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ラヴァーナ教
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「…さぁ汝らよ!我に何を求めるのだ!」
「…お前さん、それはアニメの見過ぎとちゃうか?どこの魔王様やっ」
笑いながらレンが突っ込んでくれる。
…良かった。
ツッコミのある生活素晴らしい!
この世界の人間だけだと完璧スルーされて、また悲しくなる所だった。
…レンは良い奴だなっ!
では、約束通り世界の半分をっ!
…さっ、しょーもない考えは置いといて、真面目に話しを聞きますかっ。
メリーが居ないのは不安だけど仕方ない…
俺、ティファ、レアの三人でテーブルを挟み、向かい合うシャーロットとレンが話しを始める。
「…では、先ずは私からお話させて頂きます。」
シャーロットは俺達を見ると、静かに語り出した。
「前回の話が終わってから、私達は王都に戻り、
国王陛下へ報告をしました。」
「ちょっと大袈裟に褒めといたで!」
「…報告の内容には賛否ありましたが、陛下は私達の提案と講和の条件を認め、都市を救ったあなた方にお会いしたい、と仰られました。」
「俺のお陰やなぁ♪」
「…そして、あなた方を招集する役目は、前回、
ご迷惑をお掛けした、このバカが負うべきと判断し、私達が参りました。」
「えっ!?おれかいなっ!」
…ドスッ
「ぐへっ…」
「少しお黙りなさい、バカレン…」
流れるような見事な肘打ちに、脇腹を抑えて咳き込むレンを横目に見ながら、話を続けるシャーロットは、さらに道中で起きた出来事も続ける。
「…それで、私達は王都よりアスペルに向かおうと、馬車を走らせていたのですが、ゴビス砂漠の横を通過中に…賊に襲われたのです。」
「…ユウト達に助けてもろた、グーロ事件の奴らや。」
「そうです…私達は"アレ"は【餓狼蜘】の仕業ではないかと考えています。」
「…餓狼蜘?」
「…はい。本当は、関係の無い人間に教える事では無いのですけど…」
シャーロットは迷いながらも、説明してくれる。
餓狼蜘はシルクットに、拠点を構える一大犯罪組織で、正確なメンバー数は不明だか、千人近い構成員がいること。
関連団体である、ラヴァーナ教にも影響力がある為、情報網としての人員数は、5万人を優に超えること。
軍事力的な物が、どの程度かは把握出来ていないが、恐らくは、かなりの力を持っているだろうこと。
自分達が組織を探っていると知った組織の人間に、口封じの為に襲われたのだろう、と思うと括った。
そして最後に、一番やっかいなのは餓狼蜘とラヴァーナ教のトップが同一で、影響力が多岐に渡る為、簡単には手が出しにくい事。
そこ首魁の名はラクシャスと言う男だ、と教えてくれた。
…この時、シャーロットは、この街の主要商会である、【織物商会】の幹部にラヴァーナ教の団員が、居る事を伏せて伝える。
ユウト達に恩を与える為と、情報を出すタイミングは、王都の招集から街に戻る時で、十分間に合うと考えたのだ。
「…しかし、そんな巨大な組織を国は放っておくのか?」
俺はレンに尋ねる。
「もちろん、王様かて、俺らの報告聞いてビックリしとったわ。…でもな、大規模な都市に軍を送り込むんは、政治的な事や宗教論なんかの問題もあるんやとさっ。」
「…レンの言う通りです。様々な利権が絡む為、
私達も大々的な行動を起こす事は、禁じられているのです。」
「そうなのか…国家運営も色々大変なんだな。
でも、それと俺達が呼ばれるのにどんな関係が?」
シャーロット達の話で、この街が大変な状態にある事は分かったけど、俺達は単純に各都市の商会を落として、俺の名声を上げるだけだ。
アスペルを救ったのも成り行きだしな。
…それによって、ドラゴン爺の一つ目の課題をクリアする。
正直、それまでは国や宗教なんかと関わりたく無い。
もし、王様に都市の解放を!とか言われても、お断りの方向で返答しよう。
…俺は先に、そう心に誓う。
「…あなた方が王都に呼ばれたのは、王国に不穏分子を作らない為の協力と、これからの皆さんの計画を直接聞いて、方向性を許容できるか、を確認する為です。」
…なるほど。
俺達が将来、国の厄介ごとにならないかの面談と、役立ちそうなら、懐柔して使ってやろうって事か…
