Moon Light

たける

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部屋に戻って来たフィックスは、難しい顔のままパソコンの前に座った。

「上は何て?」

ブラスが尋ねてくる。フィックスはデスクに肘をつくと、画面を見つめながら重いため息を吐いた。

「上は……」

そうフィックスが口を開いた途端、画面が黒くなり、再びデビット艦長が現れた。時間ぴったりだ。

『約束の20分だケリーさん。上は何て?』
「その件ですが、うちの上司は私に一任しました。ですから、貴方達との交渉は私が請け負います」

隣に立っているブラスが腕を組み、短い息を吐いた。

『……そう。ならケリーさん。貴方に交渉しよう。我々の目的は1つ。このアルテミス号のシステムを修復させ、本部に救助の要請をする事だ。その間、貴方達には手出ししないで欲しい。我々も修復以外何もしないし、勿論艦内からも出ない』

そう言ったデビットは、真っ直ぐにフィックスを見据えてきた。まだ若いのに、度胸が座っている。さすが艦長、と言ったところか。

「システム、と言うのは、通信機器と言う事でしょうか?それは、すぐに修理出来るような代物なんですか?」

フィックスが尋ねると、デビットは一瞬視線を外し、すぐ画面に向き直った。
隣に誰かいるのだろう。

『今更聞くのもおかしい話なんが、ここは地球か?』

フィックスを囲む仲間達から、小さな笑い声が漏れる。
地球、と尋ねるからには、彼等はもしかしたら地球外生命体なのだろうか。

「えぇ、そうです。こちらは地球で、私がいるのはサバル警察署です」

そう答えると、デビットはまた隣を見遣った。

『じゃあ宇宙歴で言えば、今何年だ?』


──宇宙歴……?


またもやフィックスは面食らったが、今度は冷静に対処する事にする。
どんな突飛な質問にも懇切丁寧に受け答えし、相手の気分を害さないようにしたい。何もしない、とは言うものの、気が変わらないとも限らないし、また、相手が何者なのかまだ分かっていない。

「宇宙歴、は分かりませんが、西暦で言うとこちらは2010年です」
『2010年……?また、そりゃ……』

そう呟きながら、デビットは腕を組んだ。すると、彼の隣にいた何者かが、画面へ姿を現した。その容姿は、デビット同様に若い。だが、彼よりも真面目そうな男性だった。

『私はアルテミス号副艦長のファイです』

デビットとは違い、そう無表情に自己紹介したファイは、フィックスを見つめてきた。

「あ、えぇ、私はフィックス・ケリーです。何か問題でも……?」

そう尋ねると、ファイは首を振った。

『いいえ、問題はありません。ただ、こちらへの偵察や関与は止して頂きたい』

感情を抑えた口調に、フィックスは眉をひそめた。

「そうは言われましても、こちらとしては貴方達が何者かも分からない以上、その約束が信用に足る物か判断しかねます」

出来るだけ言葉を選び、こちらが言いたい事を伝えると、ファイは口角を僅かに引き攣らせた。

『確かに、今の貴方達からしてみれば、我々は未確認生命体でしょう』

そう言うと、ファイはデビットを伴い画面から少し放れた。
何やら相談をしているらしく、艦長は険しい顔をしている。それを見つめながら、フィックスは待った。

「ケリー刑事、彼等は何だか怪しいですよ……!」

画面に映る2人を指差しながら、ベイトはムッとした表情でそう言った。

「巡査、外見だけでその人物を判断するもんじゃないぞ」

そう言ってベイトを嗜めると、デビットが画面へ近寄って来た。

『そうだな。こちらの正体を明かしても構わない。が、そんなに沢山の人間に知られるのはマズイ。だからケリーさん、貴方1人にこちらに来て貰い、話しをしようじゃないか』

デビット艦長は人差し指を立て、そう提案してきた。

「駄目ですよケリー刑事!向こうに行ったら、人体実験されちゃいます!」

ベイトが異義を唱えると、デビットが鼻で笑った。

「それはない。言っておくが、俺も地球人だ」




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