元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十三章

551 遠慮はしていられない

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コウヤは会議を終えると、そのまま部屋に戻ろうとニールだけを連れて移動していた。

今後は、コウヤが間に入らなくても、タリスと商業ギルドのウィルズがやる気になってくれたので、任せても大丈夫そうだ。

「これで一つ、気になってたことが解決かな。パックンやダンゴも協力するみたいだし、商業ギルドの人たちは大変そうだけど」

ウィルズやその補佐達は、ずっと顔色が悪かった。だが、最後は自分達もしっかりと口を出さないと、もっと大変なことになると理解し、顔を赤らめながら注文を付けていた。

それを、同じく思い出したのだろう。ニールが苦笑する。

「商業ギルドの方々は、遠慮がなくなりましたね」
「ふふっ。うん。前回はまだ、距離感があったけど、ちょっと必死な感じで距離を一気に詰めて来てたかも」
「あのまま、黙っていては潰れていたでしょう。私でも、遠慮はしていられないと判断したと思います」
「そうだね。後で丸投げされそうだし」
「はい。タリス様ならばそうされたでしょう」

自分達が満足したら、あとはよろしくと丸投げしていたに違いない。この時点から食い込んでいかなければ、あとで泣くどころの騒ぎではなかったはずだ。

「途中でもう、面倒そうな顔していたしねっ」
「やはりそうですか……タリス様は容赦がない……」
「年の功ってのもあるかも。投げた方が良いものって、判断が早いから。それに、統括をしていたからだろうけど、その後の面倒くささ? が分かるのかも」
「ありそうです……」

上に立ったことがあるから、丸投げされた時の面倒臭ささが分かるのだろう。経験から、回避するタイミングを知っているようだ。

そんな話をして部屋の近くまで来たところで、コウヤに会いに来たのだろう。リルファムが駆け寄って来た。

「コウヤにいさまぁっ」

嬉しそうに抱きついてきたリルファムを、コウヤは受け止める。

「リル。授業、終わったの?」
「はいっ。おわってすぐにきました!」
「ふふっ。そっか。これからオヤツでもしようと思ってたんだ。一緒にどうかな?」
「っ、ごいっしょします!」
「良かった。ビルワのタルトとプーラのゼリーを作ったんだ」
「にいさまがつくったものですか!? ぜったいにたべます!」
「そう。すぐに用意するね」
「はい!」

リルファムとオヤツをしていれば、当たり前のようにシンリームやイスリナ、ミラルファがやって来て、一緒にそれを楽しんだ。

そこで、ミラルファがコウヤに確認したいことがあったらしく、ニールの淹れてくれた紅茶を飲みながらそれを聞いた。

「コウヤさん。前に言っていた『師弟コンパ』? だったかしら、師匠として技術を継承したい人と弟子入りしたい子達で顔合わせをするって言う話はどうなりました?」
「あ~……それなんですが……」
「何か問題が?」

コウヤが言いにくそうにする様子を見て、ミラルファが首を傾げる。

「サニールさん達がお友達とか、知り合いに話したらしくて……」
「……叔父が何か困らせることを……?」

ニールが少し不機嫌そうに問いかけた。それに大したことではないと微笑みながらコウヤは答える。

「同じように弟子を取りたいけど、素質のありそうな人に巡り会えないって悩んでいた人が結構いたらしいんだ」
「まあっ。でもそうよね。出会わないと分からないし」
「ええ。それで、この前の迷宮化の時の映像を観て、その素質ある人を見つけたらしくて」
「あら~、いいじゃないっ」
「はい。悪いことではないですよね。ただ、そこで観ただけなので、会えないだろうと思っていた所に、この話があったことで、それならばと問い合わせが殺到したんです」
「……あっ、映像で観た子を探して欲しいって?」
「はい」
「「……」」

ミラルファとニールは、それは見つかるのだろうかと顔を見合わせて、目だけで確認し合っている。

「なので、専用の問い合わせの部署を、臨時でギルドに設けました。あの時の映像を見せながら、確認しています」
「大変ね……」
「はい。なので、まだ少し時間がかかりそうです」
「そう……私も確認させてもらおうかしら」
「え? お祖母様も、弟子を? 何の……」
「ふふっ」

ミラルファは楽しそうに笑うだけで誤魔化していた。








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この機会に読み返しもどうぞ。

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