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2章 怨みの象

番外編3 洞窟での戦い

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一方 ヒョウガ達三人は、洞窟の前まで来た。

少し躊躇いながらも、洞窟の中に入ってく。

―――お、思ったより、全然暗くないわね。入口はあんなに真っ暗だったのに‥‥

そうアミリが、外と中で、明るさが違うと感じる。


「アミリ、立ち止まるんじゃないぞ! 置いて行くぞ」

「ま、待ちなさいよ。本当に置いてくなんて酷いわよ」

―――何か居たのか?

とヒョウガ疑問に思ったが、アミリを置いて先を歩き出す。

 彼らが手探りで岩壁を伝って歩いていると、何かがこちらに近づいて来るではないか。

「ん……!? 何だあれ?」

「「ぎゃあああ」」

 と、咄嗟に叫び声をあげる二人は、その場にしゃがみ込んでしまう。

 「大丈夫だぞ! 唯の蝙蝠こうもりだぞ」

 その正体に気付いたヒョウガが、それを知らせたため、二人は安堵し、

「びっくりしたですの」

 「べ、別に私は驚いた訳じゃ無いんだからね」

 「分かった、分かった。んじゃあ、次進むぞ」

 ―――進むに連れて、段々と広い道になって行く。
 更に奥へ進んだところで、下に続く道を発見してから。
 下に下りてみると、行き成り大きな水溜りが行く手を阻む。

 「これじゃあ、先には進めないですの」

「なら、俺の体に摑まれよ」

 「そ、そんなこと……分かったわよ」

 こればかりはお手上げと、アーティナが諦めモードになってると、ヒョウガが俺の手に摑まれと仕向け。
 躊躇ためらっていたアミリも、観念したか彼の体に摑まる。

 「そんじゃあ、行くぞ! 能力<暴風>!!」

「ちょ、一寸速過ぎるわよ」

「でも、気持ちいいですの」

 洞窟の中にも拘らず、可成り凄まじい風が、彼から吹き荒れてきた。
 そして天井が低いが故に、上がった風が返って来て、そして風が交差する。
 其の儘、大きな水溜りの上を文字通り―――猛スピードで駆け抜けて行く。

 「あ、あっという間だったわね」

「ん……!? 行き止まりだぞ」

 アミリの独り言を無視して、歩いていた道を右に回ると壁に突き当たって。

 来た道を引き返していると、未だ通って無い道の存在に気付く。

「んじゃあ、出口に戻るぞ!」

 「あ、あそこに通って無い道が在るわよ!」

「ん……? ああ、在るな」

 見ている内に―――何故かは解らぬが、そちらに足が勝手に進んで行く。

 「この感じ!? この先に何か居るみたいですの」

 「ああ、そうだな。多分、蝙蝠とは全然違うやつだぞ」

 何か異様な気配を感じたのか、そうアーティナが言うと、彼も核心を抱く。

 ―――こ、蝙蝠とは違うやつ? 一体何なのよ!

 と、アミリが疑問に思っていると、二人共、顔を強張らせて息を呑む。

 急いで武装展開を済ませて、武器を手に持つ。
 こちらの攻撃態勢が整い、後は相手が来るだけ。

 同時刻 カナミ達の方はと言うと、

ヒョウガ達と別れた、分かれ道にやって来ていた。

「戻って来てないですね」

「そうだね。戻って来そうにないし見に行こっか!」

「良いよー」

「ワタシもです」

心配そうに言うミューフィに、カナミが提案を可否して。
二人の賛成が出たので、真ん中の道に行ってみることに。

「同じような草木が生い茂ってるね。霧も出て来たし。大丈夫かな?」

「大丈夫です。鳥がこちらをずっと進んでると、広い所に出ると言っています」

「あ、本当だ! 広い所が見えてきた。あれ湖じゃない」

「その様ですね」

 今の状態を話し、不安になるカナミ。
それをミューフィは、鳥が言ってるから間違いないと言う。

「可笑しいです。何処にも三人の姿が在りません」

「一体どこに行ったんだろう?」

「これは事件だよー」

 サラの口から思った通りの言葉が出て来る。


 そして、ヒョウガ達の所の現在。

 角頭から生えた奴が、ヒョウガ達の目の前に複数体現れた。

 「来やがったな、悪魔。んじゃあ、始めるぞ!」

「い、良いわよ」

 その悪魔たちは、何も喋る事無く迫って来る。

「食らうんですの! 
    武装魔術〈水竜切アクアドラゴン·カットり〉

 虚空から水で創り出された竜を出現させた。
 それを凝視した悪魔は、当然ながら警戒する。
 現れた水竜が、その身で悪魔を襲う。
 襲われた悪魔は、一体残らず殲滅せんめつすると。
 新しい悪魔が、虚空から出現した。

「そんじゃあ、俺も行くぞ! 
     風双刃剣技〈風林火山ボルキャノンフーリン斬りクーペ〉!!」

四種類の風が突如吹き荒れた。
 その風は、黄緑、緑、赤、青の三つ。
 攻めてきた悪魔達は、四つの風を自然と浴びることに。

 浴びた悪魔達が、気付く切り刻まれていた。
切り刻まれた悪魔達は、勿論ながら殲滅された。

なのに、又もや悪魔が出現。

「これじゃ切が無いぞ! こいつらを、送り込んで来てる親玉は何所だ!?」

 周りを見渡すも、探している十悪の幹部と思わしき人物はいない。

 ——今いるのは、俺、アミリ、アーティナ、十悪の下部のみだ!

