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第六章 新教会のお披露目
193 えっと……お話します?
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コウヤが転移すると言っても、ベニは特に驚かなかった。実はベニ達も使えるのだ。ただし、コウヤのように、無条件でどこでもというわけにはいかない。
「まさか…….これが転移……っ」
突然景色が変わり、呆然と口にするリウムにコウヤはのほほんと説明した。
「ベニ、大司教もできますよ。聖と闇を極めると行ったことのある聖域から聖域への転移が可能になるんです」
「そ、そんなことが!?」
今までは聖域を作れても、安定させることは難しく、ベニ達も転移をしたことはなかった。だが、今はレナルカのタマゴの殻が核として使え、ユースールの教会も聖域化している。
今回、ベニ達がついて来た理由は、セイだけが若返ってズルイというだけの理由ではなく、あの場所を登録するためだ。
さきほどは聖域からではなかったが、そういうこととして誤魔化しておく。
「ふふ。詳しい説明は落ち着いてからにしましょう」
ここは城の地下。聖域となった儀式場だ。リウムと話をするのが落ち着くまで待っていたのだろう。オスロリーリェが抱き着いてきた。
「久し振りだねオスロー」
《……ん……外……出る?》
流石にリウム達に儀式場の中に居てもらうわけにはいかない。食事や睡眠も取りたいだろう。なので、コウヤが休憩にくる官吏達に用意した休憩室へ向かうことにする。
「ここは城の儀式場なので、いつまでも居ると問題になります。出た所に休憩室がありますから、そこに移動しますね」
「あ、はい……」
「もう少し頑張ってください」
リウムの後ろに続く神官達に向けて言えば、静かに頷いていた。
オスローが扉を半分ほど開けてくれる。数歩出た所で、階段のある方から声がかかった。
「コウヤ様」
「ん? あ、ニールさんっ」
「どうか、ニールと」
「あ、うん。ニール。休憩?」
笑顔で訂正されたので、こちらも笑顔で返しておく。
「コウヤ様が来られている気がしまして、来てみました」
それはすごいなと素直に感心しておく。
「へえ。あ、この人たち、神教国の教会の人たちなんだけど……」
「保護されたのですね。皆さん、休息が必要でしょう。あちらの部屋へご案内いたします」
「え、あ、うん。よく分かるね」
「恐れ入ります」
びっくりするくらいニールは察しが良い。そういえば、コウヤが王族の血を引いているということもきっかけがあったとはいえすぐに察していた。彼はこういう察する力が鋭いのかもしれない。
「よろしければ、こちらの方々は私にお任せください。コウヤ様はまだ他にやることがあるのでしょう」
「そう……だね。うん。任せてもいいかな」
察しが良すぎるというのに驚いて、色々考えそうになるが今は横に置いておこう。
「でも、お仕事は……」
「急を要する仕事はございません。こちらが落ち着きましたら一度上に戻ります。お気になさらず、コウヤ様はしたいことをなさってください」
「……わかった。お願いね」
「この場合は、任せると言っていただければ」
「そっか……うん。ここは任せる」
「承知しました」
丁寧に礼をしてからリウム達を先導しようとするニールに、申し訳ないと思いつつもついでのように暖かいスープの入った鍋を渡す。
「ニールもよかったら」
「ありがたくいただきます」
いくつものカップをリウムが受け取り、ぞろぞろと休憩室へ入って行った。
それを見送ったコウヤはオスロリーリェに声をかける。
「オスローもよろしくね」
《ん……好きにして……》
照れたようだ。少し俯いたオスロリーリェの頭をポンポンと撫で、オスローもスープよかったら飲んでねと告げてから、コウヤはベニの元へ戻った。
「お待たせ、ばあさま」
ベニとテンキは、のんびりとお茶をして待っていた。
「早かったね。大丈夫そうかい?」
「うん。オスローと、ニールっていう宰相の第三補佐官に任せてきた」
「それは良かったのかい?」
「任せてって」
「ならいいさ。さてと、抜けた子達の交渉をしようかねえ」
「あ、そっか……なら、テンキに先に中央の教会に行ってもらう?」
リウム達の状態を見るに、早ければ早いほどいいだろう。ならば、テンキに先に行って選別しておいてもらうべきだ。
「そうさね。それがいいかもしれないねえ」
《お任せください。先ほど、主様が行かれた場所は確認できましたので、私でも送れます。返事を聞き次第連れて行きますが、よろしいですか》
テンキはコウヤの眷属だ。コウヤが行った場所に行くことは可能。問題なく聖域転移も使える。わざわざコウヤを待つ必要はないだろう。任せることにした。
「気をつけてね」
《はっ!》
そうして、テンキは窓からひらりと外へ飛び出していった。
「さてと、ではこちらも行くかねえ」
「第一司教の所だね」
