446 / 495
第十三章
551 遠慮はしていられない
しおりを挟む
コウヤは会議を終えると、そのまま部屋に戻ろうとニールだけを連れて移動していた。
今後は、コウヤが間に入らなくても、タリスと商業ギルドのウィルズがやる気になってくれたので、任せても大丈夫そうだ。
「これで一つ、気になってたことが解決かな。パックンやダンゴも協力するみたいだし、商業ギルドの人たちは大変そうだけど」
ウィルズやその補佐達は、ずっと顔色が悪かった。だが、最後は自分達もしっかりと口を出さないと、もっと大変なことになると理解し、顔を赤らめながら注文を付けていた。
それを、同じく思い出したのだろう。ニールが苦笑する。
「商業ギルドの方々は、遠慮がなくなりましたね」
「ふふっ。うん。前回はまだ、距離感があったけど、ちょっと必死な感じで距離を一気に詰めて来てたかも」
「あのまま、黙っていては潰れていたでしょう。私でも、遠慮はしていられないと判断したと思います」
「そうだね。後で丸投げされそうだし」
「はい。タリス様ならばそうされたでしょう」
自分達が満足したら、あとはよろしくと丸投げしていたに違いない。この時点から食い込んでいかなければ、あとで泣くどころの騒ぎではなかったはずだ。
「途中でもう、面倒そうな顔していたしねっ」
「やはりそうですか……タリス様は容赦がない……」
「年の功ってのもあるかも。投げた方が良いものって、判断が早いから。それに、統括をしていたからだろうけど、その後の面倒くささ? が分かるのかも」
「ありそうです……」
上に立ったことがあるから、丸投げされた時の面倒臭ささが分かるのだろう。経験から、回避するタイミングを知っているようだ。
そんな話をして部屋の近くまで来たところで、コウヤに会いに来たのだろう。リルファムが駆け寄って来た。
「コウヤにいさまぁっ」
嬉しそうに抱きついてきたリルファムを、コウヤは受け止める。
「リル。授業、終わったの?」
「はいっ。おわってすぐにきました!」
「ふふっ。そっか。これからオヤツでもしようと思ってたんだ。一緒にどうかな?」
「っ、ごいっしょします!」
「良かった。ビルワのタルトとプーラのゼリーを作ったんだ」
「にいさまがつくったものですか!? ぜったいにたべます!」
「そう。すぐに用意するね」
「はい!」
リルファムとオヤツをしていれば、当たり前のようにシンリームやイスリナ、ミラルファがやって来て、一緒にそれを楽しんだ。
そこで、ミラルファがコウヤに確認したいことがあったらしく、ニールの淹れてくれた紅茶を飲みながらそれを聞いた。
「コウヤさん。前に言っていた『師弟コンパ』? だったかしら、師匠として技術を継承したい人と弟子入りしたい子達で顔合わせをするって言う話はどうなりました?」
「あ~……それなんですが……」
「何か問題が?」
コウヤが言いにくそうにする様子を見て、ミラルファが首を傾げる。
「サニールさん達がお友達とか、知り合いに話したらしくて……」
「……叔父が何か困らせることを……?」
ニールが少し不機嫌そうに問いかけた。それに大したことではないと微笑みながらコウヤは答える。
「同じように弟子を取りたいけど、素質のありそうな人に巡り会えないって悩んでいた人が結構いたらしいんだ」
「まあっ。でもそうよね。出会わないと分からないし」
「ええ。それで、この前の迷宮化の時の映像を観て、その素質ある人を見つけたらしくて」
「あら~、いいじゃないっ」
「はい。悪いことではないですよね。ただ、そこで観ただけなので、会えないだろうと思っていた所に、この話があったことで、それならばと問い合わせが殺到したんです」
「……あっ、映像で観た子を探して欲しいって?」
「はい」
「「……」」
ミラルファとニールは、それは見つかるのだろうかと顔を見合わせて、目だけで確認し合っている。
「なので、専用の問い合わせの部署を、臨時でギルドに設けました。あの時の映像を見せながら、確認しています」
「大変ね……」
「はい。なので、まだ少し時間がかかりそうです」
「そう……私も確認させてもらおうかしら」
「え? お祖母様も、弟子を? 何の……」
「ふふっ」
ミラルファは楽しそうに笑うだけで誤魔化していた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
無料話もうすぐ終了です!
