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第十三章
523 慣れてるんですよ
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よしやるぞとボス部屋を開け、テンキ達を先頭にして全員で入る。仄かな灯りの灯る部屋。
ボス部屋はたいてい、最初は少し暗い。だが、全員が入ると明かりがつくように明るくなっていく。
そして、扉が閉まり瞬き一つすると、先も見えないほど高い天井から降ってきたように、その二匹はドスンと床を震わせて降り立った。
「っ、マジで眩いっ!」
「めっちゃ金じゃんっ!」
「めっちゃ銀だ!!」
それはもう目が眩むような光を反射していた。
「うわ~、本当に綺麗な金と銀ですねっ。素材の感じはどうなんでしょう? 鉱石としての金や銀と一緒なんでしょうか? けど、上位種ですし、普通のより硬いはずですですし? そうなると、純粋な金や銀とは違う?」
コウヤが興奮気味に身を乗り出しながら、考察を口にする。
それを聞いて、グラムがコウヤの前に移動しながら、口を開く。
「ほら、コウヤ。頼むから実験とかやめてくれよ? というか、俺らより前に出ないようにっ。絶対、嬉々として色々と考察に走るだろっ?」
「え? ダメなんですか!?」
「「「「「ダメに決まってんだろ!」」」」」
「え~……」
冒険者全員に全力で止められた。
「コウヤ。頼むから、結界張ってそいつら守っててくれ。そしたら俺らも集中できるから」
「そうですか……わかりました。回復と補助は任せてください。完璧に後方支援をしてみせます!」
「「「「「頼もしいわ……」」」」」
瀕死になってもコウヤならば助けてくれそうで有り難いが、絶対に引けない、時間制限内で討伐する為にそれなりに無茶もさせられそうだと、冒険者達は覚悟を決めた。
「よしっ! お前ら、行くぞ!!」
「「「「「おおっ!!」」」」」
《来ますよ》
テンキの静かな警告が聞こえた。
その直後、金と銀の稲妻が走る。
「痛っ! ん? こんなもんか」
「ビリって! あ、そんなキツくねえな」
「うおっ! 避け切れねえっ! ぐっ! ん?」
「なんか、あんま痛くねえな」
これがユースール組の感想。今度は肩にくれとか言っているほど余裕だ。
「ああ。グラムさん達にしたら電気治療? みたいな?」
コウヤが首を傾げる。
だが、ロインやヒリタなどは違う。初めての刺激的な攻撃に、近づけないでいる。
「え!? 十分痛いぞ!?」
「ちょっ、なんで当たりに行ってるの!?」
腰が引けているロイン達を笑いながら、ユースール組は、構わず特攻をかける。
「あははっ。逆に気持ちがいいぜ! よしっ、羽ばたかせるな!」
「任せろ! 飛ぶ暇は与えねえ!」
「それ! そのセリフ言ってみたかったのにっ」
「「早いもん勝ちだろ」」
「え~」
ユースール組は賑やかだ。ここでようやく本来の姿に戻ったとも言う。
「生き生きしてますねっ」
コウヤが楽しそうにその様子を見つめる。他のギルド職員達を守るだけなので、コウヤにとっては楽なお仕事だ。
完全に見ものに回ろうと、椅子まで出し始めている。
「どうぞ。これ使ってください。ゆっくり観ましょう」
「え……あ、はい……」
「……椅子……ボス部屋の中で……なんか、お菓子も出てきたっ!?」
「あ、お茶ですか。いただきます……コウヤ様ですしね……」
「コウヤ様ですからね……あ、どうもすみません」
テーブルも出して、お茶会が始まる感じだ。
ベルセンの職員は戸惑いながら、王都の職員達は諦めようにこれを受け入れる。
「あ、このお茶久しぶりですっ。やっぱり、コウヤさんの淹れたお茶って美味しい」
「ふふっ。マイルズさんは、このお茶気に入ってくれてましたよね」
「さっぱりして良いんですよね~。ちょっと苦味もありますけど」
それはグリーンティーだ。甘いものはお菓子で良いので、少し苦味のあるものを選んだ。
「それにしても、電撃が走ってますけど、グラムさん達はタフですね」
マイルズはすでにこの雰囲気に慣れ、気楽に観戦へと移る。
「あのベルセンの方達は本気で痛がってますけど、本当に痛くないんでしょうか」
「あ~、ほら、慣れてるんですよ」
「慣れてる?」
「「「「慣れてる……?」」」」
職員全員が、ユースール組に目を向ける。ビリビリされても笑っており、部屋に入る前にコウヤが手渡した大きなハンマーで殴りかかっている。
「あっはっはっ! テンキ教官の電撃と比べたら子どもの遊びレベルだぜっ」
「おうおうっ。この辺にくれやっ。最近、肩こりがひどくてな~。いや~あ、電撃って気持ちいいのなっ。教官のは焦げるけどっ」
「装備に焦げ一つつかない電撃なんて、泥団子投げつけられるよりもなんてことないぜっ」
「ほらほらどうしたよっ。そんなんじゃ俺らは止められねえぞっ!」
「「「「「……」」」」」
周りがドン引きしているのにも気付かず、ユースールの冒険者達は笑っていた。
《なんと言うか……少し頭が心配になりますね》
《テンキが悪いんじゃない? (*⁰▿⁰*)》
《きっと、電撃当てすぎたんでしゅよ……》
テンキ達にまで心配される彼らだが、そのままの勢いのまま、タコ殴りにして終わった。討伐時間は二十分ジャストだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
また一回お休みです。
次回9日の予定です!