ベニの後に続き、部屋を出てずんずんと迷うことなく奥へ進んでいく。途中で何度も止めようとする者たちがいたが、全て無視だ。
だが、もう少しで目的の部屋というところで、見るからにカタギではない男たちがわらわらと出てきた。
「侵入者だ! 始末しろ!」
「あれは、第二司教のようだねえ」
「なら、あの人とこの男の人たちは俺が相手するよ。ばばさまはお話してきて」
「そうさせてもらおうかねえ。どのみち、コウヤには見せたくないものもあるし」
昼間から女性とお楽しみ中の司教の所へ、ベニはコウヤを連れて行きたくなかった。なので丁度良いとばかりに向かってくる男たちをスススっと避けて部屋へ向かった。
慌てる男達に、コウヤがするりと武器を出してそれを床に打ち付ける音で注意を引く。
「こっちを気にしてくださいね。まだ優しくしてあげられますから♪」
「「「……」」」
コウヤの手元でジャラっ、ゴリっという音が響く。それは鎖で繋がれた先にトゲトゲした鉄球が付いている。床に打ち付けられたその鉄球により、床はへこんでいた。
そんな間違いなく重量のある鉄球を、コウヤはおもちゃのように軽く持ち上げてヒュンヒュンと頭上で回しはじめた。
「「「……っ」」」
「さて、お話が苦手そうな方たちのようですし、あなた方の流儀に則って、物理的? 肉体的? なお話をしましょうか」
「「「っ!? まっ」」」
「ま?」
可愛らしく首を傾げながら、コウヤはそれを容赦なく男達へと放った。
「「「ぎゃぁぁぁっ」」」
「一応、武器を捨てたら降参とみなしますからね」
「「「まっ、まっ」」」
「ママ? お母様がどこかにいらっしゃるんですか?」
見回しながらコウヤの手は再びヒュンヒュンと回した後に鉄球を男達に放っていた。
「「「うぎゃぁぁぁ!!」」」
ドコン!!
これは部屋から聞こえてきた音だ。
「女性が居ませんよね? あ、もしかして、中に居るんですか!?」
それは大変だと、さきほど地響きが起きるほど大きな音がした部屋の方へ目を向けながらまたヒュンヒュンと回してから鉄球を放った。
「「「っ、待ってくださぁぁい!!」」」
「あ、待ってってことだったの? ごめんなさい」
そうだったのかと鉄球を慌てて引き戻したコウヤは、目の前で武器を放り投げてカタカタと震える男達や、壁や床にめり込んで気絶してしまった者たちに素直に謝った。
「えっと……お話します?」
「「「っ、お願いします……っ」」」
泣いていた。
因みに、第二司教だろうと思われる男は、腰を抜かして壁際で震えている。そんな中、彼らの背を向ける部屋からは悲鳴と地響きが何度か聴こえていた。だが、それらは皆、必死で目を背け、聞こえないふりを決め込むのだった。
************
読んでくださりありがとうございます◎
次回、三日空きます。
今年もよろしくお願いします!
「まさか…….これが転移……っ」
突然景色が変わり、呆然と口にするリウムにコウヤはのほほんと説明した。
「ベニ、大司教もできますよ。聖と闇を極めると行ったことのある聖域から聖域への転移が可能になるんです」
「そ、そんなことが!?」
今までは聖域を作れても、安定させることは難しく、ベニ達も転移をしたことはなかった。だが、今はレナルカのタマゴの殻が核として使え、ユースールの教会も聖域化している。
今回、ベニ達がついて来た理由は、セイだけが若返ってズルイというだけの理由ではなく、あの場所を登録するためだ。
さきほどは聖域からではなかったが、そういうこととして誤魔化しておく。
「ふふ。詳しい説明は落ち着いてからにしましょう」
ここは城の地下。聖域となった儀式場だ。リウムと話をするのが落ち着くまで待っていたのだろう。オスロリーリェが抱き着いてきた。
「久し振りだねオスロー」
《……ん……外……出る?》
流石にリウム達に儀式場の中に居てもらうわけにはいかない。食事や睡眠も取りたいだろう。なので、コウヤが休憩にくる官吏達に用意した休憩室へ向かうことにする。
「ここは城の儀式場なので、いつまでも居ると問題になります。出た所に休憩室がありますから、そこに移動しますね」
「あ、はい……」
「もう少し頑張ってください」
リウムの後ろに続く神官達に向けて言えば、静かに頷いていた。
オスローが扉を半分ほど開けてくれる。数歩出た所で、階段のある方から声がかかった。
「コウヤ様」
「ん? あ、ニールさんっ」
「どうか、ニールと」
「あ、うん。ニール。休憩?」
笑顔で訂正されたので、こちらも笑顔で返しておく。
「コウヤ様が来られている気がしまして、来てみました」
それはすごいなと素直に感心しておく。
「へえ。あ、この人たち、神教国の教会の人たちなんだけど……」
「保護されたのですね。皆さん、休息が必要でしょう。あちらの部屋へご案内いたします」
「え、あ、うん。よく分かるね」
「恐れ入ります」
びっくりするくらいニールは察しが良い。そういえば、コウヤが王族の血を引いているということもきっかけがあったとはいえすぐに察していた。彼はこういう察する力が鋭いのかもしれない。
