良く調整されてしまう。そうして出来上がってしまったのだ。

「はっきりと説明してもらってないから、俺らが勝手な憶測でティアって存在を固めてたのか……狙っただろ」
「ちょっとね」

ジロリと下から睨めつけるような視線を受けながらも、悪戯がバレた時のように笑ってウィンクを一つ。

ティア自身、伯爵家に面倒事を持ち込まないようにと、ティアラールのイメージは固定した。ただし、これも祝福の儀の時に、皆が作り出したイメージを使ったのだ。その時もわざとではない。

そうして、冒険者ティアとティアラールを本当の意味で区別したのは周りの人々なのだ。ただティアは、そのまま利用しただけに過ぎない。

「まぁ、今の学園では作ってるけどね。騙す気満々で」
「おい……」
「手持ちの札は、取って置きのもので固めないとね。いざって時用に」
「どんな時だよ……」
「うん? 例えば国を乗っ取る時とか?」
「はぁ!?」

笑顔で言えば、予想通りの反応が返ってくるから、サラちゃん弄りはやめられない。

「ははっ、冗談だよ。使えるように教育する時だって」
「……待て……今、なんでか調教って言葉が頭に入ってきた……」
「うわ、マジで? 便利な頭だねぇ。副音声の変換機能ついてんの?」
「……うん。そうだな……なんでか、本音が聞こえちまうみたいだ……」
「ナイスな特技だねっ」
「……」

これは否定する気がなかった。今の学園の状況を見るに、教育ではなく、痛みと刺激を伴う調教になるのは必至だろう。

ザランにはそれがわかったようだ。

そんな冗談とも本気とも判断がしづらい会話はここまでと、ティアはふと表情を切り替えたのだった。

**********

舞台裏のお話。

ルクス「ザランさんの所……なら良いか」

カランタ「あれ? そこは安心? 嫉妬しないの?」

ルクス「っ、ないですよっ」

カランタ「おかしいなぁ。だって、ティアの事になると、ルクス君、意外と心狭いよね?」

ルクス「なんですか……それ……」

カランタ「え? だって、たまにシル君と話してるティアを見てもちょっと苛ついてるでしょ?」

ルクス「え、あ、あれはっ……俺の知らない計画をしたりするからで……」

カランタ「ほら。気に入らないでしょ?」

ルクス「っ……はい……」

カランタ「それなのに、彼は良いとか、ポジション的に圏外だって思ってるんだ?」

ルクス「はぁ……まぁ、ティアにとってザランさんは『冒険者仲間』意外の何者でもないと思うんです」

カランタ「それ、他の子達と何が違うの?」

ルクス「ザランさんもそう思ってるって所でしょうか。家族になり切れない友人……みたいな?」

カランタ「一線引いてると?」

ルクス「いえ。いざという時に一線を引けるというのでしょうか。離れて客観的に見れる位置にいるんですよ。ティアも、いつ離れても仕方ないとどこかで思ってる……」

カランタ「なんとなく分かった。いつでも手の届く距離に立ってないんだね」

ルクス「そんな感じです。全面的にいざという時にティアから頼ったり、寄りかかったりしない」

カランタ「元々、ティアはそういうの苦手だけど?」

ルクス「はい。だから、それを常に察せられる場所にいないんです」

カランタ「ふぅん……でも、近付く事も出来るって事だよね?」

ルクス「……」

カランタ「人の心って、簡単に分析できるほど単純じゃないんだよ」

ルクス「……ちょっとここで様子を見てますので、先に休んでください」



つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎


信用できなくなりました。


サラちゃんは良い人です。
騙してた訳ではありませんからね。
『サルバでは』とつきますが。


では次回、一日空けて18日です。
よろしくお願いします◎
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