考え方は好きになれんが、お互いに利益があるなら、それも考えるべきなのかもなぁ…
一通り話を聞き終わって、取り敢えず話をする事を決めた俺は、いつ出発するのかを尋ねると「延ばせるだけゆっくりしてから帰りたい。」との事だったので、出発を一週間後に決め話は終わった。
…その後、
シアンにお願いして、二人に部屋の用意をお願いしたら、寝室が一部屋しか空いていなくて、俺とレンが相部屋に…
と話をしたんだけど、ティファが主人である俺が
相部屋等ダメだと言って、シャーロットを自分の部屋にと聞かなかった。
シャーロットも頬を赤らめてOKするので、諦めてお願いする事にしたんだが、
…なんかズルいぞ!ティファよ…
その日は時間も遅かったので、シアンにお風呂の準備をお願いしつつ、皆で外食してから、帰って寝る事になった。
…帰ってからのお風呂で、ラッキーハプニングを期待したみた…が、何も起こらなかった。
…無念!無念!
ーーーー翌朝
シアンが用意してくれた朝食に、皆で舌鼓をうちながら予定を確認していく。
「俺達は、シルクットの町を散歩しながら、
なんか情報があれへんか聞いて回るわ。」
「俺とティファはルサリィの所に様子を見に行ってくるよ。」
「…シアンの買い物…てつだう…」
レアがお手伝いなんてエライ事を言うので、俺が褒めると薄い胸を張りながら、「オヤツ買ってもらえるから」と…まさしく子供の様な事を言っていた。
まぁ、役に立ってるなら何でも良いか…
それぞれの確認が終わり、用意が出来た組から順に出発して行く。
俺達は二番目だったので、レアとシアンに後をお願いして、ルサリィの家がある東地区へと向かう。
……
「…問題が起こらないといいんだけどな」
「そうですね…」
俺の独り言にティファが反応した。
彼女の言い方にも含みがあるのを感じるな…
アスペルの時みたいに、もっと簡単に話が進む
と思っていたけど、色々と面倒な事が起きるんだな…と、軽く考えていた事を反省しながら歩く。
…ティファは、何を考えているんだろうか?
…
ルサリィの家までは、特に何事も無く着いた。
…コンコンッ
…
……
「中に人の気配がしませんね…」
ティファがノブを回すが、鍵は掛かっている。
「鍵が掛かってるなら、朝早くにでも出掛けてしまったのかな?」
出直すかと二人で話をしていると、隣家のドアが開いた。
「…あんたら、その家の人間に何か用か?」
家の前で立ち尽くす俺達を不審に思ったのか、隣の家のオジサンが声を掛けて来た。
俺達は、この家の住人と知り合いで、娘のルサリィに用事があって来たと説明する。
「…ここの奴らは……邪教に取り憑かれちまってる。」
憂いを帯びた、でも、強い感情を持った表情でオジサンは言った。
「…邪教、ですか?」
「まさかっ!?あんたらもか…?」
「あっ、いえいえ、私達は違いますよ!それは、この家のご両親が…ですか?」
「…あぁ、旦那が行方不明になっちまってからな…」
オジサンが言うには、元々ここの家は三人家族で
仲が良く獣人である事を差し引いても幸せそうだったらしい。
オジサンも獣人への差別意識は特に無いらしく、
ルサリィとも良く遊んだ事があったそうだけど…
ある日、旦那さんがクエストに出たきり戻らなくなって、この家には変な格好の人間が出入りするようになったらしい。
その事をオジサンがルサリィの母親に尋ねると、
その邪教に勧誘された…との事だった。
それから、母親との会話は避けているらしいが、ルサリィが可哀想だと言っていた。
俺達はお礼を言い、その場を離れようとしたんだけど、すれ違いざまに「昨日の晩遅くに、娘を連れて東の外れの教会に行った…」そうオジサンは呟くと、家に入って行ってしまった。
「…ユウト様、向かいましょう。」
俺はティファに頷くと、東の外れにあると言う教会へ向かった。
ティファの情報では、その教会は昔に放棄された物を、何者かが再利用しているらしく…
恐らくそいつらが、邪教…ラヴァーナ教の人間なんだろうとの事だ。
二人とも不安から、足が速くなる。
ルサリィの泣き顔が頭に浮かんでしまう。
早く迎えに行ってあげないと。
……
「…ここです。」
「確かに墓地の横ってのは雰囲気あるな。」
夜であれば遠慮したい空気の漂ってる教会に足を踏み入れる。
安定のティファが先頭だが…
「…?誰もいないようです。」
ティファの言う通り、人の気配がしない。
邪教からも見捨てられてしまったのだろうか?
