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第十二章
503 あの人戦ってたよ?
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王都の人々は、小さな家族連れの多くは教会へと向かい、冒険者達などは仕事に行く感覚でギルドへ。そこでお披露目を観るつもりのようだ。
聖魔教会には食堂もあるため、そこで食事も取れると、ギルドへ向かうよりは多くの人が流れている。
映像で観る事は、迷宮化の時に既に当たり前となっていたため、広場に向かうよりもそれで充分だと考えているのだろう。
この映像鑑賞。お披露目で初めてとなれば、こうはならなかったかもしれない。お陰で、通常よりも多く人が王都に詰めかけていても、なんとか王城前広場がパンクせずに済んでいた。
事前にあった迷宮化での試みが、良い宣伝となったのは確かだ。
そして、映像が映し出された。
王城前広場を含めた全体の映像が、画面の右上にワイプで固定されている。
そして、宰相が映る。
「っ、わあ~。宰相様? アレが宰相様だよね?」
「やだっ。ステキ……あんなステキなおじ様が宰相だったの?」
「俺、もっと頑固で融通利かねえじいさんのイメージだったわ……」
王族どころか、貴族だって近くで見たことのある人は稀だ。
姿絵も似ているという程度。だから、初めて見る本当の姿を見て、様々な感想が出た。
『これより、王子のお披露目を行います』
次に他国からの来賓をさっと映し、映像はまた宰相に戻る。
『先ず、国王様より御言葉をいただきます』
そうして、国王夫妻が前に並んで立つ。手を振り、しばらく広場から上がる声に応える。
「あれ? ねえ、お母さん。あの人が王妃さま?」
「ええ。そうよ」
「でも、この前、あの人戦ってたよ?」
「え? あ……そうねえ……」
そんな声が上がる。
それに答えるのは、事情を知っている冒険者達だ。
「おう、嬢ちゃん。この国の王族はなあ。冒険者もやるって有名なんだよ。一番は王弟のアルキス様だが、ミラルファ様は王妃になる前、アルキス様と冒険者として活動しておられたよ。最近もよく体が鈍るとか言って、出て来ておられたぞ」
「えっ、やだっ! あの方、本物の王妃様だったの!? 普通に一緒に仕事したわっ」
「私もっ!」
そこここで俺も、私もと手が上がった。
広場とは違い、教会やギルド前では、王が演説していても騒いで問題になることはないので、自由なものだ。
しかし、大事な所は皆分かっているのだろう。その言葉には耳を傾ける。
『本来ならば、もっと早く公表したかった。だが、様々な事情がありそれが今まで叶わなかった事は私も反省する所だ』
「「「「「っ……」」」」」
ざわざわとする。これは、広場でも同じ事。王が、本当に後悔しているということが、映し出された表情からも分かってしまったからだ。
察している民達も多い。第二王妃に問題があったことは、多くの民達も知っている。王宮の中のことであっても、隠しきれないものというのはある。
そして、長く次期王が決まらなかったというのも、民達には不安だったのだ。
『諸々の問題を乗り越え、次期国王も決まった。改めて皆に宣言しよう。次期国王、第一王子のジルファスだ』
「「「「「わぁぁぁっ!!」」」」」
「「「「「ジルファス様ぁぁぁっ」」」」」
ジルファスが前に出て来て、アビリス王の横で手を振った。
あまり表に出てこなかったジルファスだが、冒険者としてアルキス同様、活動する頻度は高かった。とはいえ、彼は長くアビリス王の病を治すための薬などを求めて、世界中を飛び回っていたため、この国でもそれほど顔を知っている者はいない。
しかし、アルキスの様な存在感はなく、謙虚に冒険者達と付き合うため、上手く紛れていたというのもある。町の視察も、そうして度々行なっていた。
「うそっ。王子様だったの!?」
「本物!?」
「うわ~、まあ、周りの奴らの動きは、騎士っぽかったもんなあ」
「あっ、アイツ! ほら、王子の後ろっ。控えてるやつ知ってるっ! そっか……王子だもんなあ……騎士だよな……」
近衛騎士がチラリと映り込み、一緒に呑んだ奴だと愕然としている者も居た。近衛騎士達の方が自由に過ごしていたかもしれない。
『ジルファスは、長く私の病を治すための薬を求め、国内外を問わず外遊していた。その間に出会ったのがファムリア聖女だった』
「「「「「っ……」」」」」
