課金ガチャアイテムだけで生き抜く!異世界生活‼︎

ネコまっしぐら。

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作戦のために②

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 ーーーーエデキア北西部

「はぁ…護衛って暇よねぇ。」

「はいはい、文句ばっかり言わない。自分から行きたいって言ったんでしょ?」
 神国にある剣神流道場に聖女護衛の依頼があり、行き先を聞いたキリカが行きたいと言いだし、一人じゃ不安だからと同行を命じられたバンゼル。

 本来なら、もっともっと研鑽を積むために道場に籠るつもりだったのに、結局、腐れ縁のキリカに振り回されている自分に、バンゼルは心の中でため息をつくが、依頼主の手前そんな表情は見せず、キリカを嗜める。


「すまんね、君達。私の力がもっと強ければ、他所に助けを求める必要など無いのだかね。」

「あぁっ!…いや、別にそんな意味で言ったんじゃないですよ、アルニラムさん?」
 声を掛けられた事に驚いて、聞かれていたかと焦るキリカが拙いフォローをするが…

 四星と呼ばれ、神国の切り札にあたる四人の中でも隊長を務める、神聖騎士アルニラムはキリカの悪気の無いキツイ言葉に苦笑いを浮かべる。

 単純にレベルを比べれば、バンゼルとキリカは83LVでアルニラムは84LVあり、通常ならアルニラムの方が強い事になる。

 ただ、神聖騎士はジョブとしてはパラディンになるので、攻撃よりも防御重視の為、攻撃のバリエーションが少ない。
 その上、剣神流の二人は攻撃特化で技の種類も豊富だし、ソロでの戦いに慣れているから、勢いに押し崩されてしまうと、負けてしまう可能性が高くなる。

 特に、相手が悪魔(デーモン)になると、守ってばかりいると、デバフなどで削られて殺されてしまうので、攻めきって活路を見出す方が勝算が高いと言える。


 過去に聖女を殺されそうになった教訓から、守護結界のあるセイクリッドパレスから出る際は、剣神流に護衛を依頼するようにして、凌いでいるのが現実で、その事をアルニラム自身歯がゆく思っているのだ。

「…すいません、アルニラムさん。キリカは本当に何も考えずに喋るので、悪気は一切無いんですが、同じ剣神流の者として謝ります。」
「私の扱いひどく無いっ!?」
 キリカの代わりに深く頭を下げるバンゼルに、キリカがツッコミを入れて、ようやくアルニラムにも軽い笑みがこぼれる。

「ふふふ…楽しそうですねぇ?」

「「これは!…聖女様」」
 テントの外で焚き火を囲んでいた三人の後ろから声がかかり、声の主に気付いた三人は跪いて畏る。

「あらあら…そんな態度はやめて下さい、せっかく同年代の方と旅ができるのですから。」
 聖女と呼ばれ、世界の希望と言われるセレス・フェイト・クレストリアは少し寂しげな表情をすると、二人に優しく笑う。

「そうですな…外でも無いと、他人と交流する機会はありませんからな。」
 アルニラムはそう言うと、自分の座っていた場所を譲りセレスの背後に立つ。

「…たしかに、聖女様って中々見る機会ないもんね?」
「こっ、こら!」
 キリカの爆弾発言に冷や汗を流しながら、バンゼルは言葉を探してうろたえる。

 世界中に熱狂的な信徒を持つセレスに粗相を働くと、本気で身の危険があるし、全世界でお尋ね者になる可能性すらある…

「…そうですよねぇ。私も城の中に閉じ込められるのは嫌なのですけどぉ、大事な役目があるので勝手は出来ないのですよぉ」

「聖女様も大変なのねっ!…いいわ、私が色々と外の事を教えてあげるわ!」
「ほんとうですかぁ!うれしぃ」

「ちょ、ちょっとキリカ…」
 バンゼルの制止も虚しく、キリカの偏った世界観を吹き込む、女子トーク…と言えるかは微妙な関係の二人の会話は、互いにマイペースな性格のお陰で軽快に弾むのであった。


 一方、その二人を見守る男達は…
「アルニラムさん、僕、胃が痛いです…」
「わかる、わかるぞ…バンゼル君」
 当の二人を他所にハラハラとするのは、勝手に不安を抱く男性陣二人だけだった。


