俺の学園生活は絶対に間違った方向へと進んでいる妖だ

ネコまっしぐら。

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◆呪符と海坊主

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 パンッ!
「召喚、管狐!玉藻を助けろ!」

 俺は懐から呪符と呼ばれる、キョンシーの額に貼るような札を懐から取り出すと、即座に両手で挟み封印された妖怪を召喚する。

 すると、俺の手の隙間からニュルリと妖怪『管狐(くだぎつね)』が現れ、その名の通り狐の幽霊みたいな姿をくねらせて、瓦礫の下敷きになろうする玉藻の元へ一直線に飛んで行くと、玉藻を突き飛ばすように建物の奥へと消えて行った。

「テン君!あれっ!」
 伊吹が指差す方を見て目を凝らすと、目や口が一つしか無い、巨人のような坊主頭の妖怪『海坊主』が、建物へ打ち込んだ右腕を引き抜く所だった。

「あれは、海坊主!?なんでこんな所に出るんだ?海坊主は海の妖怪だろ!」
「うぁぁあぁ…」
 普通は海上で現れる事がある妖怪の海坊主が、何故か陸地の…しかも街中に出た事に俺が動揺していると、叫びながら引き抜いた右腕で、そのまま俺を狙った一撃を放ってくる
 …ドスーンッ!

「あっぶねぇ!くっそ…」
 なんとか横っ飛びで右ストレートをかわすと、さっきまで俺がいた地面が陥没している。

「テン君、大丈夫!?」
「伊吹、お前は離れてろ!」

「ゔぅぁぁあぁ…」
 …ドォン!ダァーン!
 俺が拳を避けたのが気に入らなかったのか、叫び声をあげながら1mはありそうな足の裏で踏みつけてきたり、大玉転がしのボールくらいある拳でぶん殴ってくる…

 …パンッ!
 一撃でも喰らえば死んでしまいそうな攻撃を避けながら、管狐を召喚した呪符を懐に仕舞うと、別の呪符を取り出し両手で挟み込む。
「テン君足を狙って!」
「召喚!鴉天狗、あいつの足を斬れ!」

「…御意」
 俺の手の間から生まれ出たのは、修験者のような服を着た、背中から鴉の翼を生やした、身長2mくらいある大男で、腰に差した日本刀を抜き放つと海坊主に向かって翼を広げ突撃する。

「あぁっ!ゔごおぉおぉ!」
 海坊主は、斬り裂かれた足から灰色の煙と呻き声を上げるが、5m近い巨大は簡単に倒れそうにない。

「はぁ…はぁっ…」
 妖怪を召喚すると、精神的な疲労が蓄積されるので、頭がクラクラしてくる…

 …鴉天狗は善戦しているけど、決定打が無い
 それに、相手のリーチが長くてスピードで翻弄はできても、まぐれで一発当たると消されてしまいかねない。

 俺は全身に感じる気怠さを押して、懐からもう一枚の呪符を取り出す。
 今までの白色の呪符とは色が違う、赤色をした札でサイズも一回り大きい特別なヤツだ。

「やるか。鴉天狗戻れ!…召喚!鬼の腕!!」

 海坊主の拳があたろうとする瞬間に、鴉天狗は煙となって消え去り、瞬時に呪符へと煙が吸い込まれる。
 それと入れ代わりに、海坊主の目の前の何もない空間には時空の切れ目が出現し、中から巨大で真っ赤な鬼の腕が、手に大きな鉈を持って狭間からゆっくりと現れる…

「あゔぁぅあぁあ!」
 表情は読み取れないが、焦っているか恐怖に怯えるような大声を出し、鬼の腕に殴りかかろうとする海坊主

 ジャキーン!……ドンッ

 海坊主が振り上げた右腕は、鬼の持つ鉈に切り落とされて地面に転がると煙になって消えて行く。
「あ゛ぁあっごぅゔぁあ!!」
 煙が吹き出す右腕の付け根を押さえながら、ドンドンと動き回る海坊主は、鬼の腕と俺を交互に睨んだ後、全身が煙となり消えてしまった。

