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2章
2−6
しおりを挟む「あの……私もお力になれることがあれば協力したいです」
思わず口をついてでた言葉に自分でハッとする。目の前のダンテさんは目を見開いてから「ありがとうございます」と唇を噛み締めながら頭を下げた。
ハンナかリクかはわからないが後ろからの視線が痛い。レイ様が「じゃあ~どうしようか」と私にたずねた。
「私達はあと二日はこちらに滞在します。そのあいだだけで申し訳ないのですが私達も子供さんの捜索をお手伝いします。それと、レイ様にお願いをしたいのですが……」
「なあに?」
「自警団の捜索隊に許可が出ればレイ様も森への捜索隊に加わって欲しいのです。やはり、冒険者の方がいると目線も違うでしょうし」
そういうとレイ様は少し目を見開いてからニヤリと笑った。
「いいの~? 俺一応お嬢様の護衛で雇われてんだよ?」
「二日この町に滞在するならできることはお手伝いしたいですし。それに護衛ならば町中でしたらリクや、ハンナもいるので。森の中で危険も伴うと思いますが、お願いしたいです」
「そういうならわかったよ」
「ありがとうございます」
「いいよ~」
そう言ってレイ様はにっこりと笑った。
ハンナが何か言いたそうにしているのをチラリと視線で制した。ダンテさんは何度もありがとうございますと言ってレイ様を自警団の元へ案内するためにレイ様と二人退室した。
部屋の中は私とハンナとリクの三人だけになった。ハンナが二人の足音がなくなったのを確認してから私の方へ向き直る。
「おーじょーさーまー?」
「ごめんなさい! 力になってあげたくって。二日だけだしお願いハンナ。リクもいいかしら?」
ハンナは少しため息をついた後、「しょうがありませんね」と許してくれた。リクは「二日だけなら問題ないでしょう」とうなずいてくれた。
ふと、ハンナに気になったことをたずねてみた。
「ねえ、ハンナ。キヨラの領主は確かハインツ子爵だったわよね」
「そうですね、確か先代がご病気で亡くなって代替わりしてそんなにたっていないと思います」
こんなに子供の連れ去りが問題になりつつあるのなら領主自ら動いているのか気になって口にするとハンナは難しい顔をした。
「難しいでしょうね。ハインツ子爵は先代が亡くなったのも確か急だったはずです。今代は引き継ぎもできていない状態だったんじゃないでしょうか」
「それに領主によっては人攫いなどどうでもいいと思っている者も少なからずおります。耳に入っているかも怪しいでしょう」
リクもため息をつきながら言う。
そうなのか……領主に伯爵令嬢といえど面会も難しいかな……とりあえず頭に入れておこう。
それに気になっていたこと。なぜ精霊が子供をさらったと噂されているのか。人間がさらっているのか、それとも精霊が本当に絡んでいるのか。どちらにしても私一人の手に余るのは確かだ。
「ハンナはお父様に手紙を書く際に今回の事件のことも一応書いておいて」
「よろしいのですか? 旦那様が心配してしまうのでは?」
「ハンナとリクがいるし、レイ様もいるんだから心配しないでと私の方でも手紙をあとで書くわ。あ、レイ様が捜索隊に加わることは内緒にしておいてちょうだい」
いざとなったらお父様からハインツ子爵に連絡をとってもらおう。先程のダンテさんの憔悴した姿を思い出して胸が痛くなった。
早く息子さんが見つかりますように……。
それからハンナはお父様に手紙を出すということで慌てて郵便ギルドの方へ出掛けて行った。
この世界の郵便は「郵便ギルド」というものががあって、前世の郵便局のような役割を担っている。
手紙を配達するのはグリフォンという大きな鳥の魔物に郵便ギルドの職員が騎乗して配達する。
グリフォンは大きな白い鳥のような魔物だ。黄色い嘴で、鋭い鉤爪を持っているのが特徴だ。羽毛は柔らかそうで、羽を広げるととても大きい。
魔物といっても温厚な性格で幼鳥の頃から人間が飼育して人に慣らしており、頭の良い魔物なので人間が言っていることを理解し、指示を聞くように訓練されている。
うちの屋敷は魔物避けの結界を施しているけど、グリフォンだけは入れるように登録してある。それだけ郵便ギルドは信頼があるということなんだけど。
郵便ギルドに勤めている人は厳しい訓練を受けたエリートばかりだと聞く。空を飛んでいる際に、魔物に攻撃を受けないように飛んでいるあいだ姿がみえない特殊な魔道具を使っているらしい。もちろん、万が一攻撃を受けても撃退できるほどの腕を職員もグリフォンも持ってるのだとか。
屋敷にいつも来るお兄さんは線が細くてあんまり強そうに見えないけど。グリフォンにしょっちゅう帽子を取られて慌てている姿を思いだす。
「ではお嬢様、町に出ますか」
リクに声を掛けられてハッとする。いけない、グリフォンを思い出してぼーっとしていた。
「そうね! 私達も町中でまず情報を集めましょうか」
そう言って張り切って部屋を出て行こうとするとお腹がぐううっとなった。恥ずかしくなってお腹を押さえているとリクは何も言わずお腹の収納ポケットからサンドイッチを取り出し、私の方へそっと差し出す。
「私は先程いただきましたからどうぞ」
「あ、ありがとう……」
少し気まずくなりながらもサンドイッチを受け取ったのだった。サンドイッチはおいしかった……。
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