ボス部屋はたいてい、最初は少し暗い。だが、全員が入ると明かりがつくように明るくなっていく。
そして、扉が閉まり瞬き一つすると、先も見えないほど高い天井から降ってきたように、その二匹はドスンと床を震わせて降り立った。
「っ、マジで眩いっ!」
「めっちゃ金じゃんっ!」
「めっちゃ銀だ!!」
それはもう目が眩むような光を反射していた。
「うわ~、本当に綺麗な金と銀ですねっ。素材の感じはどうなんでしょう? 鉱石としての金や銀と一緒なんでしょうか? けど、上位種ですし、普通のより硬いはずですですし? そうなると、純粋な金や銀とは違う?」
コウヤが興奮気味に身を乗り出しながら、考察を口にする。
それを聞いて、グラムがコウヤの前に移動しながら、口を開く。
「ほら、コウヤ。頼むから実験とかやめてくれよ? というか、俺らより前に出ないようにっ。絶対、嬉々として色々と考察に走るだろっ?」
「え? ダメなんですか!?」
「「「「「ダメに決まってんだろ!」」」」」
「え~……」
冒険者全員に全力で止められた。
「コウヤ。頼むから、結界張ってそいつら守っててくれ。そしたら俺らも集中できるから」
「そうですか……わかりました。回復と補助は任せてください。完璧に後方支援をしてみせます!」
「「「「「頼もしいわ……」」」」」
瀕死になってもコウヤならば助けてくれそうで有り難いが、絶対に引けない、時間制限内で討伐する為にそれなりに無茶もさせられそうだと、冒険者達は覚悟を決めた。
「よしっ! お前ら、行くぞ!!」
「「「「「おおっ!!」」」」」
《来ますよ》
テンキの静かな警告が聞こえた。
その直後、金と銀の稲妻が走る。
「痛っ! ん? こんなもんか」
「ビリって! あ、そんなキツくねえな」
「うおっ! 避け切れねえっ! ぐっ! ん?」
「なんか、あんま痛くねえな」
これがユースール組の感想。今度は肩にくれとか言っているほど余裕だ。
「ああ。グラムさん達にしたら電気治療? みたいな?」
コウヤが首を傾げる。
だが、ロインやヒリタなどは違う。初めての刺激的な攻撃に、近づけないでいる。
「え!? 十分痛いぞ!?」
「ちょっ、なんで当たりに行ってるの!?」
腰が引けているロイン達を笑いながら、ユースール組は、構わず特攻をかける。
「あははっ。逆に気持ちがいいぜ! よしっ、羽ばたかせるな!」
「任せろ! 飛ぶ暇は与えねえ!」
「それ! そのセリフ言ってみたかったのにっ」
「「早いもん勝ちだろ」」
「え~」
ユースール組は賑やかだ。ここでようやく本来の姿に戻ったとも言う。
「生き生きしてますねっ」
コウヤが楽しそうにその様子を見つめる。他のギルド職員達を守るだけなので、コウヤにとっては楽なお仕事だ。
完全に見ものに回ろうと、椅子まで出し始めている。
「どうぞ。これ使ってください。ゆっくり観ましょう」
「え……あ、はい……」
「……椅子……ボス部屋の中で……なんか、お菓子も出てきたっ!?」
「あ、お茶ですか。いただきます……コウヤ様ですしね……」
「コウヤ様ですからね……あ、どうもすみません」
テーブルも出して、お茶会が始まる感じだ。
ベルセンの職員は戸惑いながら、王都の職員達は諦めようにこれを受け入れる。
「あ、このお茶久しぶりですっ。やっぱり、コウヤさんの淹れたお茶って美味しい」
「ふふっ。マイルズさんは、このお茶気に入ってくれてましたよね」
「さっぱりして良いんですよね~。ちょっと苦味もありますけど」
それはグリーンティーだ。甘いものはお菓子で良いので、少し苦味のあるものを選んだ。
「それにしても、電撃が走ってますけど、グラムさん達はタフですね」
マイルズはすでにこの雰囲気に慣れ、気楽に観戦へと移る。
「あのベルセンの方達は本気で痛がってますけど、本当に痛くないんでしょうか」
「あ~、ほら、慣れてるんですよ」
「慣れてる?」
「「「「慣れてる……?」」」」
職員全員が、ユースール組に目を向ける。ビリビリされても笑っており、部屋に入る前にコウヤが手渡した大きなハンマーで殴りかかっている。
「あっはっはっ! テンキ教官の電撃と比べたら子どもの遊びレベルだぜっ」
「おうおうっ。この辺にくれやっ。最近、肩こりがひどくてな~。いや~あ、電撃って気持ちいいのなっ。教官のは焦げるけどっ」
「装備に焦げ一つつかない電撃なんて、泥団子投げつけられるよりもなんてことないぜっ」
「ほらほらどうしたよっ。そんなんじゃ俺らは止められねえぞっ!」
「「「「「……」」」」」
周りがドン引きしているのにも気付かず、ユースールの冒険者達は笑っていた。
《なんと言うか……少し頭が心配になりますね》
《テンキが悪いんじゃない? (*⁰▿⁰*)》
《きっと、電撃当てすぎたんでしゅよ……》
テンキ達にまで心配される彼らだが、そのままの勢いのまま、タコ殴りにして終わった。討伐時間は二十分ジャストだった。
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