精霊に嫌われている転生令嬢の奮闘記

あまみ

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2章

2−46

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 目の前の妖精から魔力を感じられ、身体中から警報が発せられるようにぞわぞわと肌が粟だった。もう駄目だと思った瞬間、思わず目を瞑るとバンッと何かを叩きつけるような強い衝撃音が鳴り響いた。身体を強ばらせながらも自分の身に何も異変がない。
 おそるおそる目を開けるとそこには不思議そうな表情をした妖精が首を傾げていた。

 「なんで?」

 そしてまた妖精から魔力がぶつけられる。その魔力は私たちに届く前に目の前で弾かれ、衝撃音が鳴り響くも霧散される。
 妖精は何度も魔力をぶつけてみるも、それは私たちの前に見えない壁があるかのように弾かれた。

 「アリアちゃんの前に魔力の壁がある」

 コソッと耳元でイアンが耳打ちした。イアンに言われてよく目を凝らして見ると私たちの目の前に結界のようなものができている。
 なかなか私に当たらないので焦れた妖精はクルリと回り込んで私たちの背後に立った。

 「後ろからならいけるかな」

 そう言ってまた魔力をぶつけるも、衝撃音と共に霧散された。攻撃に反応して私の周りに結界ができるようだ。妖精は角度を変えて魔力をぶつけ続ける。イアンは私に寄り添ったまま小さな声で私に話しかけた。

 「アリアちゃんがやってるの?」
 「ううん、なんでかしら……」
 「アリアちゃん、何か持ってる? アリアちゃんの魔力じゃない魔力がアリアちゃんから出てる」

 私をじっと見つめながらたずねるイアンの言葉に思い当たることがあり、思わず「あ」と小さく声を上げた。私は胸元から首から下げてる小さな袋を思い出した。胸元を見るとほのかに光が漏れている。

 「それだね。すごい……なんていうかホッとするね」
 「うん……」

 グレース様からもらった精霊石が服の上からでもわかるくらい輝いていた。暖かな魔力が感じられてイアンの言うとおり心が安らいでいく。
 精霊石が守ってくれていることに先程まで不安でしょうがなかった気持ちが薄らいでいく。イアンも私の近くにいるからか結界で守られているようだ。

 「お前、その持っているものを寄越せ」

 ハッとして妖精の方を見るとものすごい形相で妖精がこちらを睨んでいた。

 「これをあげたら私たちの魂を抜くんでしょ? 妖精さん?」

 そう声を掛けると目の前の妖精はカッと目を見開いた。

 「人間のくせに生意気!」

 妖精は先程よりも魔力を多く練り上げていく。一か八かしかない。私も魔力訓練を思い出して魔力を丸く形を作って身体中に行き渡らせるイメージをする。身体が暖かくなってくる。ここで大人しくやられるわけにはいかない。
魔法の訓練の際魔法はイメージが肝心だとリクが言っていたことを思い出しながら集中する。ふと頭に以前魔力を暴走させてしまったことが頭をよぎる。

 怖い……けど、やるしかない!

 温かいお湯に浸かったような感覚がしてきた。ここから集中力を切らすわけにはいかない。次に魔力を放出する。本当は手の中に集めるイメージを起こしたかったけど手足が縛られているので目の前に大きな丸をイメージする。少しずつ目の前に赤い光が集まっていく。握り拳大の大きさになった途端魔力が集まる速度が速くなる。赤い魔力の球はグルグルと回転しながらどんどん大きくなっていく。
 妖精は先程よりも大きな魔力をぶつけた。結界で守られるも、小屋の壁が衝撃で壊れる。思わずよろめきそうになった拍子に慌てて私は魔力球を目の前の妖精に飛ばした。

 行け! お願い!

 妖精は自分に向かってくる魔力球を避けようとするも避けきれなかったのか、腕に当たる。

 「いたあああい!!!」

 耳をつんざくような妖精の悲鳴が響き渡る。思わず耳を塞ぎたくなるほどの悲鳴を浴びながら妖精の姿を確認すると、妖精の右腕の肘から下がなくなっていた。出血はなく、私が当てた魔力球と同じ赤い光が妖精の腕をジリジリと焼いている。

 「絶対許さないんだからあ!」

 そう言った妖精の目がカッと光る。怒りの形相の妖精から先程よりも大きな魔力を感じる。

 「アリアちゃん、壁がさっきよりも薄くなっている気がする!」

 イアンの言うとおり確かに先程より胸元の光が淡くなってきている。
 慌ててまた魔力球をイメージしようとするも上手く集まらない。焦れば焦るほどに目の前に集めようとする魔力が霧散してしまう。

 どうしよう……!もうダメかも知れない!

 妖精が魔力をぶつけようとしたとき、咄嗟にイアンが私を背にした。

 そのときだった。

 バキバキと何かが割れる音がしたかと思うと風切り音が鳴り、目の前でまさに攻撃しようとしていた妖精が魔力を引っ込めて飛び上がる。


 「あんまり壊しちゃ、後で団長さん達が調査できなくなるからほどほどにしてよね~」
 「そんなもん知るか」

 すでに半壊している小屋のドアから会話をしながらスタスタと近づく影が二つあった。その姿を見た私は思わず安堵から崩れ落ちそうになった。


 「お嬢様、お待たせしました」


 膝立ちの状態の私の目の前に大きな鼠のような猫のような出立ちの愛くるしい姿の精霊が来て、まん丸な瞳で私を見た。

 「リク、来てくれたのね」


 思わず息を吐きながら私が声を掛けると、私の顔を見たリクは髭をピクピクと動かした。
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