411 / 504
第十三章
516 頼もしい……っ
数日で王都の冒険者ギルドでも、町を歩いていても、コウヤが王子だからと、過剰に反応する者もいなくなってきた。
王子であっても、冒険者ギルドの職員として親しんでいるコウヤという存在ということで、落ち着いてきたのようだ。
とはいえ、コウヤの人気は健在。声をかけてくる人は多い。それも、ヒーローでも見るような目で見られるので、コウヤとしては落ち着かない。
だから、ユースールではほっとするのだ。
「はあ……やっぱり、家はいいよね」
ベッドに大の字で寝転びながら、ここ最近で見慣れてしまっていた王宮の天井とは違うことに、少しばかり新鮮な思いで深呼吸する。
ようやく、ジルファス達からの許可も下り、王城での寝泊まりではなく、ユースールで一週間ほど過ごすことになったのだ。今日で三日目だった。
半休ということもあり、久し振りの自宅で、パックン達しかいない静かな時間を満喫している。
《ほっとする ( ◠‿◠ ) 》
《ここが家って感じでしゅね》
《人の気配が近くにないのは落ち着きます》
「うん。城だとどうしても、夜でも人の気配がね~」
城では、寝ていても警護する騎士達の気配等が感じ取れてしまうため、どこか落ち着かないのだ。
もちろん、意識しないようにすることも可能だが、やはりそれも落ち着かなかった。
「アルキス様は慣れだって言うけどね」
《アルの場合は、気にするような繊細さがありませんから》
「ふふっ。それ、アルキス様に」
《はっきり言ったことがあります。自覚はあるようです》
テンキは、ベッドに伏せながら、機嫌良く尻尾をゆらりと振る。
「相変わらず仲良しだなあ」
《っ、そんなことありませんっ》
アルキスとテンキの仲は、お互い素直になれない所はあるが、良好なのは周知の事実だ。
「ふ~ん」
《っ……あ、明日は迷宮に行かれるのでしょう。もうお休みください》
「ふふっ。うん。そうする」
明日は、迷宮の棚卸し研修をすることになっている。やり方を教えるのが目的のため、職員と護衛の冒険者、それと近衛師団の数人のメンバーが参加する。
「結構大変な一日になりそうだねえ」
《楽しみ ♪(´ε` ) 》
《頑張ってもらうでしゅ》
《職員にも良い訓練になります》
そんな話をしながら、眠りについた。
翌朝、ユースールからマンタに乗り、数人の職員と冒険者達を乗せて隣りの領であるベルセンに向かった。
ユースールの管理する迷宮は、どれも難易度が高い。そのため、今回のような研修で使うには使い勝手が悪かった。
そこで、隣りのベルセンで難易度の低い迷宮を借りることになったのだ。
ここには、今日から十日間。国中のギルド支部から職員数人と、Cランク以上の、今後優先的に迷宮調査の依頼を受ける冒険者達が交代で集まってくる。
最初の二日ではコウヤが教え、そこからその二日で研修を受けた者達がその後の研修を引き継ぐことになる。
コウヤはベルセンに着いてすぐ、ベルセンのギルド職員達と顔を合わせた。
「お久しぶりですね」
「はいっ。今回はよろしくお願いします!」
ベルセンのギルド職員達の中では、コウヤはヒーローのような存在だ。朝から気合いが違った。
「こちらこそ。迷宮を貸してもらうようなものですから。時間もありませんし、最終確認といきましょう」
「はい!」
この態度は何を言っても変わらないだろうなと諦め、コウヤは打ち合わせを始める。
「今日から十日間『果実の迷宮』は研修を受ける人以外の立ち入りは禁止になります。ドロップする果物についての過剰分は、王都や問い合わせのあった支部へ、その日の内に運ぶということで、商業ギルドと契約していますね。ここまではいいですか?」
「はい」
