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2章
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「精霊と関わりがあるって……あの子に守護精霊がいるってこと?」
驚いてリクにたずねるとリクは少し考えこんだあと口を開いた。
「確証はないのですが……その可能性もなくはないです」
精霊召喚の儀は基本この国では十二歳の年に生活魔法を習得してから行うとされている。でもそれは貴族の間だけだったら……?
平民の魔力の多いものはどうしているか私は知らない。平民でも魔力が多かったら魔法学園に特待生として入ることができるけど、全員が全員学園に通うわけではないだろう。宿に帰ったらハンナに詳しく聞いてみよう。
「なんだか不思議な子だったわね」
しかもあの少年はリクを見てはぐれと言い当てた。「狙われるぞ」ってどういうことだろう……。
私はさっきの子供が消えていった路地裏をしばらく見つめていた。仄暗い雰囲気を醸し出している路地裏はなんだか入っては出られないような闇に飲み込まれそうな雰囲気を醸し出していた。
宿に戻るとハンナが心配そうに出迎えてくれた。
「もう!部屋に戻ると書き置きを残していなくなっているんだから驚きましたよ!」
「サンドイッチは食べた?」
「食べました! おいしかったです!」
ちょっと怒りながらも素直にサンドイッチを食べたハンナのその返答を聞いて満足する。私は先程出会った子供を思い出しながらハンナに聞いてみた。
魔力が高い平民の子供は精霊召喚の儀はどうしているか気になっていたからだ。ハンナは視線を上に向けて「確か……」と話し出した。
「教会で精霊召喚の儀を行えると聞いたことがあります。儀式は大がかりですし、平民では準備ができないので教会のもとで魔力が高いと思われる子供は教会のもとで生活魔法を学んでから行うのではなかったでしょうか」
「一つの町で魔力の高い子供は一定数いるものなのかしら?」
「それは町によりけりではないでしょうか。そんな記録をとっていることもわかりませんし、第一とっていたとしても教会側は提示しないでしょう」
「それはどうして?」
「なにより秘匿情報ですし、教会で精霊召喚を行う際はその子供は教会の庇護下に入ることになります。精霊召喚の儀が成功して守護精霊を得た場合、その子供が大人になった際は教会に勤めることが約束されます。いざというときの戦力を提示するとは考えにくいです」
戦力というにも驚いたがここの世界では完全に教会というのは国の中でも独立した別組織という立場ということに驚いた。
「ということは精霊召喚の儀は平民は教会でしか行えないといことかしら?」
そうハンナに問いかけるとそれまで黙って聞いていたリクが口を開いた。
「方法は他にもあります。魔導書や、ルリの花、りんご、魔法陣さえ用意すればどこだってできるものなのです。ただ、魔導書は値が張るものというだけであって難しくはありません。精霊と契約するだけでしたら一か八かですが、はぐれ精霊と契約する方法だってあります」
「はぐれ精霊とも契約はできるの?」
ずっと気になっていたことを少し緊張しながら聞いてみる。リクは少し躊躇いながらもうなずいた。
「はぐれ精霊は精霊界に帰れないことから魔力は本来の力よりも数段落ちている状態です。精霊と人間の相性が良かったら契約するのは可能です。ただ、契約しても本来の力を出すには時間はかかりますし……はぐれにははぐれになる理由がありますので……あまりいい方法とは言えません」
そう言って下を向いた。なんとなく気まずい雰囲気になり話題を変える。
「そ、そういえばなんで精霊召喚の儀にはりんごが必要なのかしら?」
「それは精霊王の思い出の品というのは聞いたことがあります。詳しくは知りませんがそれが伝承として人間に伝わっているのでしょう」
まさかりんごが精霊王の思い出の品というのは初めて聞いた。精霊王にまつわる本とかあれば探して読んでみたい。
りんごの話をしていたらなんだかりんごが食べたくなってきたのでお茶の時間にすることにした。ハンナにお茶の準備をお願いする。
さっき屋台で間食をしたけどリクと目を合わせて無言で頷きあった。屋台で食べた後も歩き回ってるしいいだろうと自分を納得させる。
りんごチップスが皿に乗せられて運ばれてくるも目の前に来た皿の上の量の少なさに唖然とする。三枚ほどしかのっていない。
「ハ、ハンナ……? 少し量が少なすぎるように思えるのだけど?」
「もう少ししたら昼食の時間ですし。それにお嬢様……屋台で何か召し上がっていますよね?」
ハンナが腰に手を当てて目を細めて私とリクを見やる。思わずびくりとしてしまう。
「そ、そんなわけないじゃない~」
慌てて誤魔化そうとするとハンナがスッと指を指す。それは私のスカートを指していてゆっくりと視線を移すと先程食べたクレープのジャムが見落としそうなくらいほんの少しだけついていた。
「それに先程お嬢様が帰ってこられてからお嬢様からベリーの香りがしております」
それは先程屋台で飲んだベリーのジュースだろう。思わずハッと口元をおさえてしまう。チラリとリクをみると隣で固まっている。
「リク、あなたもですよ? お嬢様が屋台で買い食いをしたら報告するようにと言いましたよね?」
「は、はい……」
「だいたいお嬢様といい、リクといいお菓子を食べすぎです! 食べたあとはしっかり歯を磨かないと虫歯になるんですよ──……」
二人してしょんぼりとうなだれる。そうして私たちはハンナのお説教を冷めつつある紅茶を横目に昼食をとりにレイ様が帰ってくるまで聞くはめになったのだった。
驚いてリクにたずねるとリクは少し考えこんだあと口を開いた。
「確証はないのですが……その可能性もなくはないです」
精霊召喚の儀は基本この国では十二歳の年に生活魔法を習得してから行うとされている。でもそれは貴族の間だけだったら……?