ついに、噂の核心に迫る話になったと、誰もが息を呑んでその話に耳を傾けた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
聖魔教会には食堂もあるため、そこで食事も取れると、ギルドへ向かうよりは多くの人が流れている。
映像で観る事は、迷宮化の時に既に当たり前となっていたため、広場に向かうよりもそれで充分だと考えているのだろう。
この映像鑑賞。お披露目で初めてとなれば、こうはならなかったかもしれない。お陰で、通常よりも多く人が王都に詰めかけていても、なんとか王城前広場がパンクせずに済んでいた。
事前にあった迷宮化での試みが、良い宣伝となったのは確かだ。
そして、映像が映し出された。
王城前広場を含めた全体の映像が、画面の右上にワイプで固定されている。
そして、宰相が映る。
「っ、わあ~。宰相様? アレが宰相様だよね?」
「やだっ。ステキ……あんなステキなおじ様が宰相だったの?」
「俺、もっと頑固で融通利かねえじいさんのイメージだったわ……」
王族どころか、貴族だって近くで見たことのある人は稀だ。
姿絵も似ているという程度。だから、初めて見る本当の姿を見て、様々な感想が出た。
『これより、王子のお披露目を行います』
次に他国からの来賓をさっと映し、映像はまた宰相に戻る。
『先ず、国王様より御言葉をいただきます』
そうして、国王夫妻が前に並んで立つ。手を振り、しばらく広場から上がる声に応える。
「あれ? ねえ、お母さん。あの人が王妃さま?」
「ええ。そうよ」
「でも、この前、あの人戦ってたよ?」
「え? あ……そうねえ……」
そんな声が上がる。
それに答えるのは、事情を知っている冒険者達だ。
「おう、嬢ちゃん。この国の王族はなあ。冒険者もやるって有名なんだよ。一番は王弟のアルキス様だが、ミラルファ様は王妃になる前、アルキス様と冒険者として活動しておられたよ。最近もよく体が鈍るとか言って、出て来ておられたぞ」
「えっ、やだっ! あの方、本物の王妃様だったの!? 普通に一緒に仕事したわっ」
「私もっ!」
そこここで俺も、私もと手が上がった。
広場とは違い、教会やギルド前では、王が演説していても騒いで問題になることはないので、自由なものだ。
しかし、大事な所は皆分かっているのだろう。その言葉には耳を傾ける。
『本来ならば、もっと早く公表したかった。だが、様々な事情がありそれが今まで叶わなかった事は私も反省する所だ』
「「「「「っ……」」」」」
ざわざわとする。これは、広場でも同じ事。王が、本当に後悔しているということが、映し出された表情からも分かってしまったからだ。
察している民達も多い。第二王妃に問題があったことは、多くの民達も知っている。王宮の中のことであっても、隠しきれないものというのはある。
そして、長く次期王が決まらなかったというのも、民達には不安だったのだ。
『諸々の問題を乗り越え、次期国王も決まった。改めて皆に宣言しよう。次期国王、第一王子のジルファスだ』
「「「「「わぁぁぁっ!!」」」」」
「「「「「ジルファス様ぁぁぁっ」」」」」
ジルファスが前に出て来て、アビリス王の横で手を振った。
あまり表に出てこなかったジルファスだが、冒険者としてアルキス同様、活動する頻度は高かった。とはいえ、彼は長くアビリス王の病を治すための薬などを求めて、世界中を飛び回っていたため、この国でもそれほど顔を知っている者はいない。
しかし、アルキスの様な存在感はなく、謙虚に冒険者達と付き合うため、上手く紛れていたというのもある。町の視察も、そうして度々行なっていた。
「うそっ。王子様だったの!?」
「本物!?」
「うわ~、まあ、周りの奴らの動きは、騎士っぽかったもんなあ」
「あっ、アイツ! ほら、王子の後ろっ。控えてるやつ知ってるっ! そっか……王子だもんなあ……騎士だよな……」
近衛騎士がチラリと映り込み、一緒に呑んだ奴だと愕然としている者も居た。近衛騎士達の方が自由に過ごしていたかもしれない。
『ジルファスは、長く私の病を治すための薬を求め、国内外を問わず外遊していた。その間に出会ったのがファムリア聖女だった』
「「「「「っ……」」」」」
ついに、噂の核心に迫る話になったと、誰もが息を呑んでその話に耳を傾けた。
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