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544 剣を向けてはいけません
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2016. 12. 19
**********
フードを目深に被り、顔を見えなくしていたのだろう。そうしなくとも、その腰に履いていた剣にはしっかりと、とある紋章が刻まれている。
ティアは、気絶した彼らを見下ろし、呆れていた。
そこに、先ほどの魔術によって出てきた騎士達が到着する。
「貴様っ、何者だ!」
騎士達は、こういった状況の対応を経験した事がないのだろう。少々気合いの入った勢いで声を掛けてきた。
その上剣を抜き、ティアを囲んだのだ。
「言っておくけど、この坊や達が魔術で強襲しようとしてたんだよ?」
関係ないんだけどと言って聞くようには見えなかったが、一応は弁明しておいた。
「黙れ! おい、晶腐石を」
「あ~ぁ、勿体無いよ? それを採ってくるのには命をかけなきゃならないんだからさぁ」
そんなティアの忠告を無視して、晶腐石を地面に叩きつける。
これで、しばらくの間、この辺りでは魔術が使えなくなった。
「手を上げろ!」
「はいはい……」
仕方ないと両手を挙げてやる。一歩ずつにじり寄り、剣の先を突き付けてくる。身動ぎすれば服に刺さるのではないかというくらい近付いた騎士達。
マティは、城壁の傍で欠伸をしながらこれを見ていた。ティアならば、すぐに片付けると分かっているのだ。
ティアとしては、この後彼らがどうするのかが気になった。
そこへ、かつてのウルスヴァンと同じ服装をした壮年の男が駆けてきた。
「先ほど攻撃したのは、その者か」
「はっ、魔術師長様」
先ほどティアに手を挙げるように言った騎士が、剣を下げ敬礼する。
ティアはまだ剣を突き付けてられたままだが、そんな状況など目に見えていないかのように、ふっと笑みを浮かべて現魔術師長を見た。
その視線を受けて、魔術師長はぐっと顔に力を入れる。刻まれる深い眉間の皺が騎士達が持つ松明の光しかない暗い夜でも見えた。
「……」
「ふふっ」
ティアを観察するように見つめる魔術師長。それがおかしくて笑ってしまう。それに動揺したのだろう。体が震えたように見えた。
それを見て、また笑ってしまう。すると、さすがに騎士達が気になったのだろう。
「何がおかしい!」
「ふふ……あなたがウルさんの後釜なんだ?」
「……っ」
ティアの瞳は、怪しく光っている。それがまた深く顔を顰めさせたようだ。
「貴様っ、魔術師長様にっ」
そう言う騎士達などティアの視界に入ってはいない。更に、首元にまで近付いている幾本もの剣さえ、気にしてはいなかった。
ティアは剣が刺さるのも構わず一歩を踏み出す。騎士達がビクリと驚く。そして、剣を思わず引こうとした時だった。全ての剣が根元から消えたのだ。
「え……」
柄だけになった剣。それを信じられないものを見るように見つめる騎士達。
ティアはそれを横目で確認しながら、そのまま進み、魔術師長の前で立ち止まる。
そのティアの後ろには、美しい緑の髪をたなびかせる女性が現れる。
彼女は夜の闇の中でも輝くように光を発していた。
《この方に剣を向けるなど、無礼にも程があります!》
「ひっ……!」
声をなくし、震える騎士達。そして、魔術師長もティアの後ろにいる風王に目を向けていた。その表情は、驚愕したものだった。
「風王。晶腐石の効果がまだ残ってるよ。キツイでしょ」
《お気遣いは無用ですわ。このような状況を黙って見ていられません!》
「そう。無理しないでね」
そうして、目の前の険しい顔を見て、ティアは笑みを深める。
「ウルさんと正反対だねっ。ウルさんも、これくらい強面だったらねぇ」
近寄り難く感じるだろう。そうすれば、重鎮達の意見も跳ね除けられたかもしれない。エルヴァストを不憫に思いながら、その身に身代わりの魔導具を付けさせる事もなかった。
「まぁ、今のウルさんしか想像できないけどね」
優しく、穏やかな気性、慈愛に満ちた表情で生徒達を優しく見守るウルスヴァン。そんなウルスヴァンを、ティアは気に入っているのだ。
「お~い、聞いてる?」
「あ、はっ……」
魔術に長けたものならば、精霊王である風王の気配に怯えてしまう。
その圧倒的な力を感じるのだ。魔術を使う時に、側に感じる力。それと同じだが、それよりも遥かに大きい力だと分かったようだった。
**********
舞台裏のお話。
ウル「うぅ……はっ」
サクヤ「ん~……どうしたの? ウル」
ウル「あ、いえ……私はどうしてここに……」
サクヤ「疲れて寝ちゃったんじゃない」
ウル「そ、そうでしたか……すみません」
サクヤ「いいのよ。ちゃんと休みなさい」
ウル「はい……」
サクヤ「顔色悪いわねぇ。もう、このまま朝まで寝ちゃいなさいね」
ウル「ありがとうございます……」
サクヤ「本当にどうしたの?」
ウル「いえ……なんだか嫌な予感が……」
サクヤ「ティアがまた何かしてるのかもねぇ。ティアったら今、王宮の方にいるみたいなのよねぇ」
ウル「……寝ます……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
気苦労は絶えません。
ティアちゃんを自ら敵に回してはいけません。
自殺行為ですよね。
では次回、一日空けて21日です。
よろしくお願いします◎
