俺の学園生活は絶対に間違った方向へと進んでいる妖だ

ネコまっしぐら。

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◆新生活

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…ちゅんちゅん

 …たたたたっ
「おっはよー!髪染めたんだっ!めっちゃ可愛い!」
「高校デビューしてみたんだぁ~インスタに上げよっかなぁ…」
「いいなぁ、私も…」



 …
 桜が舞い散り始め、春も終わりを告げようとする、初夏の匂いを運ぶ風が吹く中

 俺、鞍馬天狗(くらま てんく)は中学を卒業し、この四月から、地元の駅から五駅離れた二つ隣の護口市にある『府立淀ノ方高校』へと通うため、朝から入学式に出席していた。

 入学前に思い描いたような劇的な変化は特に無くて、高校デビューした~、と言う女子達のどうても良い会話をBGMに歩きながら、俺は人だかりができている、クラス割が張り出された掲示板を覗きに来ていた。

「…童子は同じクラスか、……はいないか。」

 人だかりは避けて、少し遠巻きに自分のクラスを確認するが、どうやら俺は一組に配属されたみたいだ。

 …まぁしかし、何組かなんて関係無い。
 一番期待していたのは、俺が中学時代から仄かな想いを寄せていた相手の名前と同じ組かどうかだ。
しかし、もう隣の二組の中に発見してしまった。

「…はぁ。こんなもんか。」

 中学の時も三度繰り返した光景に、俺はいつもの慰めを口すると、今日のやるべき事は終わったと校門へ向かう。

 …たったったった!
「元気な奴が多いもんだ…」

 誰かが走る音を聞いて「皆、若いなー」と、俺が年寄り臭い事を考えていると

 …どんっ!
 背中を思いっきり叩かれた

「…いって!」
「もう!帰るの早いよぉ!今年も一緒のクラスになったんだし、今日も一緒に帰ろう?」

 俺の背中を押して来た、この…世にも可愛い生き物は、俺が日本で一番『美少年』と言う言葉が似合うと思っている、童子伊吹どうじ いぶきだ。

「もう少し加減しろよな!…童子」
「またまたぁ…今までみたいに伊吹って、ちゃんと呼んでよね!?」

 まるで彼女のように接してくる伊吹は、間違いなく男なんだ。
 だが、明るめの栗毛にゆるふわ天パで身長も160cmと、同級生は元よりショタコンのお姉さん達なら、ヨダレを垂らして飛びついてしまうのは仕方ない…そんなビジュアルをしている。

「…また同じクラスだったなぁ、腐れ縁か。」
「うっわ!言い方酷く無い?僕に嫌われちゃうよ?」

 そんな事を男に言われても、何も感じない言葉だと思うだろうが、それは大きな間違いだ。
 こいつに言われると、何故かドキッとしてしまう…

 実際、この世から可愛い女の子が居なくなったのなら、俺は伊吹と付き合う方を選びたくなるだろう自信があるくらいだ。

 …まぁ、伊吹が嫌がるだろうけど

 なにせ、こいつは中学時代に数々の伝説を残した男だからな…

 中でも、バレンタインデーの日に放課後チョコを渡す行列が出来て、カバンに入らないからと特別に段ボールを持参する許可が出たのは、コイツくらいしか俺は聞いた事が無い。

「別に嫌なら一人で寂しく帰るよ。」
「あはは!冗談だよ、一緒に帰ろう!」

 俺がお姉様なら何度コイツに攻略されてるか分からんな…と思いながら、新しい学校についてや中学時代の話をしつつ二人で校門へと向かう。


 ……たたたたたっ!
 バチンッ!!
「ぐっほっ!?」

 今日は何度後ろから叩かれるのだろうか、厄日なのだろう…
 そう思い後ろを振り返り、叩いて来た相手を睨みつける

「な~に、男二人でイチャイチャしてるのよ!わたしを置いて帰ろうなんて酷い男どもねぇ」
「…イチャイチャなんてしてねぇよ。」

 そこに居たのは、入学早々に学園No. 1マドンナの呼び声高い、前野玉藻(まえの たまも)だった。

 前野は、肩下まである艶やかな黒髪に、一握りある銀髪が不思議な雰囲気を醸し出している、同じ中学出身の同級生だ。
 パッチリ二重にスッとした綺麗な鼻筋、身長は伊吹より小さいのにスタイルが良い。
 そんじょそこらのアイドルなんて勝負にならないビジュアルを持った少女が、腕を組んで俺らを見てニヤついている。

「玉藻さん!一緒に帰ろうよっ!」
「伊吹君は素直で可愛いわよねぇ」

「そういうお前は俺達の前でも、もう少し女の子らしく振る舞えよ!」

「ふぅ~ん、テン君は私に可愛く接して欲しいのかなぁ?」

「う、うるへぇ…」

 これ以上、可愛くされたら顔見て喋れなくなるし、正直に言うと今のままでも十分過ぎるくらいだ。
 だが…決してそんなセリフは言えないし、思ってる事を悟られる訳にもいかない。

