Moon Light

たける

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「フィックス、やはり俺が行くよ」

ブラスが言った。その横では、ベイト巡査が我こそは、と言う顔をしている。

「いや、いい。俺が行く」

多分、話しをしよう、と言う提案は建前で、実質的にフィックスに人質になれ、と言っているのだろう。それが分かっている以上、大切な仲間を行かせる訳にはいかない。

「でもケリー刑事、これって……」

サラが口を挟む。それを優しく手で制すと、フィックスは腕時計を見遣った。

「もう迎えが来る」

デビット艦長いわく、5分以内に誰かをこちらに寄越す、と言っていたが、どのような方法で来るのかは聞いていなかった。もしかしたら、小型宇宙船にでも乗って来るのかも知れない。

「心配よ。もしケリーに何かあったりしたら……」

ナスカがサラの腕を掴み、不安な声を漏らす。フィックスはそれを背中で聞きながら、窓の外を眺めた。
豪雨はすでに止み、またあの晴天が戻ってきている。陽射しは窓に垂れる雨粒を輝かせ、コンクリートを乾かし始めていた。

「銃は置いて行くから、もし何かあったとしても、助けようとは思わないでくれ」

酷な話しだが、自分以外の犠牲は出したくない。それに、まだ見ぬ宇宙船がどこに停滞しているのか不明である以上、助けになど来られる筈もないが。

「ケリー刑事……」

一瞬にして、室内は暗い空気に包まれた。

「心配いらないさ。彼も地球人だと言っていただろう?きっと友好的……」
「その通りです」

フィックスの言葉が遮られた。振り返ると──いつの間に現れたのか──部屋の入口に、青い服を着たファイが立っていた。

「貴方が、ファイさん、ですね?」

フィックスはそう言い、ファイを観察するように目を細めた。
まず目に入った青い服は、海のように色鮮やかだ。そして腰には、細身のファイには少し不釣り合いのようなベルトが回っていて、そこに何やら色々と装備されている。そこに銃のような物も見え、フィックスはそっと息を飲んだ。
更に視線を下げる。
ズボンは黒く、足にぴったりとしており、その裾を臑より少し上までの黒いブーツの中に入れて履いていた。
そして再度顔を上げ、ファイを見つめる。黒く艶やかな髪が照明に光って美しい。

「はい。私が貴方を迎えにあがりました」

少し間を空けてから、ファイが答えた。多分、フィックスが自身を観察し終えるのを待っていたのだろう。そんな間だった。
仲間達が左右に分かれ、道を作る。が、その真ん中に、ブラスとベイトが通せん坊をするように立ち塞がっていた。

「おい、お前!ケリー刑事をどうするつもりだ?」

噛み付かんばかりの勢いでベイトがそう言うと、ブラスも腕組みをしながらファイを睨んだ。

「フィックスを無事に返してくれるんだろうな?」
「勿論です。大事なゲストですから」

表情を変える事なく、ファイが答えた。フィックスはゆっくり歩いて2人の後ろに立つと、その肩を軽く叩いた。

「大丈夫だ、ブラス、ベイト巡査」

2人の間を抜け、ファイの前に立つ。

「では、ケリーさん。貴方をアルテミス号へ歓迎致します」

そう言うと、ファイはフィックスの手を取った。僅かに全身へ緊張が走る。

「転送を」

ファイが言った途端、フィックスの体に渦のような光りが走った。

「おい!何だよそれ!」

そう怒鳴るベイトへと、ファイは冷めた視線を向ける。

「転送装置です。人体に問題はありません」

ファイが説明する。と、更に強烈な光りがフィックスを包み、目が眩んだ。




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