取り敢えず、教会の中を調べていると、ティファが微かな血の跡を発見した。
「ユウト様…ここの床が、地下への隠し扉になっているようです。」
「ちょっと待った。」
「リロードオン…」
ー盗賊の手袋ー
・手をかざすと罠の有無を調べられる
床の隠し扉は薄く青く光り、罠が無い事を伝えて来る。
「行こう。」
問題無いようなので、扉を開けると、内鍵が壊されている。
…先客がいるのか?
地下に降りると分厚い扉があるが、これも開いている…
「襲撃にでもあったのかな?」
「可能性はありますが、これだけでは何とも…」
ティファがドアの前にあった血痕を指差す。
…俺は無言で頷き警戒しながら中へと入る。
扉を入ると、見張り用?のような待機スペースがあって、奥に通路が伸びているみたいだ。
両サイドにいくつか扉があるので、一つずつ確認して行く。
……ガチャッ
「…ここは拷問部屋かな…」
「そのようです。」
今度は左手側の扉だ。
……カチャリ
「…ぐ~ぐ~」
「…すぅ~すぅ~……むにゃ」
三段ベッドが所狭しと並べられている。
どうやら、簡易の宿泊所か…
これだけ普通の状態なら、襲撃の線は無さそうだな。
「…次に行こう。」
そっと扉を閉めて、そのまま左の奥の扉を開ける。
…ガタッ!
「…あんっ?おい!テメーラ、何もんだァ!」
「なんだぁ~この野郎!」
「やります。」
…ヒュン!…バシュッ、ドンッ!
「…お見事。」
俺は瞬く間にゴロツキを斬り捨てるティファに賛辞を送り、次の部屋を目指す。
……ギィィ
建てつけの悪くなっている、防音対策か他よりも少し厚く大きめの扉を開けると…
結構大きめの部屋で、中から大勢の人の声が聞こえてくる。
…そこに居たのは大勢の信者で、すし詰め状態になって様々な事をしている。
「…おた!……ねがいっ…して!?
「おま…せいが!…いやー!!」
色んな人が、訳の分からない事を叫んでいて、こちらに気付く様子は無いんだけど
…異常な光景過ぎて引くなぁ
ティファも横で顔を渋くしているが、何かに気付いて俺の肩を掴み奥を指差す。
「ユウト様!」
「んっ!?…あれは…ルサリィ!」
信者達の奥は祭壇のようになっていて、周りより一段高くなっている。
その怪しげな祭壇の前では、骸骨の面を付けた司祭服の男に、ルサリィが吊るし上げられてる!?
俺とティファはトランス状態の信者達を押し退けて、ルサリィの元に急ぐ。
途中に不動産屋のハーピーが見えた気がしたけど、今はそれどころじゃないっ!