『果実の迷宮』は、その名の通り、様々な果物や木の実がドロップする。難易度も低い迷宮のため、低ランク冒険者も稼ぎやすい。
ただし、その迷宮までの距離が徒歩で二時間ほどかかる。果物が傷まないようにするためには、専用のクーラーボックスのような物が必須で、パーティでないとかなりキツい。
そこまでの道のりも魔獣や魔物が出てくるので、それらにも対応しながらは大変なこと。
とはいえ、季節や気候も問わず、年中様々な果実が手に入るというのはとても魅力的だ。
ベルセンの職員達は、集団暴走を経験してから、様々なことを見直す上で、なんとかこの迷宮での冒険者達の活動をしやすくならないかと考えていた。
そして、コウヤに相談した所、商業ギルドとの提携を提案された。その試験的な運用も、今回の研修で試すことになっていた。
「商業ギルドの輸送部隊は、この時間に迷宮前にお願いします。護衛依頼の方はきちんと足りていますか?」
迷宮前まで、商業ギルドの輸送用の馬車を出してもらうことになっているのだ。その馬車は、果物などをきちんと冷蔵して安全に、沢山運ぶことができる。
冒険者が個々で運ぶよりも確実だ。そして、迷宮前にギルドの買い取り所を設置。そこで精算して即、商業ギルドが買い取り、運び出すというものだ。鮮度が命の果物が、これでかなり安定して供給できるようになるだろう。
「はい。まとめての移動ではありますが、人数は多めにしております」
本来は一台ずつ、二時間毎くらいに迷宮前に馬車を回してもらう計画だが、今回は迷宮の棚卸しだ。掃討する勢いで、高ランクの冒険者達が入る。よって、相当量が一気に手に入ることになるだろう。
そのため、五台の馬車を、迷宮を半分周り終えるくらいの時間で指定し、迷宮前に来てもらうことになっていた。
「それで構いません。お金の方は、日数もありますし、後でユースールのサブギルドマスターのエルテが来ますので、商業ギルドとの話し合いは任せてください。もちろん、やり取りは見ておくと良いですよ。今後のこともありますからね」
「はいっ。勉強させていただきます!」
供給過多になっても、マンタやエイで国中にその日の内に配達が出来るので、確実に捌ける。よって、損害はほぼない。
そこを踏まえて、商業ギルドが納得する金額で護衛達への報酬をお願いする。今回は、配送もサービスするのだ。エルテならば上手くやるだろう。
「後は、いつもあの迷宮に行かれる冒険者の方々を優先的に依頼を割り振ってもらって……それくらいですか?」
「はい」
「では、また何かありましたら教えてください。エルテが対応します」
「分かりました」
「ああ、後ですね。商業ギルドのことで困ったことがありましたら、十日間はユースールギルド支部のマスターであるゼットさんが対応してくれます。気になることなどあれば、質問などなさってください。あの方です」
「……え……」
あの方と教えられた先に居たのは、冒険者にしか見えない体格の良い大男だった。
「……え?」
「し、商業ギルドの……?」
「マスター? 商業ギルドの?」
納得いかないらしい。
「ふふっ。冒険者にも見えるので、みなさんには話しかけやすいでしょう?」
「「「「「……そうですね……」」」」」
確かに、商業ギルドの嫌味な目をした者とか、明らかに神経質そうな人とか、腹黒そうな人とかより、遥かに話しやすい。
そう納得し、職員達は頷いた。
「じゃあ、ゼットさん! ここお願いしますね。エルテさんももうすぐ来ますので!」
「おうよ。任せとけ」
「「「「「っ、頼もしい……っ」」」」」
コウヤはうんうんと頷きながら、迷宮への出発を待つ者達の所へと向かった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回、28日です!