平民の魔力の多いものはどうしているか私は知らない。平民でも魔力が多かったら魔法学園に特待生として入ることができるけど、全員が全員学園に通うわけではないだろう。宿に帰ったらハンナに詳しく聞いてみよう。
「なんだか不思議な子だったわね」
しかもあの少年はリクを見てはぐれと言い当てた。「狙われるぞ」ってどういうことだろう……。
私はさっきの子供が消えていった路地裏をしばらく見つめていた。仄暗い雰囲気を醸し出している路地裏はなんだか入っては出られないような闇に飲み込まれそうな雰囲気を醸し出していた。
宿に戻るとハンナが心配そうに出迎えてくれた。
「もう!部屋に戻ると書き置きを残していなくなっているんだから驚きましたよ!」
「サンドイッチは食べた?」
「食べました! おいしかったです!」
ちょっと怒りながらも素直にサンドイッチを食べたハンナのその返答を聞いて満足する。私は先程出会った子供を思い出しながらハンナに聞いてみた。
魔力が高い平民の子供は精霊召喚の儀はどうしているか気になっていたからだ。ハンナは視線を上に向けて「確か……」と話し出した。
「教会で精霊召喚の儀を行えると聞いたことがあります。儀式は大がかりですし、平民では準備ができないので教会のもとで魔力が高いと思われる子供は教会のもとで生活魔法を学んでから行うのではなかったでしょうか」
「一つの町で魔力の高い子供は一定数いるものなのかしら?」
「それは町によりけりではないでしょうか。そんな記録をとっていることもわかりませんし、第一とっていたとしても教会側は提示しないでしょう」
「それはどうして?」
「なにより秘匿情報ですし、教会で精霊召喚を行う際はその子供は教会の庇護下に入ることになります。精霊召喚の儀が成功して守護精霊を得た場合、その子供が大人になった際は教会に勤めることが約束されます。いざというときの戦力を提示するとは考えにくいです」
戦力というにも驚いたがここの世界では完全に教会というのは国の中でも独立した別組織という立場ということに驚いた。
「ということは精霊召喚の儀は平民は教会でしか行えないといことかしら?」
そうハンナに問いかけるとそれまで黙って聞いていたリクが口を開いた。
「方法は他にもあります。魔導書や、ルリの花、りんご、魔法陣さえ用意すればどこだってできるものなのです。ただ、魔導書は値が張るものというだけであって難しくはありません。精霊と契約するだけでしたら一か八かですが、はぐれ精霊と契約する方法だってあります」
「はぐれ精霊とも契約はできるの?」
ずっと気になっていたことを少し緊張しながら聞いてみる。リクは少し躊躇いながらもうなずいた。
「はぐれ精霊は精霊界に帰れないことから魔力は本来の力よりも数段落ちている状態です。精霊と人間の相性が良かったら契約するのは可能です。ただ、契約しても本来の力を出すには時間はかかりますし……はぐれにははぐれになる理由がありますので……あまりいい方法とは言えません」
そう言って下を向いた。なんとなく気まずい雰囲気になり話題を変える。
「そ、そういえばなんで精霊召喚の儀にはりんごが必要なのかしら?」
「それは精霊王の思い出の品というのは聞いたことがあります。詳しくは知りませんがそれが伝承として人間に伝わっているのでしょう」
まさかりんごが精霊王の思い出の品というのは初めて聞いた。精霊王にまつわる本とかあれば探して読んでみたい。
りんごの話をしていたらなんだかりんごが食べたくなってきたのでお茶の時間にすることにした。ハンナにお茶の準備をお願いする。
さっき屋台で間食をしたけどリクと目を合わせて無言で頷きあった。屋台で食べた後も歩き回ってるしいいだろうと自分を納得させる。
りんごチップスが皿に乗せられて運ばれてくるも目の前に来た皿の上の量の少なさに唖然とする。三枚ほどしかのっていない。
「ハ、ハンナ……? 少し量が少なすぎるように思えるのだけど?」
「もう少ししたら昼食の時間ですし。それにお嬢様……屋台で何か召し上がっていますよね?」
ハンナが腰に手を当てて目を細めて私とリクを見やる。思わずびくりとしてしまう。
「そ、そんなわけないじゃない~」
慌てて誤魔化そうとするとハンナがスッと指を指す。それは私のスカートを指していてゆっくりと視線を移すと先程食べたクレープのジャムが見落としそうなくらいほんの少しだけついていた。
「それに先程お嬢様が帰ってこられてからお嬢様からベリーの香りがしております」
それは先程屋台で飲んだベリーのジュースだろう。思わずハッと口元をおさえてしまう。チラリとリクをみると隣で固まっている。
「リク、あなたもですよ? お嬢様が屋台で買い食いをしたら報告するようにと言いましたよね?」
「は、はい……」
「だいたいお嬢様といい、リクといいお菓子を食べすぎです! 食べたあとはしっかり歯を磨かないと虫歯になるんですよ──……」
二人してしょんぼりとうなだれる。そうして私たちはハンナのお説教を冷めつつある紅茶を横目に昼食をとりにレイ様が帰ってくるまで聞くはめになったのだった。
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