Dark Moon

たける

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サバル警察署近くに連れて来られた過去のノッドは、自身のしようとしている事が分からなかった。
自分は一体何をさせようと言うのか。我ながら理解不能だ。

「あれを見ろ」

指差された方を見遣ると、警察署前で2人の男が向かい合って立っているのが見えた。1人はさっき研究所へ挨拶に来ていたが、もう1人の方には見覚えがない。黒く短い髪が潮風に靡き、姿勢正しくフィックスを見つめている。

「フィックスに会わせたいんだったら」
「いや、違う」

自身に即座に否定され、ノッドは口をつぐんだ。

「黒髪の方だ。奴はファイと言うリタルド人だ」

何の為に会わせたいのだろう、その、リタルド人とやらに。過去のノッドは、暫く2人を見つめていたが、やがてリタルド人とやらがフィックスから放れ、その姿を消した。

「フィックスは、これから研究所で警備の仕事をしてもらう事になるから、今は接触出来なくてもいい。先にファイと接触しろ」

命令口調でそう言われ、自身の事ながらノッドは苛立ちを覚えた。

「だから、何の為だ?教えてくれてもいいだろう」

説明を求め自身を見遣ると、彼はフィックスを見つめていた。目は細められ、そこから愛おしさが滲んでいる。

「そうだな」

視線に気付いた自身はノッドを見遣り、ほんの少しだけ笑みを見せた。

「俺は、80年も未来から来たんだ……」




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