王子であっても、冒険者ギルドの職員として親しんでいるコウヤという存在ということで、落ち着いてきたのようだ。
とはいえ、コウヤの人気は健在。声をかけてくる人は多い。それも、ヒーローでも見るような目で見られるので、コウヤとしては落ち着かない。
だから、ユースールではほっとするのだ。
「はあ……やっぱり、家はいいよね」
ベッドに大の字で寝転びながら、ここ最近で見慣れてしまっていた王宮の天井とは違うことに、少しばかり新鮮な思いで深呼吸する。
ようやく、ジルファス達からの許可も下り、王城での寝泊まりではなく、ユースールで一週間ほど過ごすことになったのだ。今日で三日目だった。
半休ということもあり、久し振りの自宅で、パックン達しかいない静かな時間を満喫している。
《ほっとする ( ◠‿◠ ) 》
《ここが家って感じでしゅね》
《人の気配が近くにないのは落ち着きます》
「うん。城だとどうしても、夜でも人の気配がね~」
城では、寝ていても警護する騎士達の気配等が感じ取れてしまうため、どこか落ち着かないのだ。
もちろん、意識しないようにすることも可能だが、やはりそれも落ち着かなかった。
「アルキス様は慣れだって言うけどね」
《アルの場合は、気にするような繊細さがありませんから》
「ふふっ。それ、アルキス様に」
《はっきり言ったことがあります。自覚はあるようです》
テンキは、ベッドに伏せながら、機嫌良く尻尾をゆらりと振る。
「相変わらず仲良しだなあ」
《っ、そんなことありませんっ》
アルキスとテンキの仲は、お互い素直になれない所はあるが、良好なのは周知の事実だ。
「ふ~ん」
《っ……あ、明日は迷宮に行かれるのでしょう。もうお休みください》
「ふふっ。うん。そうする」
明日は、迷宮の棚卸し研修をすることになっている。やり方を教えるのが目的のため、職員と護衛の冒険者、それと近衛師団の数人のメンバーが参加する。
「結構大変な一日になりそうだねえ」
《楽しみ ♪(´ε` ) 》
《頑張ってもらうでしゅ》
《職員にも良い訓練になります》
そんな話をしながら、眠りについた。
翌朝、ユースールからマンタに乗り、数人の職員と冒険者達を乗せて隣りの領であるベルセンに向かった。
ユースールの管理する迷宮は、どれも難易度が高い。そのため、今回のような研修で使うには使い勝手が悪かった。
そこで、隣りのベルセンで難易度の低い迷宮を借りることになったのだ。
ここには、今日から十日間。国中のギルド支部から職員数人と、Cランク以上の、今後優先的に迷宮調査の依頼を受ける冒険者達が交代で集まってくる。
最初の二日ではコウヤが教え、そこからその二日で研修を受けた者達がその後の研修を引き継ぐことになる。
コウヤはベルセンに着いてすぐ、ベルセンのギルド職員達と顔を合わせた。
「お久しぶりですね」
「はいっ。今回はよろしくお願いします!」
ベルセンのギルド職員達の中では、コウヤはヒーローのような存在だ。朝から気合いが違った。
「こちらこそ。迷宮を貸してもらうようなものですから。時間もありませんし、最終確認といきましょう」
「はい!」
この態度は何を言っても変わらないだろうなと諦め、コウヤは打ち合わせを始める。
「今日から十日間『果実の迷宮』は研修を受ける人以外の立ち入りは禁止になります。ドロップする果物についての過剰分は、王都や問い合わせのあった支部へ、その日の内に運ぶということで、商業ギルドと契約していますね。ここまではいいですか?」
「はい」
『果実の迷宮』は、その名の通り、様々な果物や木の実がドロップする。難易度も低い迷宮のため、低ランク冒険者も稼ぎやすい。
ただし、その迷宮までの距離が徒歩で二時間ほどかかる。果物が傷まないようにするためには、専用のクーラーボックスのような物が必須で、パーティでないとかなりキツい。
そこまでの道のりも魔獣や魔物が出てくるので、それらにも対応しながらは大変なこと。
とはいえ、季節や気候も問わず、年中様々な果実が手に入るというのはとても魅力的だ。
ベルセンの職員達は、集団暴走を経験してから、様々なことを見直す上で、なんとかこの迷宮での冒険者達の活動をしやすくならないかと考えていた。
そして、コウヤに相談した所、商業ギルドとの提携を提案された。その試験的な運用も、今回の研修で試すことになっていた。
「商業ギルドの輸送部隊は、この時間に迷宮前にお願いします。護衛依頼の方はきちんと足りていますか?」
迷宮前まで、商業ギルドの輸送用の馬車を出してもらうことになっているのだ。その馬車は、果物などをきちんと冷蔵して安全に、沢山運ぶことができる。
冒険者が個々で運ぶよりも確実だ。そして、迷宮前にギルドの買い取り所を設置。そこで精算して即、商業ギルドが買い取り、運び出すというものだ。鮮度が命の果物が、これでかなり安定して供給できるようになるだろう。
「はい。まとめての移動ではありますが、人数は多めにしております」
