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ケリー刑事が攫われて、20分は経過しただろう。たった20分なのに、それが2時間、いや、2年にもベイトは感じられた。
「ケリー刑事大丈夫かな」
何度その台詞を吐いただろう。緊張の為に咥内は渇いていて、ベイトは何度も唇を舐めて湿らせた。
「きっと大丈夫さ。フィックスは」
ブラス・エンカート刑事も同じ台詞を繰り返す。
パソコンの画面はアメーバのようなスクリーンセイバーが漂っていて、からかわれているようで不快だ。だがマウスを触る気にもなれず、ベイトとエンカートはずっとそんな画面を眺めていた。サラ達はいたたまれなくなったのか、現在抱えている事件の証言を再検証すると言って部屋を出て行った。今この部屋には、ベイト巡査とエンカート刑事しかいない。
「連絡くれるって言ったのに」
無表情男の横に立つケリーの姿を思い返し、ベイトはため息をついた。途端、スクリーンセイバーが消えて画面は真っ黒になった。
「ケリー刑事だ……!」
「フィックスだ……!」
2人声を重ねてそう言うと、椅子から腰を浮かせて画面に食い入った。すぐに黒い画面が切り替わり、そこにフィックス・ケリーが姿を現す。
「ケリー刑事……!大丈夫ですか?怪我とかしてません?」
ベイトが早口にそう尋ねると、ケリーはいつもの柔和な笑みを見せた。
『遅くなってすまない。俺は大丈夫だ。そっちはどうだ?』
「こちらは問題ないよ、フィックス。サラ達は例の件の再検証をしてる」
エンカートが言い、ケリーは頷いた。
『そうか。なら、問題ないな。2人共、そんな顔をしないでくれ』
知らぬ間に不安が顔に出ていたのだろう。ケリーはそう言いながら、困ったような顔をした。
「だってケリー刑事……相手は宇宙から来た奴等なんですよ?危険です……!」
「ベイト巡査……危険はない。こうして連絡も取らせて貰ってるんだし」
宥めるようなケリーの口調に、ベイトは恥ずかしさを覚えた。
今1番不安で恐怖を感じているのは、自分達ではない。ケリー刑事自身なのだ。なのに自分ときたら、うろたえるばかりで余計な不安を煽っている。
ベイトは唇を噛み締め、冷静に見えるエンカート刑事を見遣った。その顔は、いつもと変わらないポーカーフェイスをしていて、一見心配していないように見える。だがその胸の内は、ベイトと同様に不安で堪らない筈だ。それを顔に出さないのはどうしてだろう。
経験の差だとは思いたくない。
「フィックス、そっちも問題なさそうだったら、いつになったら解放されるんだ?」
そうエンカートが尋ねると、ケリーは画面の中で振り返った。そこに誰かいるのだろうが、ベイトはそれをあの無表情男だと思った。
すぐに画面へ向き直ったケリーは、腕時計を指差した。
【もう40分もしたら解放されるそうだ。だから心配しないでくれ』
エンカートが頷き、ベイトも頷く。
「ケリー刑事……待ってます」
今度はケリーが頷き、そして画面は元に戻った。
「ケリー刑事大丈夫かな」
何度その台詞を吐いただろう。緊張の為に咥内は渇いていて、ベイトは何度も唇を舐めて湿らせた。
「きっと大丈夫さ。フィックスは」
ブラス・エンカート刑事も同じ台詞を繰り返す。
パソコンの画面はアメーバのようなスクリーンセイバーが漂っていて、からかわれているようで不快だ。だがマウスを触る気にもなれず、ベイトとエンカートはずっとそんな画面を眺めていた。サラ達はいたたまれなくなったのか、現在抱えている事件の証言を再検証すると言って部屋を出て行った。今この部屋には、ベイト巡査とエンカート刑事しかいない。
「連絡くれるって言ったのに」
無表情男の横に立つケリーの姿を思い返し、ベイトはため息をついた。途端、スクリーンセイバーが消えて画面は真っ黒になった。
「ケリー刑事だ……!」
「フィックスだ……!」
2人声を重ねてそう言うと、椅子から腰を浮かせて画面に食い入った。すぐに黒い画面が切り替わり、そこにフィックス・ケリーが姿を現す。
「ケリー刑事……!大丈夫ですか?怪我とかしてません?」
ベイトが早口にそう尋ねると、ケリーはいつもの柔和な笑みを見せた。
『遅くなってすまない。俺は大丈夫だ。そっちはどうだ?』
「こちらは問題ないよ、フィックス。サラ達は例の件の再検証をしてる」
エンカートが言い、ケリーは頷いた。
『そうか。なら、問題ないな。2人共、そんな顔をしないでくれ』
知らぬ間に不安が顔に出ていたのだろう。ケリーはそう言いながら、困ったような顔をした。
「だってケリー刑事……相手は宇宙から来た奴等なんですよ?危険です……!」
「ベイト巡査……危険はない。こうして連絡も取らせて貰ってるんだし」
宥めるようなケリーの口調に、ベイトは恥ずかしさを覚えた。
今1番不安で恐怖を感じているのは、自分達ではない。ケリー刑事自身なのだ。なのに自分ときたら、うろたえるばかりで余計な不安を煽っている。
ベイトは唇を噛み締め、冷静に見えるエンカート刑事を見遣った。その顔は、いつもと変わらないポーカーフェイスをしていて、一見心配していないように見える。だがその胸の内は、ベイトと同様に不安で堪らない筈だ。それを顔に出さないのはどうしてだろう。
経験の差だとは思いたくない。
「フィックス、そっちも問題なさそうだったら、いつになったら解放されるんだ?」
そうエンカートが尋ねると、ケリーは画面の中で振り返った。そこに誰かいるのだろうが、ベイトはそれをあの無表情男だと思った。
すぐに画面へ向き直ったケリーは、腕時計を指差した。
【もう40分もしたら解放されるそうだ。だから心配しないでくれ』
エンカートが頷き、ベイトも頷く。
「ケリー刑事……待ってます」
今度はケリーが頷き、そして画面は元に戻った。
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