 俺は興味が無いフリをして、伊吹にだけ帰ろうと声をかけて歩き出す。

「冷たいわねぇ…この男は!私にこんな態度取る奴なんて、早々いないと思うんだけどなぁ」

「玉藻さんは可愛いからねぇ!」

「伊吹君だって可愛いじゃない!」

 俺は、二人がイチャイチャしているのを聞き耳立てながら前を歩く。
 中学時代からそうだが、この三人でいると疎外感が半端無い。
 美男美女に挟まれる凡人…何なら中の下、程度の男だよ俺は…

 中学の時はバスケ部だったから、身長は175cmあるけど身体は痩せ気味だし、彼女いない歴=年齢で、眠そうな目にボサボサの黒髪…自分で言うのもなんだけど、特別モテる要素なんて皆無だわな

 …スポーツは得意だから、そん時だけはチョット褒められるけどな!
 でも、頭良く無いし…

 …
 そんな事を考えながら、二人の話に適当に相槌を打って駅の改札を入りホームで電車を待つ。


 …鹿島行き発車しまーす。

 地元の最寄駅の一駅前で止まってしまう電車をやり過ごしていると、俺の服の裾を誰かが引っ張る

「…なに?」
「伊吹君が…」
 玉藻の声に伊吹を見ると、ホームから改札に向かうための階段の方を向いて、ジッと"ナニか"を見つめているのが分かった。

「おい、伊吹!電車が来るぞ、こっち向け!」
 俺は、伊吹のその様子に慌ててこっちを振り向かせる。

「あ、あぁ…ゴメン」
「伊吹君、どんな子?可哀想な子かな、助ける?」

「こら!これ以上、関わるなよ。ほら、行くぞ!」

 ちょうど良いタイミングでホームに入って来た電車へと俺達は飛び乗る。
 俺は電車の入り口、窓側に立って二人の方を向いて伊吹が外を見ないようにする。

「ごめんね?大丈夫、ついて来て無いよ。」

「…どんな子だったの?」
「ん~狐の耳が生えたボロボロの着物?みたいなのを着た男の子だったよ。」

「そりゃ、人に憑く『人狐(にんこ」』か『妖狐『ようこ)』って言う、人に化ける妖怪だろうな。」

 俺達は車内にいる他の人達に聞こえないように、小声で今見たモノの情報を共有していく。

 伊吹は昔から霊感が強く、ウチの親父曰く霊力やら妖力やらも強いらしい。
 そのせいか、意識しなくても色んなモノが見えてしまいようで、その度に巻き込まれたり危険な目に遭う事が多いんだ。

 根が良い奴なので、可哀想な妖怪を見ると直ぐに助けようとして、結局痛い目を見てる事が多いから、俺は極力関わらせないようにしているんだが…

「へぇ~そんな妖怪なんだ!私も見てみたかったなぁ…可愛い感じかな?カッコイイ感じなのかな?」

「顔はあんまり覚えて無いけど、可愛い感じかなぁ?」

「…あんまり話しすんなよ、憑かれても知らねぇぞ。」

 …香露園…香露園です。
 ブーブー言う二人に、それならどうぞご自由にと伝えて、駅に着いたので電車を降りる。

 俺は寺の住職の息子なので、そう言う類のものに耐性がある。
 伊吹程じゃないにしても目を凝らして良く見れば"モノ"が見れてしまうから、昔から対処方法や関わり方を教わってきたんだ。

 二人にもあんまり危険な事には関わって欲しく無いけど、中学時代もあちこちに引っ張って連れて行かれたから…高校生活も前途多難かな

 …二人と一緒なのは嬉しいんだけどなぁ

 二人のビジュアルが周囲の人達をざわつかせるので、極力関係無いフリを装いながら先を歩いていると

「あぁ!ココ懐かしいね?…ちょっと入ってみましょうよっ」
「ぁあ!待ってよ玉藻さん、危ないよぉ~」

「いや、あぶねーのはお前ら二人だから…」

 俺達が物心つく前から、所有者が亡くなって建設が途中でストップしてしまった、二階建てのボーリング場になる予定だった建物を、秘密基地だとか言って小学生の頃に良く遊んでいた。
   それを見つけた玉藻が軽い足取りで進んで行く。

 二人だと危なっかしいので、一応俺も後を追いかける。
 …さ、寂しい訳では無いぞ!

「完成間近で放置されてるから、結構しっかりしてたよねぇ…あっ!このエスカレーターとか手摺を滑り台にしてた!」

「玉藻さん、丈夫そうに見えても危ないよ~」
「伊吹の言う通りだ、とっとと帰るぞ!!」

 たしかに、長い事放置されてる割には頑丈そうに見えるし、懐かしくもあるな…
「えぇ~遊び心が無いなぁ、君達わ」
 言う事を聞かず、渋る玉藻に伊吹がクレープでも食べに行こうと言うと、振り向いて目を輝かせている

 …ゲンキンな奴だ

「…テン君、なんだか変な感じ…壁に囲まれたような、ヤバそう!」
「壁!?結界かっ!!」
 …ミシミシ……ドゴォォン!

 伊吹の話に、昔の事を思い出した俺が不安を口にするのと同時に、さっきまで何の問題も無さそうだった建物のエントランス部分が、上からショベルカーに押されでもしたかのように、軋む音を立てて玉藻を下敷きにしようと崩れ落ちてきた…
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