Moon Light

たける

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通信を切ったジョシュは、深く長い息を吐いた。

「ふ……うー……あぁ、俺さ、こう言うの苦手なんだよな」

額の汗を拭い、側に立つホップスを見上げた。

「私が出る幕もなく地球言語。しかも、英語でしたね」

そう言って笑うホップスは通信士官だ。耳がよく、他の惑星の言語を翻訳してくれる。

「はは、そういやそうだな。通じてた」

つられて笑い、ジョシュは伸びをした。

「とにかく、一刻も早く本部と連絡を取って、救助に来て貰わないと」

ジョシュは立ち上がると、スクリーンから見える景色を眺める為に少し歩いた。
辺りは真っ青な海で──図鑑に載っていた──地球の古い魚達が沢山泳いでいる。


──どうやらアルテミス号は、過去の地球へ来てしまったのかも知れない。


そう推測する。


──だとしたら、一体何年頃になるのだろう?


「艦長、クルー達に大きな負傷者はいませんでした。今、船医達に治療させています。キルトンには感染症治療の準備が済み次第、すぐにこちらへ向かうよう伝えました。エンジンは細かい破損が10ヶ所。大きな破損は1ヶ所のみです。修理すれば問題ありませんが、ウイルス感染の疑いがある為、その種類や感染経路が特定出来るまで待機するようにと、ディックに伝えてあります」

メインルームに戻って来たファイが報告する。

「こっちは相手の出方を待ってるとこだ」

側にファイが立つ。

「で、いかがでしたか?話を聞いていましたが、相手は地球人ですね」
「あぁ。赤毛のな。話しは通じそうだ」

ファイから艦隊の破損具合を記した書類を受け取ると、その酷さに眉間を指で押さえた。小さい破損はすぐに修理出来るだろうが、大きな物が厄介そうだ。

「我々が救助されるまで、何も手出しはして来ないでしょう。きたとしても、そう科学技術が進歩していないようですし、シールドを張っておけば大丈夫です」
「だと、いいんだがな。次の交渉は20分後だ。ファイ、お前も側にいて話しを聞いてくれ」

そうジョシュが頼むと、ファイは、勿論、と答えた。




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