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第十二章
481 そうなんですよね……
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結界は、以前コウヤが引いたトラックに沿って張られていた。五百メートルの楕円形。ただ、スタート地点から五十メートルは五レーンあるが、結界の幅は三レーン分を基本にし、その後五十メートルほどの間隔で、追い越しやすいよう時折五レーン分の幅を作ってある。
結界の狭いトンネルを走ることになるのだが、その結界の外側には、多くの人が囲むように点在しており、その間に、等間隔で審査員が立っている。
審査員は腕に赤いバンダナを巻いているので、違いはそこで見分けるしかない。
ジルファスやアビリス王達も、どんな試験をするのか聞いていないらしく、不思議そうだ。
「あんなに人を配置して、何をするんだろうか?」
「予選で見た者達が居るようだが?」
ジルファスもアビリス王もしきりに首を傾げた。そして、これを教えたらしいコウヤへ目を向ける。
コウヤが苦笑して説明した。
「えっと……あの結界も特別なもので、通過する魔法の威力を、どんなものでも同じだけ弱くするんです。なので、怪我をすることはないので、安全なんですけど……」
「「……ん?」」
二人は、まさかと思った。
「コウヤ……もしかして、外の人たちが魔法を?」
「そこを走り抜けたりする……のか?」
「はいっ。競走でもあるので、本気で走ってもらうんですけど、コースの幅が狭いので、追い越すのもタイミングを見ないといけないですし、外からは絶対に当ててやろうとする攻撃が来ますから、全方向に注意が必要なんです」
「「……」」
それは無理じゃないかという顔を二人はしていた。
一方、アビリス王を挟んだ向こう側に居るミラルファは、是非ともやってみたいと目を輝かせている。
「楽しそうじゃないっ。でも、当たらないようにっていうのは、あの範囲では難しそうねえ」
「はい。最初は五レーンありますけど、基本は三レーン分ですし、追い越す場所を考えながら走らないといけません。少しでもコース取りを迷えば、外からの攻撃が当たります」
常に考え、直感を鍛えていく。その時々に応用を利かせ、瞬時に判断できる力も付くというわけだ。
「当てても怪我をしないので、当てる人たちも、遠慮なくなりますし、しっかり狙いますから、避けるのはかなり難しいです」
「避けたら避けたらで、走っている人たちも巻き込みそうよね」
「そうです。なので、本当に全方向に警戒しなくてはいけません。その代わり、真面目にやれば、気配察知と空間把握、身体強化も熟練度が上がります。中には、直感力ってスキルが取れるかもしれません」
「「なにそれ?」」
ミラルファとジルファスが興味津々に、身を乗り出してコウヤへ問いかける。
「危機察知のスキルを強化してくれるんです。虫の知らせみたいなのが、もっとはっきりと分かるようになります。事故とか、起きるのを前もって察知できるんで、未来予測に近いですね。危ない状況が起きる場所に惹きつけられるように目が向きます。原因となるものが光って視えるんですよ」
ニールやルディエなども、この場にいる者は皆、それは凄いなと素直に感心する。そして、ミラルファが出来たら良いなを口にする。
「……すごいわね……でもまさか、襲撃犯が分かるとかそういう事までは……」
これに、コウヤはうんと頷く。まさかと誰もが驚愕した。
「こ、コウヤ……っ、まさか……」
ジルファスが目を丸くして首を伸ばした。
「そうなんですよね……危機察知と直感力が揃って熟練度が【大】まで行くと、本当に分かるんですよ。あ、でも、あくまで自分の近くに降りかかる危機の場合なので、更にこれに索敵スキルを加えて、この三つのスキルを【極】まで鍛えると、スリとか、泥棒とかも分かるようになります」
万引き犯も見つけられる。商人にも有用なスキルだった。
騎士や兵士達にも是非とも揃えてもらいたい。
「「っ、それじゃあ、訓練に取り入れないと!」」
同じように、ジルファスとミラルファは思ったようだ。
控えている近衛騎士達もソワソワしている。今にもあそこに混ざりに行きそうだ。
「そうですねえ。一度では揃わないので、きちんと訓練として取り入れていくべきかもしれませんね。魔法師の方達も協力してくれそうですし、良いかもしれません」
「「「「「是非!」」」」」
ニールとルディエも声を揃えた。中々トリプルでスキルを取得しており、尚且つそれぞれ【極】以上の熟練度でないといけないというのは、難しいのだ。
持っていそうなルディエも直感力が足りていないようだ。
「あっ、始まりますよ」
『では、第一グループ位置に付け! 次のグループも準備しろ!』
五人ずつのグループで、一番遅い人が二百メートル地点を過ぎたら、次のグループがスタートする。
とてもスムーズに進められそうだ。
『よーい……っ、ゴー!!』
走り出す第一グループ。そして、二歩目で既に、魔法攻撃が向かってきていた。
「……本気で当てる気ね……」
「楽しそうですね……」
「あの辺は、笑いが止まらなくなっているようだぞ……」
魔力切れも気にせず、魔法をぶっ放す者達ばかりだった。何か恨みでもあるのだろうかと思ってしまうほどだ。
もちろん、交代出来るように配置済み。後のグループの方が有利ということもない。このために、予選敗退の者達を残していたのだ。彼らとしては、半分以上遊び。ストレスも発散できる。お陰で、受からなかったというモヤモヤした心も晴れ、遺恨なく終われそうだ。
「あれは……本当に人数が要りそうだな」