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フードを目深に被り、顔を見えなくしていたのだろう。そうしなくとも、その腰に履いていた剣にはしっかりと、とある紋章が刻まれている。
ティアは、気絶した彼らを見下ろし、呆れていた。
そこに、先ほどの魔術によって出てきた騎士達が到着する。
「貴様っ、何者だ!」
騎士達は、こういった状況の対応を経験した事がないのだろう。少々気合いの入った勢いで声を掛けてきた。
その上剣を抜き、ティアを囲んだのだ。
「言っておくけど、この坊や達が魔術で強襲しようとしてたんだよ?」
関係ないんだけどと言って聞くようには見えなかったが、一応は弁明しておいた。
「黙れ! おい、晶腐石を」
「あ~ぁ、勿体無いよ? それを採ってくるのには命をかけなきゃならないんだからさぁ」
そんなティアの忠告を無視して、晶腐石を地面に叩きつける。
これで、しばらくの間、この辺りでは魔術が使えなくなった。
「手を上げろ!」
「はいはい……」
仕方ないと両手を挙げてやる。一歩ずつにじり寄り、剣の先を突き付けてくる。身動ぎすれば服に刺さるのではないかというくらい近付いた騎士達。
マティは、城壁の傍で欠伸をしながらこれを見ていた。ティアならば、すぐに片付けると分かっているのだ。
ティアとしては、この後彼らがどうするのかが気になった。
そこへ、かつてのウルスヴァンと同じ服装をした壮年の男が駆けてきた。
「先ほど攻撃したのは、その者か」
「はっ、魔術師長様」
先ほどティアに手を挙げるように言った騎士が、剣を下げ敬礼する。
ティアはまだ剣を突き付けてられたままだが、そんな状況など目に見えていないかのように、ふっと笑みを浮かべて現魔術師長を見た。
その視線を受けて、魔術師長はぐっと顔に力を入れる。刻まれる深い眉間の皺が騎士達が持つ松明の光しかない暗い夜でも見えた。
「……」
「ふふっ」
ティアを観察するように見つめる魔術師長。それがおかしくて笑ってしまう。それに動揺したのだろう。体が震えたように見えた。
それを見て、また笑ってしまう。すると、さすがに騎士達が気になったのだろう。
「何がおかしい!」
「ふふ……あなたがウルさんの後釜なんだ?」
「……っ」
ティアの瞳は、怪しく光っている。それがまた深く顔を顰めさせたようだ。
「貴様っ、魔術師長様にっ」
そう言う騎士達などティアの視界に入ってはいない。更に、首元にまで近付いている幾本もの剣さえ、気にしてはいなかった。
ティアは剣が刺さるのも構わず一歩を踏み出す。騎士達がビクリと驚く。そして、剣を思わず引こうとした時だった。全ての剣が根元から消えたのだ。
「え……」
柄だけになった剣。それを信じられないものを見るように見つめる騎士達。
ティアはそれを横目で確認しながら、そのまま進み、魔術師長の前で立ち止まる。
そのティアの後ろには、美しい緑の髪をたなびかせる女性が現れる。
彼女は夜の闇の中でも輝くように光を発していた。
《この方に剣を向けるなど、無礼にも程があります!》
「ひっ……!」
声をなくし、震える騎士達。そして、魔術師長もティアの後ろにいる風王に目を向けていた。その表情は、驚愕したものだった。
「風王。晶腐石の効果がまだ残ってるよ。キツイでしょ」
《お気遣いは無用ですわ。このような状況を黙って見ていられません!》
「そう。無理しないでね」
そうして、目の前の険しい顔を見て、ティアは笑みを深める。
「ウルさんと正反対だねっ。ウルさんも、これくらい強面だったらねぇ」
近寄り難く感じるだろう。そうすれば、重鎮達の意見も跳ね除けられたかもしれない。エルヴァストを不憫に思いながら、その身に身代わりの魔導具を付けさせる事もなかった。
「まぁ、今のウルさんしか想像できないけどね」
優しく、穏やかな気性、慈愛に満ちた表情で生徒達を優しく見守るウルスヴァン。そんなウルスヴァンを、ティアは気に入っているのだ。
「お~い、聞いてる?」
「あ、はっ……」
魔術に長けたものならば、精霊王である風王の気配に怯えてしまう。
その圧倒的な力を感じるのだ。魔術を使う時に、側に感じる力。それと同じだが、それよりも遥かに大きい力だと分かったようだった。
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舞台裏のお話。
ウル「うぅ……はっ」
サクヤ「ん~……どうしたの? ウル」
ウル「あ、いえ……私はどうしてここに……」
サクヤ「疲れて寝ちゃったんじゃない」
ウル「そ、そうでしたか……すみません」
サクヤ「いいのよ。ちゃんと休みなさい」
ウル「はい……」
サクヤ「顔色悪いわねぇ。もう、このまま朝まで寝ちゃいなさいね」
ウル「ありがとうございます……」
サクヤ「本当にどうしたの?」
ウル「いえ……なんだか嫌な予感が……」
サクヤ「ティアがまた何かしてるのかもねぇ。ティアったら今、王宮の方にいるみたいなのよねぇ」
ウル「……寝ます……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
気苦労は絶えません。
ティアちゃんを自ら敵に回してはいけません。
自殺行為ですよね。
では次回、一日空けて21日です。
よろしくお願いします◎
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