 …
 そんなハラハラドキドキの遠足気分な行軍は、明日にはエゼルリオに到着する予定となっている。
 そして、セレスにとっては、大事なお役目と念願の対面を果たせるとあって、テンションの高いまま夜は更けていくのであった。











 ーーーーフローラ帝国 帝都王城

 …カツカツ…カツ
 …バンッ!
「邪魔をするぞ!」

 険しい表情のまま、断りもなく王の間に入ってくる男…シュウトは、空席になっている王座を見て舌打ちをした後、王座の横で部下に指示を出していた男に尋ねる。

「おい、カリオペア。カイザーは何処だ?ここに居ないってことは自分の部屋にこもってるのか?」

「…これはこれは、突然に珍しいお客様です。私があなたに、お答えしなければいけない義務でもありましたかな?」

 帝国で皇帝に次ぐ権力を持つ、宰相のカリオペアは横柄な態度を取るシュウトに、対するように質問には答えず小馬鹿にするような態度で返す。

「…はっ!直接行けば分かるけどな。」
「お待ちなさい!陛下は今取り込み中です、しばらくお待ちなさい。」
 カリオペアは、嫌味程度では態度を変えないシュウトにイラつきながらも、部屋に行かれては困ると、ここに留まるよう言葉尻を強くする。

「はは~ん、珍しくお前が奴のそばに居ないのは、そう言う訳かよ…」
 カリオペアの言葉の意図を知って、シュウトはいやらしい笑みを浮かべると、皇帝が来るまでに打ち合わせをさせろと指示する。

 カリオペアは、苦い顔をしながらも従うしかないと、皮肉を言いながら、王座の間横にある待合室へ行くように促す。
「まったく…人の情事を脅しに使うとは、品性のカケラもありませんなぁ。」
 …カチャリ
「…我が主人に対して、無礼にも程がありますよ。」
 どこからともなく現れたコハルが囁く。

 カリオペアは首に当てられたナイフに少し声を漏らすが、努めて平然とした顔を作りコハルの手を退けると、「話し合いがしたいなら、私への挑発は無用ですよ…」そう言いながら部屋へと入って行く。

「コハル、そのくらいにしておけよ。」
「私はただ!…かしこまりました。」
 脅し過ぎは逆効果になると心配するシュウトだが、コハルはシュウトへの侮辱に耐えかねただけだ、と言いたくなる衝動を飲み込み頷くと影へと潜み直す。


「…それで、皇帝陛下にお願い事とは何でしょうか?私で判断出来るものであれば検討しましょう。」

 シュウトは顎に手を当てて考えていたが、事前に話しておくべきだ、と判断し口を開いた。
「王国のユウト達を呑み込む。帝国には、王国と戦争してもらいたい。」

「はっ!!」
 あまりに唐突な話に、さすがのカリオペアも話を聞き直すが、シュウトの表情はいたって真剣だ。
「一応、確認しておきますが、我々にどんなメリットが?王国を叩き潰せるとでも?」

「王国と帝国の戦力は拮抗しているが、俺が加勢すれば、前線都市のアスペルかバノペア程度はくれてやるさ」
 それに、明確に取り込まれているユウト一味を王国から切り離せられれば、帝国にとってはかなりのメリットになるだろうと続けて説明する。


「…なるほど。王国の足掛かりとなる都市を確保できるのは確かに…」

 それから、二人はいくつかの質疑応答を挟んで、お互いの意見と可能性をぶつけ合って行く。
 その話は戦力の規模や作戦行動にまで伸びていき…最終的な判断は皇帝に仰ぐ事になるが、実務者同士としての、基本的な合意を得ることにシュウトは成功した。

「では、話がまとまって戦の準備が整ったら連絡をくれ。ウチの方でも、準備は進めておくからな。」
「分かりました。良い結果をお伝えできるよう、最善を尽くしましょう。」

