arkⅣ

たける

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モニターに映るヨラヌス人は、さっきジョシュが会話をしていた人物ではなかった。灰色の髭を蓄えた、貫禄のある男だ。

「私はアルテミス号副艦長のファイです。つい先刻、我々の艦に無断転送をされ、乗組員1名を拐った理由をお聞かせ下さい」

胸を張り、腰の後ろで手を組む姿勢をとっているファイは、モニターを見つめていた。傍らには、未だ怒りの冷めない船医長がいる。

『私はヨラヌス艦の艦長、タルボルだ。貴艦より、無断で1名拝借した事は詫びる。だが、早急に医師が必要だったのだ。用が済めば、彼女を無傷で返す事を約束する』
「彼女は医師ではない!看護婦長だ!私が医師なんだ。彼女と私を交代させてくれ」

船医長が声を荒げた。ブリッジ内は静まり返り、全員がファイ達のやり取りを見守っている。

『我々は、貴艦の攻撃により甚大な被害をこおむった。それにより医師が全滅し、尚且つ乗組員を治療しなければならなかったのだ。現在、彼女がそれに当たっている。君は必要ない』
「失礼ですがタルボル艦長、先に攻撃を仕掛けられたのはそちらです。当方に非はありませんし、正式に要請して下されば、我々は医師をそちらに向かわせたでしょう」

きっとジョシュがいても、それは許可した筈だ。

「彼女は本当に無事なんだろうな?」

船医長の問いに、タルボルは僅かにモニターから顔を背けた。そして再び顔を向けると、その後ろに看護婦長の姿があった。

『それは彼女の口から聞くといい』

バートンがモニターに映し出されると、キルトンは安堵したような、まだ不安を抱いているような複雑な顔をした。

「あぁ、ジュリア!無事か?」
『えぇ……心配いりません』

疲れたような表情だ。ファイは黙って2人を見守った。

「すぐに助ける。だから……」
『いえ、それには及びません、船医長。私は現在、彼等を治療してます。それが済めば、きちんと送り返して頂けるので』

職務の上での、きっちりとした上下関係でバートンは言った。キルトンはそれにいくらか面食らったようだったが、すぐに今が職務中だと言う事を思い出した様子だった。


──どうもこの船医長は、感情的になりやすいらしい……


「君がそう判断するのなら……」

しょげたキルトンを横目に見ながら、ファイはタルボルに尋ねた。

「どのぐらいで返して頂けますか?また、彼女を返した後、貴方達はどうなさるおつもりですか?」

モニターは、バートンからタルボルに変わった。

『あとどのぐらい治療に時間がかかるかは分からぬ。だが、必ず返す。その後は、君の艦長次第だ』

そこで通信は切れ、異様な静寂がブリッジ内に広がった。

「ここは艦長のお戻りを待つより仕方がありませんね。ミューズ、向こうが妙な事をしようとしたら、すぐに知らせて下さい」
「はい、副艦長」

意味もなく挙手し、ミューズは元気な返事をした。キルトンは不服げな顔をしていたが、ファイは司令席へ戻った。




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