arkⅣ

たける

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転送室に現れたワイズは、機嫌を損ねたままだった。ジョシュはカールの側を離れると、そんな親友の隣に立った。

「ジュリアには会えたんだろ?何をまだ怒ってるんだ?」
「何故俺を迎えに行かせてくれなかったんだ?」

いつも以上に険悪な顔で、ワイズはジョシュを睨んできた。それに笑顔を向けながら、ジョシュは怪我人の治療には、船医が必要な事を話した。だが、ワイズは納得していない様子で、首を振っている。

「それは、他の奴にも出来る事だ。その為に俺は、優秀な人材を集めたんだぞ」
『ヨラヌス星到着まで、あと1分です』

ホップスのよく通る声が、スピーカーから聞こえた。

「それは分かってるさ。だけどね、ワイズ。君は少々感情的すぎたんだよ。あの場合は、冷静な対処が出来、かつ、俺が宇宙連邦基地で得た条件を推測し、彼等に伝える事の出来る人間が行くべきだと判断したんだ」

それは、ファイ以外にいなかった。そう言っても、まだワイズは不服げな顔をしている。

「艦長、ヨラヌス星が見えてきましたよ」

カールが転送室のモニターを切り替え、全面にヨラヌスの赤茶色い惑星を写した。ジョシュは素早くインターコムのスイッチを入れると、マナ・ホップスにヨラヌス艦と通信を繋ぐよう伝えた。

『繋がりました、艦長』

モニターが再び切り替わり、タルボルの姿が映る。

「アルテミス号の艦長デビットです。我々もヨラヌス星へ間も無く到着します」

転送台へと移動しながら、ジョシュは伝えた。

『そうか。我々は既に到着している。現在、トラボタヌ石を精製工場へ移送する手続きを行っているところだ。だが、移送は君が到着してからにしよう。座標は……』

タルボルが口述する座標を、カールが素早く入力する。

「分かりました。移送降下は私と船医長の2名です」

ワイズも渋々転送台に乗った。彼は航宙艦に勤務するわりに飛行恐怖症を持っているが、他にも転送機恐怖症もあった。体を1度電子解剖し、また組み直すと言う行程が信じられないと、以前言っていた。

「大丈夫だよ。ちゃんと転送降下出来るさ。うちの機関士長を信じろよ」
「そうは言うがな。俺にはどうも、機械の方が信じられん」

そう言っている間に、2人の体は転送降下の為光に包まれた。

「いってらっしゃい」

2人を見送ったカールは──コンソールに指を走らせると──メインブリッジへ報告した。

「艦長と船医長の転送が無事終わりましたよ」




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