本来は一台ずつ、二時間毎くらいに迷宮前に馬車を回してもらう計画だが、今回は迷宮の棚卸しだ。掃討する勢いで、高ランクの冒険者達が入る。よって、相当量が一気に手に入ることになるだろう。
そのため、五台の馬車を、迷宮を半分周り終えるくらいの時間で指定し、迷宮前に来てもらうことになっていた。
「それで構いません。お金の方は、日数もありますし、後でユースールのサブギルドマスターのエルテが来ますので、商業ギルドとの話し合いは任せてください。もちろん、やり取りは見ておくと良いですよ。今後のこともありますからね」
「はいっ。勉強させていただきます!」
供給過多になっても、マンタやエイで国中にその日の内に配達が出来るので、確実に捌ける。よって、損害はほぼない。
そこを踏まえて、商業ギルドが納得する金額で護衛達への報酬をお願いする。今回は、配送もサービスするのだ。エルテならば上手くやるだろう。
「後は、いつもあの迷宮に行かれる冒険者の方々を優先的に依頼を割り振ってもらって……それくらいですか?」
「はい」
「では、また何かありましたら教えてください。エルテが対応します」
「分かりました」
「ああ、後ですね。商業ギルドのことで困ったことがありましたら、十日間はユースールギルド支部のマスターであるゼットさんが対応してくれます。気になることなどあれば、質問などなさってください。あの方です」
「……え……」
あの方と教えられた先に居たのは、冒険者にしか見えない体格の良い大男だった。
「……え?」
「し、商業ギルドの……?」
「マスター? 商業ギルドの?」
納得いかないらしい。
「ふふっ。冒険者にも見えるので、みなさんには話しかけやすいでしょう?」
「「「「「……そうですね……」」」」」
確かに、商業ギルドの嫌味な目をした者とか、明らかに神経質そうな人とか、腹黒そうな人とかより、遥かに話しやすい。
そう納得し、職員達は頷いた。
「じゃあ、ゼットさん! ここお願いしますね。エルテさんももうすぐ来ますので!」
「おうよ。任せとけ」
「「「「「っ、頼もしい……っ」」」」」
コウヤはうんうんと頷きながら、迷宮への出発を待つ者達の所へと向かった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回、28日です!
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される
木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。
婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。
やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。
「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。
誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』
富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました
由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。
——皇子を産めるかどうか。
けれど私は、産めない。
ならば——
「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」
そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。
毒を盛られても、捨てられず。
皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。
「お前は、ここにいろ」
これは、子を産めない女が
ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。
そして——
その寵愛は、やがて狂気に変わる。
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
『彼を解放して!』とおっしゃいましたが、何から解放されたいのですか?
シエル
恋愛
「彼を解放してください!」
友人たちと教室に戻ろうとしていると、突如、知らない令嬢に呼び止められました。
「どなたかしら?」
なぜ、先ほどから私が問いかける度に驚いているのでしょう?
まるで「え!?私のこと知らないの!?」と言わんばかりですけれど、知りませんよ?
どうやら、『彼』とは私の婚約者のことのようです。
「解放して」とおっしゃっいましたが、私の目には何かに囚われているようには見えないのですが?
※ 中世ヨーロッパモデルの架空の世界
※ ご都合主義です。
※ 誤字、脱字、文章がおかしい箇所は気付いた際に修正しております。