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第十二章
479 推奨しよう
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この選抜戦に参加しない騎士や兵達、魔法師、更に、仕事を終わらせ、駆けつけた文官や貴族達も観戦しているようだ。
始まった選抜戦に大盛り上がりだった。
「これ、王都の教会の食堂で見えるようにしてるんだっけ……?」
あまり公にやるものではないが、それでも盛り上がりは必至だということで、食堂にだけ映像モニターを設置したと今朝方ニールから聞いていた。
「はい……ここまで盛り上がると、心配ですね……」
ニールが不安そうにする。
普段の訓練ではこうはならないし、相手が同じ騎士ではなく、冒険者や神官、更には、実力を隠していた文官とあって、予想外の戦いに大いに沸いていたのだ。
ここに、ルディエへと報告が入ったようだ。
「ん……食堂に人が集まり過ぎてるみたい。それで、外にも設置したみたい」
「……そうなるよね……」
いくら食堂には特殊な空間拡張が施されているとはいえ、最近は足を運ぶ者も多く、冒険者達だけでなく、王都住民達もよく来る。
そんな彼らが黙っていられるはずもなく、人が人を呼び、集まっているとのこと。
少し前に迷宮化の討伐で『観戦する』という楽しみを知った人たちだ。じっとしていられるわけがない。
「心配ないよ。神官達に対応させてるから」
「うん。頼りにしてるよ」
「っ、ん」
こんな時でも、事故など起きないよう、交通整理から誘導まできちんと出来るのが神官達だ。彼らは本当に勤勉で、頼りになる。
それをルディエに伝えれば、コウヤ限定で照れ屋になるルディエが、顔を少し赤らめて小さく頷いた。
今やっているのは、最終予選のようなもの。
既に篩にはかけた後らしく、これでも人数は絞られているという。
今やっているのは、ランダムで選ばれた五人のグループでの対戦だ。数分、話し合いの場が設けられ、五分から十分の対戦が行われる。
広い訓練場で六ペアずつ。それも、決められた範囲内での攻撃と防御だ。建物内を意識したもので、試合に出ない魔法師達が結界を張っている。
更には、監督する者がぐるりとそこを囲んでいた。
そんな中、気になるのが戦っている魔法師達だ。
「魔法師の人たちはハンデ付き?」
見ていれば、かなり威力を抑えた限定的な魔法や魔法ではない武器での戦いをしているように見えた。本当に『魔法剣士』が生まれそうだ。
「町中や建物内での対応が主ですので、大きな魔法は使えないことになっています」
「あ、そっか……」
魔法一発で解決とはいかない。よって、それこそ魔法剣士スタイルを身につけた者が選ばれているらしい。影騎士も参戦しない。
「あっ、あの辺は連携が上手いね」
「冒険者が入ると良いようですね」
「でもそうか……冒険者は別の人とも組むことあるし、合わせるのに慣れてるのかも」
「それはありそうですね……」
騎士はどうしても、実力や年功序列で指揮官を選びがちだ。それも、あまり上には意見しない。
それに比べて冒険者は、指揮官に遠慮して本来の実力が出せないなんてことになれば危険だ。よって、実力で指揮官を選んでも、自分達の意見はしっかり言うし、自分の戦い方の活かし方の説明も出来る。
これを聞いていたアビリス王が、肘掛けに肘を突いて、思案する。
「なるほど……冒険者の戦い方などとは別物だと思っていたが……活かせる所もありそうだな……あの辺りは、私にも戦い辛そうに見える。あそこは、騎士と魔法師のグループのようだからな」
「連携慣れしてないんですね」
ここにジルファスも口を挟んだ。
「魔法師が訓練に乱入するのも、きちんと受け入れるべきだったかもしれませんね」
「そうだな……うむ。アルキスに伝えておいてくれ。今後は、魔法師も騎士の訓練に入れ、連携できるようにと」
「はい」
「それと……冒険者を兼任するのも、推奨しよう」
今はまだ、魔法師達も騎士達も、自分達の仲間同士で冒険者活動をしているが、冒険者達のパーティに入れてもらうなどしていくようになれば、これらも身に付いていくだろう。
何事も経験し、自分達で気付いていくのが一番良い。
「ですね……あの辺りの者などは、迷宮化の討伐に参加していました。だからでしょうか、上手く連携も出来ているようです」
「うむ。良い経験だったようだな」
「そのようですね」
こちら側も考える機会となったようだ。
そうして、全ての対戦が終わると、アルキスが拡声器で説明する。
『一通り戦ってもらったが、勝ち負けで選抜するものではない。それぞれの戦い方を見させてもらった。あくまで個人を見るものだ。今から集められる者が、最終予選の通過者となる』
戦ったグループでの採用ではなく、その中から抜き取る形らしい。よって、負けたから、引き分けたから不採用とはならないとのことだ。
どうりで、結界の周りに監督する者が多いはずである。
名を呼ぶのではなく、選考側の魔法師や騎士、神官達が近付いて行って、指示していく。
『以上、こちら側に居る百二十人が通過者だ。通らなかった者は、課題もあるが、それでも選ばれた実力者であったことは変わりない。今後の訓練などで成長した暁には、特別採用もあるので、より精進を続けてもらいたい』
「「「「「おおっ」」」」」
これでダメというわけではない。そう聞いて、落ち込むよりも闘志が湧いたようだ。
『では、休憩と昼食を挟んで、本戦を始める!』
「「「「「おおっ!!」」」」」
