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連載
531 公爵令嬢の登場
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2016. 11. 27
**********
明日、サルバに行くつもりだと言うと、カルツォーネはホッとしたように笑った。
「あくまでも私の予想だからね。だが、もし君がハイヒューマンになっていたら、嬉しいね」
「嬉しい?」
「あぁ。ハイヒューマンなら寿命はぐんと延びる。君との別れが先になるのは喜ばしいよ」
そう言って、珍しくカルツォーネはティアを抱き寄せた。それだけ望んでいるのだろう。ティアが生きて、こうしていつでも会える事が嬉しいのだ。
これを聞いてアデルが問いかける。
「それって、ティアが長生きするってこと?」
「そうだよ。だいたい、ハイヒューマンの寿命は二百年ほどだと言われている」
具体的な年数を聞いて、アデルとキルシュは開いた口が塞がらない状態のようだ。
「……二百年……」
「ルクス?」
声が震えている事に気付き、ティアはルクスへ目を向ける。先ほどまで驚いた表情のまま固まっていたルクスは、暗い表情になっていた。
「っ、……すまない。なんでもない……」
口を押さえ、ティアから視線を外すルクス。その居た堪れないというような様子に、何と声をかけようかと迷っている所に、ラキアがお茶を持ってやって来た。
「あ、ラキアちゃん。イル君とカイ君は……」
「火の王がついていますので、ご心配なく」
「火王が? そっか。なら安心だね」
火王は相変わらず子ども好きで世話好きだ。湯浴みをしていたイルーシュとカイラント、それとマティをまとめて面倒を見ているらしい。
「そういえば、弟が出来たんだって?」
「弟じゃないよ……この国の王子。エル兄様の異母弟だよ。双子の慣習のせいで、城の地下で暮らしてたんだ」
「それは気の毒に……魔力は高いように感じたけれど、暴走したりは?」
「してない。教えた事を覚えるのは早いし、そっちは問題ないんだけど、人との関わりが極端に少なかったものだから、六歳でもかなり精神年齢が幼いんだよね……」
本来、知っているべき物の名前や、お金で物を買う事など、六歳ならば知っていてもおかしくないはずの知識に乏しいのだ。
「それは仕方がないね。でも、君は学園に行くから、面倒を見ていられないだろう? 火の王に任せているのかい?」
「ううん。ずっとディムースに置いてたんだけど、お母様達に任せようと思って。お兄様やユフィアお姉様もいるしね」
社会勉強にもなるだろうし、家族というものを知れる。クィーグの子ども達とは仲良くなったが、本来の人との接し方も覚えなくてはならない。
「ちょっと、ディムースに長く置いておくと、常識から外れそうで……」
「きっと立派に隠密行動も出来る子に育つだろうね」
「……その世界しか知らない子になったら困るから……」
ディムースでは、環境が特殊過ぎるのだ。王子である事から離れ過ぎてしまうのでは、任せてもらった王や王妃、エイミールに申し訳ない。
「あまり環境的には変わらない気もしなくもないね」
「え? そう?」
「伯爵夫人まで戦えるし、間違いなくこの国最強の一家だろう?」
「もちろんです」
「……なんでラキアちゃんがそんな誇らしげに……」
「あれほど、素晴らしいお屋敷はありませんので」
ラキアにとって、ヒュースリー伯爵家は全て自慢すべきものらしい。
不安ではあるが、二人を明日の放課後、サルバへ送って行く事に決めた。そのついでにシェリスの所へ寄るのは確定だった。
◆◆◆◆◆
次の日、午前中は平和に過ぎたのだが、午後の授業が少し問題だった。
中学部と高学部でのダンスの合同授業。
そこでティアは、初めてローズ・リザラントの姿を確認した。
濃い茶色の髪に黒い瞳。それほど珍しくもない。身長も平均なら、身体つきも特に特質したものはない。本当に、普通の少女だ。しかし、その言動と態度は目立っていた。
「男でしたら、リードしてくださらなくては……頼りになりませんね」
「……申し訳ない……」
自分がステップを外したのは、上手くリードしてくれなかったからだと言う。
リザラント公爵の息女。どうやら正妻の子ではないという事は知られていないようで、それよりも公爵が大切に表に出す事なく育てた娘なのだと思われているようだ。
その態度も、悪い意味で世間を知らない深層の令嬢なのだと思わせる。どれだけ横柄な態度であっても、公爵の血が周りに文句を言わせないらしい。
そして、最もティアが苛立ったのはこれだ。
「わたくしは、女神サティアの生まれ変わりだと教会に言われているのです。媚びなど、腹黒い考えは分かりましてよ」
周りの数人にしか聞こえない声ではあるが、自分でサティアの生まれ変わりなのだと言う。
「やっぱり許せない……」
「落ち着け、アデル」
アデルが突撃しそうになったのも仕方がない。
「ティアは平気なの?」