ティファが先に祭壇へ着くと、ロープを切りルサリィを抱きとめているのがみえた。
…俺も遅れて司祭の後ろ側に飛び出し挟み撃ちにする。
司祭の足元には、ルサリィの母親が縋り付いていた。
恐らく、助けてもらうように頼んでいたのだろう…
「貴様らぁっ!教義を穢す輩を庇うとは何事かぁぁ!」
「…ふん。貴様らの薄汚い教義など、知った事ではありません。」
ティファがルサリィを下に降ろすと、母親がルサリィを抱きとめ介抱する。
そして俺に、「この司祭を斬っても良いか?」と視線を送ってくるティファに、少し待つように指示を出し質問する。
「…なあ司祭さん、あんたは何で、その子に酷い事を?」
「酷い事だぁぁ?この娘が、母親を教団から抜けさせて欲しい何て言うから、わざと無理な砂水晶花(サンドクリスタルフラワー)を持って来るように言ったのに…」
面をつけているので表情は読めないが、強く両手を握りしめると激昂する…
「どうやってか知らんが、本当に持ってきやがった!…だぁから、犬猫風情が教団を抜けたいなんて、生意気だ!と教え込んでやってたんだよっ!!」
男は肩で息を切りながら、一気に言い放った。
「…なるほど、貴様が、ルサリィに無理を言って
殺そうとした張本人か。」
「はっは~!我らの教義に背く者を裁くのは、指導者として当然のの務めよ!」
「テメェ…黙りやがれ!ティファッ!」
「はぁっ!」
「なにっ!?」
……ズハァァッ! …ドォォン!
ティファの一閃が司祭の男を軽々と石壁に吹き飛ばす。
あれで命がある訳無い、と油断してしまい俺はルサリィの元に行こうとする…
「きぃぃさまぁぁ!その親子をブチ殺せっ!!」
しかし、死んだはずの男の叫びと共に狂乱していた信者達が、母親からルサリィを奪いティファにまとわりつく。
焦った俺が声を発するよりも、周りを囲む信者の一人がルサリィにナイフを振り落とす方が早かった…
「…ルサリィィィ!!」俺は力の限り叫んだ…
「…お前さん、それはアニメの見過ぎとちゃうか?どこの魔王様やっ」
笑いながらレンが突っ込んでくれる。
…良かった。
ツッコミのある生活素晴らしい!
この世界の人間だけだと完璧スルーされて、また悲しくなる所だった。
…レンは良い奴だなっ!
では、約束通り世界の半分をっ!
…さっ、しょーもない考えは置いといて、真面目に話しを聞きますかっ。
メリーが居ないのは不安だけど仕方ない…
俺、ティファ、レアの三人でテーブルを挟み、向かい合うシャーロットとレンが話しを始める。
「…では、先ずは私からお話させて頂きます。」
シャーロットは俺達を見ると、静かに語り出した。
「前回の話が終わってから、私達は王都に戻り、
国王陛下へ報告をしました。」
「ちょっと大袈裟に褒めといたで!」
「…報告の内容には賛否ありましたが、陛下は私達の提案と講和の条件を認め、都市を救ったあなた方にお会いしたい、と仰られました。」
「俺のお陰やなぁ♪」
「…そして、あなた方を招集する役目は、前回、
ご迷惑をお掛けした、このバカが負うべきと判断し、私達が参りました。」
「えっ!?おれかいなっ!」
…ドスッ
「ぐへっ…」
「少しお黙りなさい、バカレン…」
流れるような見事な肘打ちに、脇腹を抑えて咳き込むレンを横目に見ながら、話を続けるシャーロットは、さらに道中で起きた出来事も続ける。
「…それで、私達は王都よりアスペルに向かおうと、馬車を走らせていたのですが、ゴビス砂漠の横を通過中に…賊に襲われたのです。」
「…ユウト達に助けてもろた、グーロ事件の奴らや。」
「そうです…私達は"アレ"は【餓狼蜘】の仕業ではないかと考えています。」
「…餓狼蜘?」
「…はい。本当は、関係の無い人間に教える事では無いのですけど…」
シャーロットは迷いながらも、説明してくれる。
餓狼蜘はシルクットに、拠点を構える一大犯罪組織で、正確なメンバー数は不明だか、千人近い構成員がいること。
関連団体である、ラヴァーナ教にも影響力がある為、情報網としての人員数は、5万人を優に超えること。