 最初は険悪なムードの中で始まった話し合いは、最終的な合意を経て和やかに見送られるようになっており、王国にとってはかなり耳の痛い話となるのであった…










 ーーーー自治都市 エゼルリオ
「なんだって!?…どうしても間に合わないのか?」

「…申し訳ございません。どうしても明日朝の到着になるようで、お詫びを伝えて欲しいとの事でした。」

「そうか…理由が理由だし、仕方ないか。じゃあ、明日の炊き出し分の費用や諸々の準備も頼むな!」

 俺は最後にそう締めくくると、ヘッケランが人や予算はどうのと、つべこべ言うのを無視して、見鏡の水晶をアイテムボックスに締まいこんだ。

 今日はこれから、ラヴァーナ教に洗脳された人達を、炊き出しを利用して一気に浄化するつもりだったのだが…
 どうやら、途中の村でゴブリンに占拠されそうな所を見かけて、討伐に来た冒険者と一緒に村の解放に当たる事になったらしく、エゼルリオへの到着は明日朝になってしまうそうだ。

 仕方無いので、炊き出しは二日連続になるし、皆の負担は大きいけど、ここは頑張ってもらうしかないだろう…


 …
「はぁい!並んで並んで!沢山あるから、順番を守って並んでね!」

 ルサリィの元気な声が響き、会場となった広場に集まった人達が、次々と列をなして行く。
「しかし、この街には色んな種族がいるんだな。」
「この都市の北東部には、獣族と精霊族の住処があるようなので、奴隷狩りに合うもの達も多いそうですわ。」

 俺はメリーの話に相槌を打ちながら、列に並ぶ人達を眺める。

 人族、獣人族、精霊族のハーフ、魔族のハーフなんかも少数見えるな…
 ここは本当に他の街とは毛色が違う。
 あちこちから流れてきたり、メリーが言うように無理矢理捕まえられて来たりした者達が、そこらかしこに溢れてる。

 だけど、国の整備が行き届いていないこの街では、食えない者は奴隷か物乞いになるしかないんだ。
 せめて、俺が救ってあげれる程度くらいは、自己満足でも何とかしてあげたいと思う。

「この調子でしたら、明日も2~300人は集まりそうですので、初回の募集枠は埋まりそうですわ。」

「俺の方でも、一応、この後に声掛けしてみるよ。」

 マーレ都市長をはじめ、職員やボランティアの人達に、ティファやシャルが並んでる人達に骨つき肉と、カレーのような食べ物を手渡していってる。
 皆、美味しそうに笑顔で食べてるから、たしかに明日も同程度か少し多い集客はあるだろう。

 メリーに明日の手配も頼み、俺とルサリィで飲み物や座る場所の整理などを行なっていき、大体のひとが食べ終わったのを見計らって、俺は広場の真ん中に立った。


 …うぅ、緊張するな
「…え~、既に聞いている人も多いかもしれませんが、俺は現在、この街に孤児院を建設中です。子供から大人まで、興味がある人は帰る前に声を掛けて下さい!」
 飯を振る舞った効果か、結構耳を傾けてくれる子達も多くて、話の意図は十分伝わったと思うし、明日の炊き出しもアピールする事ができた。


 …
 何とかスピーチを終えた後、何人かは話を聞きに来た人がいて、大人も含めてだけど、今まで説得できた子供達を含めて100名弱は集まった感じだ。

「ユウト様、見事なお話しぶりでした。」
「ありがとう、ティファもお疲れ様。」

 初めてのボランティア作業は無事に終わり、昼過ぎには解散となったので、俺は後片付けをしながら、引き続き明日の準備もお願いして回る。


 …なかなか順調に終わったし、これが口コミで広がれば、明日はもっと人数が増えるかもな。
 みんなも疲れてるはずなのに、明日の為に精力的に動いてくれるみたいだし、俺もやれる事を今のうちにやらんとな。

 俺はメリーを連れて、マリー都市長と打ち合わせをするべく都市長会館を目指した。








 ーーーーシャーロット&レア
「みなさん、頑張って下さ~い!」

「「おぉっ~!」」

「…くりえいと、ゴーレム」

 土地の仲介人もいない状況の中、直接交渉で土地を押さえ、人夫を集めて孤児院の着工に乗り出していたメリーだが、さすがに作業員の数が足りず、建物の基礎工事をした時点から、レアにゴーレムを召喚させて重い資材の運搬や、水、火、風と…まさしく便利アイテムとして魔法を使わせまくっているのであった。