そう言われて、ティアはとっておきの笑みを浮かべたのだった。
**********
舞台裏のお話。
クロノス「……」
ユメル「兄さん? こんな所で何をしてるの?」
カヤル「空き部屋だよ? 何で兄さんが掃除してるの?」
クロノス「はっ、そうだ。リジットさんに話せばいいのか」
カヤル「何を?」
ユメル「兄さんのこの行動……ティア様がまた何か?」
クロノス「あぁ。お前達も手伝ってくれ。夕刻までにこの部屋を整えるんだ」
ユメル「ティア様が使うの?」
カヤル「ティア様が誰か連れて来るとか?」
クロノス「そうだ。二人子どもを連れて来られる。ベッドはどうするべきか……」
リジット「おやおや。何事ですかな?」
クロノス「リジットさん。ティア様が今夜、二人子どもをお連れになります。彼らの部屋を用意しなくてはならないのです」
リジット「左様ですか。この部屋に足りないのは……ベッドですね……二つはないですが、確か倉庫に特大サイズのベッドがあります。天気も良いようですし、外で綺麗にしてからそれを運ばせましょう」
クロノス「はい。行くぞ、ユメル、カヤル」
ユ・カ「「え?」」
クロノス「はっ……双子……まだ幼い男の子だな」
ユ・カ「「……」」
リジット「クロノスさんはティア様といつでも繋がっているのですね」
ユメル「……おかしいですよ……」
カヤル「……きっと、ティア様に改造されたんだ……」
ユメル「そうか……もう、僕達の知ってる兄さんじゃないんだね……」
カヤル「こんなんじゃ、お嫁さんも見つからないよ……」
ユメル「それは困るよな……僕達が先に結婚するわけにもいかないし……」
リジット「いいのではありませんか? それに、クロノスさんには、素晴らしい相手がいるように感じます」
ユメル「えっ、あのティア様主義の兄さんのお嫁さんになれる人がっ!?」
カヤル「同じくらいティア様を思っていないと相手になんてならないよ?」
リジット「神は相応しい方を選んでくださっていますよ」
ユ・カ「「そうであるように、毎日祈ります……」」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
お年頃ですから。
教育環境としては良いのか悪いのか分かりません。
伯爵家にはリジットも居ますし、ちょこちょこ火王も顔を出すでしょうから、大丈夫かなと……。
そして、いよいよローズ登場です。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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明日、サルバに行くつもりだと言うと、カルツォーネはホッとしたように笑った。
「あくまでも私の予想だからね。だが、もし君がハイヒューマンになっていたら、嬉しいね」
「嬉しい?」
「あぁ。ハイヒューマンなら寿命はぐんと延びる。君との別れが先になるのは喜ばしいよ」
そう言って、珍しくカルツォーネはティアを抱き寄せた。それだけ望んでいるのだろう。ティアが生きて、こうしていつでも会える事が嬉しいのだ。
これを聞いてアデルが問いかける。
「それって、ティアが長生きするってこと?」
「そうだよ。だいたい、ハイヒューマンの寿命は二百年ほどだと言われている」
具体的な年数を聞いて、アデルとキルシュは開いた口が塞がらない状態のようだ。
「……二百年……」
「ルクス?」
声が震えている事に気付き、ティアはルクスへ目を向ける。先ほどまで驚いた表情のまま固まっていたルクスは、暗い表情になっていた。
「っ、……すまない。なんでもない……」
口を押さえ、ティアから視線を外すルクス。その居た堪れないというような様子に、何と声をかけようかと迷っている所に、ラキアがお茶を持ってやって来た。
「あ、ラキアちゃん。イル君とカイ君は……」
「火の王がついていますので、ご心配なく」
「火王が? そっか。なら安心だね」
火王は相変わらず子ども好きで世話好きだ。湯浴みをしていたイルーシュとカイラント、それとマティをまとめて面倒を見ているらしい。
「そういえば、弟が出来たんだって?」
「弟じゃないよ……この国の王子。エル兄様の異母弟だよ。双子の慣習のせいで、城の地下で暮らしてたんだ」
「それは気の毒に……魔力は高いように感じたけれど、暴走したりは?」
「してない。教えた事を覚えるのは早いし、そっちは問題ないんだけど、人との関わりが極端に少なかったものだから、六歳でもかなり精神年齢が幼いんだよね……」
本来、知っているべき物の名前や、お金で物を買う事など、六歳ならば知っていてもおかしくないはずの知識に乏しいのだ。
「それは仕方がないね。でも、君は学園に行くから、面倒を見ていられないだろう? 火の王に任せているのかい?」
「ううん。ずっとディムースに置いてたんだけど、お母様達に任せようと思って。お兄様やユフィアお姉様もいるしね」