まだまだやる気は十分だった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
始まった選抜戦に大盛り上がりだった。
「これ、王都の教会の食堂で見えるようにしてるんだっけ……?」
あまり公にやるものではないが、それでも盛り上がりは必至だということで、食堂にだけ映像モニターを設置したと今朝方ニールから聞いていた。
「はい……ここまで盛り上がると、心配ですね……」
ニールが不安そうにする。
普段の訓練ではこうはならないし、相手が同じ騎士ではなく、冒険者や神官、更には、実力を隠していた文官とあって、予想外の戦いに大いに沸いていたのだ。
ここに、ルディエへと報告が入ったようだ。
「ん……食堂に人が集まり過ぎてるみたい。それで、外にも設置したみたい」
「……そうなるよね……」
いくら食堂には特殊な空間拡張が施されているとはいえ、最近は足を運ぶ者も多く、冒険者達だけでなく、王都住民達もよく来る。
そんな彼らが黙っていられるはずもなく、人が人を呼び、集まっているとのこと。
少し前に迷宮化の討伐で『観戦する』という楽しみを知った人たちだ。じっとしていられるわけがない。
「心配ないよ。神官達に対応させてるから」
「うん。頼りにしてるよ」
「っ、ん」
こんな時でも、事故など起きないよう、交通整理から誘導まできちんと出来るのが神官達だ。彼らは本当に勤勉で、頼りになる。
それをルディエに伝えれば、コウヤ限定で照れ屋になるルディエが、顔を少し赤らめて小さく頷いた。
今やっているのは、最終予選のようなもの。
既に篩にはかけた後らしく、これでも人数は絞られているという。
今やっているのは、ランダムで選ばれた五人のグループでの対戦だ。数分、話し合いの場が設けられ、五分から十分の対戦が行われる。
広い訓練場で六ペアずつ。それも、決められた範囲内での攻撃と防御だ。建物内を意識したもので、試合に出ない魔法師達が結界を張っている。
更には、監督する者がぐるりとそこを囲んでいた。
そんな中、気になるのが戦っている魔法師達だ。
「魔法師の人たちはハンデ付き?」
見ていれば、かなり威力を抑えた限定的な魔法や魔法ではない武器での戦いをしているように見えた。本当に『魔法剣士』が生まれそうだ。
「町中や建物内での対応が主ですので、大きな魔法は使えないことになっています」
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魔法一発で解決とはいかない。よって、それこそ魔法剣士スタイルを身につけた者が選ばれているらしい。影騎士も参戦しない。
「あっ、あの辺は連携が上手いね」
「冒険者が入ると良いようですね」
「でもそうか……冒険者は別の人とも組むことあるし、合わせるのに慣れてるのかも」
「それはありそうですね……」
騎士はどうしても、実力や年功序列で指揮官を選びがちだ。それも、あまり上には意見しない。
それに比べて冒険者は、指揮官に遠慮して本来の実力が出せないなんてことになれば危険だ。よって、実力で指揮官を選んでも、自分達の意見はしっかり言うし、自分の戦い方の活かし方の説明も出来る。
これを聞いていたアビリス王が、肘掛けに肘を突いて、思案する。
「なるほど……冒険者の戦い方などとは別物だと思っていたが……活かせる所もありそうだな……あの辺りは、私にも戦い辛そうに見える。あそこは、騎士と魔法師のグループのようだからな」
「連携慣れしてないんですね」
ここにジルファスも口を挟んだ。
「魔法師が訓練に乱入するのも、きちんと受け入れるべきだったかもしれませんね」
「そうだな……うむ。アルキスに伝えておいてくれ。今後は、魔法師も騎士の訓練に入れ、連携できるようにと」
「はい」
「それと……冒険者を兼任するのも、推奨しよう」
今はまだ、魔法師達も騎士達も、自分達の仲間同士で冒険者活動をしているが、冒険者達のパーティに入れてもらうなどしていくようになれば、これらも身に付いていくだろう。
何事も経験し、自分達で気付いていくのが一番良い。
「ですね……あの辺りの者などは、迷宮化の討伐に参加していました。だからでしょうか、上手く連携も出来ているようです」
「うむ。良い経験だったようだな」
「そのようですね」
こちら側も考える機会となったようだ。
そうして、全ての対戦が終わると、アルキスが拡声器で説明する。
『一通り戦ってもらったが、勝ち負けで選抜するものではない。それぞれの戦い方を見させてもらった。あくまで個人を見るものだ。今から集められる者が、最終予選の通過者となる』
戦ったグループでの採用ではなく、その中から抜き取る形らしい。よって、負けたから、引き分けたから不採用とはならないとのことだ。
どうりで、結界の周りに監督する者が多いはずである。
名を呼ぶのではなく、選考側の魔法師や騎士、神官達が近付いて行って、指示していく。
『以上、こちら側に居る百二十人が通過者だ。通らなかった者は、課題もあるが、それでも選ばれた実力者であったことは変わりない。今後の訓練などで成長した暁には、特別採用もあるので、より精進を続けてもらいたい』
「「「「「おおっ」」」」」
これでダメというわけではない。そう聞いて、落ち込むよりも闘志が湧いたようだ。
『では、休憩と昼食を挟んで、本戦を始める!』
「「「「「おおっ!!」」」」」
まだまだやる気は十分だった。
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