元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十章

403 小悪魔かな?

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正座したエルフたちの前で、コウヤは静かに続けていた。

「ベニばあさまやジンクおじさんに任せたのは、あなた達が自分よりも年下の者に対して、敬意を払えず、話も聞かないと思ったから……まあ、それ以前に、種族で下に見てたみたいだけど」

エルフである彼らは、青年姿ではあるが、百は越えている。自分たちの方が年上であり、それだけ優れた種族であるという驕りは、彼らのように若い者ほど強いと聞いていた。

「ここにいるジンクおじさんも、あなた方を諭しに来たベニばあさまも、ずっと年上だよ? 見た目で判断するのは良くないね」
「……え……だっ……彼は、人族では……」

これに答えたのは、ジンク本人だった。

「俺は神子だ。それも、神薬を飲んだ。だから、お前らのじいさん、ばあさんよりもずっと年上だ」
「……神子……」

全員が、信じられないという目をジンクに向ける。だが、鑑定出来る者も、そこではじめて鑑定出来ないことに気付いたのだろう。レベルはジンクの方が高い。

「っ、鑑定できない……」

人族がおよそ一生の内に到達出来るレベルの最高値には、彼らは届いている。年月による経験の差はどうにもならないものだ。だから、鑑定などしなくても、人族ならば自分たちよりも下だと思ってきたのだろう。

彼らが弟子入りしていた師匠達も、技術はあっても、レベルを上げていくために必要となる時間は少ない。だから、レベルだけは彼らの方が高くなっていた。それが余計に彼らを増長させたのだ。

ジンクは屈み込み、顔を顰める。

「お前らは、自分たちを常に上に考えてるみたいだが、何がお前らをそんな傲慢にした?」
「俺もそれが一番気になるなあ」
「「「「「っ……」」」」」

ジンクとコウルリーヤに見つめられることに、エルフたちは落ち着きを無くしていく。

何もかもを見透かすような目。その通りだった。

「……ジンクおじさん。俺の目には『悪神に魅入られた者』って称号が視えるんだけど」
「……俺にも薄ら視えるわ……悪神? ソレって……アレか?」
「うん。アレかな?」
「「「「「……っ」」」」」

アレ、ソレで会話されて、エルフたちは大変不安そうだ。もちろんわざとやっている。

「だから、あそこを壊そうとしてたってことかな? ってことは……壊すと出てくる?」

魅入られているということは、その悪神にとって都合の良い行動を、彼らにさせている可能性が高い。

「なるほど。ってことになるなあ。そんなら……予定通り、とりあえず封印するか」

教会を破壊することを望むのなら、蓋をしてしまおう。少なくとも、こちらの対策や準備が完全に整うまでは。

「それが一番だよねっ。臭いものには蓋をしちゃおう♪ 嫌がらせにもなるしね~♪」
「コウヤ君……怒ってる?」
「だって、レナルカを泣かせてるからね。吊るさないとダメでしょ?」

コテンと輝く笑顔で首を傾げて見せるコウヤ。青年姿なのに、無邪気さが似合う。ジンクは思わず頬が緩んだ。

「小悪魔かな?」
「ん?」
「「「「「っ……」」」」」

エルフたちも顔を赤くしていた。

元邪神で小悪魔なんて最強だなとジンクは内心笑っている。

「さてと、それじゃあ、先ずは……」

コウヤは管理者権限を行使する。それと同時に、術式を組む。

「師匠さんたちのスキルを……返還」

奪うために使った術式を辿り、それを解析してそのまま返還するように作り替えて発動する。失敗していても、管理者権限を使えば、盗られたスキルをもう一度取得させることは可能だ。きちんと盗られていたスキルは覚えた。

だが、心配は要らなかったようだ。きちんとサニール達に戻ったという感覚があった。

「それで、持っているスキルとレベルをリセット」
「え? リセット?」

ジンクが、そんなことが出来るのかと驚く。これにコウヤは頷いた。

「うん。消去は出来ないんだ。その人が生きてきた経験に基づくものだからね。ただ、リセットすると、もう一度習得しないと使えない。思い出せないっていう……一種の記憶喪失みたいな感じにできるんだよ」

体が全く覚えていない状態に戻るということ。

「へえ……え? 全部?」
「うん♪  全部♪」

ニコリと笑顔。剣や弓も全部、何も知らない子どもと同じ状態。散々バカにして来た人族よりも何も出来ない状態になった。

「うわ~……お気の毒さま」
「「「「「……」」」」」

残念ながら、エルフたちは話について来られていないようだった。

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二日空きます。
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