社会勉強にもなるだろうし、家族というものを知れる。クィーグの子ども達とは仲良くなったが、本来の人との接し方も覚えなくてはならない。
「ちょっと、ディムースに長く置いておくと、常識から外れそうで……」
「きっと立派に隠密行動も出来る子に育つだろうね」
「……その世界しか知らない子になったら困るから……」
ディムースでは、環境が特殊過ぎるのだ。王子である事から離れ過ぎてしまうのでは、任せてもらった王や王妃、エイミールに申し訳ない。
「あまり環境的には変わらない気もしなくもないね」
「え? そう?」
「伯爵夫人まで戦えるし、間違いなくこの国最強の一家だろう?」
「もちろんです」
「……なんでラキアちゃんがそんな誇らしげに……」
「あれほど、素晴らしいお屋敷はありませんので」
ラキアにとって、ヒュースリー伯爵家は全て自慢すべきものらしい。
不安ではあるが、二人を明日の放課後、サルバへ送って行く事に決めた。そのついでにシェリスの所へ寄るのは確定だった。
◆◆◆◆◆
次の日、午前中は平和に過ぎたのだが、午後の授業が少し問題だった。
中学部と高学部でのダンスの合同授業。
そこでティアは、初めてローズ・リザラントの姿を確認した。
濃い茶色の髪に黒い瞳。それほど珍しくもない。身長も平均なら、身体つきも特に特質したものはない。本当に、普通の少女だ。しかし、その言動と態度は目立っていた。
「男でしたら、リードしてくださらなくては……頼りになりませんね」
「……申し訳ない……」
自分がステップを外したのは、上手くリードしてくれなかったからだと言う。
リザラント公爵の息女。どうやら正妻の子ではないという事は知られていないようで、それよりも公爵が大切に表に出す事なく育てた娘なのだと思われているようだ。
その態度も、悪い意味で世間を知らない深層の令嬢なのだと思わせる。どれだけ横柄な態度であっても、公爵の血が周りに文句を言わせないらしい。
そして、最もティアが苛立ったのはこれだ。
「わたくしは、女神サティアの生まれ変わりだと教会に言われているのです。媚びなど、腹黒い考えは分かりましてよ」
周りの数人にしか聞こえない声ではあるが、自分でサティアの生まれ変わりなのだと言う。
「やっぱり許せない……」
「落ち着け、アデル」
アデルが突撃しそうになったのも仕方がない。
「ティアは平気なの?」
そう言われて、ティアはとっておきの笑みを浮かべたのだった。
**********
舞台裏のお話。
クロノス「……」
ユメル「兄さん? こんな所で何をしてるの?」
カヤル「空き部屋だよ? 何で兄さんが掃除してるの?」
クロノス「はっ、そうだ。リジットさんに話せばいいのか」
カヤル「何を?」
ユメル「兄さんのこの行動……ティア様がまた何か?」
クロノス「あぁ。お前達も手伝ってくれ。夕刻までにこの部屋を整えるんだ」
ユメル「ティア様が使うの?」
カヤル「ティア様が誰か連れて来るとか?」
クロノス「そうだ。二人子どもを連れて来られる。ベッドはどうするべきか……」
リジット「おやおや。何事ですかな?」
クロノス「リジットさん。ティア様が今夜、二人子どもをお連れになります。彼らの部屋を用意しなくてはならないのです」
リジット「左様ですか。この部屋に足りないのは……ベッドですね……二つはないですが、確か倉庫に特大サイズのベッドがあります。天気も良いようですし、外で綺麗にしてからそれを運ばせましょう」
クロノス「はい。行くぞ、ユメル、カヤル」
ユ・カ「「え?」」
クロノス「はっ……双子……まだ幼い男の子だな」
ユ・カ「「……」」
リジット「クロノスさんはティア様といつでも繋がっているのですね」
ユメル「……おかしいですよ……」
カヤル「……きっと、ティア様に改造されたんだ……」
ユメル「そうか……もう、僕達の知ってる兄さんじゃないんだね……」
カヤル「こんなんじゃ、お嫁さんも見つからないよ……」
ユメル「それは困るよな……僕達が先に結婚するわけにもいかないし……」
リジット「いいのではありませんか? それに、クロノスさんには、素晴らしい相手がいるように感じます」
ユメル「えっ、あのティア様主義の兄さんのお嫁さんになれる人がっ!?」
カヤル「同じくらいティア様を思っていないと相手になんてならないよ?」
リジット「神は相応しい方を選んでくださっていますよ」
ユ・カ「「そうであるように、毎日祈ります……」」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
お年頃ですから。
教育環境としては良いのか悪いのか分かりません。
伯爵家にはリジットも居ますし、ちょこちょこ火王も顔を出すでしょうから、大丈夫かなと……。
そして、いよいよローズ登場です。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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