 …ズズズッ
「…ヤバイ、鬼の腕よ戻れ!封!」
 空間の割れ目からさらに身体を乗り出そうとする鬼の動きを見て、慌てて両拳を合わせ封印を行う。
 …ズズズッ
 すると、外に出ていた腕は空間の切れ目の中へとゆっくり戻って行く。

「はぁ…はぁ、た、玉藻が…」
 ドサッ…
 俺は意識を失った。

「テン君!」
 伊織は妖力の使い過ぎで倒れた俺の身体を抱き起こす。

 そして、顔が真っ青になりグッタリとする俺の様子を見て、伊織は躊躇する事なく俺の唇と自分の唇を…重ね合わせ、自分の妖力を俺の身体へと流し込んでいく

「……ぷはぁっ!?」
「テン君!良かったぁ、大丈夫みたいだね?」

「ちょ、おまっ!突然、何してんの!?無抵抗な男にキスして…」
 自分の唇を指で触りながら俺が目覚めた事にはにかんだ笑顔で安堵する伊織に、ナニしてくれんだ、と文句を言うと、昔ウチのクソ親父から聞いた方法で自分の妖力を分けただけだと、当たり前の事みたいに言われる…

「…それより、玉藻さん大丈夫なんだよね?」

「あぁ、管狐が守ってるから心配無い筈だけど…」
 俺は口を手で庇いながら、瓦礫の方を見る伊織に答えると、玉藻の救出に向かった。

 海坊主が創り出した空間…中と外の世界を切り離し中で起こっている事や音を外に漏れなくする『結界』は、いつのまにか消え去ってしまっていた。
 なので、野次馬が来る前に手早く助ける必要があって、俺は玉藻を背中におぶってその場を退散した。



 ……
「はぁ…全く、酷い目に合ったわ!」

「いや、生きてるだけましだから!そして俺に感謝は!?」
「あははは~ほんとに皆、無事で良かったねぇ~」
 帰っている途中で目を覚ました玉藻に、エッチやら変態やら謂れのない罪を着せられて、俺の背中から下ろした後も例の一言も無い事に文句を言っていると…

「じゃあ、また学校でね!」
 そう言って伊織は一人、角を曲がって帰って行った。


 …
「ぁ、ぁりが…ぅ」
「ふぇっ!?」
 二人で歩き始めると会話が無くなって、無言で歩いていると突然、玉藻が何かを呟いた。

「い、一応、助けてもらったから、ありがとうって言ってあげたのよ!何も言わないのも失礼でしょ!!…じゃ、じゃあね!」
 何が恥ずかしかったのか、ツンデレっぽい台詞を残して玉藻は顔を真っ赤にして帰って行ってしまう…

「ツンデレかよっ……しかし、アレは凄かったなぁ。まだ高1であれ程とは…」
 俺はジンジンと背中に残る、玉藻の双丘の感触を思い出しながらニヤニヤする。

 …警察が見ていたら職務質問受けるレベルだっただろう事は確実だ。

 そして…
「はぁ、また毎日ココを登るのか…」
 目の前にそびえる長い石階段を見てげっそりする。

 なぜここを登るかと言うと、俺の家は寺の裏にある為、煩悩の数を示していると言われる108ある石段を、学校が始まると毎日登り降りする事になるのだ…
 お陰で、足腰は鍛えられて体育や部活では活躍できる体になったけど、正直な話、毎日はうんざりする。

「はぁ…はぁ…」
 俺はなんとか石段を登りきると、親父に気付かれないよう、こっそりと母屋に入り部屋にこもる。
「…今日は身体よりも、精神的に疲れたな。」
 部屋でスウェットに着替えると、今日一日の事を思い出しながら横になって呟く。

 そして…これからの高校生活が、穏やかなものになる事を頭の中で願いながら目を閉じた。
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