元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十四章

634 お宝回収班……

先ずはドラゴン遠征当日。選抜されたのはほぼ予定通り、五十人が選ばれた。パーティとしては十組。六人パーティが六組と五人パーティが二つ、そして、二人のパーティが二つだ。

「では、移動中、作戦会議をします」
「「「「「は~い!」」」」」

飛空挺に乗り込み、彼らはもう完全に遠足や旅行気分だ。これからドラゴンと戦おうとする緊張感は皆無だった。

「ちょっとベテラン勢にし過ぎたんじゃない?」

引率役だと言って付いて来たタリスが、緩んだ空気に呆れていた。

「そうですねえ。意図せずにですけど、邪神討伐に出た人たちばかりになりましたから」
「あ、ドラゴンの存在がめちゃくちゃちっぽけなやつになったかも……」
「多分、素で羽の生えたトカゲだって思ってます。それに、ドラゴンの戦い方をテンキが教えていたので」
「……瞬殺しちゃわない? こんなに人数いる?」
「ドラゴンさんには頑張ってもらわないといけませんね~」
「かわいそうになってきたんだけど……」

テンキがわざわざ変化してドラゴンの姿になり、攻撃のパターンなんかを教え込んでいた。ただでさえベテランメンバーだ。勘所もいい。すぐにコツも掴み、一つのパーティでもドラゴン一体なら辛勝しんしょうできるくらいになっていた。

楽勝とまではさすかにいかないが、それでもなんとか勝てるならば上出来だろう。

それなのに、そんなパーティがいくつも集まって戦うのだ。楽勝となるのは目に見えていた。

「一応、確認したんですけど、若いドラゴンですし、結構必死になってくれるんじゃないかと。お肉は最高に美味しいと思います!」
「うん……そりゃあ、若い方が美味しいよね? というか、もう完全に肉扱い……」
「問題は解体なんですよ。こればっかりは、テンキで練習させるわけにもいかなくて……」

申し訳ないとコウヤは肩を落とす。

「当然だよね?」
「迷宮に出るドラゴンも、ドロップ品ですから、ギルドの解体部も、ドラゴンを解体するって経験ないらしくて……」
「あったらびっくりだから……」
「なので仕方なく、過去のドラゴン解体の文献をオヤジさんに渡してきました。静か過ぎて怖いって、言ってましたけど、きっとオヤジさんなら大丈夫ですよねっ!」

解体屋のオヤジさんが、真剣に文献を読み込んでいる様は、異様な様子だったらしい。解体の仕事そっちのけで、ここ二日ほど部屋に閉じこもっている。

「あのファンキーなオヤジさんだよね? 確かに静かなの怖いね……反動あったりするんじゃない? 場所考えた方がいいよ……」
「あ、それは、広場に覆いを作ってもらうように、ドラム組にお願いしてきました」

さすがにドラゴンの大きさを考えると、屋内では無理だろうとなった。大型が多いユースールの解体屋は、他の町のものよりも広いとはいえ、ドラゴンを解体するには手狭だと思ったのだ。

「ええっ! お祭り騒ぎしたかった!」
「半日もかからないですから。それに、週末の結婚式がお祭り騒ぎになりますからね?」
「そうだった!」

覆いを作るだけなら、ドラム組は半日とせずに作り上げてしまう。いつもの屋台部隊が出るほどのことでもないだろう。とはいえ、これはお約束というか、屋台部隊はセットなので、半日だけでも楽しめるようにはしているはずだ。

「あ、見えてきましたよ。役割分担とか大丈夫ですか?」
「おうっ。俺ら、斬り込み係!」
「わたしら、遠距離からの砲撃係!」
「ううっ。俺ら、お宝回収班……」
「俺も……」
「私も……」
「え? 待って……お宝回収班多くない?」

悔しそうに涙しながら手を上げる者が多かった。

「やだなあ、マスター。巣まで行く間の魔獣も狩らないといけないんですよ? 人数多くなるのは当然でしょう!」
「え? あ、うん……ん? いやいや、ドラゴン倒してからでよくない?」
「「「ぶっちゃけ、ドラゴンにそんな人数いらない」」」
「うん……だと思った……」

じゃんけんで決まったらしい。当初の予定よりも、テンキが鍛え過ぎたため、実質三パーティで充分だった。それでも連れて来たのは、周りの間引き用だ。

ドラゴンという、絶対的な強者がいなくなるのだ。支配体系が変わる。それを考えて、魔獣をかなり間引く必要があった。

「は~い。じゃあ、そろそろ到着しますよ~。忘れ物しないように。作戦開始は三十分後。あそこに到達したら開始ですよ~」

あそこと指差された場所は、森の中の開けた場所だった。

「気配消して駆け足でお願いしますね」
「「「「「おうっ!」」」」」
「それでは、開始!」

ゆっくりと飛空挺が降りると、次々と冒険者達が飛び出していく。今回は飛ぶ相手ということで、飛び降りるのはなしだ。飛空挺は不可視の状態のまま着陸したため、突然人が現れたように見えるだろう。

彼らは隠密スキルを最大限発揮させ、森を駆けていく。

「うわ~……あの動きなに? 神官さん達みたい……」
「ルー君達に、教えてもらったみたいです。暗殺者も目指せると太鼓判押してもらってました」
「それは堂々と太鼓判押されちゃダメなやつだよ」
「あ、ルー君」

ルディエは、神官達数名と、先にここに来て偵察を行っていた。

「兄さん。あいつら余裕みたいなんだけど」
「うん。ものすごい笑顔で飛んで行ったね。今回は肉が欲しいだけだから、貴重部位とか皮とか気にせず倒せるから、気も楽なんじゃないかな」
「ああ、どうせ焼くしとか言ってたかも」
「高火力でも、そうそう炭にならないから」
「いつからあの子達、あんな戦闘狂っぽくなっちゃったんだろう……」
「何言ってるの? ユースールの人たちって、基本戦闘狂じゃん」
「……気付きたくなかったよ……」
「手遅れ」
「あ~……」

そのユースールの冒険者を束ねるのが自分だと自覚したタリスは、肩を落としていた。

そして、一時間後。たっぷり戦闘を楽しんだ冒険者達は、ドラゴン討伐を完了させていた。




**********
読んでくださりありがとうございます◎


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