Moon Light

たける

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13分後に応援が駆け付けた時には、アルテミス号のダメージは50%になっていた。

『ではフェシブル号の移送は我々が引き受けます』
「あぁ、よろしく。こちらもただちに地球へ帰還するよ」

メインルームにはアラートが鳴り、それの対処にクルー達は世話しなくタッチパネルを叩いたり、他の部所へと通信を行ったりしている。

「はぁ……いきなりだったなぁ」

処女航海でおだぶつしなくて良かった。そう安堵しながら指令席に体を沈め、メインスクリーンからフェシブル号が移送されるのを見つめる。

「艦長、我々もワープ準備が整いました」

そうファイから報告を受けたジョシュは、ゆるゆると姿勢を正した。
早く戻って修理してやらないと彼女が可哀相だ。
彼にとってアルテミス号は最愛の恋人だ。多分、そう思っているのはジョシュだけではないだろうが。

「じゃあ、俺達も地球に戻ろうか」

メインルームとは違い、再び静寂に包まれた宇宙がスクリーンに映る。そこここに、浮遊する両艦の残骸が景観を邪魔していた。
メインルーム内のアラートが鳴り止まず、ミューズがタッチパネルを叩くと、そこにさっきまではなかった異常電圧を関知した。

「わ、わわ、た、大変です艦長……!」
「どうした?ミューズ。何か問題でもあったか?」
「ぜ、前方に異常電圧を確認しました!ただちに避難しなくちゃ……」

デルマもコンソールへと向き直る。

「異常電圧だって?原因はなんだ?」

ジョシュの鋭い声が響く。

「現在調査中です!」

ミューズがキーを叩き出すのと同時に、クルー達が持ち場につく。

「分かったか?何だ?」
「ぶ、ブラック・ホールです艦長!」

前方の巨大スクリーンに、さっきまでは見えなかった物がハッキリと見える。
星が次々に食われ、その後には本当に真っ暗な闇が残されている。その直径は凄まじく、アルテミス号を安易に引き寄せていく。

「何で事前に探知出来なかったんだ……?クソッ!」

毒づきながらも、ジョシュは通信装置を使い艦内へ呼びかけた。

「全員に告ぐ!前方に、巨大ブラックホール発生!至急避難しろ!おいカール、聞こえてるか?」

ブラックホールを睨みながら、ジョシュは言った。

『聞こえてるよ!こっちはエンジン最大出力中だ!』

艦内に機関士のカール・ディックの声が響く。

「早くワープするんだ!今すぐ!」

肘置きを叩き、ジョシュはファイを見遣った。

「先程からワープしようとしていますが、ブラックホールの力が強く、出来ません。このままだと飲み込まれます」

そうしている間にも、アルテミス号は引き寄せられて行く。艦は今にも潰されそうな凄まじい音を鳴らしながら振動し、クルー達があちこちで転んでいた。

『どーすんだよ!艦長!』

カールが叫んだ。

「みんな、何かにしがみつけ!そして、このアルテミス号が破壊されない事を祈るんだ!」




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