「……神官も混ぜるよ……」
「冒険者も呼びましょう」
とにかく、人数が要る訓練になると理解し、本気で実施の検討をする一同だった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
結界の狭いトンネルを走ることになるのだが、その結界の外側には、多くの人が囲むように点在しており、その間に、等間隔で審査員が立っている。
審査員は腕に赤いバンダナを巻いているので、違いはそこで見分けるしかない。
ジルファスやアビリス王達も、どんな試験をするのか聞いていないらしく、不思議そうだ。
「あんなに人を配置して、何をするんだろうか?」
「予選で見た者達が居るようだが?」
ジルファスもアビリス王もしきりに首を傾げた。そして、これを教えたらしいコウヤへ目を向ける。
コウヤが苦笑して説明した。
「えっと……あの結界も特別なもので、通過する魔法の威力を、どんなものでも同じだけ弱くするんです。なので、怪我をすることはないので、安全なんですけど……」
「「……ん?」」
二人は、まさかと思った。
「コウヤ……もしかして、外の人たちが魔法を?」
「そこを走り抜けたりする……のか?」
「はいっ。競走でもあるので、本気で走ってもらうんですけど、コースの幅が狭いので、追い越すのもタイミングを見ないといけないですし、外からは絶対に当ててやろうとする攻撃が来ますから、全方向に注意が必要なんです」
「「……」」
それは無理じゃないかという顔を二人はしていた。
一方、アビリス王を挟んだ向こう側に居るミラルファは、是非ともやってみたいと目を輝かせている。
「楽しそうじゃないっ。でも、当たらないようにっていうのは、あの範囲では難しそうねえ」
「はい。最初は五レーンありますけど、基本は三レーン分ですし、追い越す場所を考えながら走らないといけません。少しでもコース取りを迷えば、外からの攻撃が当たります」
常に考え、直感を鍛えていく。その時々に応用を利かせ、瞬時に判断できる力も付くというわけだ。
「当てても怪我をしないので、当てる人たちも、遠慮なくなりますし、しっかり狙いますから、避けるのはかなり難しいです」
「避けたら避けたらで、走っている人たちも巻き込みそうよね」
「そうです。なので、本当に全方向に警戒しなくてはいけません。その代わり、真面目にやれば、気配察知と空間把握、身体強化も熟練度が上がります。中には、直感力ってスキルが取れるかもしれません」
「「なにそれ?」」
ミラルファとジルファスが興味津々に、身を乗り出してコウヤへ問いかける。
「危機察知のスキルを強化してくれるんです。虫の知らせみたいなのが、もっとはっきりと分かるようになります。事故とか、起きるのを前もって察知できるんで、未来予測に近いですね。危ない状況が起きる場所に惹きつけられるように目が向きます。原因となるものが光って視えるんですよ」
ニールやルディエなども、この場にいる者は皆、それは凄いなと素直に感心する。そして、ミラルファが出来たら良いなを口にする。
「……すごいわね……でもまさか、襲撃犯が分かるとかそういう事までは……」
これに、コウヤはうんと頷く。まさかと誰もが驚愕した。
「こ、コウヤ……っ、まさか……」
ジルファスが目を丸くして首を伸ばした。
「そうなんですよね……危機察知と直感力が揃って熟練度が【大】まで行くと、本当に分かるんですよ。あ、でも、あくまで自分の近くに降りかかる危機の場合なので、更にこれに索敵スキルを加えて、この三つのスキルを【極】まで鍛えると、スリとか、泥棒とかも分かるようになります」
万引き犯も見つけられる。商人にも有用なスキルだった。
騎士や兵士達にも是非とも揃えてもらいたい。
「「っ、それじゃあ、訓練に取り入れないと!」」
同じように、ジルファスとミラルファは思ったようだ。
控えている近衛騎士達もソワソワしている。今にもあそこに混ざりに行きそうだ。
「そうですねえ。一度では揃わないので、きちんと訓練として取り入れていくべきかもしれませんね。魔法師の方達も協力してくれそうですし、良いかもしれません」
「「「「「是非!」」」」」
ニールとルディエも声を揃えた。中々トリプルでスキルを取得しており、尚且つそれぞれ【極】以上の熟練度でないといけないというのは、難しいのだ。
持っていそうなルディエも直感力が足りていないようだ。
「あっ、始まりますよ」
『では、第一グループ位置に付け! 次のグループも準備しろ!』
五人ずつのグループで、一番遅い人が二百メートル地点を過ぎたら、次のグループがスタートする。
とてもスムーズに進められそうだ。
『よーい……っ、ゴー!!』
走り出す第一グループ。そして、二歩目で既に、魔法攻撃が向かってきていた。
「……本気で当てる気ね……」
「楽しそうですね……」
「あの辺は、笑いが止まらなくなっているようだぞ……」
魔力切れも気にせず、魔法をぶっ放す者達ばかりだった。何か恨みでもあるのだろうかと思ってしまうほどだ。
もちろん、交代出来るように配置済み。後のグループの方が有利ということもない。このために、予選敗退の者達を残していたのだ。彼らとしては、半分以上遊び。ストレスも発散できる。お陰で、受からなかったというモヤモヤした心も晴れ、遺恨なく終われそうだ。
「あれは……本当に人数が要りそうだな」
「……神官も混ぜるよ……」
「冒険者も呼びましょう」
とにかく、人数が要る訓練になると理解し、本気で実施の検討をする一同だった。
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