軍事力的な物が、どの程度かは把握出来ていないが、恐らくは、かなりの力を持っているだろうこと。
自分達が組織を探っていると知った組織の人間に、口封じの為に襲われたのだろう、と思うと括った。
そして最後に、一番やっかいなのは餓狼蜘とラヴァーナ教のトップが同一で、影響力が多岐に渡る為、簡単には手が出しにくい事。
そこ首魁の名はラクシャスと言う男だ、と教えてくれた。
…この時、シャーロットは、この街の主要商会である、【織物商会】の幹部にラヴァーナ教の団員が、居る事を伏せて伝える。
ユウト達に恩を与える為と、情報を出すタイミングは、王都の招集から街に戻る時で、十分間に合うと考えたのだ。
「…しかし、そんな巨大な組織を国は放っておくのか?」
俺はレンに尋ねる。
「もちろん、王様かて、俺らの報告聞いてビックリしとったわ。…でもな、大規模な都市に軍を送り込むんは、政治的な事や宗教論なんかの問題もあるんやとさっ。」
「…レンの言う通りです。様々な利権が絡む為、
私達も大々的な行動を起こす事は、禁じられているのです。」
「そうなのか…国家運営も色々大変なんだな。
でも、それと俺達が呼ばれるのにどんな関係が?」
シャーロット達の話で、この街が大変な状態にある事は分かったけど、俺達は単純に各都市の商会を落として、俺の名声を上げるだけだ。
アスペルを救ったのも成り行きだしな。
…それによって、ドラゴン爺の一つ目の課題をクリアする。
正直、それまでは国や宗教なんかと関わりたく無い。
もし、王様に都市の解放を!とか言われても、お断りの方向で返答しよう。
…俺は先に、そう心に誓う。
「…あなた方が王都に呼ばれたのは、王国に不穏分子を作らない為の協力と、これからの皆さんの計画を直接聞いて、方向性を許容できるか、を確認する為です。」
…なるほど。
俺達が将来、国の厄介ごとにならないかの面談と、役立ちそうなら、懐柔して使ってやろうって事か…
考え方は好きになれんが、お互いに利益があるなら、それも考えるべきなのかもなぁ…
一通り話を聞き終わって、取り敢えず話をする事を決めた俺は、いつ出発するのかを尋ねると「延ばせるだけゆっくりしてから帰りたい。」との事だったので、出発を一週間後に決め話は終わった。
…その後、
シアンにお願いして、二人に部屋の用意をお願いしたら、寝室が一部屋しか空いていなくて、俺とレンが相部屋に…
と話をしたんだけど、ティファが主人である俺が
相部屋等ダメだと言って、シャーロットを自分の部屋にと聞かなかった。
シャーロットも頬を赤らめてOKするので、諦めてお願いする事にしたんだが、
…なんかズルいぞ!ティファよ…
その日は時間も遅かったので、シアンにお風呂の準備をお願いしつつ、皆で外食してから、帰って寝る事になった。
…帰ってからのお風呂で、ラッキーハプニングを期待したみた…が、何も起こらなかった。
…無念!無念!
ーーーー翌朝
シアンが用意してくれた朝食に、皆で舌鼓をうちながら予定を確認していく。
「俺達は、シルクットの町を散歩しながら、
なんか情報があれへんか聞いて回るわ。」
「俺とティファはルサリィの所に様子を見に行ってくるよ。」
「…シアンの買い物…てつだう…」
レアがお手伝いなんてエライ事を言うので、俺が褒めると薄い胸を張りながら、「オヤツ買ってもらえるから」と…まさしく子供の様な事を言っていた。
まぁ、役に立ってるなら何でも良いか…
それぞれの確認が終わり、用意が出来た組から順に出発して行く。
俺達は二番目だったので、レアとシアンに後をお願いして、ルサリィの家がある東地区へと向かう。
……
「…問題が起こらないといいんだけどな」
「そうですね…」
俺の独り言にティファが反応した。
彼女の言い方にも含みがあるのを感じるな…
アスペルの時みたいに、もっと簡単に話が進む
と思っていたけど、色々と面倒な事が起きるんだな…と、軽く考えていた事を反省しながら歩く。
…ティファは、何を考えているんだろうか?