「よろしければ、こちらの方々は私にお任せください。コウヤ様はまだ他にやることがあるのでしょう」
「そう……だね。うん。任せてもいいかな」
察しが良すぎるというのに驚いて、色々考えそうになるが今は横に置いておこう。
「でも、お仕事は……」
「急を要する仕事はございません。こちらが落ち着きましたら一度上に戻ります。お気になさらず、コウヤ様はしたいことをなさってください」
「……わかった。お願いね」
「この場合は、任せると言っていただければ」
「そっか……うん。ここは任せる」
「承知しました」
丁寧に礼をしてからリウム達を先導しようとするニールに、申し訳ないと思いつつもついでのように暖かいスープの入った鍋を渡す。
「ニールもよかったら」
「ありがたくいただきます」
いくつものカップをリウムが受け取り、ぞろぞろと休憩室へ入って行った。
それを見送ったコウヤはオスロリーリェに声をかける。
「オスローもよろしくね」
《ん……好きにして……》
照れたようだ。少し俯いたオスロリーリェの頭をポンポンと撫で、オスローもスープよかったら飲んでねと告げてから、コウヤはベニの元へ戻った。
「お待たせ、ばあさま」
ベニとテンキは、のんびりとお茶をして待っていた。
「早かったね。大丈夫そうかい?」
「うん。オスローと、ニールっていう宰相の第三補佐官に任せてきた」
「それは良かったのかい?」
「任せてって」
「ならいいさ。さてと、抜けた子達の交渉をしようかねえ」
「あ、そっか……なら、テンキに先に中央の教会に行ってもらう?」
リウム達の状態を見るに、早ければ早いほどいいだろう。ならば、テンキに先に行って選別しておいてもらうべきだ。
「そうさね。それがいいかもしれないねえ」
《お任せください。先ほど、主様が行かれた場所は確認できましたので、私でも送れます。返事を聞き次第連れて行きますが、よろしいですか》
テンキはコウヤの眷属だ。コウヤが行った場所に行くことは可能。問題なく聖域転移も使える。わざわざコウヤを待つ必要はないだろう。任せることにした。
「気をつけてね」
《はっ!》
そうして、テンキは窓からひらりと外へ飛び出していった。
「さてと、ではこちらも行くかねえ」
「第一司教の所だね」
ベニの後に続き、部屋を出てずんずんと迷うことなく奥へ進んでいく。途中で何度も止めようとする者たちがいたが、全て無視だ。
だが、もう少しで目的の部屋というところで、見るからにカタギではない男たちがわらわらと出てきた。
「侵入者だ! 始末しろ!」
「あれは、第二司教のようだねえ」
「なら、あの人とこの男の人たちは俺が相手するよ。ばばさまはお話してきて」
「そうさせてもらおうかねえ。どのみち、コウヤには見せたくないものもあるし」
昼間から女性とお楽しみ中の司教の所へ、ベニはコウヤを連れて行きたくなかった。なので丁度良いとばかりに向かってくる男たちをスススっと避けて部屋へ向かった。
慌てる男達に、コウヤがするりと武器を出してそれを床に打ち付ける音で注意を引く。
「こっちを気にしてくださいね。まだ優しくしてあげられますから♪」
「「「……」」」
コウヤの手元でジャラっ、ゴリっという音が響く。それは鎖で繋がれた先にトゲトゲした鉄球が付いている。床に打ち付けられたその鉄球により、床はへこんでいた。
そんな間違いなく重量のある鉄球を、コウヤはおもちゃのように軽く持ち上げてヒュンヒュンと頭上で回しはじめた。
「「「……っ」」」
「さて、お話が苦手そうな方たちのようですし、あなた方の流儀に則って、物理的? 肉体的? なお話をしましょうか」
「「「っ!? まっ」」」
「ま?」
可愛らしく首を傾げながら、コウヤはそれを容赦なく男達へと放った。
「「「ぎゃぁぁぁっ」」」
「一応、武器を捨てたら降参とみなしますからね」
「「「まっ、まっ」」」
「ママ? お母様がどこかにいらっしゃるんですか?」
見回しながらコウヤの手は再びヒュンヒュンと回した後に鉄球を男達に放っていた。
「「「うぎゃぁぁぁ!!」」」
ドコン!!
これは部屋から聞こえてきた音だ。
「女性が居ませんよね? あ、もしかして、中に居るんですか!?」
それは大変だと、さきほど地響きが起きるほど大きな音がした部屋の方へ目を向けながらまたヒュンヒュンと回してから鉄球を放った。
「「「っ、待ってくださぁぁい!!」」」
「あ、待ってってことだったの? ごめんなさい」
そうだったのかと鉄球を慌てて引き戻したコウヤは、目の前で武器を放り投げてカタカタと震える男達や、壁や床にめり込んで気絶してしまった者たちに素直に謝った。
「えっと……お話します?」
「「「っ、お願いします……っ」」」
泣いていた。
因みに、第二司教だろうと思われる男は、腰を抜かして壁際で震えている。そんな中、彼らの背を向ける部屋からは悲鳴と地響きが何度か聴こえていた。だが、それらは皆、必死で目を背け、聞こえないふりを決め込むのだった。
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