Moon Light

たける

文字の大きさ
16 / 25
3.

しおりを挟む
ケリー刑事が攫われて、20分は経過しただろう。たった20分なのに、それが2時間、いや、2年にもベイトは感じられた。

「ケリー刑事大丈夫かな」

何度その台詞を吐いただろう。緊張の為に咥内は渇いていて、ベイトは何度も唇を舐めて湿らせた。

「きっと大丈夫さ。フィックスは」

ブラス・エンカート刑事も同じ台詞を繰り返す。
パソコンの画面はアメーバのようなスクリーンセイバーが漂っていて、からかわれているようで不快だ。だがマウスを触る気にもなれず、ベイトとエンカートはずっとそんな画面を眺めていた。サラ達はいたたまれなくなったのか、現在抱えている事件の証言を再検証すると言って部屋を出て行った。今この部屋には、ベイト巡査とエンカート刑事しかいない。

「連絡くれるって言ったのに」

無表情男の横に立つケリーの姿を思い返し、ベイトはため息をついた。途端、スクリーンセイバーが消えて画面は真っ黒になった。

「ケリー刑事だ……!」
「フィックスだ……!」

2人声を重ねてそう言うと、椅子から腰を浮かせて画面に食い入った。すぐに黒い画面が切り替わり、そこにフィックス・ケリーが姿を現す。

「ケリー刑事……!大丈夫ですか?怪我とかしてません?」

ベイトが早口にそう尋ねると、ケリーはいつもの柔和な笑みを見せた。

『遅くなってすまない。俺は大丈夫だ。そっちはどうだ?』
「こちらは問題ないよ、フィックス。サラ達は例の件の再検証をしてる」

エンカートが言い、ケリーは頷いた。

『そうか。なら、問題ないな。2人共、そんな顔をしないでくれ』

知らぬ間に不安が顔に出ていたのだろう。ケリーはそう言いながら、困ったような顔をした。

「だってケリー刑事……相手は宇宙から来た奴等なんですよ?危険です……!」
「ベイト巡査……危険はない。こうして連絡も取らせて貰ってるんだし」

宥めるようなケリーの口調に、ベイトは恥ずかしさを覚えた。
今1番不安で恐怖を感じているのは、自分達ではない。ケリー刑事自身なのだ。なのに自分ときたら、うろたえるばかりで余計な不安を煽っている。
ベイトは唇を噛み締め、冷静に見えるエンカート刑事を見遣った。その顔は、いつもと変わらないポーカーフェイスをしていて、一見心配していないように見える。だがその胸の内は、ベイトと同様に不安で堪らない筈だ。それを顔に出さないのはどうしてだろう。
経験の差だとは思いたくない。

「フィックス、そっちも問題なさそうだったら、いつになったら解放されるんだ?」

そうエンカートが尋ねると、ケリーは画面の中で振り返った。そこに誰かいるのだろうが、ベイトはそれをあの無表情男だと思った。
すぐに画面へ向き直ったケリーは、腕時計を指差した。

【もう40分もしたら解放されるそうだ。だから心配しないでくれ』

エンカートが頷き、ベイトも頷く。

「ケリー刑事……待ってます」

今度はケリーが頷き、そして画面は元に戻った。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...