…
ルサリィの家までは、特に何事も無く着いた。
…コンコンッ
…
……
「中に人の気配がしませんね…」
ティファがノブを回すが、鍵は掛かっている。
「鍵が掛かってるなら、朝早くにでも出掛けてしまったのかな?」
出直すかと二人で話をしていると、隣家のドアが開いた。
「…あんたら、その家の人間に何か用か?」
家の前で立ち尽くす俺達を不審に思ったのか、隣の家のオジサンが声を掛けて来た。
俺達は、この家の住人と知り合いで、娘のルサリィに用事があって来たと説明する。
「…ここの奴らは……邪教に取り憑かれちまってる。」
憂いを帯びた、でも、強い感情を持った表情でオジサンは言った。
「…邪教、ですか?」
「まさかっ!?あんたらもか…?」
「あっ、いえいえ、私達は違いますよ!それは、この家のご両親が…ですか?」
「…あぁ、旦那が行方不明になっちまってからな…」
オジサンが言うには、元々ここの家は三人家族で
仲が良く獣人である事を差し引いても幸せそうだったらしい。
オジサンも獣人への差別意識は特に無いらしく、
ルサリィとも良く遊んだ事があったそうだけど…
ある日、旦那さんがクエストに出たきり戻らなくなって、この家には変な格好の人間が出入りするようになったらしい。
その事をオジサンがルサリィの母親に尋ねると、
その邪教に勧誘された…との事だった。
それから、母親との会話は避けているらしいが、ルサリィが可哀想だと言っていた。
俺達はお礼を言い、その場を離れようとしたんだけど、すれ違いざまに「昨日の晩遅くに、娘を連れて東の外れの教会に行った…」そうオジサンは呟くと、家に入って行ってしまった。
「…ユウト様、向かいましょう。」
俺はティファに頷くと、東の外れにあると言う教会へ向かった。
ティファの情報では、その教会は昔に放棄された物を、何者かが再利用しているらしく…
恐らくそいつらが、邪教…ラヴァーナ教の人間なんだろうとの事だ。
二人とも不安から、足が速くなる。
ルサリィの泣き顔が頭に浮かんでしまう。
早く迎えに行ってあげないと。
……
「…ここです。」
「確かに墓地の横ってのは雰囲気あるな。」
夜であれば遠慮したい空気の漂ってる教会に足を踏み入れる。
安定のティファが先頭だが…
「…?誰もいないようです。」
ティファの言う通り、人の気配がしない。
邪教からも見捨てられてしまったのだろうか?
取り敢えず、教会の中を調べていると、ティファが微かな血の跡を発見した。
「ユウト様…ここの床が、地下への隠し扉になっているようです。」
「ちょっと待った。」
「リロードオン…」
ー盗賊の手袋ー
・手をかざすと罠の有無を調べられる
床の隠し扉は薄く青く光り、罠が無い事を伝えて来る。
「行こう。」
問題無いようなので、扉を開けると、内鍵が壊されている。
…先客がいるのか?
地下に降りると分厚い扉があるが、これも開いている…
「襲撃にでもあったのかな?」
「可能性はありますが、これだけでは何とも…」
ティファがドアの前にあった血痕を指差す。
…俺は無言で頷き警戒しながら中へと入る。
扉を入ると、見張り用?のような待機スペースがあって、奥に通路が伸びているみたいだ。
両サイドにいくつか扉があるので、一つずつ確認して行く。
……ガチャッ
「…ここは拷問部屋かな…」
「そのようです。」
今度は左手側の扉だ。
……カチャリ
「…ぐ~ぐ~」
「…すぅ~すぅ~……むにゃ」
三段ベッドが所狭しと並べられている。
どうやら、簡易の宿泊所か…
これだけ普通の状態なら、襲撃の線は無さそうだな。
「…次に行こう。」
そっと扉を閉めて、そのまま左の奥の扉を開ける。
…ガタッ!
「…あんっ?おい!テメーラ、何もんだァ!」
「なんだぁ~この野郎!」
「やります。」
…ヒュン!…バシュッ、ドンッ!
「…お見事。」
俺は瞬く間にゴロツキを斬り捨てるティファに賛辞を送り、次の部屋を目指す。
……ギィィ
建てつけの悪くなっている、防音対策か他よりも少し厚く大きめの扉を開けると…
結構大きめの部屋で、中から大勢の人の声が聞こえてくる。
…そこに居たのは大勢の信者で、すし詰め状態になって様々な事をしている。
「…おた!……ねがいっ…して!?
