元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十章

412 入れ込みます

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魔獣達と共闘するなど、普通は考えられないことだ。各国の王達も驚きに絶句している。もちろん、配信されている各国の会議室でも沈黙が落ちているが、それは確認できない。

コウルリーヤがコウヤだと知っていることと、補佐のニールがいつも通りであることで、代表の中でベルナディオ宰相が一番早く落ち着きを取り戻したようだ。そして、宰相としての立場故か、話を進めようと口を開く。代表として作戦なども聞いておきたいとの判断だ。

「それが可能なのでしたら戦力としては良いかもしれませんが、混戦が予想されますし、迷宮のものと、区別も付きにくいのではありませんか? 戦いの中でその判断はできますでしょうか」

冷静に、この問題となる所を指摘できるのは、王族が冒険者もするトルヴァランの宰相だからだろう。ベルナディオもミラルファに連れられて迷宮に行ったことがあるというのは、後日聞くことになる。

「そこなんですよね~。今回は従魔術師の方たちも混ざりますし」

それもあったとタリスがハッとする。

「確かにっ。従魔術師も混ぜて戦うのは経験ほとんどないよね。経験してるのって、ユースールの子達ぐらい?」
「ですね。けど、それもパーティ単位ですから、いくつものパーティが入り乱れてとなるとまた違うかなと」

コウヤは顎に人差し指を立てて思案する。連携が取れるかも不安なのだ。そこに従魔が入る。それはとても複雑な状況になりそうだ。

タリスもそこは考えていなかったと思案顔。

「一発で従魔と味方の魔獣を判断か~……う~ん。高ランクの子達は問題ないだろうけどねえ」
「ええ。それに王都で仕事していて思いましたけど、やっぱりパーティでの戦いに慣れてる人たちばかりじゃないです」

今回はそれこそ他国で活動している冒険者達も一緒だ。ユースールの者やトルヴァラン王都で活動する人たちだけではない。

コウヤは王都の人たちのことも大体把握してきている。そこで知ったのは、三人ほどのパーティは多いが、六人のフルパーティが意外と少ないことだった。

「……慣れていれば問題ないのですか?」

未だ代表達もコウルリーヤの存在にそわそわと落ち着かないので、ベルナディオが疑問を上げていってくれる。大変助かる。

「パーティ戦に慣れた冒険者は、自身の味方の位置や行動を感覚で把握できるんです。これに慣れてくると、護衛の時とか敵と味方の位置を正確に把握できるようになります。その感覚を養うために、パーティでの戦闘講習もやるんですよ。感覚が良い人だと、二日くらいでしょうか。分かるようになります」

これにシーレスが身を乗り出す。

「それっ、その講習は……多分ユースールだけですね……」
「え? あ~、そういえば、冒険者の方に相談されて、俺が勝手に増やしたやつかもですっ。あ、でもちゃんと報告は上げました。ただ、試験的にやりますってやつなので、上まで行ってないかもしれませんね」
「それいつ!? 僕の時だよね……」

タリスが落ち込む。ユースール関係で見落としていたものが多いというのは、ギルドマスターをするようになってから気付いたらしい。最初の頃は特に、密かに補佐であったエルテと二人で、反省する毎日だったという。

「俺もその後の進捗や効果の報告書を上げられていなかったので……」

すみませんとコウヤが謝る前に、タリスとシーレスが全力で手を振る。

「いやいや、それアレでしょ? あのバカ共のせいでしょ? コウヤちゃんの仕事量じゃそこまで無理だからっ」
「状況知ってますからっ。寧ろ、報告書上げさせて申し訳ないっ。あのバカ共は猛省させてますからっ。責任持って一生反省させますからねっ」

必死だった。お陰で代表達に更なる疑問と混乱が起きているとは気付かない。彼らの頭の中は『コウルリーヤ様が冒険者ギルドで報告書? どうゆうこと?』と疑問が渦巻いていた。

そんなことは気にせず、コウヤ達は続ける。そこでコウヤは閃いた。

「あっ、講習で思い出しました。良いのがあります!」

亜空間から取り出したのは腕輪だ。幅は三センチくらい。銀色で飾り気もないものだ。

「これ、子ども達が戦闘訓練したいって言うので、作ってみたんです。これを着けている人同士の攻撃は弾かれるという魔導具なんですけど、従魔術師が着けていれば、契約している従魔も適応されるようにしてあります」

従魔術師になった子ども達が、自分たちも戦いたいと言っていたのだ。従魔であるジェットイーグル達は強い。その戦いも見て、自分達もと思ったのだろう。

だが、従魔は強いが、子ども達は冒険者でもないし、一般人レベルだ。それを子ども達は理解していた。そこで訓練したいと相談されたのだ。

「この術式をギルドカードに適応させます。どのみち、登録作業しますよね?」
「え、あ、はい。そうですね」
「そこに入れ込みます」

緊急の依頼の時や、集団暴走スタンピードの時にも、参加する者はカードをスキャンする。改札口でピッとカードをタッチするように、魔導具を通すのだ。

これにより、その時の討伐した魔獣の数が正確に把握できるようになる。貢献度の計算もそれによりなされていた。終了後に報酬の受け渡しで再びスキャンし、そこで解除となる。

なんでそんなことまでコウルリーヤ神が知っているのかと、未だ代表達は混乱気味だ。エリスリリア達が、これはバレるのも時間の問題かなと考えている間にも、コウヤ達冒険者ギルド組の話は続く。

「これで、従魔や冒険者同士で連携が取れずに負傷ということは避けられます。連携自体は、リーダー役に頑張ってもらいましょう」
「そうなりますと、ユースールの方に大半をお願いすることになるかと……」

シーレスが申し訳なさそうに頼んできた。そこに、ベニが口を挟む。

「神官たちも出して補佐させよう」
「っ、お願いいたします!」

物凄く嬉しそうだ。聖魔教の神官達が頼りになることはシーレスもよく分かっていた。

「う~ん。でも結局、参戦する魔獣の方はどうするの?」

タリスの質問に、コウヤは答える。

「協力してくれる魔獣は、賢い個体が多いです。なので、人は襲いませんし、敵を見誤りません。彼らは迷宮の魔獣を見抜けるそうです。心配なのは連携が取れないことですが、こちらが合わせるしかないですね。普段戦っている相手ですし、合わせられないことはないと思います」

冒険者達はそうは見えなくても勤勉だ。相対してきた魔獣の行動パターンは、体が覚えている。案外、他の冒険者達との連携よりも取りやすいかもしれない。

「もし、魔獣達が了承するなら、仮契約をしても良いかもしれません」
「それって、従魔の? え? 仮契約なんてできるの!?」
「できますよ? ただ、普段は温厚な子としか交渉もできませんけどね」

新たな知識にタリス達は目を丸くしていた。

そんなコウヤ達の後ろでは、もはやコウルリーヤ=コウヤだと半分確信を持ち始めていた二人のコウヤの侍従候補である王子達が、不安そうに目配せ合い、ニールへ確認の視線を向けているとは、誰も気付かなかった。

やはりバレるのは時間の問題だ。

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読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
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