この機会に読み返しもどうぞ。
今後は、コウヤが間に入らなくても、タリスと商業ギルドのウィルズがやる気になってくれたので、任せても大丈夫そうだ。
「これで一つ、気になってたことが解決かな。パックンやダンゴも協力するみたいだし、商業ギルドの人たちは大変そうだけど」
ウィルズやその補佐達は、ずっと顔色が悪かった。だが、最後は自分達もしっかりと口を出さないと、もっと大変なことになると理解し、顔を赤らめながら注文を付けていた。
それを、同じく思い出したのだろう。ニールが苦笑する。
「商業ギルドの方々は、遠慮がなくなりましたね」
「ふふっ。うん。前回はまだ、距離感があったけど、ちょっと必死な感じで距離を一気に詰めて来てたかも」
「あのまま、黙っていては潰れていたでしょう。私でも、遠慮はしていられないと判断したと思います」
「そうだね。後で丸投げされそうだし」
「はい。タリス様ならばそうされたでしょう」
自分達が満足したら、あとはよろしくと丸投げしていたに違いない。この時点から食い込んでいかなければ、あとで泣くどころの騒ぎではなかったはずだ。
「途中でもう、面倒そうな顔していたしねっ」
「やはりそうですか……タリス様は容赦がない……」
「年の功ってのもあるかも。投げた方が良いものって、判断が早いから。それに、統括をしていたからだろうけど、その後の面倒くささ? が分かるのかも」
「ありそうです……」
上に立ったことがあるから、丸投げされた時の面倒臭ささが分かるのだろう。経験から、回避するタイミングを知っているようだ。
そんな話をして部屋の近くまで来たところで、コウヤに会いに来たのだろう。リルファムが駆け寄って来た。
「コウヤにいさまぁっ」
嬉しそうに抱きついてきたリルファムを、コウヤは受け止める。
「リル。授業、終わったの?」
「はいっ。おわってすぐにきました!」
「ふふっ。そっか。これからオヤツでもしようと思ってたんだ。一緒にどうかな?」
「っ、ごいっしょします!」
「良かった。ビルワのタルトとプーラのゼリーを作ったんだ」
「にいさまがつくったものですか!? ぜったいにたべます!」
「そう。すぐに用意するね」
「はい!」
リルファムとオヤツをしていれば、当たり前のようにシンリームやイスリナ、ミラルファがやって来て、一緒にそれを楽しんだ。
そこで、ミラルファがコウヤに確認したいことがあったらしく、ニールの淹れてくれた紅茶を飲みながらそれを聞いた。
「コウヤさん。前に言っていた『師弟コンパ』? だったかしら、師匠として技術を継承したい人と弟子入りしたい子達で顔合わせをするって言う話はどうなりました?」
「あ~……それなんですが……」
「何か問題が?」
コウヤが言いにくそうにする様子を見て、ミラルファが首を傾げる。
「サニールさん達がお友達とか、知り合いに話したらしくて……」
「……叔父が何か困らせることを……?」
ニールが少し不機嫌そうに問いかけた。それに大したことではないと微笑みながらコウヤは答える。
「同じように弟子を取りたいけど、素質のありそうな人に巡り会えないって悩んでいた人が結構いたらしいんだ」
「まあっ。でもそうよね。出会わないと分からないし」
「ええ。それで、この前の迷宮化の時の映像を観て、その素質ある人を見つけたらしくて」
「あら~、いいじゃないっ」
「はい。悪いことではないですよね。ただ、そこで観ただけなので、会えないだろうと思っていた所に、この話があったことで、それならばと問い合わせが殺到したんです」
「……あっ、映像で観た子を探して欲しいって?」
「はい」
「「……」」
ミラルファとニールは、それは見つかるのだろうかと顔を見合わせて、目だけで確認し合っている。
「なので、専用の問い合わせの部署を、臨時でギルドに設けました。あの時の映像を見せながら、確認しています」
「大変ね……」
「はい。なので、まだ少し時間がかかりそうです」
「そう……私も確認させてもらおうかしら」
「え? お祖母様も、弟子を? 何の……」
「ふふっ」
ミラルファは楽しそうに笑うだけで誤魔化していた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
無料話もうすぐ終了です!
この機会に読み返しもどうぞ。
453
あなたにおすすめの小説
お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます
碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」
そんな夫と
「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」
そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。
嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
婚約破棄? そもそも君は一体誰だ?
歩芽川ゆい
ファンタジー
「グラングスト公爵家のフェルメッツァ嬢、あなたとモルビド王子の婚約は、破棄されます!」
コンエネルジーア王国の、王城で主催のデビュタント前の令息・令嬢を集めた舞踏会。
プレデビュタント的な意味合いも持つこの舞踏会には、それぞれの両親も壁際に集まって、子供たちを見守りながら社交をしていた。そんな中で、いきなり会場のど真ん中で大きな女性の声が響き渡った。
思わず会場はシンと静まるし、生演奏を奏でていた弦楽隊も、演奏を続けていいものか迷って極小な音量での演奏になってしまった。
声の主をと見れば、ひとりの令嬢が、モルビド王子と呼ばれた令息と腕を組んで、令嬢にあるまじきことに、向かいの令嬢に指を突き付けて、口を大きく逆三角形に笑みを浮かべていた。
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
婚約破棄?ありがとうございます!では、お会計金貨五千万枚になります!
ばぅ
恋愛
「お前とは婚約破棄だ!」
「毎度あり! お会計六千万金貨になります!」
王太子エドワードは、侯爵令嬢クラリスに堂々と婚約破棄を宣言する。
しかし、それは「契約終了」の合図だった。
実は、クラリスは王太子の婚約者を“演じる”契約を結んでいただけ。
彼がサボった公務、放棄した社交、すべてを一人でこなしてきた彼女は、
「では、報酬六千万金貨をお支払いください」と請求書を差し出す。
王太子は蒼白になり、貴族たちは騒然。
さらに、「クラリスにいじめられた」と泣く男爵令嬢に対し、
「当て馬役として追加千金貨ですね?」と冷静に追い打ちをかける。
「婚約破棄? かしこまりました! では、契約終了ですね?」
痛快すぎる契約婚約劇、開幕!
「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました
ほーみ
恋愛
その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。
「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」
そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。
「……は?」
まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。
神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ
猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。
当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。
それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。
そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。
美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。
「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」
『・・・・オメエの嫁だよ』
執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。