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第十四章
635 ドラゴンよぉぉぉぉ
ドラゴン討伐が完了して数分後、お宝回収班が戻ってきた。
《あっ! 主~。いっぱいあったよ~!》
「パックンがあんな生き生きとしてるってことは、かなりの戦果があったのかな?」
「パックンちゃんが満足するほど!? どんな量!?」
手を元気に振って駆けてくるパックンを見て、コウヤは微笑ましく思い、タリスは戦慄した。
「ねえ。兄さん。本当にどれだけ収納出来るの? もう無限じゃない? いっぱいになったって聞いたことは?」
「そういえば、ないねえ」
「……」
ルディエは改めてパックンの様子を見てため息を吐いた。成長段階でもいっぱいになったと聞いたことがないのだ。相当だろう。
そして、パックンは立ち止まると、倒されたドラゴンに顔を向ける。
《あっ。あのドラゴンも収納していい!?》
「もちろん。ちゃんと余すとこなく持ち帰らないとね。翼切り落とされちゃってるけど、アレも素材としては良いから」
《翼がないと、本当にただのトカゲだねえ》
「ちょっと可哀想だったよ」
その時の冒険者の言葉がこれだ。
『ドラゴンなんざ! 飛べなきゃデカいトカゲと変わんねえんだよ!』
『翼寄越せっ! 降りて来た時がてめえの最期だ!!』
『飛び移っちまえば、こっちのもんだぜ! おら! 切り落としてやんよ!』
半数が囮になって地上近くまでおびき寄せ、半数が周りの木に登ってそこからドラゴンの背中や体に取り付いたのだ。
「あの子達の囮演技はどうかと思ったけど……」
「ウサミミ付けてたね。女性に人気のカチューシャ? だっけ? なんであんな軽装なのかと思ったら、作戦だったんだ……」
その時の囮達の怯えた演技がこれだ。
『いやぁぁ~、こわぁぁぁい』
『ドラゴンだわっ。ドラゴンよぉぉぉ』
『美味しく食べられちゃうの? 助けてぇぇぇ』
どうかと思った。
「なんで揃ってお姉仕様になるんだろうね? 走りながら囮組が服着てるから何かと思ったけど」
よっしゃ行くぞと森を駆け出した所で、何人かがゴソゴソとカバンから取り出しているなとは思っていた。
「スカートの子多かったね……今もまだ脱がないのなんで?」
よく見れば、ゴツイ冒険者やおじさん達がワンピースを着て笑っていた。そして、他の人たちもよくよく見ればいつもと装いが違うことに気づく。
「みんな、いつもの防具じゃないよね? アレ、初級の奴らの防具じゃん? ドラゴン討伐用に特別にあつらえたのかと思ってたけど……」
「ハンデだとか言ってましたね。いつものより軽くて動きやすいから、ハンデにならないな~とか笑っていましたけど」
「あいつら、もう防具いらないんじゃない?」
「ぼくもそう思う……」
タリスもうんうんと頷いた。そして、真面目な顔で告げる。
「ドラゴンに同情するとか、初めてしたよ……弱い者イジメは絶対ダメ!」
「強さ的には頂点近いはずなんだけどね……」
この世界でも上位の存在のはずだ。それをちっぽけな人族十数人で倒してしまったのだから恐ろしい。
「討伐の映像、ギルドで見えるようにしてたけど、あんな簡単に倒せるって見せるの良くなかったかもねえ。めちゃくちゃはしゃいでたし」
「ユースールがヤバいやつらの集まりって宣伝したようなものだね」
「えっ! また血の気の多い子達来ちゃうじゃん!」
以前の迷宮化の折の映像で、ユースールはすごいとの認識は持たれていた。しかし、あまりにも簡単に倒す所を見て、勘違いした者達がいたのだ。『俺たちもあれくらい……』と考える浅はかな者達が。これは治安が悪くなるぞと警戒した時があった。
「『自力でユースールまで来られないなら論外』とかマスターが煽ったやつ? 半分は道中で魔獣の餌になったやつだよね?」
「それは本当……ごめんなさい」
「餌が増えたので、その冬は森が落ち着いてましたねえ」
「ごめんて……」
別にルディエもコウヤも責めていない。冒険者は自己責任が基本だ。忠告を聞くか聞かないかも自己責任。よって、甘く見て忠告も無視した者達は、半分は魔獣の腹に納まった。
本部からは一応、タリスに注意が飛んだようだ。無為に冒険者の数を減らすことになったことについて。ちょっと小言が入っただけではある。
「だってねえ……バカが増えるの困るじゃん」
「兄さんをバカにしそうなのが来るのは許せない」
「痛い目見ないと分からないですからねえ」
結局は自己責任なんだから仕方がないということに落ち着くのだ。
