猫になった俺、王子様の飼い猫になる

あまみ

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番外編

王子様は堪能する 上 

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 エリオットには頭を悩ませていることがある。
 それは今自分の手の中にある一本の小瓶。中には蜂蜜色の液体が入っている。小瓶を揺らしながら考えるは数日前のこと。

 数日前、テオドールの願いで一対一の勝負を行った。
 剣と魔法を巧みに操る王子エリオットと国一番の魔術師テオドールとの戦いは秘密裏に行われたのにも関わらず、城中の人間たちが仕事の手を止めて押し寄せ、どこからか聞きつけた貴族がこっそりと見にくるほどの盛況ぶりを見せた。

 ちなみに魔法と魔術の違いは空気中に漂う自然魔素を使用するのが魔法で詠唱を用いて魔素を集め魔術式によって現象を起こすのが魔術と言われている。
 魔法を使える人間はこの国では珍しくはないが誰でも使うことができるものではない。魔法を使える人間は魔術と違い、詠唱がなくとも自然魔素を集めて現象を起こすことができる。それは生まれ持った資質が大きい。
 魔術は式を詠唱し発動することができるので訓練次第では扱えるようになる。もっとも並大抵の努力では身につけられるものではないが、魔術師テオドールは自他共に認める天才なので自分で式を作り出すこともできる。

 王城の一角で行われ、魔術師団の結界が張られ被害がないように態勢をしいたはずが建物の一部が損壊するほどの熾烈な戦いを見せた。(もちろんユエルによってエリオットとテオドールのポケットマネーから修繕費用は請求された)

 結果はエリオットの勝利。

 次々と繰り出されるテオドールの高速詠唱の魔術はエリオットに容赦なく襲い掛かるも、得意な風魔法を身体強化に応用させて難なく交わしたところで剣でテオドールに切りかかってあっさりと勝利を手にした。

 エリオットとテオドールの戦いには当然きっかけとなった天音も観覧に来ており、エリオットとしては何がなんでも負けるわけにはいかなかったので当然の結果だった。

 負けたことに地団駄を踏みながら悔しがったテオドールは「もう一回!」と何度もせがんだ。
 これ以上はやる意味がないとして知らんぷりして早く天音の元へ行こうとしたエリオットに対してテオドールはこっそりと取引を持ちかけた。

 ──『ねえ、エリオット。子猫ちゃんの姿見たくない?』
 ──『フッ、馬鹿なことを。天音は今のままでじゅうぶん可愛い』
 ──『ちょちょちょ!ちょっと待って!があれば二人はもっと仲良しになれるよ……?』
 ──『……仲良し、とは』
 ──『もちろん身体には害なんてないよ~。中身は使ってからのお楽しみ♡』

 エリオットの好奇心を刺激したのがわかったテオドールは三日月のように目を細めた。
 テオドールの気味の悪い笑みに引きつつも、好奇心に負けたエリオットはテオドールとの二戦目をすることとなったのであった。


 一戦目の反省を踏まえてか、より強固な結界を施したテオドールの魔術にエリオットは手こずった。
 テオドールの得意とする魔術の弾丸がエリオットを襲い、交わしながら結界に斬りかかるも一戦目より防御力の増した結界は強固で、打ち破るのに苦戦した。
 考えを張り巡らせながらふと客席を見ると、ユエルの横に座っていた天音が立ち上がってこちらを不安そうに見つめる視線とぶつかった。
 祈るように手を組んでこちらを見つめる天音はエリオットと目が合うと何か言っているように思えた。

 ──がんばれ。

 口の動きだけでわかったその言葉にエリオットは思わず笑みをこぼした。
 俄然はりきったエリオットは、滅多に使わない光魔法を使ってテオドールの魔術を無効化してあっというまに勝利した。
 悔しがるテオドールの手から受け取ったその小瓶はどんなものか聞く前に本人はさっさと転移してどこかへ消えてしまった。


 (が天音ともっと仲を深めるものだと……?)

 半信半疑ながらエリオットはもうすぐここへ来る天音のためにと用意されたテーブルの上の料理たちにチラリと目を向けた。


 *  *  *


 「エーリーオーット!!なんだよこれは!!」

 目の前でふるふると震えながらこちらを睨みつける愛しい恋人がとんでもない姿になったことにエリオットは動揺していた。

 「な、なんのことだ」
 「しらばっくれるな!わかりやすいんだよ!さっきからソワソワしてて変だなと思ったら……どういうことか説明してくれる?」

 ──薄茶色の猫耳が天音の頭の上にあった。
 可愛らしい猫耳はイオが不機嫌になったときに見せる、横に寝かせるようにピンと張った状態──いわゆるイカ耳になっている。
 天音の小さい尻からは元からそこにあったかのようにイオと同じ尻尾がいらただしげにパタンパタンとソファを打ちつけていた。

 (な、なんだこれは……!可愛すぎるだろ)

 一服盛ったとは正直言いづらいが、そんなことはどうでもいいと思えるくらいには今の天音の姿にエリオットは興奮していた。

 「インチキ魔術師からもらった」
 「インチキ魔術師って……あの人か……」

 思い当たる人物の顔が脳裏に浮かんだのか、ゲンナリしているかと思ったら今度はハッと目を見開いた。

 「まさかずっとこのままじゃ……」
 「それはないだろう……まあ、そのままでも大歓迎だが」

 狼狽える天音の頭の上の猫耳や尻尾を確かめながら上機嫌でエリオットは頭の中でインチキ魔術師テオドールに少しだけ感謝した。

 「とにかく!早く治してもらわないと!」

 そう言って部屋の外に出ようとした天音の腕をエリオットは無言でつかんだ。

 「おい……まさかその姿で出ようとしてないよな」
 「は?そうだけど……」

 怪訝そうに見上げる天音……頭上にある猫耳はピクピクと動いて、尻尾はゆうらゆうらと揺れている。
 今その可愛らしい姿を誰かに見られたらと思うとエリオットの中で何かがはじけた。

 「だめだ」
 「何言って……ちょっ、んっ──」

 腕を引き、もう片方の手で頭を引き寄せてエリオットは天音に口づける。
 だんだん深くなっていく口づけに最初は抵抗していた天音は次第に大人しく受け入れていく。
 途中抱き寄せて腰に回した腕に時折天音の毛並みのいい尻尾が腕に当たってエリオットはより興奮して夢中で唇を食んだ。

 やっとのことで離された天音は、くたくたになっていてエリオットに腰を抱き抱えられていないと立てない状態になってしまっていた。

 涙目になりながらもトロンとした表情で浅く呼吸を繰り返す天音はなんともいえないほど扇情的でエリオットは思わず舌なめずりをした。


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