猫になった俺、王子様の飼い猫になる

あまみ

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番外編

侍従ユエルの日常

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 ある昼下がりのこと。

 「でーんーかー!!」

 天音が腰に手を当てて立ちはだかる。目の前の相手は書類から顔を上げて不思議そうな表情を見せた。

 「なんだ、天音。腹が空いたのか?昼食はとったんじゃなかったのか?」
 「とりました!!」
 「じゃあなんでそんなにカリカリしているんだ?」

 何を怒っているのか本当にわからないエリオットに天音は無言で指をさす。
 さした方向をたどればその先には自分の机の端に置かれた手つかずのサンドイッチ。

 「あ……」
 「「あ」じゃないですよ!!あんだけ昼食をとるように言ったじゃないですか!!」
 「すまん……。忘れていた」

 素直に謝るエリオットに「やっぱり無理矢理にでも一緒にとるべきでした」と天音は唇を尖らせた。
 気まずそうな表情のエリオットはあわてて「立て込んでいる案件に手をつけていて」などと言い訳を述べている。

 その様子を微笑ましそうに眺めるエリオットの侍従ユエルは慌てふためくエリオットに感慨深いものを感じた。

 (あの、エリオットでも天音の前だと形なしですねえ……)

 思い起こせば二人を取り巻く空気が何やら甘いものに変わったのはつい先日のエリオットが天音を泣かせてしまったあたりだ。
 国の王子殿下、エリオットの行動は一番の側近であるユエルの耳に逐一入ってくるようになっている。

 ──もちろん二人がめでたく結ばれたであろうことも報告が上がってきている。

 結ばれたであろうその翌日に妙に肌ツヤのいいエリオットと壊れたネジのおもちゃのようなカクカクした動きの天音の対比がおかしかったのは言うまでもない。
 エリオットから「こいつ(天音)と恋人同士になった」となぜか憮然とした態度で報告された時には思わず吹き出してしまったのは許してほしい。

 (まさか天音とくっつくとは思いませんでした。でも呪いもめでたく解けたようですしよかったですね)

 テオドールから「呪い解けてるから心配しなくても大丈夫だよー」と呑気に報告されたときはなんとなくむかついて掌底を食らわしたユエルだったが正直安堵したのは事実だった。
 呪いについては個人的なことになるので詳細をテオドールからも天音からも聞いていなかったが憂いはない方がいいに越したことがないし、終わったことなので今更聞くつもりもない。

 ただ、人間嫌いの人見知りの自分の主人が自分やテオドールの他にも心許せる相手ができたことに心から喜んだ。

 ましてや愛する人ができたならとしてもこの上ない喜びだ。

 エリオットからの報告以来始めはギクシャクした態度の天音だったが少しずつエリオットに対していい意味で砕けた態度になっていった。
 今では自分の代わりにエリオットに対して休憩をとることを促してくれるようになった。
 天音相手だと素直に聞いてくれることが多いのでユエルは大助かりだった。
 それでも休憩をとろうとしないときは自分の出番だが、それもごくたまにだ。

 (まるでイオがいるときのようですね)

 最近は夜に顔を出しているのかとエリオットにたずねると、それはもう蕩けるような笑顔で「ああ」と返事が返ってきた。
 あまりにもいい笑顔なので天音がヤキモチを焼かないかと心配したものだが、天音もイオの存在は知っているようで複雑そうな表情で「殿下が癒されるならそれでいいと思います」と返ってきたので一度エリオットに忠告すべきが悩むユエルであった──。

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