「おま…せいが!…いやー!!」
色んな人が、訳の分からない事を叫んでいて、こちらに気付く様子は無いんだけど
…異常な光景過ぎて引くなぁ
ティファも横で顔を渋くしているが、何かに気付いて俺の肩を掴み奥を指差す。
「ユウト様!」
「んっ!?…あれは…ルサリィ!」
信者達の奥は祭壇のようになっていて、周りより一段高くなっている。
その怪しげな祭壇の前では、骸骨の面を付けた司祭服の男に、ルサリィが吊るし上げられてる!?
俺とティファはトランス状態の信者達を押し退けて、ルサリィの元に急ぐ。
途中に不動産屋のハーピーが見えた気がしたけど、今はそれどころじゃないっ!
ティファが先に祭壇へ着くと、ロープを切りルサリィを抱きとめているのがみえた。
…俺も遅れて司祭の後ろ側に飛び出し挟み撃ちにする。
司祭の足元には、ルサリィの母親が縋り付いていた。
恐らく、助けてもらうように頼んでいたのだろう…
「貴様らぁっ!教義を穢す輩を庇うとは何事かぁぁ!」
「…ふん。貴様らの薄汚い教義など、知った事ではありません。」
ティファがルサリィを下に降ろすと、母親がルサリィを抱きとめ介抱する。
そして俺に、「この司祭を斬っても良いか?」と視線を送ってくるティファに、少し待つように指示を出し質問する。
「…なあ司祭さん、あんたは何で、その子に酷い事を?」
「酷い事だぁぁ?この娘が、母親を教団から抜けさせて欲しい何て言うから、わざと無理な砂水晶花(サンドクリスタルフラワー)を持って来るように言ったのに…」
面をつけているので表情は読めないが、強く両手を握りしめると激昂する…
「どうやってか知らんが、本当に持ってきやがった!…だぁから、犬猫風情が教団を抜けたいなんて、生意気だ!と教え込んでやってたんだよっ!!」
男は肩で息を切りながら、一気に言い放った。
「…なるほど、貴様が、ルサリィに無理を言って
殺そうとした張本人か。」
「はっは~!我らの教義に背く者を裁くのは、指導者として当然のの務めよ!」
「テメェ…黙りやがれ!ティファッ!」
「はぁっ!」
「なにっ!?」
……ズハァァッ! …ドォォン!
ティファの一閃が司祭の男を軽々と石壁に吹き飛ばす。
あれで命がある訳無い、と油断してしまい俺はルサリィの元に行こうとする…
「きぃぃさまぁぁ!その親子をブチ殺せっ!!」
しかし、死んだはずの男の叫びと共に狂乱していた信者達が、母親からルサリィを奪いティファにまとわりつく。
焦った俺が声を発するよりも、周りを囲む信者の一人がルサリィにナイフを振り落とす方が早かった…
「…ルサリィィィ!!」俺は力の限り叫んだ…
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俺は五里羅門(ごり・らもん) 35歳独身男だ。硬派すぎて女が寄り付かず。強すぎる空手愛と鍛え抜かれた肉体のせいで不本意ながら通称「ゴリラ」と呼ばれていた。
仕事帰りにダンプに跳ねられた俺が目覚めると、そこは異世界だった。だが転生した姿は前世とは真逆。
病弱で華奢。戦闘力最低と言われる職業の「治癒士」(ヒーラー)適正の10歳の少年・ノエル。
「俺は戦闘狂だぞ!このひ弱な体じゃ、戦えねぇ!
「華奢でひ弱な体では、空手技を繰り出すのは夢のまた夢……」
魔力と資質が全てのこの世界。努力では超えられない「資質の壁」が立ちふさがる。
だが、空手馬鹿の俺の魂は諦めることを知らなかった。
「魔法が使えなきゃ、技で制す!治癒士が最強になっちゃいけないなんて誰が決めた?」
これは魔法の常識を「空手の技」で叩き壊す、一人の少年の異世界武勇伝。
伝説の騎士、美少女魔術師、そして謎の切り株(?)を巻き込み、ノエルの規格外の挑戦が今始まる!
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