 アミリは悪魔に銃口を向け、引き金を引く。

―――バンバン。

「こ、これでも食らいなさい!
        武装魔銃術〈火炎弾フラムバレット〉」

 放たれた弾は、燃え上がる炎だ。
 そして、一ミリたりともズレることなく十五、六体の悪魔に直撃し、絶命した。

 送り込んできた親玉が、相手をしても無駄と分かり送り込むのを止め。

 「ん……!? 増やして来なくなったぞ!                                良し、これで決めるぞ!   
風双刃剣技<#風神《ゴッドウィンド》の二撃ダブルブロー>!」

 呼び出された風神は、残りの悪魔を二つの剣で切裂く。
 十一体を消し去るのに成功した。

 ーーーが、運良く避け切った奴にアミリがまた銃口を向け、引き金を引く。

―――バンバン。

 「こ、これで終わりにするわよ! 
         武装魔術奥義〈#寸裂《フラグメント・》災弾マルールバール〉!」

  放った弾は、目に見えぬ速さで飛んで行ったのは災弾。
 ―――その弾は最後の悪魔の居る場所へ。
 当たった途端に、ずたずたに裂け、全てが終わった。

 「お、終わったわね。ボスが出て来ないのは可笑しいけど」

 「ああ、終わったな。確かにアミリに同感だぞ」

 アミリはほっと胸を撫で下ろすも、気掛りな点が有ると言う。ヒョウガも同意見。

「この先も進むんですの?」

 「ん……!? ああ、そうだな。奴らが探してた物が有るなら何か知りたいしな」

 「そ、そうね。仕様が無いから付き合ってあげるわよ」

 「アタシも別に構わないですの」

 アーティナの言葉を聞いた彼は、うんと肯いて続きを話す。

 ——アミリが俺に同行を添うと言い、アーティナもそのつもりのようだぞ。

 右に進んで行くと、宝箱はすでに開け放たれて、空っぽで。


 「な、何よ。空っぽじゃない。折角ここまで来てあげたのに・・・・。報酬も無い訳? それより何してるのよ! ヒョウガ先輩」

 「ああ、こんな所に骨が有ったんだぞ。人間の骸骨みたいだぞ」

「「きゃあああ」」

 アミリが、宝箱の先に居たヒョウガに声を掛けると、骸骨と一緒にいるヒョウガを見ると。
 二人の絶叫がハモって、洞窟中を木魂する。

少し休ませることにする。
 落ち着きを取り戻した二人が、立ち上がり。

 「あの骸骨は、誰のモノですの?」

 「そんなの知るか。まあ、死後一、二年以上は経過してるぞ」

 「そ、それよりも、この洞窟から出るわよ。って、何よ、この揺れは?」

 そう言った途端。強い地震が来たかのように揺れ始めた。止まる様子は微塵も無い。

 「これ、ヤバいんじゃないですの?」

 「ああ、多分な。これも奴らの仕業な気がするぞ」

 「そ、それよりも早く逃げるわよ。あ、あれを観なさいよ! もう残された時間は無いわよ」

 ―――こ、これ絶対後十分も持たないわよね。こんな所で死にたくないわよ。

 アミリは今の状況を凝視し、今いる洞窟を指で指して思う。こんな所で死にたくないと言う事を。

 アーティナが不安気な様子をしている。

 ―――俺も同感だと伝えたぞ。この、倒壊の原因が十悪の仕業だ!

と確信して思い。

 ――アミリの言う事はもっともだ。


と、ヒョウガは渋い顔をする。

 現在の状況は、次々洞窟の上の方から崩壊し続けていて、天井には、地下一階にも拘らず穴が開いて折り、事態の深刻さが見て取れる。

 「少し揺れが治まった気がするぞ! 今の内に俺に摑まれ!」

 「この事態なら、それが最前線ですの」

「や、已む負えないわね!」


 ―――二人の承諾を受け、俺は此の前習得した、奴を試すことにするぞ。

「しっかり摑まっとくんだぞ! 神風!!」

 吹き飛ばした風の神のお陰で、外への脱出に成功。
 が―――しかし、降りる方法は覚えておらず、地面へと墜落して行く。

「能力<羽毛風船>」

 アーティナの能力の一つを使った。
 ―――どんな状況でも、羽毛の風船を作れると言う能力だ。
 羽毛の風船が、落下してきた三人を迎えてくれて。

「ん……!? 助かったぞ」

「ホ、本当ね。ありがとう」

 「否否。無事でよかったですの」

 お礼を言う二人に、アーティナは何々と言い。

「それよりあれを見てですの」

「き、危機一髪だったわね」

 アーティナが指した先は、洞窟の方だ。
 そう言った訳は―――洞窟が完全に崩壊していたから。

 そして、逃げて行く悪魔達を遠くながら目に留まる。

「逃げて行ったな」

「そうですの」

「そ、そうね」

 逃げて行った悪魔を見て、そう呟く。

 「んじゃあ、カナミ達と別れた所に戻るぞ!」

 「そ、そうね。急いであげないと」

 「そうですの。お腹も空きましたですの」

 「べ、別に私は……ぐう~ぐう~・・・」

 お腹が空いて無いと強がるがアミリだが、お腹の方は素直な為、顔を赤らめてしまう。

 ―――お、お腹の音聞かれちゃったわよ。は、恥ずかしいわ。

 お腹を押さえて恥ずかしそうにしている。

お腹も空腹を訴えたこともあり、分岐地点に急ぎ足で戻って行く。
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