そして、凱旋となった。もちろん、ワンピース姿の者達はそのままで。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
《あっ! 主~。いっぱいあったよ~!》
「パックンがあんな生き生きとしてるってことは、かなりの戦果があったのかな?」
「パックンちゃんが満足するほど!? どんな量!?」
手を元気に振って駆けてくるパックンを見て、コウヤは微笑ましく思い、タリスは戦慄した。
「ねえ。兄さん。本当にどれだけ収納出来るの? もう無限じゃない? いっぱいになったって聞いたことは?」
「そういえば、ないねえ」
「……」
ルディエは改めてパックンの様子を見てため息を吐いた。成長段階でもいっぱいになったと聞いたことがないのだ。相当だろう。
そして、パックンは立ち止まると、倒されたドラゴンに顔を向ける。
《あっ。あのドラゴンも収納していい!?》
「もちろん。ちゃんと余すとこなく持ち帰らないとね。翼切り落とされちゃってるけど、アレも素材としては良いから」
《翼がないと、本当にただのトカゲだねえ》
「ちょっと可哀想だったよ」
その時の冒険者の言葉がこれだ。
『ドラゴンなんざ! 飛べなきゃデカいトカゲと変わんねえんだよ!』
『翼寄越せっ! 降りて来た時がてめえの最期だ!!』
『飛び移っちまえば、こっちのもんだぜ! おら! 切り落としてやんよ!』
半数が囮になって地上近くまでおびき寄せ、半数が周りの木に登ってそこからドラゴンの背中や体に取り付いたのだ。
「あの子達の囮演技はどうかと思ったけど……」
「ウサミミ付けてたね。女性に人気のカチューシャ? だっけ? なんであんな軽装なのかと思ったら、作戦だったんだ……」
その時の囮達の怯えた演技がこれだ。
『いやぁぁ~、こわぁぁぁい』
『ドラゴンだわっ。ドラゴンよぉぉぉ』
『美味しく食べられちゃうの? 助けてぇぇぇ』
どうかと思った。
「なんで揃ってお姉仕様になるんだろうね? 走りながら囮組が服着てるから何かと思ったけど」
よっしゃ行くぞと森を駆け出した所で、何人かがゴソゴソとカバンから取り出しているなとは思っていた。
「スカートの子多かったね……今もまだ脱がないのなんで?」
よく見れば、ゴツイ冒険者やおじさん達がワンピースを着て笑っていた。そして、他の人たちもよくよく見ればいつもと装いが違うことに気づく。
「みんな、いつもの防具じゃないよね? アレ、初級の奴らの防具じゃん? ドラゴン討伐用に特別にあつらえたのかと思ってたけど……」
「ハンデだとか言ってましたね。いつものより軽くて動きやすいから、ハンデにならないな~とか笑っていましたけど」
「あいつら、もう防具いらないんじゃない?」
「ぼくもそう思う……」
タリスもうんうんと頷いた。そして、真面目な顔で告げる。
「ドラゴンに同情するとか、初めてしたよ……弱い者イジメは絶対ダメ!」
「強さ的には頂点近いはずなんだけどね……」
この世界でも上位の存在のはずだ。それをちっぽけな人族十数人で倒してしまったのだから恐ろしい。
「討伐の映像、ギルドで見えるようにしてたけど、あんな簡単に倒せるって見せるの良くなかったかもねえ。めちゃくちゃはしゃいでたし」
「ユースールがヤバいやつらの集まりって宣伝したようなものだね」
「えっ! また血の気の多い子達来ちゃうじゃん!」
以前の迷宮化の折の映像で、ユースールはすごいとの認識は持たれていた。しかし、あまりにも簡単に倒す所を見て、勘違いした者達がいたのだ。『俺たちもあれくらい……』と考える浅はかな者達が。これは治安が悪くなるぞと警戒した時があった。
「『自力でユースールまで来られないなら論外』とかマスターが煽ったやつ? 半分は道中で魔獣の餌になったやつだよね?」
「それは本当……ごめんなさい」
「餌が増えたので、その冬は森が落ち着いてましたねえ」
「ごめんて……」
別にルディエもコウヤも責めていない。冒険者は自己責任が基本だ。忠告を聞くか聞かないかも自己責任。よって、甘く見て忠告も無視した者達は、半分は魔獣の腹に納まった。
本部からは一応、タリスに注意が飛んだようだ。無為に冒険者の数を減らすことになったことについて。ちょっと小言が入っただけではある。
「だってねえ……バカが増えるの困るじゃん」
「兄さんをバカにしそうなのが来るのは許せない」
「痛い目見ないと分からないですからねえ」
結局は自己責任なんだから仕方がないということに落ち着くのだ。
そして、凱旋となった。もちろん、ワンピース姿の者達はそのままで。
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