 そして、作業に身の入りが悪かった作業員達も、都市を解放した英雄で美女のシャルが応援しているとあっては、手を抜くわけにも行かず、必死に作業する事となり…
 全てはメリーの掌で綺麗に回されていくのであった。


「レアさん、少し休憩にしませんか?」
「…おなかへった…もう、むり…」

「帰るのはメリーさんの許可が下りないので、少し休みましょう!」
 へばるレアを励ましながら、何とか作業員達の休憩所へ連れて行こうとすると、どこからともなく、食欲を誘う香ばしい匂いが漂ってくる…

「…肉くしの…いおいっ!?」

 レアはそう呟くと、休憩所の近くに、いつの間にか来ていた屋台の串焼き屋に飛びつく。

 串焼き屋のオヤジに、苦笑いのシャルが金を払い、レアは両手一杯の肉を楽しんでいたのだが…
「…あれ?…なんか…ねむっ」
 …ドサッ
「レアさんっ!」
 肉串を持ったまま、倒れるレアにシャルは驚きオヤジを睨む。

「貴方!レアさんに何をしたのっ?」
「はっはっはぁ!バカな女どもだ!」

 レアが眠ったのを確認して、屋台の背後から武器を手にした厳つい男達が、シャル達を囲むように湧き出てくる。

「…ユウトさん…」
 シャルは、レアを抱きしめながら男達を睨み、小さな声で呟いた。











 ーーーールサリィ&ティファ
「明日は、もっと沢山の子供達を救えそうですね。」
「うん!私も頑張る!」

 ティファは、張り切るルサリィを見ながら微笑みで答えると、今まであまり行っていなかった地区等を重点的に回ってみる事にしていた。

 人が少ない場所でも、張り紙を貼ったり、ケガをして動けない人等にも声を掛けたり、回復薬を施したりしながら歩いて行く。

 …しばらく歩いていると、一人の少年が近寄って来た。

「お姉ちゃんたち…ぼくの妹のびょうき…治してくれる?」

「大丈夫?どこにいるの?」
「まずは、状態を確認します。そこの元に連れて行きなさい。」

 少年の話を聞いて心配する二人は、彼に誘われ農家で使われていたような、旧い納屋に案内される。

 納屋に入ると、藁で出来たベッドの上に一人の少女が横たわっていた。

「かわいそうに、今助け…つっ!」
 ティファは、少女の元に駆けつけて容体を見ようとして息を飲む。
 そこに横たわっていたのは、半分ミイラ化した少女の遺体だった…

「…きゃっ!」

 固まるティファの背後でルサリィの悲鳴が聞こえて振り返ると、先ほどの少年がナイフでルサリィを脅していて、入り口から次々と子供達が武器を手に、納屋の中へと入ってくる。

 …そして子供達の後ろから、最後に手下を引き連れた、フォルス・ゼリスマンが軽い足取りで登場する。

「また会ったでやんすね、お姉さん達はやり過ぎた…ジェシカの姉御の怒りに触れちまったんでやんすよ。」

 フォルスは、自分達がこの街最大の奴隷商会の人間であり自分はその幹部だと説明する。そして、子供達からルサリィを取り返そうと剣に手をかけようとするティファを制しながら、子供達を良く見ろと促してくる。

 …
 子供達は誰も彼も虚ろな表情をしており、中には涎を垂らす子供までいる始末で、さすがのティファも実力行使に出るべきなのかと頭を悩ませる。


 …スキルを使って全力を出せば、ルサリィは救えるでしょうけど、子供達を殺さないように手加減すれば、ルサリィが殺されてしまう。
 どうすれば…

 ルサリィは大切な仲間ではあるが、多数の子供を犠牲にしてでも助けるべきなのか…ティファには分からない。
 もし捕まっているのがユウトであれば、何を差し置いてでも、自分さえ犠牲にしても助けるべきと判断できるが、明らかに操られていると分かる子供達を犠牲にするのと言うのは、心の整理がつかないのだ。

「分かってると思うでやんすけど、抵抗するなら、この子だけは必ず殺すでやんす。それよりかは、俺達について来て欲しいでやんすねぇ。」

「…わかりました。従いましょう…今は。」

「ティファお姉ちゃん…」

 不安な表情のルサリィと子供達を引き連れて、フォルスはティファを目的地へと誘うのであった…
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